アンテナの基礎から応用まで

〜身近なアンテナの原理とその特性〜

 現代において無線通信は、テレビ・ラジオや、携帯電話、各種ワイヤレス・データ通信から、公共通信等に代表されるよう欠かすことのできない技術です。そして無線を使うには必ず、アンテナが必要になります。

 本稿ではアンテナの基本動作原理から、様々なアンテナについても各種バリエーションを取りそろえ、極力イラストや写真入りで解説していきたいと思います。

  ※地デジ用自作アンテナについては文末付近に記載してあります




  ■ アンテナの基礎

  送信アンテナと受信アンテナの違いは?

 冒頭から「なんだろうな??」、と思った方が多いと思います。受信用と送信用アンテナの違い、これは簡単に言うとかけても良い送信電力の違いです。受信用として作られたものの中にはきちんと設計されていれば、送信にも使用できるものも一部あります(ごく一部かも)。

 つまり、優秀な受信アンテナは送信にも使える、と言うことです。しかし、送信電力をかけすぎると発熱してきて、最終的には燃えてしまいます。ここが受信用と送信用の違いなのです。とにかく VSWR が十分に低くて耐電力が高いものが、優秀な送信用アンテナといえます。

  また当然のことながら優秀な送信アンテナは、受信用としても非常に優秀です。



  アンテナの動作原理と 1/2 波長 ダイポールアンテナ

 まずは、あらゆるアンテナの基本形である、1/2 波長ダイポールアンテナについて解説します(右図参照)。

 右図は 1/2 波長ダイポールアンテナのなかでも、もっとも基本的な中央給電型の動作を示しています。
 アンテナにはこのダイポールを基本とした、共振型以外にも進行波型というものもありますがここでは割愛します。 

 1/2 波長ダイポールアンテナは、あらゆるアンテナの基本形と言いました。
 1/2λ(波長)のこれを半分にしたものが、ハンディ無線機や車載アンテナなどに多用される、1/4 λホイップ・アンテナ(細い線型)等であり、用途などに応じて 1/2 λホイップ型もあります(この場合はどちらも先端給電型)。

 電波の源となる高周波は、半波長毎に極性が反転しています。もしアンテナに用いる導体の長さが、1 波長あったとすると電流は打ち消し合い電波としてうまく出ていってくれません。

 そこで導体の長さを 1/2 波長にすることで電流分布のように、うまくアンテナへ電流を”のせる“のです。

 ただし前述した通り 1/2 波長ホイップなどの場合は、先端給電型といい右図のような動作になりますので参考まで。

 また 1/4 波長アンテナにラジアルと呼ばれる、人工アースの役目をするものをつけたものが、スリーブ型やアマチュア無線、業務局の基地局用として、多用される GP(グラウンド・プレーン)アンテナになります。

 さらにこのラジアルを変形させていき、円錐にしてしまうとディスコーン型という、超広帯域型になります。そして一番ポピュラーなのは 1/2 波長ダイポールの後方に、反射器およびその前方に導波器をおくと、これまた見慣れたテレビ用の八木アンテナになってしまいます。

 本項文末にアンテナのいろいろなバリエーション図を示します。


  物理的な長さを変えずに共振波長を変えるには

 余談ではありますが、アンテナの物理的長さに制約がある場合、電気的に長さを変えてやることもできます。たとえば長さが足りない場合 1/2 や 1/4λ型等素子の途中に、コイルをいれればよいわけです(右写真参照)。

 よく、違法 CB のアンテナにつかわれているアレです(^_^;)。そのうちエレメント先端にコイルがあるものを、”トップローディング“、中間にあるものを、”センターローディング“、根元にあるのを”ベースローディング“、とそれぞれ呼びます。

 ローディングコイルによるエレメントの短縮は、短波帯のアンテナなどでは比較的よく行われており、もちろん放射効率は下がりますがそれでも、アンテナそ のものをかなり小さくできるメリットが大きいわけです(全体をコイルにすると後述するヘリカルホイップになります)。

 またキャパシティハットと呼ばれる、環状の部材をエレメント先端などに取り付けるのも、共振周波数をより下げる働きがあります。ちょうどキャパシティハットが、地面との間でコンデンサの様に働くためです。これまた違法 CB アンテナや AM ラジオの送信アンテナによく使われています(日本語では容量環、とか言うらしい。お菓子の”スコーン“みたいなわっかが乗っていればそれです<ボカスカ)。

 逆に希望の周波数より長すぎる場合は、コンデンサを直列にいれることで対処できます。このように、アンテナそのものを小型化するのにも、いろいろとアイデアがあるわけです。

アンテナの代表的なバリエーション




  八木アンテナ


 八木アンテナは正式名称「八木・宇田アンテナ」といい日本人の、八木教授と講師の宇田氏によって1926年に発明されました。

 V・UHF におけるこれほど単純な構造の指向性アンテナはなく、画期的発明だったにもかかわらず、当時はその有用性が認められなかった、と言う悲しい経緯があります。

 みなさんよくご存知のテレビアンテナは、世界中どこに行ってもこの八木アンテナです。八木アンテナは構造がシンプルかつ高性能という特徴があり、テレビはもとより通信用としても幅広く普及しています。

 原理上、導波器を増やすことで利得を上げることができ、多いものでは 20 素子超のものが実用化されていて、地デジ化後の一般的なテレビアンテナでは 14〜20 素子が普及してるといってよいでしょう。

 また現在は完全デジタル化してしまいましたが、実はアナログ用 VHF 8 素子八木アンテナは 1ch〜3ch と 4ch〜12ch までのデュアル・バンド構成となっていました(多素子のものも素子数は異なるがデュアル・バンド構成)。

 これは、おのおののバンドの周波数が離れているためで、8 素子のものでは VHF LOW が 3 素子、VHF HIGH が 5 素子として動作するよう設計されています。

 さらに、テレビアンテナではゴースト対策のために、コーナーリフレクターが採用されており、反射器の本数が多いのが特徴です。なお、既述のとおり八木アンテナの構成は、 1/2 波長ダイポールの前後に、導波器と反射器をおいたものとなっています。

 八木アンテナで特徴的なのは、なんといってもその指向性にあると思います。右図のように導波器の方向に利得が良くなっており、反射波を嫌うテレビ受信などに最適、というわけです。

 また図中の下のイラストは、八木アンテナの立体的な指向性をイメージしてもらうために描いたものです。
 このうち図での水平面を E 面、垂直面を H 面と呼びます。なぜ単純に垂直・水平面と呼ばないかというと、アンテナは偏波を変えて使う場合があるため。

 図中、八木アンテナの素子は水平に並んでいますが、これがまさに水平偏波です。
 偏波とは電磁波の電界面のことをいい、ホイップ型などでは垂直偏波となります。なお偏波面を合わせずに通信を行うと、概ね 3dB の差が生じるとも言われています。

 アンテナの利得(ゲイン)は dB で表されますが、例えば※電力比で 3dB と言えば 2 倍、6dB では 4 倍、20 dB では 100 倍となります。また通常ゲインは dB と単に表されるものは、1/2 波長ダイポールを基準の 0dB としてゲイン比を表しています。

  ※無線の世界では通常、電力比として扱います

 これらに対し、dBi と表記されるアイソトロピックゲインは、ダイポールゲインよりも +2.15dB した値となりますので注意が必要です。その基準になるアイソトロピックアンテナとは、指向性が立体的に見ると完全な球となる仮想の理想アンテナです(現実には存在しない)。これに対しダイポールアンテナはドーナツ状の指向性となります。

 八木アンテナの性能を表すのに、利得以外にも前後比と言うものを用います。これは指向性面とその 180゜反対側での利得比を表し、この値が高いほど前後のキレが鋭いと言うことになります。
 さらに指向性を表す場合その利得が最大となる点を 0dB とし、その電力が -3dB となる角度を電力半値角と言い、この電力半値角が狭いほど指向性のキレがよいことになります。

 八木アンテナでは導波器の数が増えるほど利得が増し、前後比も良くなります。さらに電力半値角もどんどん狭まっていくことになります。このあたりは比較的簡単な法則ですので、多素子アンテナの性能指標を知る上での基礎としておぼえておくと便利です。


  位相差給電アンテナ

 これは一見、2 素子の八木かな?とも思えるカタチをしていますが、動作原理は違います。図のように、2 素子とも給電線がつながっており、さらに途中で配線が反転、つまり位相が反転しているのが特徴です。  

 小型な FM ラジオ受信用として、またこれと酷似したアマチュア無線の自作(HB9CV アンテナ)として、ポピュラーな形式です。小型な割に 2 素子八木アンテナよりも、高利得という特徴があります。

 また八木アンテナと類似の形状のため、指向性は非常によく似たものとなっています。実際に作るとなると多少調整が大変な面がありますが、おもしろいアンテナです。
 さらにテレビ受信用等として 3 素子程度のものを、2 パラ(2 つのアンテナをヨコに並べて使う)で使用し、途中に位相器を入れ特定の方位に指向性のヌル点(感度が急激に落ち込む点)を作り、強力な近接ゴースト(いわゆるマルチパス)除去用として実用化されています。


 特に従来のアナログ 1〜3ch になる VHF LOW バンド受信においては、通常のアンテナでは指向性がブロード(電力半値角が広い)なため、ゴースト除去が非常に難しくなっています。
 そこで位相差給電アンテナもしくは、1〜3ch 専用のアンテナが使用されることがありました。
 アナログテレビは既に '11 年に停波してしまいましたが、現在では FM 用の単体アンテナとして位相差給電アンテナの製品が用意されているようです。

 八木アンテナの段落で述べましたが、従来のアナログ・テレビアンテナは 2 バンド構成で、VHF LOW バンドすなわち 1〜3ch のバンドに限れば、性能が低いのが普通です。
 よく送電線の鉄塔や高層ビル・マンションの側で、民放はよく映るが 1〜3ch だけ映りが悪い、という原因はこれにありました。





 ログペリオディックアンテナ


 これは一般の方にはほとんど聞き慣れないアンテナかと思います。構造も特殊なら用途も特殊です(^_^;。
 例えば広帯域にわたる送受信用途である、航空用や自衛隊の短波通信(頻繁に周波数を変えて使うため)などに用いられています。


 一見八木の変形のようにも見えますが、全く動作原理は違います。


 このアンテナは通称”ログペリ“と略されていますが、後述するように自作は非常に難しくなっています。ログペリは正式には、ログペリオディック・ダイポール・アンテナといい、訳すと対数周期型ダイポール・アンテナとなります(LPDA)。

 このログペリの元になったのは、55 年に開発された平板構造自己補対型対数周期型アンテナ、というものが原型で米イリノイ大学を中心に現在のログペリが、開発されたようです。ログペリの特徴として非常に広帯域である、という点があげられるでしょう。

 アンテナの特性としてインピーダンスが非常に重要です。ログペリは 1つ目のエレメントから給電し、さらに1つごとに位相反転給電されています。この給電法の利点は整合器を用いることなく広帯域かつ、単一指向性を得ることができる点です(ロスが少ないのに広帯域と一石二鳥)。

 先の位相差給電アンテナやログペリが単一指向性なのは、このためなのです。

 ログペリの動作原理は図中の数式で表されます。万が一自作する場合この数式に当てはめればまがりなりにも、動作はすると思います。γ(一定)を対数周期の条件、αを自己補対の条件といいますが、私には半分さっぱりサラダわけわかめです(^_^;(死語かとおもいきや未だに使われている!?)。

 しかし、既述の二つの条件がそろうとき、L1 及びそれ以外の素子の電気的特性が、類似になりそのために給電点でのインピーダンスは、広帯域となるのです。昔習った自己相似ですね(^_^;。これを「自己相似の理」というらしいのですが、メチャクチャ難しいので割愛します。

 このアンテナはある周波数に対しその条件に当てはまる、1つの素子のみがアンテナとして動作しますので、八木とは似てもにつ かぬ動作をしていることになります。ただし、指向性が似ているのは八木に類似する素子配列のため、八木と似たような動作条件が結果として発生するからです。

 ログペリは広帯域かつ高利得というメリットのため冒頭で述べたように、広帯域の周波数を扱う用途や定期的に周波数を変更する必要のある、海外向け短波放送などに使用されます。

 市販のものではクリエイトデザインから VHF・UHF 帯のものが発売されています。自衛隊の送信所などへ行くと、一般民家よりもはるかに大きい短波用のログペリを見ることができます(ブームまでトラス構造だったりするから凄い)。
 もちろんローテーターで方位を変えられるようになっていますが、近くで見ると本当に壮大です。




  コーリニアアンテナ

 ここでは予定よりも順番を早めておそらく、みなさんが一番お世話になっている、アンテナをご紹介します。詳細は後述しますが携帯基地局のアンテナは、ほとんどがこの形式です。


 まずアンテナの基礎の最初の段落で、各種アンテナのバリエーションを示しました。その図中で垂直ダイポールというのがあったと思います。
 これを並べて電力合成(基本的には同相合成)したものがコーリニア型アンテナです。


 携帯電話の基地局で使用されるアンテナの多くは、この形式のコーリニアアンテナの一種です。

 このアンテナは利得が非常に高いという反面、自作する場合は調整が大変(複数のエレメントが存在するため)で寸法精度も高く工作しないと、うまく動作しません。図のように 1/2 波長(λ)ダイポールの発展型アンテナなので、垂直ダイポール型と同軸様の素子を用いたタイプがあります。

 通常これらはケースに収められておりエレメントは見えません。一部垂直ダイポール型ではコーナーリフレクターや(かつての NTT で高速沿いに多かった)、メッシュ状のパネル・リフレクターを取り付けたタイプが存在します(これらのエレメントはむき出し)。

 利得を上げるには素子数を増やせば良いのです。同軸型ではインピーダンス整合のために給電部に工夫がいります。ちなみにコーリニア(アレイ)アンテナの、コーリニアとは”同一線上の“という意味です。

 参考までに八木の章でもご紹介した指向性パターンの例を(同軸型コーリニアの場合)、下図に示します。アンテナの指向性すなわち放射特性は送受信とも変わることがありませんので、各用語やそのイメージは下図を参考にしてください。

コーリニアアンテナの放射特性例

  携帯基地局用セクターアンテナ

 このアンテナは既述の垂直ダイポール型・コーリニアアンテナを発展させたものであり、レドーム型は円筒形のカバーを付けたもので基本的には変わりません(偏波ダイバーシティー用のアンテナもあり外観は似ていますが構造は違います)。

 円筒形のレドームは従来のエレメントが露出したものに比べ、風圧荷重を低減できるメリットがあります。また 3G 以降の設備では、800/1500MHz 共用(あるいは更に多バンド共用)のもので直径が、100mmφと小径化が進んでいるのも特徴です。

 実際には図のどちらのものもプリント基板上に、パターン化された 1/2 λダイポール・アンテナ素子を用いることで、生産性を向上させています。

 このアンテナはあまり間近で見ることはないと思いますが、長さが数 mほどもある大きなアンテナです。太さもものにより 100φ〜200φ程度あり、内部は反射板に絶縁体(または誘電体)板を介して、放射エレメントが取り付けられています。

 通常、電力合成以外にもビールチルティング(指向性を下に向ける)のため、位相差合成が行われています。これは隣接セルの干渉波や遠方からの反射波などを排除するためで、FER(フレーム誤り率:バーストエラー)の低減に有効です。

 各エレメント間の電力合成を同相で行った場合は水平方向(垂直面で見た場合)に非常に鋭い指向性を持ちます。垂直面でみたサイドローブは非常に少な く優秀な特性を有しています。また、反射板により水平面の指向性をもたせ、基地局のセクター化に寄与しています。

 ビールチルティングを行う場合通常、この 垂直面のビーム(指向性)が下を向くことになります。ビームチルトには位相差合成で行う電気的と、アンテナそのものを傾ける機械的なものがあります(地形等によっては下向きではなく上向き、という逆機械チルトもあり)。

 なかには 1 セクター用に 2 つのアンテナを用い、合成指向性とすることで指向性を鋭くし、特性を改善したものもあります。この場合他セクターの干渉をより低く押さえることが可能です。

 また NTT DoCoMo の場合、800MHz 及び 1500MHz/2GHz 帯、といった複数バンドのサービスを従来より行っていることから、デュアルもしくはトリプルバンド構成のアンテナ(アンテナは共用)も採用されています。
 場合によっては空間ダイバーシティを基地局側でも行うため、6 本(二本一組が 1 セクタ)のアンテナ素子を用いて、構成された基地局もありました。

 ドコモの基地局で、一見多セクタに見えるものがあるのはこのためです。また、NCC 系でも(PDC 時代の J-PHONE 2本3組アンテナなど)同様のことが行われる場合があります。

 このほか場所によっては他形式のアンテナや、無指向性アンテナ(とくに光張り出し局といった簡易基地局に多い)などが使用されることもあります。

 左の写真は代表的なセクタ用アンテナのスケルトンモデルです。写真をクリックすると大きな画像が見られますので、内部構造がよく解ると思います。

 なかなか中身は見られないと思いますので、気が済むまでじっくりとご覧下さい(^_^;。
セクター用基地局アンテナの放射特性例

  平板状偏波ダイバーシティアンテナ

 このアンテナは比較的少な目な気がしますが、携帯基地局用として使用される平板状のアンテナです。構造的には円形のパッチパターンが縦に2列、多数並ぶ構造となっています。
 従って形式としては後述するフェイズドアレイに非常に似た構造となりますが、同じ携帯基地局用ということでここに掲載します(^_^;)。

 なお NEXNET でもこれとそっくりなアンテナを採用していますが、内部構造は不明です。関係者によると平板状アンテナはこのような、パッチパターン構造の方が多いのではないか?との話があります。


 このアンテナは両面銅箔の誘電体基板上の裏面を、ベタパターンとしてグランドプレーンに。そして前面の銅箔を円形のパッチパターン及び、水平・垂直給電 用のマイクロストリップライン給電線として形成した構造になっています。水平・垂直用の給電部を持つことで、両偏波モードで動作します。やはりプリン ト基板と同様のプロセスで製造できるため、生産性は良くなっています。

 また水平面に指向性を持たせるため、レドームの内側に同じく円形の無給電素子を、配置してあるのが特徴的です。そして2列ある各素子間の給電振幅及び、位相を調整する事で水平面の指向性幅を変えることが出来ます。




  ホイップアンテナ


 ホイップアンテナは日本語では”単一型“と称され携帯電話や、車載用のアンテナはほとんどこの形式です。文頭、アンテナの基礎の部分でご紹介した 1/2 波長ダイポールのうち、先端給電型がホイップ型にあたります。

 ホイップ型にはこのほか主に 1/4 波長や 5/8 波長などが多用されます。5/8 波長を簡易的に位相器(コイル)を介して、多段にしたものなどもありこの場合は高利得化も可能です。
 現代のようにアンテナが内蔵される以前の、収納式だった携帯電話のアンテナは約 3/8 波長付近が多いようです。これはひとえに端末の小型化と、密接な関係があります。

 少なくともムーバ以前の端末には 1/2 波長ホイップが採用されていました。それでも、端末が小型化するにつれてアンテナ自体も、小型化が求められるようになってきたのです。厳密に言えば携帯端末のホイップアンテナは、端末本体のアースとともにアンテナとして動作します(これをイメージアンテナという)。
 つまり端末本体のシールド・ケースや基板上のグランド・パターンが、アンテナのグラウンド(疑似的なアースの役目)の役目をするのです。

 1/2 λ未満の長さでは動作にグランドが必須となるため、アンテナにとって最重要事項とも言えます。
 インピーダンスの整合やアンテナの整合帯域を広く保つためにも重要と言え、世界中で大問題となった旧型 iPhone の体たらくアンテナにも、関連があると言って良いでしょう。

 手に持って使用する端末機なのに、手に持つと放射効率と感度が激減するというからくりは、なんと内蔵アンテナと対で動作するグランド部分(例のスリットのあたりですな〜)がなんと、外装に露出していて手に触れてしまう構造だったため、というトンチンカンなものだったようです(ノv゚o)。


 ヨタ話はこれくらいにしておいて本題に戻ります。動作に必須と書きましたが 1/4 波長〜 1/2 波長未満のアンテナには、アースをとらなければアンテナとして動作しない、と言う条件があるため。

 アースとは接地、すなわち大地に電線をつなぐことを意味します。
しかし携帯端末では接地するわけにはいかないので、人工のアースとして筐体やシールドケースを利用するのです。

 他の 1/4λ形式としては、AM ラジオ送信所のアンテナが該当します。AM ラジオは中波ですから波長が 100m 前後にもなりますが、1/4 波長では当然放射効率もいまいち、打ち上げ角(垂直面指向性)も高くなってしまいます。

 このためカウンターポイズと呼ばれるアースを、垂直に立つ放射エレメ ントに対して放射状に地面にはわせることにより、接地抵抗成分を減少させる手法が用いられます。
 またカウンターポイズとは直接地面に電線を埋め込むのではな く、地面上にはわせることにより大地との静電容量を稼ぎ、容量的なアースをとるものです。


 当然、カウンターポイズは家電品などの保安用アースにはなりませんが、ラジオ受信用や無線機などのアースとしては十分実用になります。もし AM ラジオや短波ラジオの感度を上げたい、と思ったら数 m の電線をアンテナをして用いるとともに、同じくらいの長さの電線を庭などにはわせるだけで受信感度がアップしますのでお試しを。


  ヘリカル・ホイップ


 冒頭でも述べた昔の携帯電話などに採用されていた、収納式アンテナは一見 1 本のアンテナのようですが伸ばしたときは通常のホイップ型として、収納時はヘリカルホイップとして動作していました。

 実は、先端の太くなった部分にはホイップとは分離した、ヘリカル・ホイップという形式のアンテナが取り付けられており接点で切り替わる構造になっていました。
 これは放射エレメント全体がコイルばね状になったもので、非常に短縮率が高く小型化が可能です(実はホイップの写真もヘリカルホイップです(^_^;)。


 そのかわり放射エレメント全体がローディングコイル(短縮コイル)の役目をするため、利得は低く通常ホイップ比で一般的に -3dB 程度と言われています。後述するヘリカル・アンテナとは全く動作原理が違います。




  グラウンド・プレーンアンテナ

 グラウンド・プレーンアンテナは、よく消防署の固定局アンテナや、簡易業務局の基地局アンテナによく使われています。

 構造としてはホイップアンテナにラジアルと呼ばれる、疑似アースの役目をする素子を取り付けた形状となっています。図では 1/4 波長のものを示していますが、このほかにも 5/8 波長や 5/8 波長の放射エレメントが多段(奇数段)になったものなど、実に多彩なバリエーションが存在します。

 インピーダンス整合のため、ラジアルを下方向に向け、角度を付けたものも多く見られます。角度はインピーダンス 50Ωではおおよそ 60゜付近で、アマチュア無線用に多く見られる形式です。

 グラウンド・プレーンは 1/4 波長のものを特に、開発者の名前をとって別名”ブラウン・アンテナ“とも呼ばれます。水平面の指向性が無指向性なので、扱いやすく高利得化も簡単なので広く普及しています。

 このアンテナの変形として任意方向のラジアルに、1/2 波長の素子を放射素子と同じ方向に取り付けた、”ガージオイド“と呼ばれる形式も存在します。これは任意の方向に感度をとりたくない方向がほしい場合などに使用されます。 
 その形状は一見 PHS のアダプティブ・アレイアンテナの出来損ない、とも言える形状をしています。




  ループアンテナ〜円ループ〜

 ループアンテナは文字通り導体を円や四角い形状に(何角形でも良い)、ループさせた構造を持っています。そして意外と身近なところたとえばかつてのポケベルや、AM ラジオなどに用いられているポピュラーなアンテナです。

 右図は基本的な円ループアンテナの構造です。円ループアンテナは円周が 1 波長となっており、文字通り円状のアンテナです。

 ループアンテナも八木型と同じエレメント配列とすることで、単一指向性が得られます。円ループ・アンテナの八木型を特に、龍骨アンテナなどと称することがありますが、これは見た目がまるで龍の背骨のような感じがするからでしょう。

 なおループアンテナのループ形状は、三角(デルタループ)からはじまり、四角形・五角形・六角形なども可能で丸が一番利得が高くなります。

 かつてのポケットベル内蔵のループアンテナは長方形でした。


  AM ラジオの内蔵バーアンテナ


 AM ラジオのうちポケットラジオやラジカセには、バーアンテナと呼ばれるループアンテナの一種が内蔵されています。

 これはフェライトを芯として紙などの絶縁体ボビンに、エレメントをコイル状に巻いたもので、バリコン(可変コンデンサ)とともにコイルとしても働いています。
 受信機において必須となる並列共振回路(同調回路=選局)を形成する重要なもの。

 芯にフェライトを使用するのは、磁界をとらえやすく空心コイルに比べコイルを小型化できるからです。通常のループアンテナと違い電波を磁界として捉えるので、イラストのバーアンテナでは上下方向に 8 の字指向性が出ます。

 空心コイル状のものはステレオ・コンポのチューナー用としてよく付属していますが、ハッキリ言って余り感度は良くありません。こちらは通常のループアンテナ同様、コイルのループ面と直行方向に 8 の字指向性を持ちます。

 ちなみに空心コイルで高性能な AM ラジオ用、ループアンテナを制作する場合一辺を 90 cm 程度とした四角形のボビンに、導線を 20 回ほどループさせるとなかなかの性能が得られます。
 AM ラジオの感度が足りない、とお感じになられる方はぜひお試しください。

 アンテナ端子がないラジオ本体とのカップリングも、直径 10 cm 程度の空心コイルでとりることが可能(バーアンテナのコイルと平行でできるだけ近づける。若干試行錯誤が必要)。アンテナ端子のあるものは当然直結でかまいません。

 AM ラジオ用のループアンテナもバーアンテナも(指向特性は異なるが)、方向を変えることで雑音を排除したりより感度をアップさせたりすることが可能です。

 内蔵バーアンテナの向きが解らない場合は必ず取説に感度の良い方向として、指向性が記載されていますので再確認されるとよいでしょう。



  ヘンテナ


 ヘンテナはアマチュア無線家が開発したループアンテナで、非常にシンプルな構造ながら一説にはおおよそ 3 エレ八木に近い利得を持つと言われている高性能のアンテナです。

 私は自作ヘンテナを航空無線受信用と、地デジ用に 2 本製作してきました。そのシンプルな構造から手間もコストもかからず作れるものとしては、非常に満足していてしっかりと作れば長く使うことができるでしょう。

 実際の性能面でも右写真の FM 用ヘンテナ(昔使っていたもの。約 180x60cm)を例に挙げると、以前使用していた園芸用の棒(緑色のアレ)ダイポール比で確実にシグナルメータ 1〜2 つ分程度は感度がアップしています。

 具体的には弱電界ノイズだらけで満足に受信できなかった NHK 三つ峠と FM 富士(距離約 100km 弱)が、モノラルながらほとんどノイズ無しにまで改善(私も予想外でした)。
 その他、「ジリジリジリ…」といったノイズがからみがちでモノラルでも快適に受信できなかった FM 横浜(距離約 50km 弱)も、「ジリジリ…」ノイズは解消ヽ(´ー`)ノしホワイトノイズもほぼ無しと言った具合で大ざっぱに見積もってもダイポール比で、+3dB 以上はあるだろうことは推測できます(^_^;)。

 冒頭では大きいことを言っていますが、大方 3 エレ以上 5 エレ未満の八木と同等くらいの実力というのが私の感触です。


 ・地デジの簡易アンテナにも最適

 右写真は私が実際に使用していたことのある、地デジ簡易受信用の自作ヘンテナです。

 給電部には取り扱いを考慮し F コネのメスを取り付けてありますが、外す予定がなければ同軸コネクタ直結でかまいません。
 エレメントはφ2mm の真ちゅう棒で(パイプでもかまわない)各接合部はしっかりと半田付けの上、エポキシ系接着剤で固定・防水してあります。

 またへんてこな”足“のようなものは 2 エレ化改造した際のブームで、シングルエレメントで用いる際はアンテナマスト直づけで構いません。

 具体的には東京タワーから約 20q で、東京 MXTV を除く在京キー局+放送大学を極めて良好に受信できました。強電界でなおかつ強いマルチパスが無ければ、ほとんど問題なく実用になるでしょう(8 の字指向性で F/B 比がとれないため)。

 私は以前キー局より弱い MXTV を含めほかの独立 UHF 局を良好に受信するため、当初シングルエレメントで使っていたヘンテナを 2 エレ化改造し 1 年半ほど利用していました(550MHz で設計。各自地元で放送されている物理チャンネルの中心付近にあわせるとよい)。

 2 エレヘンテナはダイポール比で 6dB 強と利得も若干あがり、比較的広いビームをもつので(電力半値角で 70 度程度)複数局を狙うのに都合が良くなっています。更に F/B 比も 11dB 強(ただし設計周波数付近のみ。設計周波数から離れると F/B 比はかなり劣化する)。

 具体的には内部で 2 分配相当(理論的に各チューナへの入力は -3dB 以上減。電力比なのでレベルが半減することになる)となる W チューナーの BD レコへ接続しても十分な利得を確保しています。
 キー局と比較して電界の弱い MX テレビ(3kW)を含め千葉テレビや、テレビ埼玉に関しても十分なレベルを保っており単純な構造の 2 エレとはいえバカにできないな、と再認識させられました。

 自作のできる方なら簡易型の市販アンテナなど、買うのがばかばかしくなるほどホントに単純な構造かつ安価なので不況の強い見方といえるでしょう(ボカスカ)。

 左図はヘンテナの基本概念図でこの形だけ守れば、きちんと動作します。UHF など小型のものでしたら固めの針金や(2mmφ程度のしんちゅう棒などが手軽)、銅単線などだけでもループ構造を作れます。

 比較的大きくなる VHF のものでは写真にあったようにアルファベットの「H」型のような骨組みにループ・エレメントとなる電線などを張れば OK。

 ただし実際に送信に使用するにはシュペルトップと呼ばれる同軸バランなどで整合をとるのがベストです。
 しかしきちんと調整すればバラン無しでも SWR1.1 未満くらいにはできるでしょう(435MHz 帯用製作時の実測で 1.05。調整は給電エレメントとループの接続点を上下させて行う)。

 また受信専用と割り切るのならば未調整でも十分な性能を有しています。

 大昔アナログ VHF テレビ(中電界地域)の室内アンテナの代わりにヘンテナをつないだ際、ヘタな市販の室内アンテナよりもきれいに映ったときの光景が今でも脳裏に焼き付いています(^_^;)。 

 非常に単純に見えますがヘンテナとは非常に不思議な動作原理すら、ハッキリとはわかっていないアンテナなので”ヘンテナ“という呼び名が付きました。一見、垂直偏波のように見えますが実は図のものは水平偏波です。

 よく見てみると、給電されているエレメントは水平です。見た目的にはここから、水平偏波ということをわかっていただけると思います。なお、UHF 帯なら比較的小型になるので頑丈に作れば、モービル用(移動体通信用)にも使用できます。 
 ただし、8 の字の指向性を持つのが多少問題とも言えますが、それでも指向性は非常にゆるいカーブなので回さなくても大きな差し支えはないでしょう。

 水平偏波用は 8 の字指向性ですが垂直偏波用となると、ほぼ無指向性に近くなるので全くと言っていいほど問題ないといえます。




  アレイアンテナ

 アレイアンテナは多数のアンテナ素子を、 1 次元(長手方向)もしくは、2 次元(平面)に配列したもので、特におのおのの電力合成時に、可変位相器(ディレイ・ライン)を挿入したものを、フェイズド・アレイといいます。 

 なかでもフェイズド・アレイは、航空・軍用レーダーによく利用されます。理由は電気的に指向性を可変できるからに他なりません。 

 従来ホーミングアンテナと呼ばれる、パラボラのディッシュ(反射器)を小刻みに動かす方法や、アンテナ全体を動かすことで、指向性を可変していました。しかし、機械的動作ゆえの限界やメンテナンス性の悪さが欠点でした。 
 それを解決するのがフェイズドアレイアンテナで、このアンテナは各素子間の電力合成時の位相次第で、指向性を瞬時に変えられるのです。地対空迎撃ミサイルとして有名なパトリオットのレーダーや、イージス艦・空母などのレーダーアンテナを見ればそれがおわかりになるでしょう。

 このフェイズド・アレイは機械的にアンテナを動かす方法に比べ、極めて高速に指向性を可変できます。しかもすべて電気的に処理さ れるので軽量かつ、可動部分がないため高信頼性です。
 個々の小型アンテナ素子自体には様々な形状があり、詳細は割愛しますがおおよそパターンアンテナか、小型のヘリカル素子、ラジアルラインスロット型等々ざっと、挙げただけでも数種類にのぼります。 

 アンテナ素子を 2 次元的に配置したのが、パトリオットや航空用などの平面アンテナや、BS の平面アンテナ(これは電力合成時の位相が固定)が該当します。さらに、1 次元的に配置するものには、主に船舶用のレーダーなどがあります。 

 船舶用では周囲を 360゜を監視するために 1 次元配列のアンテナ素子を、ぐるぐると機械的に回してやる必要がありますので、見覚えのある方も多いのではないでしょうか?。 

 肝心の電気的に指向性を変える原理は、下図左のように電力合成時に位相をずらすことにより、同相合成する場合に比べ、矢印のように上方向に対し指向性がつくことによります(A/B 素子が 1/2λの間隔のとき)。


 逆に下側の素子の位相を早めれば下向きに、指向性が付くことになります。

 前出の平面 BS アンテナは、この電力合成時の位相が固定されており、通常は見た目より上方に対して指向性が付けてあります(着雪による障害を防ぐため)。またこの合成位相を電気的に可変制御したものがフェイズド・アレイで、こちらは任意の方向に指向性を持たせることができます。
 また、アンテナ素子を2次元配列しているものは構成により、指向性も上下・左右に可変できることになります。

 なお次章のアダプティブ・アレイ・アンテナと似た概念図になりますが、フェイズド・アレイはあくまで、指向性を可変するのが目的であり、指向性のヌル点を任意の方向の作るための、アダプティブ・アレイとは違ってきます。 



  アダプティブ・アレイ・アンテナ

  アダプティブ・アレイ・アンテナは、アレイ・アンテナのなかでも特にマルチパスによるフェージング除去用として、優れた効果を発揮する複合アンテナです。 無線家の方ならおわかりでしょうが、このアンテナは最大比合成のダイバーシティーアンテナの考え方を発展させものです。

 右図(現:ウイルコム)は PHS サービスで使用される、アダプティブ・アレイ・アンテナの一種です。実際にはコーリニアアンテナを複数本用い、アッテネータ(減衰器)および位相器(ディレイライン)を各素子間に挿入した構造となっています。

 このアンテナの特徴はなんと言っても指向性のヌル点(感度が急激に落ち込む点)を、任意の方向に作れるところでしょう。感度はほとんどない、と言っていいほど落ち込みますのでその方向からのマルチパスはないことになります。

 従ってマルチパスの到来方向が一つだけの場合は、原理的にフェージングは発生しないことになります。 

 しかし実際は単純な環境ではないので、その効果は希薄になってしまいます。それでも比較的高所となるロケーションにアンテナを設置する場合、必須ともいえる機能だといえるでしょう。

 地上高が高いと言うことは、遠方の基地局との干渉波、より長周期の反射波など、悪条件が重なります。見通しが伸びることは、V/UHF 帯において重要ですが、デジタル通信ではむやみに地上高だけをあげても FER(フレーム誤り率:バーストエラー)が増えるのでこれがまた、やっかいなのです。

 実際はまずビームチルティングが携帯基地局同様、行われています。これはアンテナの垂直面の指向性を下に向けることで、FER を改善しようとするものです。特に隣接セル干渉および、ビルなどの反射波(マルチパス)に有効さとれます。




 ■身近なアンテナのいろいろ-2

  放送に使用されるアンテナ

 ここでは少し趣向を変えて身近なアンテナをいくつか取り上げたいと思います。携帯に続いてみなさんがお世話になっているものと言えば、ラジオ・テレビに代表される放送があるでしょう。

 電波による放送には多種多様のアンテナが使用されています。しかも一般的に間近で目にすることはないところに建っているため、そ の形式すらご存じない方も多いかと思います。
 ここではなるべく図解や写真を交えて、わかりやすい構成にしたいと考えています。


  テレビ・FM 局のアンテナ

 みなさんはおそらく東京タワーをご存じだと思います。あのタワーには上から NHK〜民放という具合にテレビやラジオ放送用、さらには番組中継受信用パラボラ架台なども。
 その他各種公共通信用として警視庁・消防庁などから、業務無線用の通信用アンテナも多数取り付けられています。


  代表的な放送用アンテナ

 テレビや FM ラジオ局のアンテナとして、ポピュラーなのが”スーパー・ターンスタイル・アンテナ“です。写真のようにチョウの羽根を広げたようなエレメント形状をしています(スーパーターンスタイルは商品名)。

 このチョウの羽根のようなエレメントは 2 つ一組で使うのが普通です。指向性はループ型ですからループエレメントと直交する方向 8 の字形であり、1/2 λダイポールと等価です。従ってこれを、分配・直交して 2 つ 1 組として使用することで無指向性としていました。

 あまりよい写真がなくて申し訳ないのですが、上記写真のうち細くなっている部分にスーパーターンスタイル・アンテナが多数並んでいるのがわかると思います。

 左の写真は FM 用のパネル・ダイポールアンテナです。通常ダイポールは 8 の字の指向性を持ちますので、パネルリフレクターとともに 4 面用いることで無指向性とします。他のスーパーターンスタイル(これは2個クロスで使用)、ダイポールともすべて組み合わせて使います。

 ちなみにこのダイポールの形状は、実に様々で半円形をした円偏波のものや、まるで T の字にみえるスラント・ダイポールなどがあります。日本では、スーパーターンスタイルか、パネル・ダイポールというのが、おおよその相場ではないでしょうか。

 次は AM ラジオ局のポール型(円筒型)アンテナです。写真のものは在京局のもので高さは 150m あります(TBS 戸田送信所)。 

 もちろん自立型ではなくたくさんの支線(ステー)が、碍子とともに放射状に張られているのが特徴となっています。
 AM 局の送信アンテナはこの形式が、最もポピュラーと言ってよく地方へ行くと田んぼの中などにいきなり現れるので、ご覧になったことのある方もおられるのではないでしょうか。

 写真の形式は 1/2 波長で、それより低い周波数のものは大きくなりすぎるため 1/4 波長で、厳重なアースがカウンターポイズとして張られています(1/4 波長アンテナはイメージ・アンテナがないと動作しないため)。

 なお AM 送信所のそばでは電話・テレビなどにに放送が入ってしまう、という電磁波障害(インターフェア)が発生することもあります(アンプの入力に手で触れるだけでもラジオが聴けてしまうことや、接触不良の端子やボリュームでなんちゃって鉱石検波されてしまうことも…)。

 また恐ろしいことにアンテナ塔の直下へ行くと、電源を接続しない蛍光灯が光り出すという怪現象(^_^;)も発生する模様です。それは AM 在京局の出力が 100kW と強力なためで、決してポルターガイスト現象の類ではありませんので、念のため(^_^;)。



  パラボラアンアンテナ
(カセグレンアンテナ)

  パラボラアンテナは構造形式により二つに分類されます。一つは一時放射器(A)を焦点にとりつけた通常のパラボラ・アンテナ。
 そして右図 A の部分に二次反射器をもちいたタイプを特にカセグレン・アンテナといいます。

 どちらの基本構造も放射器(A)の後方に右図 F 点(又は凸面二次反射器※)を焦点とした、放物曲面をもつ反射鏡を置く構造。

  ※二次反射器表面は F 点より僅かに主反射鏡に寄りになる

 もちろん見ての通りこれまでご紹介した、”共振型“とは全く違う動作です。


  一見分かりづらい両者の違い

 通常のパラボラ・アンテナとカセグレンアンテナの主な違いは、図中の A に放射器をおくか二次反射器をおくかです(既述の通り厳密には位置は異なる)。

 そしてカセグレン型の場合は主反射鏡 B の中心部に、直接放射器を配置するかコールゲートホーンと呼ばれる筒状の部材がつくものに大別できるでしょう。
 前者の場合は必ず主反射鏡に穴(放射器となる電磁ホーンの開口部)があいているのがポイントです。

 一般的に BS/CS の受信用(オフセット型)として広く知られていますが、他にもレーダー用、電波望遠鏡、宇宙通信用、地上のマイクロ波回線用などその超高利得、という特徴を生かした用途によく用いられます。

 ※オフセット型は、反射鏡の一部を切り取った形。詳しくは次項参照のこと。

 再度冒頭のイラスト図をご覧ください。A は放射器で BS/CS 用の場合は通常、ここにダウンコンバーター(信号を扱いやすい低い周波数に変換する)および、LNA(ローノイズ・アンプ)が内蔵されます。
 F を焦点とする放物曲線をもつ主反射鏡が B です(大型の送信用では直接導波管が接続されるものも多い)。

 放射器から出た電波は反射鏡で反射し開口部から、平面波として空中を伝搬していきます。非常に単純な構造ですがアンテナ指向性のキレを示す電力半値角は、小径反射鏡でもわずか 3゜程度のものもあります。
 このことからいかに鋭い指向性を持っているかを、うかがい知ることができるでしょう。

 また一般的に数十 dB 以上という利得もさることながら、前後比も非常に高い性能をマークしています。このためパラボラを背中どうしで向かい合わせて、全く同じ周波数で中継するという芸当も可能になってしまいます(通常アンテナでは回り込みが起こり実用にならない)。

 これは”白黒合わせ“と呼ばれ、テレビや電話回線等のマイクロ波中継網に使用されていました。
 通常、電波による中継を行う場合は回り込みや相互干渉をさけるため、異なる周波数を用います。
 しかしパラボラのような前後比が極めて高性能なアンテナを用いると、同一周波数による中継が可能になってしまうのです(地デジの SFN のようなトリッキーな手段も必要ないのがポイント)。

 パラボラの動作原理を理解するには、懐中電灯の構造をイメージしていただけると良いでしょう。懐中電灯は点光源である豆電球の光を反射鏡で一方向に集めることで、明るく面的に対象物を照らします。

 パラボラアンテナの動作原理も光を電波に置き換えるだけで、まったくと言って良いほど同じ動作であることが子供でも理解可能でしょう^ ^;。

  オフセット・アンテナ

 オフセット型パラボラアンテナはパラボラ・アンテナから反射鏡の一部を切り取った形状をしています。

 それに伴い焦点も移動するため、右図のような構成になりなんといってもその特徴は、開口率の高さではないでしょうか。

 通常、パラボラアンテナは開口部を放射器が覆う形になります。しかしオフセット型では開口部になにもないため、開口率(影となる部分がないため)が高くなり小型でも高性能なアンテナが実現できるのです。

 その形状から自然と指向性が上を向くため、仰角の高い衛星をねらう場合でも反射鏡の角度が直角に近くなる、という特徴も持ち合わせています。このため積雪などに強くなると言う利点もあり、そのまま BS/CS 用アンテナに活かされています。

 さらにオフセット型は可般型の SNG(衛星ニュース取材)地球局や、NTT の屋上に設置されている DYNET(地上電話回線の迂回・代替用)地球局のアンテナとしてよく用いられていますし、小型の衛星の送受信用にはよく形式が使用されています。

 逆に放送衛星の場合ロールオフと言われる、近隣諸国への漏れ電波を低減するため鏡面修正型オフセットアンテナを用います。これは指向性ビーム修正用に二次反射鏡の鏡面にわずかなデコボコをもたせ、日本列島をちょうどカバーするようなビーム形状に細工したものです。

 鏡面修正アンテナの特徴としてロールオフを低減できるとともに、アンテナの放射効率もアップするのでサービスエリア内の受信品質の向上にも寄与します。




  電磁ホーン

 電磁ホーンは身近なところでは車載用のレーダー探知機や、NTT の中継回線用として広く使われています。放送局が取材用に使用する小型 FPU にも一部使用されています。

 電磁ホーンは右図のように文字通りラッパのようなホーン状のもので、共振型アンテナとは全く違いますが、広義のアンテナとしてとらえてよいと思います。
 形状は角形もしくは円形のラッパ状で全国のドライバーにとって、憎き?ねずみとりのセンサ部も電磁ホーンが採用されています(^_^;)。

 マイクロ波にしか使えませんが小型でそこそこ利得がとれるので、至るところに使われているといってよいでしょう。

 仰々しい鉄塔の建っている NTT の営業所の屋上などがあればぜひご覧ください。運が良ければそこにはパラボラアンテナに混じって、大きなラッパにフタをしたようなものがあるのではないでしょうか。それが電磁ホーンの発展型であるホーンリフレクター・アンテナです。

 文末右側にある写真ではパラボラの右側に二つならんだ、扇形のもの。実際にはかなりの大きさがあり利得も、マイクロ波専用とはいえかなりとれます。
 構造的には電磁ホーンに焦点が来るよう、放物面をもった反射鏡を取り付けた形状。

 フタをしたように見えるのは、保護のためにレドームがあるためです。この型式の著名なものとしては宇宙の”背景放射“を初めてとらえた、ベル研の電波望遠鏡があげられるでしょう(横に寝かせた形状なのが特徴的だった)。

 文末左図にホーンリフレクタアンテナの簡単な構造を示します。




  スリーブ・アンテ


 スリーブアンテナは 1/4λホイップアンテナに、同じく 1/4 λのスリーブ状(袖)のアース素子を付けたものです。主に業務局のアンテナや航空用として管制塔の上等に建っているもの(筒状のレドーム付き)等に多く採用されています。

 かつて一世を風靡?した有名なトランクリッド型・自動車電話アンテナにも、スリーブアンテナが直列に 2 つ入っています(送受信とダイバーシティ受信用)

 名前の由来は洋服の袖のようなアース素子形状から来ています。図をごらんの通り形式的にはホイップなのですが、その形状から電気的な動作は 1/2 波長ダイポールと変わりません。

 1/4 波長ホイップと比較してアース素子がある分帯域が広くとれ、打ち上げ角が低いという(垂直面指向性)特徴があります。従って利得は必要ないが安定した動作が求められる用途に多用されるのです。

 またアマチュア用としては超簡易アンテナとして、同軸ケーブルの外皮をむき芯線を上側の放射素子に、外側に折り返した編組線をスリーブとして加工 するだけで動作する、なんちゃってスリーブ・アンテナというものがあげられるでしょう。

 特に災害時や引っ越し直後等の”緊急用・応急アンテナ“としての存在も知られています(^_^;)。

 つまりカッターやはさみだけあれば、同軸ケーブルだけでアンテナが作れるわけです。緊急時など、なにも部材がない場合には単なる 1/2 波長ダイポールよりも再現性がよいのでおすすめです。

 サバイバル?アンテナとして頭の片隅においておくと、もしかしたら役に立つときがくるかもしれません(^_^;)。




  ディスコーンアンテナ


 ディスコーン・アンテナはディスク(円盤)・とコーン(円錐)を組み合わせた素子を持つアンテナです。このアンテナには他形式と比較して超広帯域で送受信ができる、という特徴があるためもっぱら自衛隊や民間のなどの航空用として、または広帯域受信機用として市販されています。

 通常共振型アンテナでは固有の共振周波数以外では使用できません。

 そしてアンテナ素子が棒状の場合、その直径や表面積が大きい方が共振・整合する帯域を広くとれる、という特徴があります(短縮率も高くなる)。

 この考え方を拡張していき上側のエレメントを円盤に、アースとなるエレメントを円錐状にしたのがディスコーンです。こうすることでインピーダンスを広帯域に渡り一定に保つことができるのです。

 共振型アンテナにとって素子がきちんと共振するということも重要ですが、それとあわせてインピーダンス整合がとれている、ということも非常に重要です。インピーダンス整合がとれていないと、不要輻射(不要な電波成分)が大きくなってしまったりと良いことはありません。

 見てくれは壊れたカサのオバケみたいですが、超広帯域で使えるという高性能なアンテナなのです。ただし垂直面の指向性を見ると、打ち上げ角が下を向くため遠距離通信には不向きです。




  バイコニカル・アンテナ


 バイコニカルアンテナは双円錐型と呼ばれ、円錐を頂点どうしで二つつなぎ合わせたような形をしています。

 比較的整合帯域が広くフェージングに強い特徴があるため、ラジオカー(ラジオ局の中継車)やアマチュアの移動局用として使われています。

 フェージングに対する強さはおそらく、ホイップ型などと比べ素子の自体が、車両の移動に伴う振動や風圧でブレたり変形しないことにも起因するものと、思慮されます(^_^;)。(形状も、関係あるかも)

 アンテナ形状は骨組みだけのものがほとんどですが、移動用でなければ完全な面を持った、円錐を使った方が高性能なものが期待できます(作るのは非常に大変ですが)。

 またアンテナ自体の表面積はホイップやダイポールに比べ、かなり大きくなりますので広い帯域にわたり安定した低SWR を確保できます。故にワイド FM(周波数偏移が大きい FM ラジオ様のものを指す)に適しています。そのことからラジオカーに(ワイド FM を使用するため)採用されているものと思われます。

 もし整合帯域の狭いアンテナを、ワイド FM で使うと変調に伴う、周波数の偏移により AM(振幅変調)成分が僅かながらに発生し好ましくないのです。これは整合する帯域が狭いと SWR 特性を描いたグラフの頂点が(綺麗な二次曲線を描きます)鋭くとがったようになるためです。




  番外編・方向探知用のアンテナ:サーキュラ・アレイ・アンテナ


 サーキュラ・アレイ・アンテナは短波において電気的に指向性の切り替えられる、巨大なアンテナです。

 写真ではわかりづらいと思いますが、支柱の上に円周状にワイヤーが貼られており、これらすべてが組み合わされアンテナとして動作します。

 主に短波における受信用として用いられ特に東西冷戦を象徴する無線施設、通称”像のオリ“としての方が有名かもしれません。写真は KDD(現 KDDI)の受信所のものですが、もちろん米軍の通信所にも存在します。

 指向性を任意の方向に作ることが出来るので、ある離れた 2 地点でこのアンテナを使い双曲線航法に似た原理を用いれば、電波の発信源をある程度探ることが出来ます。

 従って敵国の通信傍受や短波による海外放送のモニターなどに使われているのです。このアンテナの巨大さを認識するには、写真中央上部に映り込んでいる通信機器施設のある建物(白ぽいもの)と、アンテナとの大きさを比較すると良いでしょう。

 このアンテナがいかに巨大で広大な土地を必要とするか、一目でわかると思います。




  アドコックアンテナ

 アドコックアンテナは主に電監(電気通信監理局)の V/UHF 方向探査などに使用される特殊なアンテナです。もし街でこのアンテナが付いたバンを見かけたら、それは電監の移動電測車の可能性があります(^_^;)。

  ※某 PS や某役所屋上など公共施設にも分散設置されている。
   この手の施設の屋上アンテナをよく観察すると面白いかも!?


 このアンテナを用いアダプティブアレイのように、指向性のヌル点に探査対象の信号を落とし込むか(どんなに鋭い指向性のアンテナを使ってもかが知れいてるので)、複数地点で目的波の位相差を精密に、測定する等して電波の到来方向及び、おおまかな発信源の位置などを算出します。

 例えば関東では専用線で結ばれた複数ある、監視用基地局からの探査によりごくわずかな時間で、発信源をある程度特定することが出来ます。しかしこれはあくまで理想的な条件下でのことで、発信源を完全な点として絞り込むことは不可能です。

 現実問題としてマンガやスパイ映画に出てくるようなことは不可能です。しかし発信源をある大きさの”円“として特定した後、人力と小型測定器により更に場所を絞り込み、最後の最後に発信源を特定することは不可能ではありません。
 ただしそれにはある程度の人間と、時間が必要なのです。最後のツメは経験と足で稼ぐということになります。




 AWX

 AWX は元来 HF 帯の広帯域アンテナとして開発されたもので、All-Wave-X が名の由来のようです。
 写真は私が某誌に発表した 145/435MHz 2 バンドもので、エレメント 1 辺が 50cm 弱程度と小さな物です(基本は 1 辺 1/4λ)。

 ちょうどエレメントは「><」のような感じで(下図参照)1 辺 1/4λで90゜に曲げたものを用いています。この状態で主成分が水平偏波モードとなっており、単純にこれを右 90゜回転させると垂直偏波モードとしても使うことができます(芯線接続側エレメントを上にする)。

 実際の指向性は緩い 8 の字カーブで写真の前後に水平偏波成分が(1/2 λダイポールに似た感じ)、左右方向に垂直偏波成分が出ていて両方を合わせると疑似無指向性のような感じとして使えます(^_^;)。(いづれも MMANA シュミレーションによる)

 写真のアンテナの場合 3.5mm^2 というアホみたいに極太の銅単線をエレメントに用いたためか、大型台風のほぼ直撃に遭っても全く問題ありませんでした(^_^;)。
 この他に小径のアルミパイプを用いて製作した 50MHz 用(エレメント 1 辺 1.5m 程度)もありますが、こちらはローカル局のコン柱上(高台にある 15m もの)でやはり同様の台風に持ちこたえています。

 ローバンド用としてはその構造上、製作が困難ですが 50MHz 以上でしたら比較的手軽に作れますので皆さんもひとついかがでしょうか?。ヘンテナと並びお手軽系自作アンテナとしては、特に超広帯域なのが特に気に入っています。

 前出の 2 バンドものはイケナイことに AR8600MK2SE に接続されているので、主にエアバンド用として活躍しておりますが政府専用機が羽田から上がって、房総沖へ抜けるまで快適に追いかけることができました。
 ディスコーンほどではありませんが、UHF エアバンドもそこそこ使えています。ハムバンド用ではなくV・U エアバンド用に設計すればもう少し良い物ができる可能性もあります(ボカスカ)。

 50MHz 用では全バンドで 1.5 以下の良好な SWR 特性を保ち、HB9CV と互角か場合によってそれ以上?との評価を頂いています。少なくとも市販の 50/145/430MHz 3 バンド GP がゴミに思える位良いというローカル局の話です(^_^;)。

 送信用に使う場合のバランなどですが、無しでも気持ちいいくらいに SWR は広範囲で落ちてくれます。というよりアマチュアはバランを気にしすぎな気がします。
 もちろん、TVI などの面ではもちろんあった方が理想的です。しかし実用上はそれによるロスの方がわたくし的には気になってしまうのですが・・・。

  ・ヘンテナと並び地デジ簡易アンテナとしてお勧め!

 最後となりますがヘンテナと並び、地デジ用の簡易アンテナとしても再現性が良くお勧めしておきます。1 辺をその地域でのバンド中心付近の波長にあわせて設計すれば、超広帯域なので本当に良く拾ってくれます。

 感触としてはシングルヘンテナと互角か、それ以上の実力を持っていると言って良いでしょう。小型にまとまるのでφ2mm 程度のしんちゅうパイプなどでエレメントを工作し、支柱を塩ビパイプなどで製作すれば 10 年くらいは平気で持つものが作れそうです。

 ただし他形式のアンテナと比較して周囲の金属の影響を受けやすいので、支持パイプを 1/2λ〜1λ程度と長めにつくり固定用金具はもとより、マストや屋根などとも十分はなしてやることが大切です。

 指向性はやはりゆるい 8 の字特性なので、強力なマルチパスの多い地域では受信が不安定となる可能性がありますので、八木タイプにアレンジするなどして各自工夫されるとよいでしょう。




  コーナーリフレクタアンテナ

 これは筆者オリジナルの地デジ用コーナーリフレクタです。市販の八木アンテナはほぼ反射器にコーナーリフレクタが採用されていますが、これはごく単純な 1/2λダイポール構成のコーナーリフレクタ・アンテナをベースにしていますので、放射器と反射器との距離が相当異なります。

 また八木アンテナと比較すると材料を選べば構造が単純化され、強度のとれる構造での製作が容易となるメリットがあります。
 八木のコーナーリフレクタの構造を考えたとき、市販品のような構造をとることは設計・加工とも相当面倒なものです(腕のある方は八木でチャレンジされてもよいでしょう)。

 ですからヘンテナ並みとはいきませんが、手軽に製作できるものの中では F/B 比が良いので簡易ながら障害対策が可能なため、マルチパスの多い地区(都市部など)で特にお勧めです。

 反射器は幅 270mm ほどは必要でメッシュより、図のとおり水平方向に金属棒があるだけの方が若干特性が良くなります(MMANA シュミレーションによる)。また図は基本構造のみなので各自、強風などに耐えうる構造を工夫してみてください。

 エレメントが放射器となるダイポールだけではなく、導波器も 1 本追加されているのがポイントでこれだけで F/B 比が 6dB 近く稼げる、という目論見です。

 私は反射器には手元にあった \100 均一の、焼き網(魚やもちを焼くためのもの)をエレメントには φ2mm しんちゅう棒を利用、他も全てジャンクでまかなったため \0 で製作できましたが、全て購入するにしても大した値段にはならないでしょう。

  ※ダイソーのバーベキュー用焼き網は、1 枚で 300×600mm
   ほどのサイズのものがあるのでより安上がりでお勧め^ ^;

 ちなみに製作したアンテナは '11 年秋に日本列島を襲った台風の直撃(瞬間最大風速 30m/sec 以上を記録)にもビクともしなかったことを付け加えておきます。


 上図は中心周波数を 550MHz で設計したときのシュミレーション(54mm 間隔メッシュ反射器のとき。以降の数値は同条件による)結果で、14 エレ八木に劣らない F/B 比と言って良いくらいです。実際のバンド幅を想定し設計周波数を中心とした 80MHz 幅で計算しても、11〜20.6dB となかなかの値となっています。

 垂直面の特性では八木に劣りますが 3 エレ相当構成であることを考慮すれば水平面はなかなかではないでしょうか?。

 利得は 4.89〜6.07dB とショボイ値ですが、実際に W チューナーのレコを直列で 2 台接続しても全くレベル・品質などに問題が起きないことを確認しています(デジタルとアナログチューナーも入っていることを考慮すると 5 分配相当)。ですから強電界での小規模な共聴システムであれば十分に対応できる性能を持っていると言って良いでしょう(東京タワーから 20km 強の地点で使用)。

 地デジ用コーナーリフレクタアンテナの製作は右図の寸法を参考にしてください。

 エレメントはそれぞれ φ2mm のしんちゅう棒で、導波器が 223mm、放射器が 267mm 長となります。放射器は実際にはダイポールエレメントのため、左右均等に 2 分割するわけですが給電部の絶縁マージン(2mm 幅)を考慮して、122.5mm×2 本で加工すると良いでしょう。

 また値は全て中心周波数を 550MHz としたときのものですから、これと大きく異なる場合は必ず各自地域での放送バンド中心に合わせて、エレメント長の再計算が必要となります。

 反射器は寸法上 271mm となっていますが材料の都合上、270mm 角の焼き網を 2 枚利用しています(十数 mm 間隔のメッシュ)。設計周波数より高い分にはそのままの寸法で支障ありませんが、放送バンド下限付近では F/B 比が劣化する恐れがありますから、1/2 λを目安に反射器の幅がそれ以上となるものが必要となるので注意されてください。

 もちろん焼き網は鉄製でサビに弱いため、しっかりと塗装を行ってから屋根に設置しています。

 また私は交換が容易なよう F 型コネクタを給電部に用いていますが、交換する予定がなければ同軸直結で構いません。構造図にある各エレメントなどを支えるブーム部分には、適当な径の塩ビパイプを利用しています。

 各部には適宜ボルト・ナット結合での組み立て、焼き網は構造がヤワなため塗装前に適宜てんこ盛りの半田とエポキシ系接着剤で補強、焼き網同士の結合部には仮止めを兼ねて数カ所ステン針金で締結していますので参考まで。

 このアンテナは市販の簡易型地デジアンテナや、素子数の少ない八木同様指向性が広いためある程度、分散した送信所を同時に狙うときにも都合が良くなっています。

 前出のヘンテナや AWX と比較すると、若干製作には手間暇がかかりますがそれだけの価値はあると自負しています^ ^;。


 地デジ用アンテナの設計指針

 大げさなタイトルになってしまいましたが、概ね下記のような事項を守れば実用的なアンテナが、設計可能でしょう。

・帯域幅は概ね 80〜100MHz 程度必要、SWR は受信専用の為 2〜3 と高くて構わない
・通常八木、ループ系八木なども特定 ch 専用なら可。ただし全チャンネル受信用には適さない

 設計指針項目のうち二番目の理由は、指向性特性が設計周波数を離れると途端にめちゃくちゃになるため。

 例えばせっかく F/B 比のキレをよく設計しても、設計周波数から離れるに従いバックサイドの方のメインローブが大きくなっていき、前後逆転してしまうことがよくあります。
 通常の八木ならコーナーリフレクタを応用するなど、反射器を工夫すれば F/B 比の低下を防ぐ設計も可能でしょう。

 言うまでもなく無指向性アンテナや 8 の字指向性など、多素子でないシンプルなアンテナでは二番目の指針は、スルーして構いません。





 最後まで読破いただき、誠にありがとうございます。アンテナは我々の身近にありしかも誰しもが利用していながら、最もわかりづらいものの一つです。本稿でこれまでにご紹介したもののみにとどまらず、まだまだ他に何種類ものアンテナが世の中には存在し、そして活躍してます。

 近年では内蔵アンテナ式のダメ(少なくともビミョーなことは確実)な機器も増えたため(ボカスカ)、その存在すら気づかずに使用している場合もあるでしょう。
 本稿により僅かながらでもアンテナに関心を持っていただき、その存在を意識しながら無線機器を利用していただければ幸いです。

 今後ももしアンテナについて更に知りたいことや、疑問があれば掲示板などで気軽にご質問ください。


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