アンテナのホント!・ウソ?

〜意外と知らないアンテナの真実〜


 みなさんの身近には、携帯や PHS はもとより、テレビ・ラジオや、コードレスホンに至るまで、実に多種多様のアンテナがあります。
 また、一歩外にでればテレビ・ラジオの送信所、携帯・PHS の基地局などにも、非常に多彩なアンテナがあります。一般的にアンテナというと、かなり軽く見られがちですがそれは大間違いです(^_^;)。
 アンテナというものは、電波の出入り口であり通信において、きわめて重要な要素なのです。
 アンテナとは、電磁波と電力を相互に変換する、エネルギー変換装置(大げさ)なのであります!(笑)。ちなみに日本語では、”空中線“と称されいかにも、という印象を受けるでしょう(まさに、読んで字の如くとはこのこと)。
 このコーナーはみなさんにアンテナの真実と、一般的にありがちな間違った認識を、なるべくわかりやすく広報するためのものです。
 なお、多少本題からはズレますが、エリア内なのにやたらと切れる、と言っておられる方の大半が、端末機本体もしくはアンテナが、損傷しているかまたは、電池がヘタっている方々です。
 水没、雨ざらし、踏みつけ、落下などなどですね(よく見かけます)。また、電池は毎日充電を繰り返した場合、一年も経てばヘタってきます。電池は、使用開始からの年数もしくは、充放電回数で寿命が決まります(かなり重要)。
 携帯はかなりデリケートにできており、しかもどうしても機械化出来ない製造工程があります。ですから、優しくいたわって女の子を扱うように、と言うのが無線家である、私からのお願いですm(_ _)m。
 また、もしキャリアの問題で電波が弱いだけなら、それは仕方がないことです。家でも、ばりばりに使いたければ外部アンテナでも、建てることです(^_^;)。もしくは、黙って電波の強いキャリアに乗り換えましょう(ボカスカ)。
 

  アンテナの種類
  〜携帯・PHS〜

 まず、みなさんにもっとも身近だと思われる、携帯と PHS のアンテナについてご紹介しましょう。従来一般的だった伸縮式アンテナの携帯では、端末小型化により約 3/8λ あたりが主に使用されます。

 アンテナの長さは、300/F(周波数)=λ(波長)で表されるので、PDC では 940〜955.9875MHz(ドコモの場合)を送信に使用しますからバンドの中心をとるとして、300/947.5=0.3186404 となります。

 つまり、31.86404cm ということです。これをアンテナの長さに当てはめると、3/8 λでは、11.49015cm(1/2 波長では 15.93202cm))ですが、実際には材料の組成や、直径・形状による短縮率がありますから、それよりも短いということになります。※λ=ラムダ(波長のこと)

 みなさんもお持ちの端末機のアンテナ長を、測ってみるとよいでしょう。もっとも近年では”使えない“内蔵アンテナ機種ばかりで、伸縮式の”立派!?“なアンテナを持つ機種はヤンバルクイナの如く希少ですが(ボカスカ)。(※なぜ使えないかは後述)

 また、PHS ではヘリカル・ホイップといって、導線をコイル状に巻いたものが使用されることもあります。これは、アンテナの長さをかなり短くすることができる、という特徴がありますが、短縮率がきついので放射効率(感度)は当然悪くなります。
 ですから初期の端末機などを除き、 PHS でも多くはホイップアンテナが採用されています。また従来携帯・PHS ともに幅を利かせていた、伸縮式のアンテナでは先端の太くなった部分にコイル状のヘリカルホイップとして、動作する部分が内蔵されています(写真参照)。
 それぞれのアンテナの付け根には、接点があり収納時と伸張時で二つのアンテナが、切り替わるようになっているのです。
 これは、アンテナ収納時専用に設計されたもので、一般に -2.15dB という低い利得しかない上に、伸張時とは放射パターンも変わってきます。ですから通話時は、後述するように通話品質維持のため、伸ばして使うことが大切です(人体頭部による影響もかなり大きいので、なおさら)。

 伸張時の通話用アンテナは、頭の影響による指向性変化や、アンテナの角度による放射パターン変化も、極力少なくなるように設計されています。これらは、他のアンテナと比較し特徴的と言えるでしょう。
 またかつてこのアンテナの先端の部分(コイル部分)は、ありませんでした。初期のアナログ・ムーバや初代マイクロタックの時代から、携帯電話を使われている方はご存じでしょう。最初はラジオ用ロッドアンテナの先端に、よく似た形状をしていたのです。
  
  携帯の内蔵アンテナ今昔話

 実は伸縮式アンテナが主流だったころから、携帯電話にはアナログ時代にも本体内に(丁度スピーカの裏あたり)もう一つのアンテナが内蔵されていました。

 これには、逆 F 型アンテナ(もしくは、その変形等)と呼ばれる平面アンテナの一種で、通話品質を一定にするための空間ダイバーシティや、通話中に他Ch(制御など)を見るのに使用されています(受信専用)。右の写真では、銀色の部分がアンテナとして、動作します(写真のものはおそらく、誘電体をサンドイッチにしている構造)。


ドコモ・アナログ端末の内蔵アンテナ
(サブ受信専用)

ドコモ PDC 端末 N208 の内蔵アンテナ
(サブ受信専用)
 また、左下の写真はかなり古い機種ではありますが、ドコモ N208 の内蔵アンテナです。近年ではダイバーシティー用の”サブ“アンテナだけではなく、送受信に用いるメインアンテナにも端末の小型・薄型化により、このような平面アンテナが主流になりつあります(容積を必要とせず、薄くできるため)。
 この形式は、ジグザグパターンを持つメアンダラインアンテナ、と呼ばれるもののひとつです。

 また一部の方式では、このダイバーシティ用内部アンテナのないものがありましたが(TACS/cdmaOne など)、ここでは割愛します。また、PHS でも一部の機種ではダイバーシティを行うために、内部アンテナを持ったものが存在します。おそらく、マルチパスによるフラットフェージングには比較的強いと思われます。

 
  なぜ内蔵アンテナのみの機種が”使えない“のか

 「別に使えてるから内蔵でもいいじゃん」、と”普通の“方は思うかもしれませんが実はそうではないのです。事業者や方式を問わず内蔵アンテナのみの端末機では、使っている当人は気づいていなくても自分の声が相手にうまく伝わっていないときが多々あるのです(要するに片通話状態ヽ(´ー`)ノ)。

 これは相手に指摘されなければまず気が付かないことで、ビル内の奥や特に地上高のある高速高架上(高層建物を含む)などで良く発生します。またアンテナピクト(アンテナマーク)が多く立っていても、通話等がダメなことが従来の端末機より多くなります。
 携帯電話システムでは基地局側の電波が圧倒的に強いためで、アンテナピクトはそれを見て電波の強さの目安として表示しているに過ぎません。

 考えても見てください、アンテナは本来”裸電球“の如く八方美人的にどの方向にも電波を放射する必要があります。しかし、内蔵アンテナのみの端末機では 180 度近くが本体によりふさがれており、”カサ“を付けた電球の光と同じように電波にも影が出てしまいます。

 実は、某大手メーカの携帯電話・開発技術者に直接伺った生涯忘れられないエピソードがあります(^_^;)。私の内蔵ダメアンテナ端末機の質問に端を発し、ダメアンテナ談義に花が咲いたところ「大丈夫なわけありませんヨ、飛んでもない!」、とホンネを漏らしてくれました(ボカスカ)。
 つまり、昨今の”内蔵アンテナのみ“の端末機はロクでもないくらいアンテナ性能が低く(従来比 1/4 程度)、それを限られたスペース(内蔵アンテナを実装する場所)でどうやってカバーするか悩みどころだ、とか etc.etc. 色々と興味深い話を伺うことが出来ました。

 近年では見た目のデザインや通話以外の機能重視という設計コンセプトなので、重要なはずのアンテナは隅っこに追いやられ設計段階で、「これだけのスペースしかないからそれでやれ!」とないがしろにされている、とその技術者は嘆いていました(;_;)。

 アンテナの効率が悪いと同じ環境下でも、余計に送信パワーを必要としたり良いことはありません(つまりムダに電池を使う)。また矛盾した話ですが分かりやすい例として、流行りの”ワンセグ“対応端末機を挙げてみます。
 この手の機種では”ワンセグ“用に、立派な伸縮式アンテナがついてきます。肝心の送受信アンテナは内蔵のロクでもないものしかないのに!、おまけ機能のアンテナの方が遙かに立派なのです。

 なぜならば前述の通り、内蔵アンテナでは性能があまりにも悪くて再現性が落ちるためです。
 実におかしなことになっています。これらは現行機種におけるアンテナ設計の矛盾点を端的に表していると言っていいでしょう。


  ならばダメなりにどう使うのがよいか(^_^;)

 これで勘の良い方お解りだと思いますが(ボカスカ)、携帯で通話する際は持ち方にも気を付ける必要があります。

 必ず取説で内蔵アンテナの位置を確認し、それを塞がないように保持しましょう。こうすることで内蔵アンテナが有効に働きます。
 ありがちな、内蔵アンテナを指で押さえ込むような持ち方は、最悪極まりありません。独自の観察によると、この持ち方をする方の多いこと(^_^;)。機種によっては折り畳みのヒンジ(蝶番のように折れる部分)の出っ張りにアンテナが入っていたり、と少しは工夫の見られる端末機もあります。

 また当然のことながら、金属類の使用されたストラップは御法度です。全てプラのものが好ましいでしょう。ただでさえダメなアンテナなのに金属じゃらじゃらのストラップなんて、端末にとっては拷問のようなものなのです。

 とにかく内蔵アンテナのみの機種では取説に、「○○の部分を持ったまま通話しないでください」、等と書かれています。その、○○の部分が内蔵アンテナの位置なので、十分気を付けて通話しまょう(^_^;)。

 800MHz 帯でも、内蔵アンテナ ONLY だとダメダメなのにインフラがロクでもないうえに、まるで飛ばない 2.1GHz 帯(FOMA/VODA 3G)ならなおさらです。各社ともも早く、マトモなアンテナの端末出してください(ボカスカ)。


 
  ■ポケベル
ポケベルのループアンテナ(電電公社時代の端末)

 ポケベルのアンテナ?、と思われた方も多いことでしょう。無線機器であるポケベルにも、外からは見えませんが、当然アンテナが内蔵されています。
 ポケベルでは、使用する波長(280MHz 帯)や体に身につけて使用する、という特徴があるため、携帯とは全く違ったアンテナが採用されています。ポケベルでは、ほぼ例外なしにループアンテナが使用されています(腕時計型などを除く)。
 これは、導線を長方形にループさせた構造のものです。このことはあまり一般には知られていませんが、非常に重要なことです。常に体に身につけて使用するポケベルでは通常のアンテナを使用したのでは、受信感度が低下します。
 これを防ぐために人体表面(人体は反射板と見なせる)では磁界はわずかに強くなる、という現象を利用しこれを捉えやすいループアンテナが採用されたのです。
 私個人的には、携帯の内部アンテナもループにすればいいのでは?と思っていますが、今のところ見かけたことがありません。(あまり広帯域に出来ないからでしょうか)



  アンテナにしてはいけないこと
 アンテナにしてはイケないことベスト3です(^_^;)。
  1 導体、もしくは誘電体をとりつける、または近づける
  2 その他長さを変えるなどの細工をする
  3 乱暴に扱う
 などなどです。まず、1ですがこれは思い当たる方も、多いかと思います。大昔?一世を風靡した、光るアンテナや金属製のじゃらじゃらストラップの類などが該当します。アンテナには、固有の共振周波数というものが存在し、導体や誘電体を近づけたり、取り付けてしまうとこの共振周波数が狂います。
 すると設計された周波数から特性がズレるわけですから当然、電波の飛びや受信感度にも影響してきます(わずかですけどね)。それでも、送信に限ってみると、SWR(定在波比)という値が 1 よりも大きくなってしまうことになります。
 多少専門的になりますが、この SWR の値が大きくなるということは、実際の送信電力が低下することを意味します。たとえば、SWR が 3 になると、アンテナからの送信電力は、元の 75% にもなってしまいます。
 理想は、100% がアンテナから放射される、1 ですからこのことの重要性を、解っていただけるのではと思います。
 また、この値が大きいことは反射した電力が、端末側に戻ることを意味します。あまり、この状態が続くと端末の回路部品を、痛めかねない結果となります。状態が悪いまま使用していると、実効輻射電力低下と受信感度低下があるわけです。
 すなわち、これらの特性劣化を補うため、送信パワーが通常よりも比較的大きくなってしまい、電池のもち自体も悪くなる結果となります(内蔵アンテナのみの機種は常にこの状態ですヽ(´ー`)ノ)。
 ですから、電池の持ちや端末を壊さないためにも、つまらないものはつけないに限ります。
 2については、市販のへんてこなアンテナが該当します。やたらと長いもの、なかには波長より長いという、トンチンカンなものまで存在します(^_^;)。はっきり言って、無銭家から見たらあきれて物が言えないほど。
 アンテナというのは、短縮型でない限り 1/2 波長が基本です。ですから、これ以上長いものは一部を除きアンテナとして、動作しません(実際には 5/8 波長というものもありますし、整数分の n なら一応動作はします)。よい子は絶対に、取り付けてはイケませんよ(^_^;)。
 なにより重要なのは、携帯電話・PHS 端末のアンテナは筐体(ケース)等と一体で設計・動作しているということです。それらとのマッチングも考慮されていない、ヘンなアンテナは乗用車に耕耘機のごついタイヤをはくようなものです(ボカスカ)。内蔵アンテナの機種はさながら、極小のキャスターでしょうか(段差・不整地に弱いから歩道も通れない!?)。

 そもそも、市販のアンテナに純正以外マトモなものは、まずありませんからそんなまがい物に、手を出さないことが大切なのです。それに、法律によっても認定外のアンテナを使用することは禁じられています。

  ※アンテナを含め、端末機本体に細工を施した場合や分解した場合、
   電波法で定める技術適合証明が受けられなくなり、その無線機器は
   使用不可となります。また、同証明のない無線機器を使用すると、
   無線局の不法開設・運用罪等の不法運用となります(^_^;)。



  重要なことはアンテナを収納したまま通話しないこと(死語)
  そして内蔵アンテナの機種には簡易外部アンテナを!
 かなり重要なことがあります。それは、通話中アンテナを収納したままに、しないことです。な〜んだ、とお思いになる方もいるでしょうが、これが非常に重要なのです。既述の通り、携帯などのアンテナは伸ばしきった状態で、まともに動作するようにできています。
 最も、こんなことを言っても最近は”伸ばせない“アンテナどころか、内蔵アンテナの機種ばかりで話になりませんが…。
 いくら、発着信や通話が可能だからといって、収納したままにすることは、当然のことながら電池の持ちアンテナの放射特性等、悪影響しかありません(もちろん、着信を逃さないためにはアンテナを伸ばしておくよう、取説にもあります)。

 また自分は聞こえていても、相手には断続して声が伝わっているかもしれません。特に大切な通話の際は、通話断続・不正切断を防ぐためにも気を付けましょう。

 中にはアンテナが壊れて、なくなってしまった状態でも平気で使っているヒトを見かけました。この場合、端末機の電力増幅器の負荷はとんでもないことになっています(ほとんど無負荷なので最悪)。保護回路により、送信電力はかなり絞られますが、0 にはなりません。
 ほとんどの電力が、回路に戻ってしまう状態てすから、そのうち端末の電力増幅段回路が、劣化します。なにしろ、QPSK(変調方式)である、FOMA/PDC/CDMA/PHS 全ての電力増幅段は、直線性が必要なためリニアアンプが使用されます(形式的には F 級)。
 無線やオーディオをやられている方ならば、これがいかに端末に悪いことかワカルでしょう(^_^;。(実際には完全な無負荷ではなくアンテナ接点部分などが負荷となるが、極端な不整合)。
 ちなみに、携帯などのアンテナは無線工学的にみると、かなりいい加減な印象を受けてしまいます。一見、一般の無線機のものと比較すると、本当にこれでいいのか?、と疑問を感じてしまいます(ボカスカ)。
 伸縮式のため、厳密にいうとインピーダンスも、あまり合っていないような気がします(実際合っていないので、整合回路が必要ですがそれには、広帯域化という相反する理由があります)。もし、通常の無線機に伸縮式アンテナを取り付けたら、それはもう飛びがワルくて使い物にならないほどです(事実、過去には存在し不評だった)。
 それでも、まともに使うためには取説通り、使うことが大切なのです。
 付属アンテナのイケないところを実感するには、市販の外部アンテナか、車載用の外部アンテナでも、使ってみることです。まったく、送受信感度が違いますからね〜。いかに、あのアンテナがいい加減か解りますよ(^_^;。

 たまに掲示板などでも話題になりますが、自宅等においても通話状態が悪く圏外になりがちな方や、音声断続が多いという方は簡易外部アンテナのご使用を、強くお勧めします(FOMA 用も市販されています)。

 都市部ではほとんどの場合、マルチパスや不感地帯等の電波状況によるもの、郊外では弱電界によるものが原因ですから、きちんとしたアンテナを固定して使うことで、解消できることもあるのです。




 ということで、更にアンテナについてお知りになりたい!、という方は「アンテナの基礎から応用まで」をご覧下さい。最も基本となるアンテナの動作原理から、数多くの種類がある様々なアンテナについて、解説しています。

 常日頃お世話になっている、携帯基地局のアンテナの解説や、内部写真も掲載していますので、ぜひどうぞ。





 
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