デジタル放送方式の実際と FPD テレビ
〜デジタル放送・市販 FPD TV のメリットと問題点〜


 このページでは、'00 年 12 月 01 日から開始された BS デジタル放送及び、'03 年 12 月 01 日から開始さた地上波デジタルテレビ放送について、放送方式の概要や現在判明している実状(裏側含む)など掲載しています。
 BS 及び地上波デジタル放送は対応のテレビや専用チューナーなどを使用することにより受信出来ます。

 現在 BS/地上波デジタルに関しては、ほとんどのメーカーから両放送に対応したテレビやレコーダー/チューナーなどが発売されており、すっかり低廉化が進みました。

 家庭用のテレビ/レコーダ等はほとんどの場合、BS/地上波デジタルとも両対応となっていますが、安価な機器では地デジのみ対応の物もあり注意が必要です。




  コラム・独断的(^_^;)テレビ今昔物語!?
  〜偉大だった CRT から FPD へ・OLED にようやく光明を見るか!?〜

 前置きとしてはだらだらとして非常に長いのですが、真の映像美を楽しむためのアプローチをいくつか独断と偏見によりまとめてみました(ボカスカ)。
 某黒いラベルのインスタントコーヒーのように、”違いの解る“方にはご納得していただけるものと思います(謎)。時代によるディスプレイデバイスの変遷とともに、切って切って斬りまくりまする。


  映像信号の各種補完・補正の功罪と歴史

 悲しいことですが、放送/業務用 CRT モニタと違い民生用のテレビには「マルチスキャン」という概念が、いつしか忘れ去られてついに絶滅しまいました。
 昨今のような FPD テレビが流行る前の、CRT 式ハイビジョンテレビであってもそのような商品ばかりで、悲惨極まりない状況が 10 年近く続き、そしてついに民生用 CRT ハイビジョンテレビは消滅してしまいました。

 CRT 全盛期にはマルチスキャン対応のものもありましたが、'90 年代末になるといつしか設計が大変でコストもかさむ偏向回路簡素化のための、インチキデジタル処理として一定の水平・垂直走査周波数で、SD/HD あらゆるソースを表示できるよう細工されることが当然となりました(インチキアップコンバートと言うべきか)。

 そのため高級なテレビほど、SD がマトモに映らないという本末転倒(あるいはわざと HD の良さをより際だたせるためか)な状態が続いています。放送局で使用する SD>HD アップコンバータは放送用 HD マスターモニタ(\2M くらいします)で見ても本当に、走査線数が増えるだけといった印象の至極まともなものです(アタリマエ)。

 しかし例えばかつての SONY@DRC のように、偽 HD 信号の”ねつ造装置“では映像信号に余計な小細工を大量に施すもので、”奇麗になる“とかいうのはまやかしでしかありません。
 地デジ完全移行の数年前まで売られていた 4:3 CRT の”高級“と称するテレビには、いらないねつ造装置が内蔵されてたためまるで、水戸黄門にでてくる「越後屋」(悪代官とつるむ極悪商人)の商品じゃないかと思うほど映りが劣悪です(常にフォトショップでボケるフィルタをかけたような映り…)。

 このような”いらない“変換処理は本来、絶対的な画素数とその表示位置が決まっている FPD 用の技術です。簡単に言えば PC 液晶モニタでいうところの、「スケーリング」というヤツと根底は同種できれいになるわけがないのです。
 PC 上で画像処理をかじった方ならばお解りでしょう。例えば VGA 解像度しかない画像を縦横倍の画素(総画素数で 4 倍)に変換・拡張したところで、元画像の画質を上回ると言うことは理論上絶対にあり得ません。

 言い換えれば○ロビデオの超薄消しモザイク部は、どうがんばってももとの画像に戻ることはあり得ませんが、これも”いらない“変換処理で画質が向上しない理由と似たような理屈なのです。

 結局のところ超解像だの、なんだのと言ってもあくまで計算上の”推定“による、ねつ造信号には違いありません(ボカスカ)。メーカーの言うことは絶対に鵜呑みにしてはならないのです!!。

 とにかく、なにもいじらずソースのままの”垂直・水平走査周波数“、すなわち原フォーマットのままで見るのが一番画質がいのに、ご都合主義のためにないがしろにされてしまったわけです。


  昔話はともかく現状の FPD はどうか?…

 ひどいことにこれらの悪いところは FPD ハイビジョンテレビにも受け継がれてしまい、素性のよいはずの HD でさえ本来の信号フォーマットのまま見ることができなくなっています。
 具体的には各種の補正、補完の他 IP 変換(インターレス/プログレッシブ変換)が必ず搭載されているからです。これも縦横に LPF をかけたようなボケがでてしまう処理なので、百害あって一利無しとまでは言いませんが”実害“の方が大きく、本末転倒と言わざるを得ません。

 いくら LCD の駆動方式とのマッチングが悪いから、といってもユーザ側で OFF にすることすら不能な”いらない“処理は画質を損なうフォーマット変換に他ならないからです。


  各社 FPD テレビの現状について

 各社の比較的安売りされている液晶も WXGA パネル程度(とくに 32 インチ以下)が主流で、縦方向の画素数(走査線数)は、720p 相当となる 768 画素程度と少ないものがほとんどになっています。とくにマジハイビジョンと呼べるものは上位機種で、サイズ的には中型以上が多くなっています。
 FPD に限っては”間引き“のない総画素数約 200 万画素※レベルのものがほしいところです(※多くは 720p=約百万画素相当)。

 これはハイビジョンはフル規格で 1920x1080 (約 200 万画素)あるためで、少なくともソースの帯域幅を考慮すれば 1440x1080 は欲しい(地デジレベル)と言えます。現状で満足する FPD は”フル HD“あるいは”フルスペック“と称するもののみです。
 通称フルスペック/フル HD などと言われるものは元来スタジオ規格で、輝度信号の帯域幅(水平解像度に直結する)で約 30MHz にもなり、主に BS デジタルハイビジョンか Blue-ray などが該当します。
 また最低限 1440x1080 画素(約 150 万画素相当)が必要な理由は、一番よく見られている地デジハイビジョンや、屋外収録素材の画素数と一致し輝度信号の帯域幅で 24MHz(地デジ相当)程度はあるためです。

 念を押しておきますが画素数のみで考えるのは危険です。映像信号と言うものは既述のソース種別のみならず伝送・編集・加工などによっても帯域幅すなわち、実質的な解像度が変化してしまうものだからです。

 ですから映像信号は可能な限り帯域幅という尺度で物事を考える必要があるのです。アナログ的思考ですが”FPD“のように画素数だけにとらわれていると、画質の意味する本質と言うのがぼやけてしまいます。

 もちろんカメラによっても、画質は大きく変わります。例えば全く同じ画素数のカメラであっても、とくに細部に関わる高域信号の変調度が異なると結果としての”映り“が異なってきます。
 安物の民生用単板カメラと、放送・業務用 3 板式のものの差などは解りやすい例ではないでしょうか。

 ということで、あくまで映像信号の基本は帯域幅と”走査線数“であると言うことを念頭に置いてください。


  プラズマと液晶・唯一マトモな気がする OLED

 かつてはよくプラズマと LCD どちらが良いか質問受けたものですが、明るい部屋で見ることが多い現状を踏まえれば、総じて LCD の方がパッと見た目には良く映ります。色数やコントラスト比などスペックだけでは分からないものがあるので、買う場合は必ず自分の目で確かめてからの方がよいでしょう。

 また残念ながら表示原理的に LCD(プラズマ含む)は以下の点で CRT に劣り、暗部再現性に限り OLED がそれを凌駕する特性を持っています。

  ・1.動画特性(反応速度)
  ・2.色再現性
  ・3.ダイナミックレンジ及び階調再現の正確さ

 1. の動画特性については触れるまでもないかもしれませんが、液晶は比較的動画解像度が低く自発光デバイスである OLED(PDP を含む)の方がこの点だけはよくなっています。

 この点もやれ反応速度が ○ms だとか言っても、CRT のそれには遠く及びません(桁が違うのです)。※OLED に限れば後述するメモリ駆動の問題点のみが懸念点だろう

 そもそも LCD メーカ各社の表示基準が不明確かつバラバラなので、カタログスペックだけを盲信するのは危険と言わざるを得ないでしょう。とくに液晶の反応速度の多くは中間調でのスペックを示しており、これだけを見て判断するのは問題です(サギに騙されるタイプ!?)。

 極端な話、テレシネ(素材は 24 ないし 30 フレーム/秒相当)されたソースなら液晶でもそこそこイケる感じで見れますが、一般的なソースでは改善され尽くしたとはいえまだまだ、といったところです(元々の動き情報がまったく違うのですから当然<ボカスカ)。
 また一般的なソースでは高速スクロールするテロップ、動きの速いスポーツなどをよく見ていれば倍速 120Hz 駆動とかガンガン宣伝していても、従来よりは CRT のそれに近づいたと言うだけです(バックライトの点滅制御やねつ造サブフィールドの挿入にすぎない)。

 また機種やシーンによっては動きがぎこちなくなる場合があり、正直なところ微妙と言わざるを得ません(NR の類もハッキリ言っていらない!)。

  ※わたくし的にはくだらないねつ造処理より、1 ライン毎に黒を挿入し疑似
   インターレース表示できたほうがよほどマシに映るだろうと思うのですが(ボカスカ)

 いずれにせよ動体視力が良くなければ気にならないかもしれませんが、CRT ではアタリマエだったことがことごとく通用しないのが LCD など既存の FPD なのです。

 2.液晶・プラズマ・OLED ともやれ何億色だとかカタログでのたまっていても、原理的にソースの色域中無限色、無限階調(いずれもアナログ駆動なので)とも言える CRT には絶対かないません。PDP に至っては疑似輪郭現象低減のために、ディザリングも併用されていましたから真の色が表示されている、とは言い難いのです(パネル駆動が 8bit 未満だった安物 LCD も同様ディザリングによる疑似フルカラー表示処理>例:6bit 駆動@26 万色パネルなど。10bit 駆動を謳う場合でも所詮はディザリング処理が入ります♪)。

 また LCD の場合原理的に低輝度な信号ほど色があせてしまい、薄暗いシーンではほとんどの色がグレー寄り(あるいはダークグレー)にしか映らなくなるという致命的な特性がありますが、気づいている方は映像のプロフェッショナルか各専門家や私のようなヘンタイ・レベルのマニアくらいでしょう(ボカスカ)。

 これは LCD の表示原理そのものに問題があるわけですが、低輝度になるほど彩度が低下してしまう故、暗部の色彩がグレーがかってしまい全体的に、色に深みのないいまいちな映りにしかならないのです。

 この点だけは自発光デバイスである OLED(※RGB 発光パネルに限る)に分があり、原理的には暗部のみに限ればその特性は CRT を上回ります。CRT は真空管であるため、暗電流という問題があるためです(映像信号のないところでも輝度が完全な 0 にならない)。

 ただし特に 3 原色(青色 LED と赤・緑の蛍光体を使う高演色の白色 LED ではない)LED をバックライトに使う液晶では色再現範囲(色域)そのものは原理的に広くとれます。しかし暗部の彩度低下の改善にはならないばかりか、ソースの映像信号そのものの制限を受けてしまいます。

 なぜならば規格上の色再現範囲はそれより狭いからで、例えばハイビジョンの規格自体が CRT の特性(CRT の RGB 三原色蛍光体よる色域・ITU-R 709 による)に合わせられているからに他なりません。そのため色域の広いパネルを使ったテレビであっても基本的には、”規格“に添った表示結果となるよう処理されているのです。

 規格以上に色域を広げるような処理も一部にはありますが、結局は偽の色を表示することになり元来の高画質とはかけ離れてしまいます(シャープの 4 原色パネルも同様)。

 結局 4K@HDR やスーパー・ハイビジョン(8K)などのように、ソースの根本的なフォーマットが変わらないとほとんど意味を成さないのです。
 例えばハイビジョンより広い色域をもつ、Adobe RGB 規格データ(その他ではデジタル・シネマ等々)を扱う PC などで真価を発揮することができます(現在試験放送中のスーパーハイビジョンでは基本的に広色域なフォーマットとなる)。

 3. は特に雪原のような高輝度かつ微妙な階調の被写体が飛び気味だったり(ただべったりと真っ白くなる。安物ほどひどい)、とハイライト部の再現性がやや低い点です。また髪の毛や映画の暗いシーンなどで、”黒“が黒く映らずグレーぽくなってしまう点などが挙げられます。

 原理上 LCD では漆黒のような真っ黒は表現しづらい上、奇麗な黒髪一本一本までハッキリ見える繊細さに欠け髪のつやなどもダイナミックレンジが狭いため、いまひとつリアルさが出ません(髪の毛がただ黒っぽくべたっとしてしまう。汚らしい!?ギャル系でしたら明るい色なのでそれなりに映ります<ボカスカ)。

 これらは小振幅の信号のうちとくに暗い階調の再現性が、CRT や OLED など自発光デバイスより劣る(原理上 LCD は CRT 比で 1 桁以上悪い)ためなのですが、こればかりはバックライトが LED になってもどうしようもありません。
 したがって現状では黒や暗いシーンについては原理上、PDP<OLED の順に分があると言っていいでしょう。※OLED は同じ供給元のパネルであっても、ドライバや前処理の LSI で大きく表示結果が異なるので要注意。

 また FPD に施されている、画像処理の素性を見るのに適するのが背広などの生地(テクスチャー)で、ダメなものだとある程度アップにならないとのっぺりと映ってしまい、へんてこな背広に見えてしまいます(ボカスカ)。このことは微妙な再現性が劣るということに他なりません(主に I/P 変換や各種ねつ造処理による弊害)。

 総合的な画質面での違いを一言に集約すると、FPD は立体感に乏しいと言うことに尽きます。あらゆる特性がバランスするからこそ 2D である画面に”立体感“を見いだすわけですが、例えば液晶でも実際問題として 4K×2K(現行 HD の 4 倍の画素数※)くらいになってくるとグッと立体感が出てきます(ボカスカ)。

  ※「解像度」の定義
    解像度とは縦又は横方向における、単位分解能。TV システムでは縦又は横に
   白線・黒線それぞれ 1 本ずつと計数する(フィルムでは黒白一組で 1 本と計数)。
   したがって HD が 4K になり画素数が 4 倍になっても、”解像度“は約 2 倍だ。
     4 倍にするには 8K、すなわちスーパーハイビジョンの出番となる♪。一般紙、
   雑誌(某 RL 誌まで…)、各商業サイトの記事に至るまで、錯誤が著しく嘆かわしい。
   ぜひドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール」でも見て、精進して欲しい^ ^;。

 最後に自発光型デバイスのうち OLED(有機 EL)の一部に関しては、CRT 様の画質でなおかつ更に高精細なパネルが実用化しています。そして将来的には俗に言うマイクロ LED(無機 LED=フツー の LED)にも、そのことが言えるのです。

 現状では確かにそれぞれとても奇麗かつ自然に映りますが、最終製品による差異が激しいのが玉に瑕です。
 OLED の普及品ではスマートホンなどの小型パネルが最も多く出回っていて近年、LG 製(※後述)パネルを用いた大型テレビが国内各社からも発売されるようになりました。(国産の中型パネルはほとんど業務用のみで残念!。)

 また非常に紛らわしいのですが、同じ OLED でも小型の三星製が 3 原色発光のパネルなのに対し、LG 製(※)の大型パネルは白色発光パネル+カラーフィルタ構成なのが玉に瑕です。

 なぜなら LCD の項で述べたように、原理的には低輝度域になるほど彩度が落ちてしまう問題が解決されない上、色再現性そのものも一般的な LCD を大きく上回るものではないためです。

 やはり理想を言えば、ソニーの放送・業務用 OLED パネルのように、3 原色発光+マイクロ・キャビティ(色純度を上げるための構造的工夫)が、わたくし的にも望ましいと考えます。

 民生用として活用されていないのが、極めて遺憾ではありますがソニー製 OLED パネルでは、このほか開口率の高いトップ・エミッション構造である、と言うことにも注目すべきでしょう。その他、個人的には我が国の JOLED 社が世界に先駆けて開発した、印刷法(※)による製造方法に注目しています^ ^;。

  ※こちらの中型パネルもほとんど業務用途でしか供給されていない。
   低コスト化の鍵を握っている。

 OLED やマイクロ LED を除くと残念ながら、LCD や PDP といった従来からの”FPD“は画質が CRT の諸特性全てを上回ることは原理的にあり得ません。


  まとめ

 いろいろとつまらないごたくを並べてきましたが、現状の FPD 製品に関しては既述の”フルスペック“/”フルハイビジョン“と称される上級機種(概ね液晶で 32・37 型以上、一部 24 型程度以上)以外、お勧めできるものは一切ありません。

 結局ダウンコンバートしている安物(主に WSXGA レベル)の FPD では、斜め線がギザギザになってしまう場合や輪郭が不自然という(そもそも輪郭強調がきつくアナログ風に言えばリンキングがでたようになっている)弊害があり真の高画質とは言い難いからです
 つまり、実際に出てくる画はハイビジョンでも、NTSC でもない中途半端なものなのです(”SD なのに横長“の CRT が流行った '90 年代にちなみあえて”ハイビジョン対応テレビ“と言いたい)。

 あえて今風に言えば”なんちゃってハイビジョン“テレビに他なりません!。


  業界サイドが隠す(<言えるわけがない)真実

 現在、映像信号に含まれる色や明るさなどの情報を、唯一正しく表示できる CRT が全滅に近い状態です(カメラの映像信号そのものが CRT を前提に設計されている、といった方が適切か)。各方式の FPD ハイビジョンテレビも、各社の改善努力により日々進歩していますが既述の通り OLED を除けば CRT のそれには遠く及ばないのが現状です。

 画素数云々だけでは語れない微妙な階調の再現性や、それに伴う画の質感・立体感など総合的に見たリアリティーがまるで違うのです。
 ただ製作サイド(とくにパッケージメディア製作)では FPD が普及してきた現状を踏まえ、あくまで映像信号測定器のごとく正確に映る CRT モニタと少し狂って映ってしまう”FPD“モニタを併用し、”実際に見られている環境“を想定し、それでもより良く映るよう腐心しているのです。

 現場によっては SONY の OLED マスターモニタなどを用いています。なかなか素人には手が出せないお値段ですが、確かに素晴らしいものです。

 専門用語の解る方のためにあえて書くとすれば、液晶はダイナミックレンジが RGB 各 1ch あたり 8bit 未満の分解能しかないのです(液晶そのものの物性による)。
 安物にドライバの bit 数が低いものが多いのは制御が難しいためで、素のガンマ特性はハイライト部と暗部付近のリニアリティが悪く、かなり水平方向へ寝たようなカーブを描いています(ハイライト及び暗部の階調差が出にくい)。

 もちろんそのままでは使えないので、逆特性のガンマ補正をかけていますが”物性“そのものは変えることができません。その他”黒“が本当の黒にならずダークグレーぽく浮いてしまうのも液晶そのものは、光シャッターのように働くだけで背後にあるバックライトの光がわずかながら漏れてしまうからで、原理上どうしようもありません。

 この点に関しては部分的に発光輝度を制御できる LED バックライト(CCFL は画面全体の均一点灯しかできない)が有利で、かなりの改善が可能なものの画素単位の制御はできませんから、根本的解決にはなりません。

 プラズマも階調再現・制御はサブフィールド法によるものですし、自発光デバイスながら原理的に”全く光らない“という制御が不可能故、コントラスト比では CRT はおろか液晶にも劣るわけです。
 これは表示素子の放電、発光開始電圧に明確なしきい値を持っているためで、蛍光灯が電球のように完全な滅灯状態から全点灯まで、無段階制御できないのと同じ理由です。
 また前項とも重複しますが既存 FPD の主観的動画特性が頭打ちになったのには、根本的かつ決定的な理由があるのです。スペックだけは CRT のそれに近くなっているのに、なぜ動画のブレが目立つのか?。

 これは FPD のメモリ駆動方式というものに問題があり、一言で言えば FPD はパラパラマンガ方式であるという点に尽きるでしょう。つまり前フィールドが表示されたまま、ごく短時間のうちに次フィールドに書き換えられてしまうので、人間様の目の残像特性が悪さをして”ブレ“を感じてしまうのです(※OLED であっても駆動方式が変わらない限り同様)。

 これではいくら反応速度を上げていっても無意味となるので、各社競ってねつ造サブフィールドの作成に励んでいたわけです(ボカスカ)。しかし逆にねつ造度が増すほど、動きが不自然になったり遅延が問題となったり、と本末転倒になるのは言うまでもありません。

 逆に CRT はインパルス駆動なので言うならば、暗闇で動く被写体へ連続的にストロボをあてていくようなもの(OLED も元来は同様の特性)。つまり電子ビームの走査によって得られる画像は、蛍光体の残光特性によってごく短期間のみストロボのように”一瞬“発光・表示するだけ。

 タイミング的にはまさに FPD と逆の表示方法。人間様の目が元来もつ残像特性と相まって、たかが 60i という荒く空間的に間引かれた画像(※)であっても、スムーズかつ自然な動きとして脳に捉えられるのです。

メモリ駆動・インパルス駆動の概念図
インパルス駆動のほうが人間の目の特性をうまく活用し速い動きでも自然に再現できる

  ※人間の目にはよろしくない特性として、動きに対する解像度低下がある。
   しかし結果的にとはいえ間引かれた画で、十分な画質に見えるという合理的方式
   なのが、放送方式として主流になっている 60i の特徴だ。
    逆に静止画表示時には垂直解像度が低下したり、絵柄によりフリッカーを生ず
   るため向かない側面もある(特に文字や図形)。
    このため PC の世界は CRT であっても伝統的にノンインターレース、すなわち
   プログレッシブ・スキャンが用いられてきた経緯がある。
    欲張って双方のいいとこどりをしようとしても、現状 FPD のような I/P 変換はボ
   ケによって質感を損なうため、本末転倒である。
    根本的にフォーマットを変え 60p とするしか解法はない。もちろん民生用 OLED
   も残念ながら I/P 変換のおまけ付き!。


 また民生用ハイビジョンテレビではわざと、肌色をきれいに見せるため色相を狂わしてあるものが多いようです(例としてみな酔ったようにやたらと赤っぽいものがあったりする)。

  ※どうしても肌色のみ不自然だ、という方は取説を参照して”肌色補正“や、
    これに準ずる調整項目をいじるとよいだろう。メーカのお仕着せ機能も、
    困ったものだ。

 本物の高画質を突き詰めるとこういうつまらない処理や誇張のない、”モニタ“がますます欲しくなりますが民生用ビデオモニタという商品ジャンル自体が絶滅してしまったので、本質に気づいたとしても通常は妥協するしかありません。

 それでもどうしても”納得できない“場合、”真実の画“が映る CRT モニタは大型 FPD テレビが数台〜数十台買えてしまうような代物ですが、業務・放送用のそれを購入するしかありません(私自身がそうせざるを得なかった<ボカスカ)。

 ハッキリ言ってテレビより安い PC 用 LCD モニタで DVI-D(※HDCP 対応必須)や HDMI 入力対応のもののほうが、ねつ造処理が極小である分素直に映ってしまいますから予算が無い方には、こちらを推奨します(個人用 TV の代わりとしては大きさも十分でしょう)。

 ただし DVI-D の場合は接続機器側に RGB 出力モードがあること、更にモニタにもよりますが出力階調の補正が必要となるのがポイントです。これは PC で用いられる RGB 信号と、映像機器で扱われる信号の微妙な差異によるもの。

  ※RGB 各チャンネルあたり 0〜255(8bit フルスケール)をフルに扱うのが PC 流。
    規格上使えない領域があり一見、半端な範囲を扱うのが映像機器の取り決め。

 もしも PC モニタなどを利用していて「どうも黒の締まりが悪すぎる」、「白が真っ白くならずくすんでいる」といった場合は接続機器やモニタの取説を熟読し正しく設定されるとよいでしょう。


 最も民生品に”本物“を求めるな等とと言われそうですが、実際問題電波の飛びが悪いアンテナ内蔵(設計者はなげいている!)の携帯電話と並び、”ホンモノ“の道具が民生品から又一つ消え失せるのではないか、と危惧してしまいます(謎)。

 とにかく一言で言えばあらゆる面で CRT に劣る FPD で、高画質だのハイビジョンだの騒いでいるメーカーの宣伝文句は、まやかしでしかないのですからちゃんちゃらおかしいのです。
 最も、ショボイデジタル放送の劣化ノイズが目立ちにくい、という”不名誉“なメリットが FPD にはありますが… ┐(´ー`)┌。

 また、一般論としては被写体が若い娘ならそれほど問題ありませんが(そもそもテレビ用メイク自体濃いし HD では若い子でも肌荒れ等があると目立つ)、ある程度年齢を召した方はアップだと気分が悪くなることもあるので、ハイビジョンで見るのもどうかと思います(超ボカスカ)。

 古いコピーですが「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに(更にアラがキョーレツに目立つ!?)」、映ってしまうのがハイビジョンなのです(女優さんには残酷な映り!)。

 SD ではよほど良いシステムでないと、化粧ののり具合や肌の具合までは解りませんでしたが、HD では否応無しにそれを見せつけられます(^_^;)。ようは女性も映像システムも”薄化粧“かつすっぴんが”見れる“ものが良い、ということに尽きるのではないでしょうか。

  ※ハイビジョンの呼称は、日本独自の HDTV(High Definition TV)愛称です。
   外国の方には通じませんので、「ハイディフェニッションティーヴィー」と説明
   しましょう(=高精細度テレビ)。
    また一部、ハイビジョン=デジタルだと思いこんでいる人もいますが、MUSE は
   処理はデジタル・伝送のみアナログというハイブリッド式だったのです。
    放送は '07 年秋に終了しましたが、トリビア的におぼえておくべきでしょう
   (※サンプル値アナログ伝送)。


 蛇足ながらねつ造でないものと言えば、近年ありがちな旧作(35mm フィルム収録ならかなりよい結果が得られる)の、HD リマスター作品と称するものならば、かつては見ることのできなかった細部のディティールや、豊かな色彩・グラデを楽しむことができるでしょう。

 もっとも、これはディスプレイ・デバイスとは直接関わりはありませんので、悪しからず。




  BS デジタルの放送方式について


 それでは本題のデジタル BS・ハイビジョンの放送方式について、解説したいと思います。まず、以下に規格概要を示します。

表−1 衛星デジタル放送伝送方式
画像/音声符号化方式
MPEG-2 VIDEO(MP@ML)/MPEG2- Audio(AAC)
多重化方式
MPEG-2 Systems
変調方式
2/3 TC8PSK・QPSK・BPSK
※降雨時などに切り替え可
誤り訂正符号
RS+トレリス復号 or 畳み込み符号化
シンボルレート(Mbaud)
28.8(最大値)
帯域幅
<34.5MHz
伝送制御
あり
情報レート(Mbps)
約51
所要 C/N 高階層
     低階層
9.6dB
4.3dB
1/2 中継器あたりの
情報ビットレート
25.5Mbps
サービス例 デジタル HDTV
           データサービス
22.5Mbps
2.0Mbps

 チャンネルプランは後述の表−2を参照されてください。

 また伝送制御信号は、降雨時に受信品質の維持ができなくなった場合に、伝送誤りに強い変調方式へ切り替えるためなどに使用されます(画質はワンセグ並みに低下する)。

 画質についての具体的な評価ですが、NTSC に関してはデジタル CS よりは上です。ブロックノイズなどの、動画像劣化は比較的少ないでしょう(NTSC 相当の伝送モードは、マルチ編成時程度に限りられますが)。

 そして気になるハイビジョンですが、非常に残念なことに未だ劣化が目立ちやすくなっています。実際に実用化後と、伝送試験での動画像を見てきましたので、そのときの様子を次章で描写します(^_^;)。




  MPEG-2 による動画像劣化の具体例

 激しい動きや輝度変化のある、アクションシーンやライブステージのシーンでは、盛大にブロックノイズがでており悲惨な状態でした。一番ひどいブロックノイズが発生していたのは確か、電気グルーヴのライブ素材でした。

 激しい動きとともに、夜のように暗いステージ全体にストロボのような、素早く点滅する照明が繰り返しあてられる、という非常に極端な絵柄です。タダのブロックノイズだけではなく、画面の所々にベタ塗り市松模様が現れてしまう、というとても放送に耐えられないような状態でした(デジタル RGB と同じ組み合わせの、青、赤、黄、緑、黄緑、紫、黒、白)。

 テスト用の動画像には含まれていませんでしたが、スタジアムなどで群衆がうごめくようなシーンなどでも、比較的劣化が目立ちやすいものと思います。

 このように、MPEG による動画像圧縮では、細かい絵柄、激しい動き、激しい輝度変化(又はシーンチェンジ)、等に弱いと言えます。

 ここでいうブロックノイズとは、符号化の際に 8x8 画素などで行われる、処理単位(ブロック)の形状が現れるノイズです。これは主に、DCT に割り当てられるビットレートが不足してくると、隣接する処理ブロックとの境界部分の差異が徐々に大きくなり、その形状が現れるものです。
 具体的には、画像劣化した部分がモザイク状になります。

 また、モスキートノイズとはまるで、蚊の大群が飛び交っているような、もやもやしたノイズのことです。実際の圧縮動画像では、特に激しく動く物体にまとわりつくように、この劣化が発生します。
 さらにテロップの文字や人物の輪郭など、境界線がハッキリしたものの周囲に現れる、エッジノイズというのもあります。

 このような劣化は、JPEG 画像の圧縮率をあげたり、単に画像を拡大するだけでも容易に確認できますが、これと似た性質のものです。下記に BS デジタルハイビジョン放送で実際に起きた、劣化画像例を示します。

BS デジタルハイビジョンでの実際の劣化画像例
ブロックノイズ モスキートノイズ

 現状ではこのような劣化は防ぎようがなく、テレビ局側での対策として NHK 技研で伺った、「劣化のでにくい画作りを心がけます」、という一言を私は忘れられません。
 具体的には、カメラのパンをゆっくりにするとか非常に消極的なもので、根本的な伝送レート改善ができない苦悩を強く感じました。実際の放送でも、ライブステージなどでは特に、劣化が大きく目立ちます。
 先のブロックノイズは背景に、モスキートノイズは人物にまとわりつくように出たりします。なかでも動きの激しい被写体などは、絵画の点描法のごとくバラバラに、分解したかのように見えたりします(ボカスカ)。

 具体的に劣化の解りやすい番組をご紹介しますと、テレ東系列の「空から日本を見てみよう」(毎週木曜 21:00〜)がお勧めです。引きの画で空撮してくれるので盛大な劣化ノイズを定常的に確認する事ができます(未放送地域の方 ゴメンナサイ)。
 この番組を見ても劣化ノイズが解らない方は、視力検査や眼科医の診断を受けて下さい(ボカスカ)。

 また NTSC ではありますが同じ MPEG-2 で記録されている DVD で、具体的に動画像劣化の解りやすいソフト(NTSC ですが)がありますので、ご紹介します。まず、”モーニング娘。“のビデオクリップ集「映像 ザ・モーニング娘。ベスト 10」中の、一曲目がお勧めです(激古っ)。

 まず初期のメンバーが、花園をバックにして歌うシーンがあるのですが、背景の揺れる花や草の間に、モスキートノイズを見ることができます(スローにするとわかりやすくなります<超ボカスカ)。

 さらに、急速なフェードイン・フェードアウトがあるのですが、よく見ているとそのときにも盛大に劣化ノイズが出ているのが解ります。

 動体視力が良くないと確認しづらいですが、ブロックノイズがはっきりと確認できるフレームもあります。ですから、画質に厳しい映像マニア御用達?と言っても過言ではないでしょう。これ一枚で自然画による、圧縮動画像の評価が(特にデコーダ)存分にできます(^_^;)。

 また、シーンの変わり目でスローやコマ送りをしていると、「おやっ!?」と思うようなものすごい劣化ノイズに出くわすので、ヘタなテスト用ディスクを買うより、おもしろいかもしれません。

 でも、モー娘。ファンの方々、くれぐれも気を悪くなさらないでくださいネ。決して他意はなくて、初期メンバーは本当に好きでした。




  MPEG-2 による HDTV 動画像劣化低減への展望

 2003 年の NHK 技研公開で、非常に気になる展示がありました。それは、受信機側は既存のままでエンコーダ(送出側)のみの改善で、大幅に動画像の劣化を低減できる MPEG-2 符号化技術です。

 実際に HDTV 標準動画像での劣化具合を見てきましたが、既存方式では盛大に劣化が出るような絵柄でも(アップの人物の背景に、水しぶきが飛ぶ等)、その効果をハッキリと確認することができました。
 しかも、展示は地上波デジタルを見据えて、15Mbps でのものでしたから大したものです。BS デジタルでは約 22Mbps ですから、十分効果が期待できます。

 これは「画像構造適応選択」と、「マクロブロック符号量最小による動きベクトル検出」、という手法で簡単に書くと、通常ヘッダ、動きベクトル、DCT 等で構成される MPEG-2 ストリームのうち、オーバーヘッドと呼ばれるヘッダ、動きベクトル部分を適応的処理により大幅に低減、伝送レートを実際に画像を構成する DCT 成分に十分に割り当てる、というものです。

 従来方式での、符号発生量グラフを見ると DCT 成分よりもほとんどがヘッダと動きベクトルデータによってしめられていることが解ります。受信機側の検証さえ済めば、既存の BS デジタルにも適用できるそうですから、これは非常に興味深いのと同時に、実用化の期待される技術だと思います。



  残念かつ物足らないデジタル放送の音質

 これは一部の方は既にお気づきかと思いますが、デジタル放送の音声方式はサブバンド符号化方式に分類される、音声圧縮技術(AAC)が使用されています。
 MPEG AUDIO に比較すれば、チャンネル間のレート融通が出来る等、改良はされていますが 2ch ステレオ時・320Kbps 超でさえ、ちゃんとしたシステムで試聴すると今ひとつな音しか出てきません。

 ここにも、”デジタル=高品質“のウソが存在します。放送に限って言えば、アナログ BS の B モード音声(DAT に近い)以外、画質・音質ともまやかしばかりです。

 これらは、近年の DVD 映画タイトル等にもいえることですが、やれ”高音質“だの、5.1ch だのなんだのとメリットを謳われても、実際に出てくる音が安物 FM チューナー未満のような、ダイナミックレンジの狭い音では”デジタル“の文字が泣いています(LD の非圧縮デジタル音声は素晴らしかった)。

 確かにアナログ放送と比較すれば、一聴した感じ F 特はよく聞こえますが、ただそれだけの非常につまらない音です。細かい微妙な音が潰れ気味で、繊細さがまるでありません。
 せめて、聴感上既存 FM ラジオ放送(高級チューナーで受信時)くらいの感じは欲しいところ。

 音声コーデックに関していえば、最低限 MD 並み(分類上、トランスフォーム符号化・標準 300Kbps でもマトモな音)の音質は欲しかったとつくづく思います。もっとも、”イマドキ“の低レート MP3 で満足してしまうような輩や、音に無関心な一般人にはそれでも、高音質!?に聞こえるのでしょうけど(ボカスカ)。




  BS デジタルのチャンネルプランと送出機器

 下記に各局のチャンネルプランを示します。なお、テレビに表示される ch 番号(3 桁のサービス ID)とは直接関係ありません。あくまで、どのトランスポンダにどの放送が乗っているかの一覧です。

 通常、同系列局はリモコンのチャンネル番号が地上波と同じになるよう、在京キー局系列では考慮されているため意識する必要はありません。

表−2 デジタル BS のチャンネルプラン
BS1  ビーエス朝日(テレ朝系)・ジャパンデジタルコミュニケーションズ(TBS 系)・DATA
BS3  日本衛星放送(WOWOW PRIME)・ビー・エスジャパン(テレ東系)・DATA
BS5  WOWOW LIVE・WOWOW CINEMA
BS7  スターチャンネル 2・スターチャンネル 3・BS アニマックス・ディズニーチャンネル(SD)
BS9  ビーエスイレブン・スターチャンネル 1・トゥエルビ・DATA
BS11 FOX BS238・BS スカパー!・放送大学(ラジオ有)
BS13 ビーエス日本(日テレ系)・ビーエスフジ(フジ系)・DATA
BS15 NHK BS-1・BS-プレミアム・DATA
BS19 グリーンチャンネル・J SPORTS 1・J SPORTS 2
BS21 IMAGICA BS・J SPORTS 3・J SPORTS 4
BS23 BS 釣りビジョン・日本映画専門チャンネル・D-Life
※ BS21/23 '12-03/01 から開始。

 BS デジタル放送ではデータ放送が行われ、対応した受信機ではいつでもニュースや天気予報等(あるいは番組に連動したデータ放送)を参照できるようにっています。さらにデジタル放送としては初?の試みである、階層化伝送も行われ降雨時における画質劣化(低 C/N で受信できる代わりに低画質となる。NHK のみ)、放送中断を最小限に抑えるよう工夫がなされています。

 各種レコーダ等では常識になっている、EPG(電子番組ガイド)も行われています。

 残念なことにかつて数十 ch あったラジオ放送は、あまりの不採算のため全ての局が撤退しており受信不可能となっています。本当に残念でなりません(強いて言えば放送大学のみが唯一復活)。

 その他多くの方がご存知と思いますが、NHK のアナログ BS ハイビジョン(MUSE)が'07 年 09 月 30 日をもって終了してしまいました。スタジオ規格より劣るものの破綻(圧縮劣化による)しない唯一のハイビジョン放送が、ついに消えてしまったのです。

 また '11 年 4 月に NHK-BS が再編され、BS-1 と BS-プレミアムの 2ch のみとなりました(そのかわり BS-1 を HD 化)。わたくし的には BS-1 は SD のままでよいので、BS-hi をドーンとフルトラポン(1 中継器の帯域をフルに使う)でやって欲しかったと感じます。
 45Mbps もあればいくら、ロング GOP の MPEG-2 とはいえ、”ほぼ“マトモな画になりますからヽ(´ー`)ノ(自爆)。理想を言えばキリがないですが、現実的に考えて最低 35 Mbps は欲しいところです。
 電波行政というのは、まさに理想と現実のギャップを画に描いたような、理不尽さをはらんでいます。各デジタル放送では日常的に、マヌケな破綻画像を目にしないことはないのに、役人はそこそこ映るのならそれで十分だろうと言う・・・。

 NHK 技研エンジニアに伺った、これらの”嘆き“を私は一生忘れることは出来ません。

 それから現在のハイビジョン放送についてですが、送出には HDCAM/SR もしくは HD-5HD や DVCPRO-HD が主に使用されています(一部各方式混在のビデオサーバー送出もあるが、収録やファイリングには当然 VCR を使う)。
 某局の友達は、D-5 なんてやめてくれ〜!(^_^;)、と言っていましたが私も、信頼性?と運用の一貫性から 1/2 インチ HDCAM に一本化してほしいと願っています。(フル規格で行くならすでに HDCAM SR ですね)

 少なくとも屋外での収録はほとんど HDCAM によるものか、片手で持てるような小型の HDV です(安い番組では全体がコレの場合も普通)。さすがに予算があるのか NHK ではニュース素材も大昔から HDCAM 収録の場合が多く、民放との違いを見せつけています(地方局など予算がなく HD ロケ素材は少ない)。

 いずれの方式も、HDTV 信号を DCT 圧縮して 1/2 インチ・カセットに記録することにはかわりないのですが、圧縮率とその運用性に様々な違いがあります。HDCAM はもともと NTSC のデジタル・ベータカムをベースに作られたため、圧縮率は約 1/7 とやや高いもののとくに地デジとのマッチングが良く、カメラ部の出来の良さと相まって必要十分であると言えるでしょう(きちんとしたモニタなら HDV と HDCAM 差は解ります)。

 D-5HD はこれまた NTSC コンポジット・デジタル VCR である、D-3 をベースとして開発された D-5(SD 用)を基に、HD コーデックを組み合わせたものです(圧縮率は約 1/4.5)。ただし記録密度の関係でテープスピードも倍になっているため、記録時間も短く消費電力も大きくなってしまいます。

 市場投入からしばらくは圧縮率が低いため HDCAM より画質では有利だったものの、既に古い規格で運用範囲は限定されると言っていいでしょう(^_^;。それでも昔は画質重視の番組製作などで送出用として、HD D-5 でマスターを製作することもあったそうです。

 それも今は昔。これからは番組交換・CM 搬入標準になった HDCAM SR ですねヽ(´ー`)ノ(SONY ファンですみません)。既にデジタル・シネマ・システムが 35mm フィルムの置き換えとして CM や、メジャーな映画作品の制作に使用されているもので、約 1/2 という非常に低い圧縮率なのが特徴でしょう(約 440Mbps)。
 放送用としては MPEG-4/AVC スタジオプロファイルを初めて用いたことでも話題となりましたが、見た目としてとはいえ”ロスレス“を謳うあたりにソニーの自信が感じられます。

 また細かいことを言えば音声トラックも 5.1ch 放送などに対応するため、多チャンネル構成となっていますし記録レートを倍増(約880Mbps)することで、4:4:4 記録にも対応するのがポイントでしょう。

 通常は 4:2:2 なので色差信号の帯域が、輝度と比較して 1/2 なわけですがこれを間引かない(理論的に RGB 記録同等の帯域幅=情報量)ので、合成処理などの祭輪郭が奇麗に抜けるなどの特徴があります。

 他にも、D-6 という 19mm テープ幅カセット(D1/D2 と同様)を使用した、フルビット(非圧縮)の記録の VCR もありますが、各局への納入・運用状況は不明です。あれだけ劣化するデジタルハイビジョン放送のためには、不必要ではないかと感じてしまいます。

 最後に余談ではありますが、松下の DVCPRO-HD という規格も主に TBS 系列の報道部などから蔓延し、様々なプロダクションにも導入(政治的理由)されていたりします。TV 放送では 1280x1080 モードが用いられていますが、どうにもこうにもカメラ部のアラが目立ちすぎて嫌いです。(それ以前にソニーや池上に慣れていると運用しづらい)
 またマネシタの映画用システムは画調にヘン特徴がありソニーのハイビジョン映画システム、HDCAM24p (CINEALTA)と違ってモロにビデオ臭いのが非常に気になります。

 そもそも 1/4 インチのメリットを殺してしまっているのが何ともいえません。テープスピードがかなり早くなるので、放送・業務用では異例の LP モード搭載という謎な規格があったのです(ボカスカ)。
 マネシタの HD カメラ自体(カムコーダ・スタジオカメラ問わず)、ハイライト部分の階調が飛び気味でダイナミックレンジが狭く感じてしまい、「なんだこりゃ?」というような画調でまいってしまいます(ハイライト部ではさくら色のように淡い色調の衣装や、色白な人物の肌の階調が思い切り飛んでしまう♪)。

 松下さんの HD カメラシステム全般はもっとガンマカーブ等を(あるいは KNEE 処理)、研究して煮詰めたほうがいいと思います。カメラ部そのものの特性もさることながら、素人目にも明らかに変な画です。

 それこそマネシタ電器なんだから、ソニーや池上のパクリで構わないと感じるのは私だけでしょうか(マネシタ中央●▼◆にいた、というわたくしの師匠が[マネシタ電器]名付け親と自負していたが真相は不明)。
 その証拠に池上さん(あえて”さん“をつけます)の DVCPRO HD カムコーダーで撮った画の素晴らしいこと。画調はマネシタとはうって変わって非常に落ち着いており、さすが ENG の老舗だけはあります。

 正直なところ前出の映画用システムにしても、普通のハイビジョンカメラ(ソニー or 池上)の画を、後処理でフィルム調に仕込んだほうがよほど、それらしく写るのが悲しいです。(^_^;)。このあたりハリウッドでも定番?と化している HDCAM24p&SR とはひと味違うな、と感じます(そもそもがハリウッドとの共同開発ですが)。




  地上波デジタル放送

 次は、私が最も楽しみ(もっぱら技術的興味のみ)にしていた次世代放送、地上波デジタル放送方式についてです(^_^)。去る 2003年12月1日東京を始め三大都市を中心に、地上波デジタルテレビ放送が始まりました。

 何かと波乱含みの船出ですが(大しけ?)、開局当日の NHK は終日大騒ぎでとても見ていられませんでした。

 デジタル BS 同様地上波デジタル方式でも、ハイビジョン 1ch もしくは SDTV を 3ch(最大値)伝送するなど柔軟な編成が可能です。

 また地上波デジタルで特徴的なのは最初から移動受信を想定していること、また同一周波数による再送中継(SFN)が可能なことでしょう。

表−3 地上波デジタル放送方式
占有帯域幅 5.7MHz(TV)/429KHz(RADIO)
多重化変調方式 OFDM(直交周波数分割多重)
キャリア変調方式 DQPSK・QPSK(移動受信用)
16QAM・64QAM(固定受信用)
キャリア数 1405本(MODE 1)※実際には使用しない取り決め
2809本(MODE 2)
5617本(MODE 3)※このモードが主
インターリーブ 時間・周波数
誤り訂正 畳み込み(1/2,2/3,3/4,5/6,7/8)+リードソロモン符号(204,188)
多重方式 MPEG-2 Systems
符号化方式 映像・MPEG-2 VIDEO/音声・MPEG-2 AAC AUDIO
音声・16bit 48/44.1/32kHz・2ch または最大 5.1ch
情報レート 5.7MHz:3.6〜23.234Mbps(64QAM 使用時)
429kHz:280K〜595kbps(DQPSK 使用時)
階層伝送 周波数分割による※別図参照
移動受信の可否
主な画像フォーマット 1080i(1920x1080)・720p(1280x720)
480p(720x480)・480i(720x480)
※実際には 15〜18Mbps 程度 1080i(1440x1080)+ワンセグがメインの編成

 かなり昔になりますが ITU-R にて日米欧3方式のデジタル・地上波放送方式が認可されました(^_^;)。開発中からかなり激戦だったようですが、結局次世代放送も現在の NTSC/PAL/SECAM に代表されるよう、地域によってバラバラとなってしまいました。

 これは非常に残念なことですが、私は複雑怪奇な裏側があってのことと認識しています(^_^;)。しかし過去に欧州ではスタートしたばかりの地上波デジタル局が倒産、アメリカでも受信機・受像器が行き渡らずアナログ停波が遅れるなど大変なことがありました。

 国内でもアナアナ変換に始まるデジタル化の影には様々な問題が潜んでいます。BS デジタルと違い今映っているのに、”否応無しに買い換えを迫られる“からです。このあたりに国策としてのデジタル化にムリがあると思います(”悪徳代官様“関係者以外誰も頼んでない)。

 しかし方式的なメリットは数多く、アナログでは快適に受信できない移動受信が考慮されており多くの方が、ワンセグ受信でそのことを実感されていることでしょう。
 この方式では強力なエラー訂正とともにマルチパス対策のための、ガードインターバルを設け移動受信に対する耐性を強めています。

 例えば全く同じ受信環境(同一地点、同一アンテナ)で比較すると、アナログ波が S/N が良くとも多重ゴースト三昧になってしまうような時でも、デジタル放送では電界強度さえ十分ならほとんどの場合、画像破綻をきたすことなく快適に受信できます(最もアナログは方式上移動受信を全く考慮していません)。


※地デジを正常受信できてもアナログは・・・

 例えば上記写真は地デジを正常受信できる全く同一のシステム(市販の広指向性型である簡易アンテナ相当で受信)で、同じ送信所かつ同一局のアナログ波を受信した様子です。

 色相が反転している上に数え切れないような多重ゴーストのみならず、ブランキングゴーストもひどく出ていることがお解りかと思います。
 残念ながら電界的には全く問題がなくても、強烈なマルチパス環境下ではマトモに映らないのがアナログです。
 先の環境でアナログ波を快適に受信するには、14〜20 素子以上クラスの八木アンテナ(狭指向性)を正しく設置する必要があります。

 一方、地デジでは十分な電界がとれることは言うまでもなく、デジタル放送受信においては CNR(搬送波電力対雑音電力比)マージンも広くとれていることが良好な受信状態を保つ秘訣です。

 もし高価な測定器が手元にありエラーレートやコンスタレーションも観測できれば理想的ですが、素人はそうもいきませんからきちんとした指標が必要となるのです。

 地デジは UHF 伝送なので家庭内などの共聴(屋内配線・分配)システム全体での、レベル管理が厳しくなるのはもちろんです。
 例えば屋内共聴システムを従来のままにして、UHF アンテナを増設しても末端で映らない場合があるのは伝送途中のロスが一因です(VHF に比較してロスが大きい)。そもそも UHF 受信を考慮していないような古い共聴システムの場合、屋内配線ケーブルや分配器などのロスを真っ先に疑うべきです(古い家屋ほど共聴システムを一新する必要がある)。

 また周囲の環境や気候条件などいくつかの外的要因により、どうしても電界変動が起こるのですがこのとき、メーカ推奨の受信レベル目安(通常 CNR マージンを見込んでいると思われる)を下回ることがないようにしなければなりません。

 さもなければ設置時は良かったのにある日、ある時突然、せっかく録画した推しメン?の大切な番組の肝心な部分が破綻していた(>_<)、などという体たらくは避けられるのです(ヘタクソイラスト はご勘弁を<ボカスカ)。

 先の写真のようにアナログではハチャメチャな受信環境下であっても、地デジではウソのようにきれいに映ってしまいます(マルチパスが少なく強電界なら、ただのダイポールなどの超いい加減なアンテナでもそれなりに映ります)。
 これは前世紀末前後にいつの間にか乱れがほとんどなくなった、マラソン中継にも使われている技術といえば解りやすいでしょうか(実際の中継ではたまにフリーズしますがそれはご愛敬♪)。

 具体的には下図のようなグラフのうち良好に受信できなおかつ”平坦部分“の受信状態であることが最低限必要です。



 詳細は別途「失敗しない地デジアンテナ設置」の項で解説していますが、ここで再三述べている”マージン“についても簡単に触れておきます。
 これは良好な受信状態にありなおかつ受信状態が急激に悪化する崖縁の領域(スレッショルド)ギリギリではなく、平坦部分に余裕を持つことを意味しています。

 何らかの理由で電界変動があった際、受信スレッショルド領域に落ち込むのを防ぐ、と言う意味において極めて重要です。デジタルのような急激な変化のないアナログと異なり、ただ映ればよいというのは大間違いなのです!。

 伝送方式の話題に戻りますが OFDM では複数のキャリアがたくさん並ぶ状態のため、これらの帯域を分割して使用することが可能となっています。
この方式では、1 つ 429kHz 幅のセグメントを 13 個使用しますが、それを最大で3階層に分割し階層ごとに変調方式を指定することが可能です。

 なお占有帯域幅は約 5.61MHz ですが法令上、0.01MHz の単位を切上げ 5.7MHz としています。


 例を挙げると固定受信用に 64QAM で帯域をフルに使用すれば HDTV(ハイビジョン)放送が可能に、分割して移動受信用の DQPSK と SDTV 固定用の 16QAM を組み合わせれば、SDTV の複数放送が可能、と言う具合です。

 現在は中央の 1 セグメントを移動体向けの”ワンセグ“(QPSK)放送に、残りの左右 6 セグメントずつ計 12 セグメントをハイビジョン(64QAM)にといった 2 階層の編成がメインです。

 さらに、この方式では一つのセグメント(429kHz 幅)のみを使い、高品質な音声及び簡易動画放送も可能となっています(デジタルラジオ放送。こちらはアナログ VHF-TV の空き帯域を用いる予定)。


 ”地デジ“放送の実例として関東地区の東京タワーでは、特別展望台の上付近にアンテナが取り付けられています(トップヘビーな感じの見た目が格好悪い。激スマートなスカイツリーに期待♪)。
 ムダなアナアナ変換のお陰で数年かけてフルパワー化されましたが、UHF 10kW でしかもアンテナ位置がやらたと低いですから当然、サービスエリアは VHF 50kW のアナログ放送には及びません。

 また所要 C/N 比と UHF 帯の飛び具合を考慮すると、日本全国をサービスエリア内に納めるには並大抵の苦労ではないと思われます。近年中継送信所の整備も地方などで進んでいますが、離島や山間部を多数抱える我が国の特徴を考慮すると、従来のアナログなみのサービスエリア達成にはかなり骨が折れたのではないでしょうか!?。

 デジタルの一番解りやすいメリットである移動体向け放送(通称:ワンセグ)は、'06 年 04 月から開始されました。コーデックは、MPEG-4 より一歩進んだ H.264(MPEG-4/AVC ともいう。別称でありどちらも同じものを指す)です。
 わたくし的には画素数(QVGA)はともかくフレームレートが、15 フレーム/秒なのがかなりイマイチな印象です。なにしろ Win95 登場以前の PC 動画を彷彿とさせる低画質・低フレームレートで、とてもテレビとは言い難いものです(ボカスカ)。

 実際問題として、携帯電話端末のオマケ受信機はともかくとして、車載テレビやカーナビ付属のテレビ機能としては、お粗末なものです。既に HD 地デジ対応のカーナビがいくつか、発売されていますから HD 受信が厳しいときの”代替“にしかならなそうです(自爆)。
 なにしろ、BS デジタルでの降雨時用低レート動画像(限定品質)のようなものしか、常時見れないわけですから中途半端、としか言いようがありません。各局とも、新たなビジネスモデルを模索しているようですが、はたしてかつての i-mode の時のような、絶好のカモ・・・もとい新規市場は見いだせるのでしょうか・・・。

 移動体向け放送(ワンセグ)が始まるそれまでの間は、固定向け 64QAM による HDTV がほとんどでしたが、サイマル放送とはいえこれで又、ch が増えにぎやかになったわけです。
 いずれにしてもデジタル放送のサービスエリア自体が狭い上に、デジタルとはいえ UHF を使う地デジ相乗りの”ワンセグ“ですから、実際に受信機メーカや局側が言っている、「いつでも・どこでもテレビ」にはお世辞にもほど遠いのが現状です。

 移動体向け”1セグ“の話はこれくらいにして、肝心の”地デジ“本体に話を戻します。少し話が前後しますがこれまでの感触ではアナログ波(NTSC)である程度鮮明に映る位、電界強度がとれなおかつ安定していないと、破綻やフリーズ等乱れのない受信は厳しいようです(受信電界マージンで 10dBm 以上は違う感触)。
 アナログ波で若干スノーノイズが出る程度の電界だと、画面の所々に破綻をきたします(チューナ等の出来にもよるでしょうが)。それ以上になると、フリーズor画像断といった感じです(^_^;)。

 画質的にはデジタル BS と違って、ハイビジョンでも実伝送レートでは 15〜18Mbps 程度となるため、それ以上に悲惨な画質なのは言うまでもありません。
 単純にレートのみの問題でもなく使用されるモード(MPEG プロファイル)が 1440x1080 というのも一因で、この場合処理ブロックが大きくなるため劣化が出た際に目立ちやすいためです。

 BS デジタル以上に静止画・動画の画質差に開きがあり、”ハイビジョン“の名が聞いて呆れます。地デジは動きの少ない画であってもシーンチェンジとくにディゾルブ(クロスフェード)がかかると、毎度もやもやとした劣化ノイズが大量発生して、気になって仕方がありません。
 根本的解決にはなりませんが、新型エンコーダの早期実用化を願ってやみません。





  あとがきにかえて


 以上、BS/地上波デジタル放送の概要と実状を思いつくままに書きつづってみました。

 諸外国でのデジタル化事情は本文でも簡単に述べましたが、先進各国ともアナログ波停止時期に至っては見通しが甘く、否応無しに見直しを迫られてしまったのが実状です。
 CATV 普及率が段違いのアメリカでは '09 年に延期を乗り越えながらも、ようやく完全デジタル化を達成しました。我が国でも '12年 3月末日にアナログが完全停波しましたが、実際映らないままの人はいるわけで正確な統計もでないまま、デジタル放送難民は黙殺されてしまったのでしょうか。

 とくに日本は山岳地帯が多く、離島なども含めた難視聴地域が全国にあるのでサービスエリア(未だ地デジ電波の届かない地域があります)というもっとも大きな問題も抱えています。
 本末転倒な話ですがこういった”地デジ難視聴地域“解消を目指して、'10 年 02 月より BS の空きチャンネルにて地デジの再送信(SD に変換。基本チャンネルのみ。マルチ編成無し)が行われていました(特定地域のみ受信可能なよう専用の B-CAS カード必須)。

 ”電波の有効利用“を大々的に掲げてきた放送デジタル化だけに、とてつもない矛盾が発生していたわけです。

 またすったんもんだの挙げ句、ようやく(ついに?)当初はコピワン一辺倒だったデジタル放送に、通称”ダビング 10 “の導入されました。これは新しいフラグによる制御でコピワンのまま回数を増やしました、というメーカと著作権団体との妥協による産物です。
 すなわち、現状のコビワンは一回こっきりの後腐れ無しでしたが(浮気じゃないんだから勘弁してほしい!)、それを数回に限って認めるというものです。例えば 9 回までは円盤等にコピーしても HDD 内の元データは残るが、10 回目は強制ムーブとなるシカケ。

 実際の運用開始は'08 年 07 月 04 日早朝からでした(当時は対応機器のみ。最近の製品なら全く問題ない)。

 裏事情はともかく、例えば現状では高いお金を出して買った BLUE RAY ディスクに、ハイビジョン録画データを移動したら、”失敗“して消えてしまったという理不尽なことは避けられることになります。
 要するにコピワンなんていうのは、HDD 内蔵の DVD/BLUE RAY レコーダという概念のなかった、十数年前の概念です(歴史に例えれば産業革命以前か!?)。ハッキリ言って、MD への CD コピーが一回制限なのと、なんら変わらない理屈です(発想がイケてなくておやぢ臭い上に 25.6 年は古い)。
 最も、CD の場合はコピーであり元データが消えるという、アホな事態はあり得ませんので”ダビング 10 “以前の現状には呆れるばかりでした…。

 事実上の DRM フリーである CD を見習うべきでしょう。

 せっかくデジタル信号には”器“(いわゆるメディア)を選ばない、という素晴らしい特性を持っているのにそれを全く無視した制限なのです。
 もっとも私から言わせれば、あんなに汚く劣化しまっているデジタル放送に、コピー制限など不必要だと言いたいところです(超激ボカスカ)。だって、現状では一度ごにょごにょ経由で処理したものならコピーし放題なのですからヽ(´ー`;)ノ。

 しかし、現状のダビング 10 のままでも問題はあります。将来的には外部記憶メディアの世代交代が起こるのは必至です。その際にはコピーできないわけですから Blue-ray の上位互換機器が発売され続けない限り、大切なライブラリもオシャカとなってしまうわけで、いかにダビング 10 というのがユーザの権利を無視しバカにしているかお解りいただけると思います。

 ごく近年になって、Blue-ray のムーブ・バックというのが可能になりましたが、なんだかなぁ〜としか言いようがありません。しかしながら、できないよりはマシなので歓迎すべきでしょう。

 逆にあんなに汚らしく劣化しまくっていて、出演者(特にプロダクションサイドはどう思っているのか聴きたい)の権利や監督等製作者の意図を侵害することにならないか?、このことの方が気がかりでなりません(^_^;)。

 あとコンテンツそのものに付いて言わせれば、民放はテレビ屋の悪いクセか、アップを多用しすぎなのでもう少しルーズ(引き)気味にしたりと、ハイビジョンの画角を活かした画作りを目指してほしいものです。
 それに被写体がちょっと動くと、それを追うようにカメラを動かすのも、落ち着きがなさすぎます(どーんと構えよう!人によっては視聴者が酔いかねません<バカな)。
 被写体が踊るなら、カメラは止まれ。被写体が止まるなら、カメラは踊れって某局では教わるそうですが(^_^;)。ま、参考までに(ボカスカ)。もっとも、絵心のないカメラマンが撮ってるのは、その画を見れば一目瞭然ですが・・・。

 また再三本編や本章でも述べている現状の、デジタルハイビジョンの劣化の多い画質も、根本的になんとかならないものでしょうか(郵政政策上ムリなのは重々承知ですが)。静止画ならきれいなのですが、動画となると途端に劣化が目立ちます。動画の汚いテレビなんて・・・、とつくづく考えさせられます。

 わたくし的には、退屈な紀行もののような動きのないものより、歌番組のようなものをハイビジョンで楽しみたいのですがね・・・(歌番は悲惨極まりない劣化出まくりで動く絵画の様ですが、ドラマ・映画はギリギリ及第点か)。

 ハイビジョンならではの迫力や臨場感を楽しめるドラマや映画も、シーンよってはときよりものすごい劣化に出くわし興ざめ、といったこともあるのが玉に瑕ではあります。

 ほんと、ハイビジョンの名が泣いていますぜ、旦那(by 修理サービスマン風)。あ、そうだ MUSE の受信機買おう(もう放送やってないし・自爆ぅ〜)。


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