NTT ドコモ・エンハンスド・フルレート(ハイパートーク)とは?
〜コーデックの変更とその実際〜


 ここでは、NTT ドコモが開始した EFR(エンハンスド・フルレート:ハイパートーク)について、リクエストがあったので、簡単に解説したいと思います。

 EFR は無線チャンネルの、TDMA 物理スロットに余裕がある場合、基地局側がトラフィックなどを総合判断し、フル・ハーフレートを切り替えるものです。なおかつ、フルレート時の伝送速度などは従来通りですが、コーデックの変更に伴い、音質の向上や音声部分の伝送レートが変わってきます。

 下記の表に、簡単に概要をまとめてみました。


各モードおよびコーデックの比較
伝送速度
(括弧内は音声部分)
コーデック 音質主観評価
従来の
フルレート
11.2.bps(6.7Kbps) V-SELP  背景雑音さえなければ、概ね良好。やや機械的な響きが、気になる。ビブラートは、少な目。
ハーフ
レート
5.6Ksbs(3.45Kbps) PSI-CELP  通常時でも、こもりがちでかなり不明瞭。ビブラートも非常に強く、不自然極まりない。なおかつ、背景雑音があると、まるで音声にならない傾向が強く、音質は劣悪。
ハイパー
トーク(EFR)
のフルレート
11.2Kbps(8Kbps) CS-ACELP
(ITU-T G.729)
 実機において、EVRC 以上の実力があり好感が持てる。背景雑音にも強く、機械的な響きは少ない。
 辛口に評価しても、EVRC と PHS の中間程度との感が強かった。ビブラートも非常に少ない。

 なお、EFR でもハーフレート時は従来通りのコーデックであり、変更はありません。ですから、TDMA 物理スロットに余裕がない限り、意味をなさないのが難点です(^_^;)。

 さらに実転送速度と、音声データの伝送速度に差がありますが、ここにはエラー訂正符号という、冗長データが付加されています。これは、フェージングなどによるエラーを訂正するためのもので、冗長度が高いほどエラー耐性は強くなります(音声データ列から生成される冗長ビット列)。

 余談になりますが、例を挙げると FM 文字多重のデータ放送(DARC 方式)は、16Kbps L-MSK で伝送されますが、実に半分近くがエラー訂正符号なのです。また、その符号も非常に強力なので、ステレオ受信できるエリアならば、ほとんどの場所で FM 文字多重放送を受信することができます。

 しかし、携帯電話の場合そこまで余裕がないのと、リアルタイム性を損なうと会話に支障が出る(コーデック自体、かなりの遅延を伴う)ので、それほど強力なエラー訂正はかけられません。

 また、フル・ハーフの切り替えは基地局側が制御し、ユーザーが選べるわけではありません。これは、言い換えると DDI-P の 64Kbps データ通信サービスに、共通する点があるといえます。

 あの方式では、「ベストエフォート方式」といい、トラフィックを判断してハンドオーバー先に空きスロットがなくても、32Kbps に速度を落として通信が続けられる、というものです。
 つまり、回線の混雑状況等によりダイナミックに、フル・ハーフが切り替わると思えばよいと思います。トラフィックに余裕がないと、フルでは接続されませんが、通話品質と接続品質をバランスした方式だといえるでしょう。

 逆に、NTT の PHS の様な「ギャランティ方式」と同じと見なせるのが、かつてのフルレート機です。古い、フルレート端末では移動中に、ハンドオーバー先に空きスロットがないと、非情にも通話が切断されます。

 これは、フォールバック機能をもたない旧来の、フルレート端末なので仕方のないことですが、EFR ではそのようなことはないのです。

 またドコモの EFR が開始された頃、良く話題になったのが基地局側の制御についてです。フル・ハーフの切り替えや、それにまつわる制御は非常に高度で、PHS におけるベストエフォート式ほど、単純ではないそうです(技術者から直接聴取による)。

 現在のところ、都心部や繁華街などにおいても、常に EFR 接続されるとのレポートが相次いでいることからも、EFR 端末を比較的安心して導入できる、判断材料になるでしょう。

 しかしもし、ドコモのハイパートーク対応、208/502i シリーズや他キャリアの、EFR 端末をお使いの方がいらっしゃいましたら、ぜひトップページの「かおりんの部屋〜フォーラム〜」へ、引き続き接続情報をお寄せください。


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