携帯電話と PHS

〜今効く、その違いと比較〜


 もう語り尽くされた感のある、携帯電話と PHS の違い。でも、どちらも無線を使用した電話システムであることには、違いありません。

 従来の解説に今ひとつ納得が行かない方も、多いのではないでしょうか。無線家の方にも納得がいく比較記事となると、私自身見たことがありません(^_^;)。で、暇つぶしに製作することにしました。

 95 年、鳴り物入りでスタートした、PHS。当時、キャリアの行き過ぎた詐欺的とも言える乱売の結果、ユーザーからのクレームや解約が相次ぎました。近年では、販売奨励金を大幅に縮小するなど、商売の仕方にも変化が起こっています(簡易型携帯電話等という呼称自体が間違いの始まり)。

 そして各事業者とも、97 年の加入者数ピーク以降、減少に歯止めがかからないままでした。近年では、アステルグループの全国的事業撤退が決まり、'05 年秋には首都圏でも停波・サービスが、終了しました。
 ドコモグループに至っても、'08 年 01/07 をもってサービスを停止するなど惨憺たる状況です(^_^;。

 現在サービスが継続され、新規加入できるのは旧 DDI-P から身売りした WILLCOM グループのみで非常につまらない状況です。


 私は趣味で電話関連を研究してはいますが、端末機を持つのは趣味ではなく、実用上必要だから持ち歩いているものです。

 従って、特定事業者をヨイショする気は毛頭ありませんし、ダメな事業者をけなす気もあまりありません(^_^;。ですからなにか至らない点や、誤解があればぜひご指摘下さい。


 なお、サブタイトルの”効く“という字ですが、温故知新という意味合いを込めてあえて、”聞く“ではなく”効く“を使いました(^_^;)。



  ありがちな緒元の比較
 さっそく、非常にありがちというかこの HP で定番の、比較表です(^_^;)。

携帯電話(PDC)と PHS の主な違い
 
PDC
PHS
基地局のサービスエリア半径
500m〜数Km
(概ね 10Km 以下を想定)
100m〜500m
使用周波数帯
800MHz 帯及び 1.5GHz 帯 1.9GHz 帯
基地局の出力
0.5W〜30W 20mW〜500mW
端末機の出力
0.8W(バースト期間内平均) 10mW(時間平均・ピーク 80mW)
システムの開発経緯
従来からある自動車・携帯電話の発展型 家庭用デジタル・コードレスホンの発展型
音声コーデック
V-SELP/PSI-CELP 他 32Kbps ADPCM
多重方式
1RF/6 or 3 TDMA/FDD
1 フレーム 20ms/1スロット 6ms
(フルレート)
1RF/8 TDMA/TDD(多重数 4)
1 フレーム 5ms/
1 スロット 625μs
課金単位(代表値)
いずれも一般加入への通話
26 sec/\10 一通話 \10+1min/\10
有線系インフラ
専用網と関門局等により構成 ISDN 網に依存(一部アナログ)
ハンドオーバーの制限
なし
徒歩〜新幹線程度のスピード
でも可
収容 MA が違うとダメ
(ある程度は跨げるが切断しやすい)
原則として徒歩〜40Km 以下に限定される
その他
適応等化(オプション)
ダイバーシティー(オプション)
適応等化なし
基地局のコスト
一般的に 1億以上
※無線機・アンテナ設備がそれぞれ五千万程度
\200K〜1000K(もっと安いかも)

 また、PHS での TDMA/TDD の概念は下記の通りの構成になっています。


※ 64Kbps モードでは、送受信スロットを 2 つずつ束ねて使用します。




  WILLCOM 独自の高度化 PHS について

 補足として近年導入が始まった、WILLCOM 独自の高度化 PHS(W-OAM)について簡単に触れておきます。
 具体的には従来、x4 パケット方式(下り 4 スロットを 4 基地局から束ねる)で最大 128Kbps 程度だった物が、8PSK(8PSK/BPSK 適応切換)変調を利用する事により、同 204Kbps 程度としたものです。更にこの方式では最大で、x8 パケット方式まで利用できるのでそのときは、408Kbps 程度まで下り速度が上がると言うことになっています(全て理論値で、スループットはかなり低い)。

 実際的な問題としては、スピード云々よりも悪条件下では、従来の QPSK に代わり伝搬状態により BPSK に切り替わることで、若干のマージンがあることがメリットでしょうか。このとき伝送速度は半分になりますが、QPSK と比べて 3dB C/N 比が稼げます。
 逆に伝搬状態さえよければ、8PSK の恩恵に預かれるはずです。

 既に WILLCOM パケット方式で、データ通信をお使いの方はおわかりかと思いますが、従来よりは幾分マシになるといった、サービスだと思った方が良いです。

 また同社では'07 年 04 月から更に高速化したサービス(W-OAM typeG)として、8PSK/QPSK/BPSK に加えて 64/32/16QAM を適応的に切り替えるものを導入するとのことです。これにより下りが最大 512Kbps になるとしていますが、はたして実効値がどれくらいかが非常に気になります。

 わたくし的には細かい穴の多い、特に郊外や地方のサービス・リンク品質をもっと上げてほしいものです(ボカスカ)。




  基地局共通制御チャンネル(キャリア)と付随制御チャンネル
       〜制御チャンネルの種類と同期の意味〜

 PHS では通信用キャリア(無線 ch)と、共通制御用キャリアを別々に用意しています。発着信の制御など携帯電話方式でいう、ページング及びアクセスチャンネルの機能は、共通制御用チャンネル(キャリア)が受け持ちます。

 実は制御チャンネルは通信用キャリアにある、付随制御チャンネル(前章図解中の制御用物理スロットが該当)と、共通制御キャリアにある共通制御チャンネルとに分けられます。一般にはあまり知られていないと思いますが、このことはシステム構成上非常に重要です。

 具体的な発呼時のシーケンスは、おおよそ以下の通りです。まず端末機の電源を入れると、共通制御キャリア(BCCH)にて基地局をサーチ、自己の位置メモリと比較、必要に応じ上りスロット(SCCH)にて位置登録要求を出します。または、発呼時には通信リンク確立要求を出します。

 そこでトラフィックチャンネル(TCH)に該当する、使用する最寄り基地局の通信用キャリアと通信用物理スロットの割り当てを受け、そちらに移行し認証その他を終えた後、呼を通話状態に遷移します。

 この制御用キャリアのフレーム構成は、スーパーフレームと呼ばれ TDMA/TDD フレームの整数倍の構成になっています。具体的には、5ms である1フレームが集まった 100ms を1ブロック、さらにそれが複数個集まったものがスーパーフレーム(可変長)となります。

 そして同一システム内の全セルでは、共通制御用キャリアは同じため、スーパーフレームのうち最寄り基地局の、送受信タイミングだけを見つけて、使用することになります(端末待機状態)。

 すなわち、端末側で基地局を検索する際は、共通制御用キャリアを受信・検索するのみで良く、効率よく位置登録及び発着信制御が行えます。




  大違いのサービス・エリア

 まず、一番大きく違うのがサービスエリアの広さでしょう。都市部等ではさほど遜色なく使えるものの、一歩閑散とした郊外や地方へ行くと PHS はとたんにダメになります。この辺は、ほぼ面的にエリアをカバーする、携帯電話との違いがハッキリと、現れます。(いい方は悪いが、本当の田舎に行くと PHS は使えない傾向が強い)

 本来、PHS は家庭用デジタル・コードレスとして開発されたため、マイクロセル方式になっており、半径 100m〜500m 程度の極小エリアを配置することで、面的なエリアを確保しています。

 しかしながら、基地局と端末の出力が比較的弱く、使用される周波数が 1.9GHz と高いため、建物の裏や奥などに電波が回り込みにくくなり、エリアの穴がどうしてもできやすいのです。原則として、建物内では使えないことになっているのは、このためです。(例えば同じ材質、厚さの壁も周波数が高くなるほど通過損失が大きくなる)

 ちなみに、800MHz 帯と 1.9GHz 帯の電波の飛び方は、全く違います。800MHz 帯では、多少建物の裏にも回り込みますが、1.9GHz になるとまったくだめと言う感じで、ものすごく直進性が強くなります。ですから、通話に使用されるのはほとんど、直接波と反射波になります(頭部の影響でアンテナに指向性が出てしまうことも容易に実感できます)。

 また、地下街で使える場所がまだ限定される携帯に対し、PHS は都区内のほとんどの地下駅や地下街で使用できます。これは、基地局が非常に小さい上、専用線も必要なくコストも安いので、設置の自由度が高いと言う理由によります。
 しかし、携帯も地下で使いたいという要望が多く、03 年 8 月より東京メトロ地下鉄の全ての駅ホームでも、使えるようになりました(3G は順次対応中)。

 同 03 年 8 月下旬より、各社も順次使えるようになってきています。ただし現在のところ、”ホームのみ“の対応なので改札や連絡路を含め、地下で網羅的に使える PHS のアドバンテージは残っています(^_^;)。

 また地下駅での携帯基地局設置は、札幌などではずいぶんと先行(これは北海道の厳しい気象条件による)していましたが、これで都心も肩を並べられるでしょうか・・・。

 このあたりまでは、みなさんも周知の通りでしょう。




  これまた大違いの音質(^_^;

 くどいようですが、音質では逆に PHS の方が遙かに良くなっています。これはひとえに、32Kbps ADPCM のおかげですが、ISDN 固定網(64Kbps PCM)には一歩及ばずながらも、大健闘という音質です。

 しそれくらいクリアかつ、とても自然な音質なのです。携帯のように、機械的なビブラートのかかった音質とは、天と地ほどの差があります(FOMA は健闘していますがイマイチ。PDC-EFR より若干いい程度)。

 強いて難を言えば、回りが静かなところで通話していると、微妙な声のざらつき感を感ずることがあることくらいでしょうか(量子化誤差によるものです)。また、スムーズな会話に重要な音声の遅延も、実測で数十 ms と少なく違和感を感じることはありません。

 たとえば、彼女の甘い声もクリアに良く聞こえる、ということです(^_^;)。

 これらについては、おそらくみなさんも異論のないところでしょう。



  マルチパス耐性(かなり重要)

 いきなり、マニアックになって申し訳ありませんが、実転送速度が 42Kbps/6 TDMA の PDC に対し、PHS では 384Kbps/8 TDMA-TDD になっています。TDD とは、時分割多重複信のことで、同時通話(電話では必須)を実現するための方式の一つです。

 ピンポン伝送の ISDN と同じだと思えば、わかりやすいでしょう。上り、下りそれぞれ時間を区切って、送受信を行うことで単一無線チャンネルで、同時送受信を実現します。

 PDC では、FDD と言って上りと下りの周波数をわけることで、同時通話を実現しています。

 では、実転送速度が速いとどうなるかと言いますと、デジタル携帯電話方式の基礎の比較ページでもご紹介した、周波数選択性フェージングをより強く受けるようになります。やはり、実転送速度が 270Kbps/8 TDMA にもなる GSM では、SFH(低速周波数ホッピング)によるスペクトラム拡散を併用、さらに適応等化も用いています。

 PHS では、そんなに高級なことはできないので(というか、当初の設計から必要ないことになっている)、当然周波数選択性フェージングを受けたままになります。ということは、フェージング耐性で言えば、かなり弱いと言えます。これは、ある程度の電界下でも音声が断続することから、納得していただけるでしょう。

 さらに、従来の端末では空間ダイバーシティーがないため、フラットフェージングにも弱くなっていますので、これも短い周期で起こる音声の断続が、発生しやすい一因と言えるでしょう。




  基地局におけるダイバーシティと PHS で特徴的な送信ダイバーシティー

 反射物を考慮すると特に都市部では、非常に強いフェージングを受けることになり、基地局側での処理も重要になってきます。PHS 基地局が例外なく、ダイバーシティーアンテナなのは、このためです。また、WILLCOM の様な基地局では、アダプティブ・アレイ・アンテナというものを採用しています(都市部や新規なら地方でも※スマートアンテナがチラホラ見受けられる)。

  ※スマートアンテナ:WILLCOM の最新型基地局で使われる物。詳細後述

 これは、複数の無指向性アンテナ素子を用い、電気的に指向性のヌル点(感度の急激に落ち込む点)を作れるというもので、隣接セルからの干渉波排除の必要な高出力型基地局では、重要だといえましょう。

 WILLCOM では新しい基地局に、従来のアダプティブ・アレイを発展させた、可変指向性のものを導入しています。これは、フェイズド・アレイに近い考え方で、端末のある方向に指向性を振り向ける、という操作を電気的に高速 DSP で行います(いわゆるスマートアンテナです)。
 このため、空間多重化や通話品質の向上、セル半径の拡大などの効果が得られます(おそらく理想条件下では片通話も低減できるでしょう)。

 PHS 基地局においては、TDD であるということを利用し、送信ダイバーシティーという特殊な処理が行われています。つまり送受信周波数が同一で、なおかつそのタイミングが 2.5ms と短いため、受信時にダイバーシティーで選択されたアンテナが、送信時にも最も有効である、という考えに基づいています。

 通常、空間ダイバーシティーは受信時のみに行われますので、送信アンテナを切り替えるのは珍しいと言えると思います。

 また、PHS 基地局の最低出力が 20mW と端末より、3dB 高いのは端末より高級な部品が使用できるので、熱雑音などを考慮した回線設計上の、マージンを取っているためです。参考までに、PHS の端末側での所用電界強度は、38dBμで BER(ビットエラーレート:ランダムエラー)で言うと 10^-3 と規定されています。

  ※余談:端末によりますが BER が比較的良好な環境下なら、20dBμ程度でも若干
   断続しながら、通話可能なものもあります



  端末側での処理とハンドオーバー

 PDC の端末側では、ほぼ例外なく空間ダイバーシティーが行われています。アンテナのコーナーでも述べたとおり、内蔵アンテナによりますが PHS では従来、一部の機種を除き行われていませんでした。

 また、PHS でのハンドオーバーに制限があるのは、周知の通りですが'99年 2 月から順次、別な交換機に収容された基地局同士でも、ハンドオーバーができるように改善されつつあります。近年ではすっかり、MA を跨ぐような場合でもしっかりと、通話が継続されます(MA を越えてもその次の交換機あたりで切れますが)。

 さらに通常、PHS ではハンドオーバー時に、音声の断続(無音時間)が PDC に比べて長くなります。これは、サブの受信部を持たないこと(別キャリアである共通制御chを見に行くため)また、ハンドオーバーの処理は ISDN の話中機器移動という機能のメッセージを、大幅に短縮したものを使用しているため、どうしても制御に時間がかかってしまうのです(なんか、認証までやってるし)。

 携帯電話では、基地局のエリアが大きいことから、かなりの高速移動中でも、ハンドオーバーが可能となっています。ほんの一瞬、音声が断続しますが、さほど問題になるレベルではありません。

 ちなみに PHS 開業当初、車による高速移動中ハンドオーバー試験を、行ったことがあります(^_^;)。場所は都内の国道 14 号線。おおよそ、時速 70Km でも良好に次々と基地局が切り替わり、思ったよりも良好に通話できたことをおぼえています(NTT パーソナルですよ)。

 近年、PHS でもサブ受信部を内蔵し、ハンドオーバー時の処理を大幅に短縮したものが現れました。従来比 1/20〜1/50 などと謳っていますが、各社多少の違いがあるものの、高速ハンドオーバー有効時は非常に快適です。

 実際に何度か実験しましたが、ドコモ PHS では私鉄の京浜急行線にて品川を出発(ローカルネタですみません)〜、川崎くらいまでは問題なく通話できました。その先は MA 越えのためか、一度切断という感じでした(試験端末:623P 改訂ファーム版)。



  デジタル・コードレスホン?

 バブル絶頂の頃、トレンディドラマで必ず女優が使っていた、コードレスホンですがデジタル・コードレスホンをご存じでしょうか?。PHS 公衆サービスの陰に隠れて、なかりマイナーな存在となりつつありますが、留守電はもとより親機もきちんと発売されています。

 ただし、これは NTT もしくはアステルの場合です。旧DDI ポケット(α-PHS)の親機はもう数年間売場で見かけないままでしたが、ひとつだけ朗報があります(^_^;)。

 2000 年以降になって、feel H゛の一部機種で自営第3版準拠の端末が発売されているので、NEC の IW シリーズ・ワイヤレス TA や松下通工の VE-PVC01L 以降等の、自営第3版対応親機を用意すれば使用できるはずです(PVC01L は正式対応ではなく、PVC11L シリーズで正式対応に)。

  ※現在、松下通工は 2.4GHz ISM バンドにご執心で PHS 規格は
    今後やる気無しの模様(ボカスカ)

 こうすることであなたのお使いになっている、PHS 端末や機種変で不要になった端末も親機を買ってくれば、受信される(聴くだけなら盗聴ではありません。法的には単なる傍受です。)心配がまずない、デジタル・コードレスホンとして、ご家庭で使用できるのです。

 本来、PHS は家庭用のデジタル・コードレスとして開発された、と述べました。それが、ナゼか悪質なキャリアの魔の手に掛かり、携帯まがいの売り方をされてしまった結果、PHS≒使えない電話という、ダーティーなイメージが定着してしまったのです。

※下記にデジタル・コードレス親機と子機登録した PHS 端末の例を掲載しておきます。蛇足ですが VE-PVC5J など一昔前の親機も、当方で確認したところ自営第3版端末を登録することができました。
 また当方では確認がとれていませんが、情報によると PVC1、PVC55 などでも登録できるらしいです(^_^;)。



子機登録した旧DDI-P PHS 端末RZ-J90

デジタルコードレス親機(例)・VE-PVC01L
(あれだけボロクソに言っておきながらまたまた、他にろくな機種がないため松下通工製を購入(^_^;)

登録するとそれぞれ、DoCoMo は HS(ホームステーション)モード、旧DDI-P は家庭モードが利用できるようになる(呼称は異なるが同じモード)。


子機登録した DoCoMo PHS 端末641Ss

 そして、コードレスとしての知名度が低いまま、今日に至ります。旧 DDI ポケット(αPHS 規格)に関しては、先の通り専用親機の入手がかなり困難な状況でした。しかし、いくつかの自営第3版準拠の端末が発売されているので、機種は限定されますが晴れてデジタル・コードレスとして使えるようになっています。

 私は 10 年以上、デジタル・コードレスを使っていますが、快適そのものです。会話を聞かれる心配がほとんどない、というだけで安心して話せます。なにしろ、アナログ・コードレスなんか電話の内容を、近所に放送しているようなものですからね〜(ちなみに、アナログ秘話はほとんど無意味で、簡単に解除できます)。
 市販の広帯域受信機などで、簡単に受信できる上一般的な木造住宅街でも、半径 2〜300m は受信できますしマンションなど、ロケーションが良ければ 1Km 近く飛んだりもします(^_^;)。

 ですから、浮気の会話やみっともない会話は、避けたいものです(^_^;)。ただし、盗聴法(通信傍受法<インチキ臭い名前やな)の適用を受けた場合は、この限りではありません。おまけに位置登録の関係上、移動体では自分のいるおおまかな位置まで準リアルタイムで、バレてしまいます(国民監視につかわんでほしい。悪いところばかり CIA や NSA のマネこくとケガする気が・・・)。

 それから既述の通り、コードレスとして使ってももちろん PHS 本来の持ち味である、高音質が活きてきます。アナログコードレスでは、どうしても音声の歪みや若干のノイズが乗りがちでした。
 また、双方がアナログコードレス同士だと音質劣化が大きくなり、聞き取りづらかったりしますがデジタルでは、これらの問題がありません。

 あと PHS では大概の機種で、公衆とコードレスの同時待ち受けができますので、これも非常に便利です。なぜなら1台の端末で、自宅と街中をシームレスに移動できるからです(スーパードッチーモでは、PDC/PHS/HS の三面同時待ち受けもできます)。

 また話は変わりますが、コードレス機能とならんで、トランシーバー機能もなかなか便利です。何しろ、同時通話ができてベル音による呼び出しまでできますから、通常のトランシーバー(特定小電力型などと比べて)よりも使い勝が良くなっています。

 ただし、同一の親機に登録された子機同士でしか、トランシーバー機能での通話はできません(一部機種では、1台だけ親機登録した端末があれば、他の未登録端末との間でトランシーバー登録可能)。見通しでは、数百メートルくらいは飛びますが、物陰や建物(葉の茂った樹木等も影響有)が入ると全くダメになります。この辺は、やはり 1.9GHz だなぁと実感できること、請け合いです(完全見通しの実験で 500m 弱の通話実績あり)。

 ちなみに、私のところでは歴代の端末を含めて、8 台の間で相互にトランシーバー機能が使えるように、登録してあります(^_^;)。異なった親機に登録された子機同士でも、トランシーバー登録の操作を行えば、任意の内線番号で登録することができます。
 また既述の通り、ドコモの端末では親機登録がないものでも、1台だけ親機登録したものがあれば、その端末との間でトランシーバー登録をして通話することができます。少々インチキな方法ですが、原理的にはかなりの台数の登録ができるかもしれません。



  都心とその近郊では意外と使える PHS

 現在までに 10 年以上、テスト期間を入れると開業当初から、PHS を使用しています。その感想は、思ったよりもずっと使える!です。特に、一般道を車で移動中や、チャリンコでも不便を感じたことはあまりありません。

 エリアも都心からかなり離れないと、圏外になりません。NTT および、WILLCOM とも概ね都心とその近郊ではかなり良好です。

 また、一部エリア配置の良いところでは、電車数駅間くらいならハンドオーバーして、使えます(^_^;)。さらに、地下鉄でも同様のことが言えます。写真は地下基地局に使用される、アンテナの例ですが使えないところの方が少ないほど、PHS の地下鉄エリアは充実しています。

 従ってまず、ほとんどの地下駅とコンコースで使え、ある程度の規模のデパート内やその地下、テーマパークや遊園地、大学のキャンパス内など、おおよそ日常生活を行う範囲では、不便を感じないでしょう(残念ながら地方を除く)。


 また携帯電話では、都心のビル街などで一部どうしても、不感地帯等が発生します。しかしマイクロセルが基本であることと、いろいろな干渉を受けづらい分かえって、PHS の方が使えるという面もあります。
 このあたりは、PHS ならではのキメの細かいサービスエリア構成(伝搬距離が比較的短く、遅延分散も小さい点は有利)に、軍配が上がると言ったところでしょうか。

 口の悪い人には以前の FOMA より、PHS の方がマシと言われたこともありました(^_^;)(FOMA はそれ以前に端末の出来が最悪なまま)。しかし、実際問題としては PHS の方が PDC よりいい面(場所)は、都心部に限って言えば多々ありました。

 それから私はつくづく思うのですが、電車内に PHS 基地局を設置して、LCX で有線系とリンクしてくれないかなぁ、と思っています。なかなか、コストはかかりますがどこか、実験してくれるキャリアと鉄道会社は、ありませんかねぇ〜(えっ?、そんなことやるメリットがないって?<ボカスカ)。

 とりあえず、新幹線には LCX で列車電話があるのですから、やってみてくれませんか!?。ただ PHS は所詮 PHS。山に行くと当然ダメで、もしアンテナマークが振っていても、まったく発着信不能という場合が多いものです(^_^;)。

 さらに、本当の地方へ行ってしまうと、ほとんど使えないと言う感じです。まず、駅前や商店街のみしか使えません(^_^;)。あとは、幹線道路沿いでしょうか。これでは、さすがに辛いなぁと思います。

 幸い、私は東京 23 区隣接の田舎街に住んでいるので、まったく不便は感じません。なんと言っても、たんぼのどまんなかでも(360゜たんぼでも基地局それなりに有)使えてしまいます。屋外に関してはほとんど、エリアの穴はないと言っていいでしょう(ほぼ全域で ドコモ・WILLCOM ともバリバリ。アステルは弱い場所が多くてまいりました)。



  PHS 基地局の形態とその特徴

 PHS で使用される基地局には、大きく分けて 4 つほどのタイプがあります。まず、実証試験の際に話題になった、電話 BOX 設置タイプ、柱上設置、自立柱設置、ビル上にわけられます。そのほか、地下やビル内などの閉鎖空間に設置されるタイプも、天井設置と据置型に分けられます。

 標準型である、20mW 出力の基地局の場合、見通し距離はそれぞれ BOX 設置で、〜200m 程度。柱上および、自立柱で 200〜300m 程度、ビル上では 300〜400m 程度、そして非常に見通しがよい場合で 500m 程度となっています(WILLCOM 最新のもので公称 2Km 程度)。

 実際には、自立柱や屋上設置のものはには、高出力型が用いられています。また、留意する点は端末の出力はあくまで、同じであるという点です。

 また、これらを大別すると柱上設置や、BOX 設置の 20mW のものを”高トラフィック型“と規定、都市部や繁華街に適しているとしています。反対に、WILLCOM の様なビル上設置や、自立柱型のものを”低トラフィック型“と呼び、比較的トラフィックが低い郊外などに、適しているとされます。

 両者の差は、基地局の地上高による見通し距離の違いと、下り回線の出力でしょう。WILLCOM のような方式は本来、都心部などのビル街には向きませんが、非常に狭い間隔で基地局を設置することで、その欠点を補っています。素人目には、地上高が高い方が面的エリアを確保しやすいだろう、と思われがちですがそれは早計です。


低トラフィック型基地局の例

高トラフィック型基地局の例

 1.9GHz 帯の電波というのは非常に直進性が強く、回折によるエリア確保はほとんど望めません。実際に通話に寄与する信号は、直接波と反射波がほとんどとなりますので、いくら地上高を高くとったところで、どうしても陰ができるのです。

 従って現在都心などのビル街では、ドコモとほとんど変わらないような間隔で、基地局を設置することでそれを補っているのです。

 それでも残念ながら、そうではない半端な郊外では(置局がまばらなため CS ごとのオーバーラップが少ない)、穴があったり屋外はよくても室内は挙動不審だったり、というデメリットがあります。

 事実都心においての WILLCOM(旧 DDI-P) は開業当初、ハンドオーバーすらままならず使い物になりませんでした(基地局密度が低すぎたため)。それとは対照的に、エリア内では発着信・ハンドオーバーともきちんとできたのが NTT で、これは両者のコンセプトの違いと欠点を、端的に物語っていると言ってよいでしょう(通話品質と呼損率が違う)。

 低トラフィック型を都市部に導入する場合、コスト増を招くだけであまりメリットはありません(強いて言えばハンドオーバー起動頻度低減でしょうか)。当然、干渉が多い分エラーレートも悪化します。

 また、上下回線受信の入力電界レベル差は 19dB(電力比でおおよそ 90倍弱)にも達し、場合によって下りしかとれていない状態、すなわち片通話(上りのみ断続を含む)の発生頻度が、高くなります。都市部では、さすがに基地局の数が尋常ではないので、あまり感じませんが郊外へ一歩出ると、そのことを実感できます(私の地元では片通話以外に呼損が多発。アンテナマークは振っていても、着信したりしなかっりで困ります)。

 さらに、高出力型ではハンドオーバーの際、一つの基地局をいつまでも引きずるという、好ましくない現象がキャリアを問わず起きます。ただし、エリアのオーバーラップが十分あり、きちんとした配置であればこの限りではありません。

 また通話の際、非常に短い音声断続(バーストエラーによるもの)が、比較的多いのも低トラフィック型の特徴といえましょう。無線区間の品質を高く保つためには、基地局と端末との距離が近く、マルチパスの到達経路差も短い方が、当然有利になります(遅延スプレッドによる)。

 PHS では側音(自分の声を受話器に戻すこと)が少なく、片通話が発生していても気づかない場合が、ほとんどです。低トラフィック型の場合、高利得アンテナやダイバーシティー等で、それらをカバーすることになっていますが、完全にはカバーできないのです。
 また WILLCOM 最新のものでは、CS の指向性を電波到来方向に振り向けることで、さらなるセル半径の拡大を実現していますが、あくまで理想条件下でのことです。

 意外と思われるかもしれませんが、このようにして実際に自分は(下り)は聞こえていても相手(上り)には断続しまくって聞こえていない、ということ(片通話)が結構あります(アンテナ内蔵のダメ携帯でもよく起きるマヌケな現象)。

 低トラフィック型で見通し距離を稼げるのは、あくまでも見通しが利く場合のみで、障害物があればこの限りではないのです。逆に、都市部での高トラフィック型の振る舞いを見ると、通りを短冊状にカバーしていきます。

 その通りに面した交差点を曲がった角などでも、反射のおかげである程度エリアを確保できるのです。これを繰り返して行き、きめ細かく通りをカバーしていくのが、高トラフィック型の回線設計コンセプトです。当然、低出力ですからエリア外の通りの奥に行ってしまうと、とたんに弱くなりますが逆に、エリア内での品質は高く保たれるのです。

 なお、無線をやられている方なら、19dB の差なんて「プリアンプを入れればよいだろう」と思われがちです。しかし、1.9GHz 帯での N/F(ノイズ指数)は比較的悪く、デジタルですからアナログと違って、むやみに受信部の利得をあげ受信電界を稼げばればすむ、という問題ではないことに気づくはずです(余計な干渉などを拾いやすくなる)。

 理想的なのは、都市部には高トラフィック型、郊外には低トラフィック型、ときっちりとロケーションに適応した、回線設計を行うことです。PHS はあくまで、デジタルコードレスの発展形態であり、安く使える携帯電話ではないのです。

 ですからこれら、システム特性を熟知した上で使用しないと、大きく裏切られることになり、「こんなはずじゃなかった」ということになりかねないのです。


  ※右の写真は比較的新しい WILLCOM CS の一例


 個人的には、エリア内での発着信の信頼性(呼損率の低さ)と、データ通信時のスループットを重視するのならば NTT が(BER:ランダム・エラー・レートが比較的低く、基地局との距離が比較的近いため)有利でした。しかし既に、05 年 4 月末で新規受付停止です(^_^;)。
 また、あくまでエリアの面的な広さをとるのならば、WILLCOM(CS がほぼ例外なく高出力型かつ、基地局の地上高が高いため)が有利でしょう。

 さらに近年加入者が伸びている、定額データ通信プランですがドコモと、WILLCOM では実際のスループットに大きな違いがあるので、データ通信を安定して行いたい、と言う方にはドコモの @FreeD が有利でした。

 バーストデータである、WEB/MAIL ならともかくストリーミング、ファイル転送、VoIP など連続的なデータ転送にはまるで、WILLCOM の方式は向きません(^_^;)。
 たとえば、高々 17Kbps 程度しか使わない VoIP クライアントを使おうにも、スループットが足りないため 128Kbps 以上のプランでしか実用にならないのです(特に地方)。選択肢が他にない現在、これは非常に残念なことです(特に上下非対称で上りが細い為)。

 更に悪いことに、音声データ自体 8Kbps 程度の SKYPE でも、32Kbps モードダメパケットでは音声が途切れまくり、ほとんど使い物にならない時があります。きちんと使えたとしたら、それは郊外もしくは深夜などで、トラフィックが極端にすくないだけで運がよいのです(^_^;)。

 また一部、WILLCOM 信者?のサイトなどではアステル・ドコモ PHS が、まるで使えないかのうよな記述が見受けられます。ぜひご注意していただきたいのですが、それらは大間違いなのです。

 ほとんど言いがかりに近く、少なくともドコモは都心とその近郊では既述の通り、遜色なく使えています。

 アステルは WILLCOM やドコモよりだいぶ落ちますが、それなりに(^_^;)使えました。ただしエリアの穴が比較的多いため、残念ながらあまりお勧めできません(ボカスカ)。もし、アステルももっと使えたよ?、などというご意見があればぜひお寄せ下さい。
 ただし、電柱上に残された”同軸も接続されていない、ただの支柱“をアンテナだと言い張るような、アステル教信者の方からの意見は、無線工学上絶対にあり得ないことなので、受け付けません(そういう方は、オカルト研究のサイトへどうぞ<ボカスカ)。

 なお非常に残念なことに、既に事業から撤退したアステルグループでは、全国でサービス停止のため既に停波しています(街中至るところで回線、電源とも外された CS が見られ悲しい限り)。また使えない FOMA を鳴り物入りで始めた頃から、やる気のまるでなかったドコモも'08 年 01/07、ついにサービスを停止してしまいました。
 これで事実上競争のない WILLCOM 一社体制となったわけで、非常につまらないことになっています。

 今、振り返ると i モード開始前から E メール転送などが出来、わたくし的にも重宝したドコモの NEXT サービス(ポケットベル)も '07 年 03 月末でサービスが停止され、旧 au グループの PDC 停波に続いて何とも言えない気分を味わっています。

 とにかく、これでまたひとつの時代が終焉をむかえてしまいました。




 というわけで、各基地局形態ごとの違いや、携帯・PHS 両者の違いなど、解っていただけましたでしょうか?。また、掲示板での質問も常時受け付けております。あとは、業界の裏話なども大歓迎です。


記事一覧にもどる