前途多難・視聴者不在の放送デジタル化
〜”国策“がもたらす問題の本質に迫る〜



  はじめに

 アナログ停波予定まであと 3 年…。国策としてスタートしたテレビ放送完全デジタル化計画完了予定が 2011 年。先進国のなかで唯一日本だけが法制化によって計画が決定されている、というバカげた状態。

 ”ギョーカイ“関係者からも開始前から地上波デジタルは BS デジタルと共倒れ、などと陰口をたたかれながら政府主導ゴリ押しのもと大々的な移行キャンペーンがメディアや店頭で行われています。

 そしてデジタルテレビを”ほしい“とも思わせないメリットを誇示するばかりで、”なぜ“必要なのか本当のユーザメリットは何なのか?、これらが全く明確にされないままです。

 現実問題としてはデジタル化で先行した欧米だけにとどまらず、お隣の韓国でも普及が進まずに”完全デジタル移行“時期の見直しを迫られたり延期が決定しています。
 具体的にはアメリカではデジタルテレビの普及が大幅に遅れていることから、日本同様に政府が完全移行を法制化しようと目論んでいます。
 これに対し、放送業界は”慎重“な姿勢を示し、製造業界は”支持“という、極めて現実的な反応となっています(メーカはハードが売れさえすればいい、放送の送り手は視聴率に直結するからという図式)。

 我が国でも本稿執筆時点('08 年 12 月中旬)の世帯普及率が、わずかに 50% に届かずいよいよもって移行計画が怪しくなってきました。

 ここでは関係者等からの裏情報を含め、既存メディアでは語られない側面から放送デジタル化の問題点に焦点を当ててゆきたいと思います。




  国策故のアピール不足か。見えてこない本当のメリット…


 「デジタル放送、いいこといっぱい。きれいで便利で・・・♪」。これは、現在テレビなどで流れている、地上波デジタル放送の推進キャンペーン CM の一節。

 だれも、ハイビジョンにしろと言ってないし、きれいにしろとも言ってない(^_^;)。だれもリモコンを複雑にしてつかいにくくしろ、とも言ってない。このあたりが、多くの視聴者の共通したアンケート結果です。
 それなら、視聴者側での真のメリットは何か?。それが明確にされていないのは、関係機関の怠慢以外の何者でもありません。

 例えば、キャンペーンで取り上げられていないものを、具体的にあげると以下のような感じです。

  ・車など移動中にもある程度乱れが少なく視聴できる
  ・ゴーストの解消。電界にマージンがあり、安定していればゴースト等の
   乱れは出ない(代わりにエラーレートがある程度悪化すると、突然ブロッ
   クノイズだらけになる)
  ・マルチチャンネルによる、柔軟な編成。例えば野球中継が伸びても、
   平行して予定通りの番組が視聴できる等。

 とりあえず、とっさに思いつくのはこの程度でしょうか。単純に考えて、ナビ+カーテレビがある程度普及している現在、移動中の快適受信は大きいメリットだと思うのです(^_^;)。
 '06 年 4/1 から通称、”ワンセグ“として特に移動体向けの簡易動画放送が、スタートしましたのでそれに合わせて、携帯電話内蔵受信機やカーナビ付属の受信機として、対応機器が発売されています。

 カーナビやカーテレビでの受信は、画面の大きさから考慮するとかなり、もの足らない解像度(QVGA)と動き(15 フレーム/秒)ですが携帯内蔵型など、ポータブルテレビ共通の悩みであった移動中の乱れが、強電界においてはかなり軽減するのは、大きいメリットだと言えます(逆に弱電界では見づらくなったしエリアは相当狭い)。
 NHK を含め、在京キー局各局は”ワンセグ“のアピールに躍起ですが、はたしてどれほどの視聴者需要があるのかは、全くの未知数と言われています(ナビやカーテレビでは、地デジ HD 対応のほうがずっとよい)。

 閑話休題。地デジ本体の話に戻します。実際問題としてマルチチャンネル編成にしても、延長の多いスポーツ中継に辟易している一般ユーザも、かなり多いはずです。

 これら、移動体受信のように実感できるメリットを提示できずして、デジタル化は始まらない。と言っても過言ではないでしょう。デジタルラジオに至っては、メーカは及び腰で専用受信機は当分でない予定です(理由は後述)。

 また、少し本題からそれますが過去からの問題として、私的なことを挙げれば BS デジタルでの失敗に、独自編成にこだわりすぎたというのがあります。独自の全国調査では、在京キー局の番組が満足に見られなくて、嘆いている地方在住の方々は全国に多数います。

 BS デジタルでは、独自編成にこだわるあまり地上波のサイマル放送は、ごくわずかでほとんどはつまらない、”オリジナル“番組ばかり。
 それでいてその番組を、週に何度も再放送するような状態です(その他既存地上波番組の再放送多数)。

 もし、例え SD(標準放送)であっても在京キー局が、BS で全国一律の地上波サイマル放送を行えば、見たい人はゴマンといるのです(各放送事業者も当サイトをよく訪れているが、視聴者ニーズを本当に解っているのか?甚だ疑問)。わざわざ別会社で開始した、デジタルBS 各局ですが当座の資金をあっという間に食いつぶして既に、ほとんどの局が”親会社“にあたるキー局に買収か、吸収合弁されています。
 どうせならば、SD マルチチャンネル構成で S1 チャンネルでは、従来通りの BS-D 独自編成を、S2 で地上波とのサイマルキャスト、のようにしたら恐らく BS デジタル機器は、売り上げ微増間違いなしなのですがヽ(´ー`)ノ(核爆)。

 とにかく昔から地方では、既存のアナログ地上波でも、満足なネット局がなく見たい番組が、見られない状態がつづいています。連ドラが見られないなんて、序の口。見たい 2 時間スペシャルが、ヘンな番組で半分飛んで 1 時間に、”ブツギレ“編集されて流される等、悲惨極まりありません。

 結局地方では、いつまでたってもテレビの情報格差すら、埋まっていない状態なのです。地上波デジタルでは、”ローカル色“を強めた編成などと、各局のたまっていますが到底、普及への弾みにすらならないどころか、かえって反感を招くでしょう。
 まっとうな?ネット局があればがいいほうで、クロスネット局しかない地方などは、全滅に近い物があります。そもそも、半端な編成の上このような地域では、特に見られないドラマが多いのが特徴です。
 例えば、日本一?民放の少ないといわれる、宮崎では未だにクロスネットの局が、2 局あるだけとか…(もっとすごいのは北海道の一部など未だステレオ放送も行われていないとか時代錯誤のような地域も・・・、私もたれこみを頂くまで知りませんでした!!)。

 行政、放送事業者とも本当に、デジタル放送を普及させたいのならば、これらのことも踏まえ視聴者側に立った姿勢を、少しはとるべきではないでしょうか・・・(数字至上主義&視聴者ではなく、スポンサーが”お客様“であり神様&役所は実状無視いや無知では無理か・・・)。
 せめて、ゴールデン枠や人気番組・ドラマくらいは、地上波・BS 共にサイマルでやったら、全くと言っていいほど人気の無い BS へのてこ入れになるような気がしてなりません。

 ここへきて('08 年 06 月現在)地デジ難民の大量発生が視野に入ってきた現状を踏まえてか、「既存キー局の地デジを BS でも見られるようにすべきだ」、等という本末転倒な提言が聞こえて参りました。
 まさかこのサイトを見たわけでもなかろうに(ボカスカ)、廃墟と化している BS デジタルを後目に行き当たりばったりの発言が飛び出したのには笑ってしまいました。
 そんなことはムダな地上波のデジタル化以前にすべきことで、いっそのこと「BS デジタル再開発」と題して全部既存在京キー局のサイマル放送にしてしまえばよいのです。

 こうしてリセットして状況を見れば、いかにムダなカネと電力を使って BS デジタル(<超ぼかすか)を何年も行ってきたか総務省も局も思い知ることでしょう。

 また既述の、”移動体向け地デジ“通称ワンセグもかなり微妙、としかいいようがありません。
 放送業界では、これに対抗しデジタルラジオ放送の、本放送移行を前倒しで行うなどいろいろと、動きがあります(焦りに見えるのは気のせい?)。しかし、ただでさえ市場の狭い上に(と思われる)あっという間に電池のなくなる、ポータブル受像機・受信機など、流行りようがないと思います(ボカスカ)。

 もっとも、携帯電話内蔵”アナログ“テレビ受信機に比較したら、いくらか持ちは良くなっているのですが・・・。しかし、単体のポータブル受信機がでないのは、どうしたことなのか製造業界でも、期待薄というのが伺えるような気がしてなりません(ボカスカ)。

 さて、肝心のデジタルラジオの単体受信機が、発売されない理由についてですが、マスコミが書かない(書けない?)情報としては、既存アナログテレビの開き帯域をあてにした、希望的観測に基づいた計画だからです。

  ※デジタルラジオ試験放送は既存アナログテレビ 7ch 帯域の一部で行われている。
   東京ならフジの真下なので、干渉を防ぐためにフルに帯域を使えていない。

 既存テレビの完全デジタル移行(UHF 化)が不透明なのに、売れるか解らない受信機などつくれるか、というメーカの実に正直なスタンスです。

 諸問題をはらみながらも、BS デジタルという不発の推進剤(くすぶるロケットブースター?)や、各種目玉番組(サッカー・オリンピック等)に支えられ、”そこそこ“売れているデジタル受像機とは、全く正反対の状況です。

 わたくし的にはこれこそ、デジタル化問題の核心の一部をついていると思います(その他問題点については次章譲ります)。まさに、この計画の矛盾そのものです。

 ようやく一体、誰のためのデジタル化なのか?、という問題点にようやく迫ってきたと思います(^_^;)。




  デジタル化の問題点とその歴史に見る”戦禍“

 既存テレビでも外部入力のある受像機なら、デジタルチューナーを別途接続することで、デジタル放送の視聴自体は可能になります。
 しかしいわゆる”業界“のキャンペーンでは、ビデオ・ DVD レコーダなどほとんどの、内蔵チューナが役立たずとなり録画法が煩雑になることや、留守録が困難になるとか現実的な問題点が、表だって明確にされていません。

 単純に、”デジタルチューナー“を買って接続すれば見れますよ、というだけでは視聴者は納得しません。テレビという最もポピュラーな、耐久消費財の買い換えを壊れてもいないのに迫るのは、廃棄物を増加させ実に非エコロジーな気がします。

 それにこれらの状況を踏まえると、もし強引に完全デジタル移行してしまったとすると、テレビが見られない”デジタル難民“が出かねません。景気がていたらくを続けているさなか政府は、AV 機器の操作・接続が苦手方々や、所得に余裕がない層等の貴重な”娯楽“を奪う気でしょうか!?。

 簡単に考えても、テレビの平均的買い換え期間を踏まえて、もっと長いスパンで物事を考える必要があるような気がします。
 もっとも、分野が違いますが都市計画の類も”建物の寿命“を考え、数十年前後のスパンで計画が練られるあたり、同じロジックであり極めて発想が貧困、としか言いようがありません・・・。

 まるで、今住んでいる”フツーの一軒家“で十分なのに、”広い庭付きの豪邸“への引っ越しを無理矢理、押しつけられるようなものではないでしょうか。もちろん、広い庭や奇麗な豪邸はすばらしいですが・・・(ハイビジョンの画角・画質がそうであるように)。

 困ったものです。

 それにもっといただけないのは、過去”日本初“の放送局倒産となった、衛星デジタルラジオやわずか、数年で事業撤退したデジタル CS テレビの、「DIREC TV」等数々の電波行政のしわ寄せを喰らった出来事が、全くその後に活かされていない点です。

 なんとか?がんばっている、スカパーことスカイパーフェク TV と違って、DIREC TV は使用する通信衛星が異なる上に、チューナーも専用のものが必須でした。そのため DIREC TV は、'97 年の開始後も加入者が伸び悩みわずか約 40 万契約のまま、'00 年に事業から撤退、日本法人は清算され事実上倒産しました。

 総務省のゴリ押し?により、約 40 万の契約者は現在の”スカパー“が、不良債権のごとく無理やり受け入れるハメとなりましたが、各方面で物議を醸しだしている地デジより、10 年近く早く始まった CS デジタル放送では、既にこれらのような事件が多数起きていたのです。

 既述のように、これらが全く活かされないままの地デジがスタート、はたまた 110゜CS といった視聴者だけでなく、放送事業者にも負担増を強いる、奇想天外なシステムまででてくる始末です(貴重な静止軌道の浪費に思えるのは私だけでしょうか・・・)。

 こうしてデジタル放送の歴史を振り返ると、電波行政の”無策“・”無反省“が明確に見えてきます・・・。在京キー局に関しても、先行する BS デジタルは巨額の赤字を日々、出し続けているやっかいな存在?なのです。
 だから当然、ろくなスポンサーがつかず”つまらない“低予算番組ばかりで、地上波のサイマル or 再放送以外、見るものが全くないのです。




  操作が難しいままでは普及しない

 '05 年末、NHK の視聴者アンケートでおもしろいことが判明しました。WEB(携帯電話等を含む)や、デジタルテレビの双方高機能を使う、「スキウタ」と称した好きな歌の投票結果です。

 ほとんどの解答が、若年層で世帯主や高級デジタルテレビを多く買っていく、中高年層の解答がほとんどなかったことです。冷静に考えれば極当然なことで、我が国のデジタルメディアリテラシーの実状を物語っている、と言っても過言ではないでしょう(その後2度目の投票では”ハガキ“での中高年の投票が急増)。

 ただ、投票の多くは WEB 等インターネット経由で、それ以前にメディアが”便利だ“と騒ぎ立てている、デジタルテレビの双方向機能(物によってはアナログモデムのダイヤルアップというゴミ以下の時代遅れだが…)が、ほとんど使われていなかった点も注目に値します。
 それもそのはず、ATM より難しい操作なのにタッチパネルでないとか、不親切でボタンの多いリモコンと TV 画面による UI に頼っているので、機械に疎い層に受け入れられるはずがないのです。

 ここで一つ提案なのですが、一切の難しい操作を廃し電源・音量・チャンネルボタンだけのリモコンで、かつ SD 画質でよいから小型〜中型 CRT で、更に地デジ、あるいはそれプラス BS デジタルが映る、安価なテレビがあったら少しは買う人も増えるのではないでしょうか!?(15〜17" と中型 LCD でこの手の商品がでてきたが半端に高いだけ)。

 もっとも、そのような付加価値の低い製品は、利益率も低く国内では製品化が難しいでしょうけど・・・(ボカスカ)。テレビはとにかく「映ればいい」、というユーザが少なくないのにも、メーカは耳を傾けるべきでしょう。

 デジタルだからといって決して、真の高画質ではないのですからこのような、割り切ったテレビもあっていいのではないかとつくづく思います。そう、ツーカーの”電話“しかできないシンプル携帯電話のように・・・。


  行政側の無策その後と最近の動き

 つい最近ようやくというか、実際問題として完全デジタル移行が怪しいことに対し、様々な提言がなされ始めています。
 例えば「低所得層にはチューナを無償で配る」とか、またまた税金を打ち出の小槌のごとく”使う“ことしか考えていない、方々(エラくもないので決して先生!と呼んではイケない人種である)の場当たり的な話が伝わってきています。

 毎年国、県、市区町村などそれぞれの単位の役所やあらゆる公共機関では、その年度の割当予算を使い切るための散財が、バブル以前より未だに横行しています。なぜならば、使い切らなければ次年度以降予算を減らされてしまうのでそれを防ぐためで、某夕張市の財政破綻など氷山の一角に過ぎないのです(起きるべくして起きたとしか言いようがない)。

 結局会社に例えたら、利益が上がらないのに散財をやめられず事業を広げまくり”親会社“にお小遣いのおねだりばかりしていると、簡単にコケてしまうという良い事例です(役所の体質を絵に描いたような適応性の全くない予算システム、一体なんなんでしょうね(^_^;)。

 このように民間企業であったならば、とっくに”倒産“していて既に国はおろか全国津々浦々の行政区単位で似たようなことが起きかねない状況なのです。また逆”粉飾決済“も行われているようで、赤字を多めに見積もるとかやることが水戸黄門にでてくる、越後屋以下です。

 ま、役人が作った役人のためのシステムですから、そうやすやすと変わるはずがありません。マスコミに至っても、年貢増ばかりをもくろむ劣化した現代の越後屋をたたく姿勢が弱すぎます(スクープを狙うわりには横並び&権力に対する萎縮がある)。
 少々つまらない話になってしまいましたが、このように根本的な散財体質をも改善できずして、日々”増税“ばかりをもくろむ連中の真実の姿を知っていただきたかったのです。

 そういうお役所が、世界的なトレンドに乗ろうと放送デジタル化を早々に決め、混迷を極める電波行政を預かっているのですから・・・。




  ついに白旗!?「完全デジタル移行は無理」宣言の真相

 '07-09 月、総務省が気になる発表をしました。来る 2011 年にアナログを完全停波した場合、山間部や離島などの過疎地において「地デジが視聴不能となる地域が数千世帯」発生するとか、しないとか(^_^;)。

 これまたおかしな基準の元おかしな数字が並んでいて、その記事を新聞で見つけた私は苦笑せずにいられませんでした。なぜならばその基準や見通しは役所の都合の良い条件でありあまりにも現実離れしていて、数字も不必要な”地方空港“の計画時に提出されるあやしげな調査と一緒でなんら、現実味をもっていないとしか言いようがないからです。

 私はこれまでにも再三、大量の「地デジ難民」(テレビが見られなくなる人々)が発生すると述べていますが、ようやく役所が所詮無理な完全デジタル移行に対し”白旗“を上げたかとおもいきや、とんでもありませんでした。

 現状においてもテレビの地位方格差は激しいままですし、ましてや山間部でなくとも総務省のお膝元の関東ですら、地デジが未だに映らない地域はゴマンとあるのです。
 民間シンクタンクでの調査をもとにすれば少なくとも数百万人規模で、下手をすると数千万人規模での地デジ難民がでかねないのに、国は何をのんきなことを言っているのでしょうか?!。それこそ数千世帯ではなく、百万〜数百万世帯レベルの間違いであることは素人の私にも明白なのです。

 しかし、官僚政治の悪いところで例えば今までにも、国民が薬害でたくさん死のうが問題が表面化しおおっぴらに報道されなければ、痛くもかゆくもないのでしょうからあきれたものです。
 悪い例ですがかつての薬害エイズやつい最近の、薬害 C 型肝炎がそう言った事例そのものです。ましてや「たかがテレビ。映らなくなったら買い換えればいい」、といった思考論理が連中のやることです。

 手の内は見え見えなのです。




  知らぬが仏

 これは笑い話のようですが、私のまわりで実際に起こっているエピソードです。最近デジタル・ハイビジョンテレビを買って喜んでいるとある熟年世帯の話で(複数いるから目も当てられない)、いわゆる薄型ハイビジョン・テレビを買いさえすれば、そのまま”デジタル・ハイビジョン“が映るものだと勘違いしている悪例です(同世代のマジ・ハイビジョン視聴世帯からは同情の声があがっていますが!)。

 問題なのは地デジの場合、衛星放送と違って”中華鍋“のようなパラボラアンテナが必要ないので既存のアンテナでも映ると勘違いしてしまっている点です。私の地元ではほとんどの世帯で VHF アンテナしか設置されていない(あるいは難視聴対策用 CATV でのアナログ再送)ので、アナログ放送を”ハイビジョン“だと思いこんで見続けているのです…。

 何十万円も”お布施“をしていてコレですから、正直笑えません。こんなことでは”地デジ詐欺“や”薄型テレビの押し売り“が横行するものうなづけます(ボカスカ)。またこれは熟年世代の方のなかには少なからず、地デジも既存アナログ放送も”古い 4:3 CRT か薄型テレビかの違いでしかない“といった認識しかもっていらっしゃらない人もいる、ということになりますから大問題です−。
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 などなどと散々当サイトでつっこみを入れていたせいかどうかは不明ですが、とうとう '08 年からアナログ放送には画面右上に「アナログ」、という古めかしい書体の印が入るようになりました。

 お上の指導により NHK も民放も番組本編では出っぱなしなので、以前よりは気づく人も増えるでしょう。しかし根本的解決にはなりませんし、印挿入の本来の目的が違っています。

 それは来るべき”アナログ停波“予定まで 2 年を切った現在、「そのままでは映らなくなりますよ」という注意喚起だからです。機械に明るくない方の中にはデジタルテレビ機器さえ設置すれば、アナログ停波後自動的にデジタル放送が視聴できると勝手に思いこんでいる方もいるようです・・・。
 以前より、対処療法的にアナログチューナーしか搭載していない機器には、”2011年…“と X デーについての注意喚起シールが貼られています。しかし、困ったことにデジタル・テレビ機器にはそれがありませんからタチが悪いのです。

 またお上が発表する地デジ普及率も、実際問題として一人暮らし世帯ならともかく家族などで複数人で暮らす世帯では、1 人 1 台とまでいかなくとも複数台のテレビを所有しているのが普通です。
 こうした”2 台目“以降のデジタル化率となると更に極端に低くなるのは必然で、それらに付帯する録画機器となるともっと怪しいでしょう。

 ですから世帯あたりの単純普及率などで論じても、ハッキリ言って意味がないのです。




  ”その後“対策の混迷

 アナログしか見られない難視聴解消用 CATV や共聴設備(地形や構造物・ビル影地域、マンション構内なども含む)などで、アナログ停波後の対策がなされていなかったり、逆にデジタル波を見たくても自前の個別対策が必要だったり、と様々な問題が全国各地で明らかになってきています。

 具体的には以下のように大別されます。

  ・1 難視聴解消用 CATV がデジタル未対応
   (またはデジタル視聴が有料サービスのみ)
  ・2 地域またはマンションなどの共聴設備がデジタル未対応

 1 のケースでは特殊な問題もはらんでおり、本来無料であるデジタル放送を自前アンテナ無しに楽しむのに、どういうわけかお金がかかる(月々数千円というボッタクリ…)というものです。
 また無料で見るにしても個別アンテナを建て、既存 CATV 引込線と接続してしまうと伝送遅延の問題によって強電界地域では、空間波(放送波)とケーブル側信号の干渉が発生する恐れがあります(見苦しいチラツキが生じる)。

 アナログ故の問題ですが既存放送が VHF ならば、V・UHF のセパレーションを高めれば逃れられる可能性もなきにしもあらずですが、そんなことは素人には解りません(ボカスカ)。
 更にタチの悪いことに既存放送が UHF の地域では、素人の対策としては逃げようがないことです。特定チャンネルのフィルタも製品としては存在していますが、こんなものはホームセンターなどには置かれていないでしょう。

 次に 2 のケースですが意外と無責任なケースがあり、管理組合などがアナログ停波後は「適当にアンテナを建てれば映るのだからどうぞご自由に」、とのたまう場合も多々見受けられます。

 単純な共同アンテナシステム(CATV のようにセンタ側で複調を行わない)になっている場合、UHF アンテナがプアでアナログ波の写りが多重ゴーストだらけであっても逆に、デジタルの強みで地デジが棚ぼた式に楽しめる場合もありますがこれは本当に”たまたま写った“だけで、ラッキーとしか言いようがありません。

 マンションなどの集合住宅の場合、既存設備で地デジが映らない場合は BS・CS のようにベランダへ個別アンテナを建てて対応することになります。これまた余計な出費を強いられるわけです。

 その他にも地域共聴設備で住民などの共同出資が行われている場合、デジタル対策でもめてしまったりして一向に話が前進しないと言う事例もあり、混迷を極めています。この手の小規模な共聴設備は山間部や地形によるもの、ビル・高架など構造物によるものなど設置理由は様々ですが全国に無数に存在します。
 各世帯から組合費などの名目で利用料を募って維持・管理している施設などもありますし、設備が古く責任の所在や管理者が誰なのかがハッキリしない場合などもあり混沌としています。

 更に地域や環境によって視聴形態は様々ですから、もっと複雑な問題もあるかもしれません。デジタル対策で”困った“ことがあれば、当サイト掲示板などでお気軽にご連絡頂ければと思います。

 最近('10 年 03 月現在)では全国に無数にある共聴システムのうち、デジタル化対応済みなのはわずか 2 割台というとんでもない問題が判明しています。
 しかしこれは総務省が把握しているものだけであり、実際には更に数万という規模の共聴システムがあると言われており、更に複雑な問題をはらんでいると言えるでしょう。。




  いよいよラスト!?”嫌がらせ“の極み「カウントダウン」

 本稿執筆時点('11-07/18)でアナログ放送の画面上には様々なうざったい告知のほか「あと●●日」、という番組画像ほっかぶりの嫌がらせテロップが(カウントダウン)が開始されました。

 判っている人がほとんどなのだから本当にいやがらせとしかいいようがなく、イライラしている方々はゴマンといらっしゃいます。相変わらず普及率の数字は 80 歳以上の世帯は除外されている、とか2台目以降が全く考慮されていないばかりか、録画機のことなど触れられてもいない現実離れしたものです。

 まもなく高齢者数が 20% を越え超高齢化社会を迎えようとしている我が国で、敬うべき高齢者世帯を除外するなどこれまで幾多の困難を耐えしのぎ、国に貢献してきた世代に対してバカにしているとしか言いようがありません。

 総務省お役人の自己満足としかいいようがないカウントダウンなど、百害あって一利無しといってもよいでしょう。かねてより '11 年 06 下旬には通常番組を終了し、告知のみとする予定でしたが広告収入減を考慮してか局側の強い以降により、7/24 まで通常番組が延長となりました。

 全国未対応の世帯のうち多くが集中すると言われている、いわゆる南関東問題(東京タワーから VHF のみで視聴していた世帯がほとんどのため)など本来ならばもっと声を大にして告知すべきところがまったく聞こえてこないあたり、キバを抜かれてから久しいテレビというメディアのスタンスがかいま見えます。

 おそらく大本営発表の数倍から 1 桁ちかく多い、”地デジ難民“が発生することは民間調査機関からも発表されている通りであり、素人の私でも 1 桁はオーバーにしてもそれに限りなく近い、3 倍近いのではないかという懸念を抱いています。

 実際生活困窮世帯に地デジ対策支援が周知されていない場合もあり、いまだ無償配布チューナーは数十万台余っているとか┐(´ー`)┌。郵送ではいよいよ持って間に合わないので戸別訪問をするだとか言っている最中に、各市区町村役所で即日交付を始めた様子。

 総務省もやれば処理の迅速化ができるのか、と感心してしまいましたがこんなところばかりが迅速化されても、という気もしないでもありません。

 簡易チューナーは”転売“まで発生していると言われていて、その杓子定規な配り方には税の無駄遣い呼ばわりの声さえあがっています。既に報道などで生活保護世帯など一定条件を満たせば、ということになっていますが実際には「NHK 受信料全額免除証明」という、免罪符がもうひとつ必要なことも当事者にあまり知られていません。

 それでいて対象者の背景や実状までは調査しませんから、地デジ対策が間に合っている場合などでもチューナーが配られてしまうという問題があるようです。

 いよいよもって混迷を極める完全デジタル化ですが、忘れてはならないのは BS アナログも同時に終了するということです。「地デジ化」ばかりが喧伝されているせいか、一般の方の中にはすっかりこれを忘れている方も…。

 とにかく我がサイトではアナログ放送終了〜、停波までつぶさに見守っていきたいと考えています。





  ※次章に続く





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