NHK 技研公開・'08 レポート



 更新が遅れて済みません。今さらながら速報版です(ボカスカ)。今年は平年通り梅雨の走りに開催となり、行きは良かったのですが帰る途中になって小雨に見舞われました。

 上層階の展示は相変わらずなく昨年のような、がっかり感を味わうハメになるかと思いきやなかなか良い展示もありました。

 今回も掲載が大幅に遅れましたが、気になったものピックアップしてご紹介していきます。




 スーパーハイビジョン用の新変調方式

 のっけから見たこともないコンスタに遭遇しました(^_^;)。
 これは将来想定されるスーパーハイビジョン放送に向けた新しい変調方式で、32APSK(A は Amplitude の意)とのこと。

 21GHz 帯による次世代放送衛星の中継器に載せることが前提なので、QAM は使えず編み出した?変調方式です。碁盤の目状にコンスタレーションが現れる QAM と違い、アジサイの花のような美しい?配置になるのが印象的でした。

 隣接するブースではスーパーハイビジョン伝送用コーデックについても展示されていましたが、H.264(MPEG-4/AVC)であり目新しさすらありませんからことさら、写真のコンスタが新鮮で仕方がありません(ボカスカ)。

 例えば 3G 携帯の高速データ通信方式に利用される 16QAM では単一キャリアあたり 1 シンボル期間で 4bit 分(16 通り。4bit=2 の 4 乗)のデータが伝送できますが、32APSK では同条件下で倍の組み合わせとなる 5bit 分伝送できることになります。

 放送衛星の中継器では電力増幅器に TWT(マイクロ波用真空管の一種)を用い飽和動作させるため、QAM はその非直線性の影響により利用できません。




  衣装その他の色に左右されない背景合成

 従来のクロマキー合成に代わり、グレー背景等(赤外線を効率的に反射する)の部分に赤外線を放射しリアルタイムにマスクを生成し、自由な背景等を合成できる技術が展示されていました。

 クロマキー合成(特定の色相部のみを任意の背景等に置き換える合成技術)では、その”キー“となる特定の単色背景等(肌色の補色である青色又はグリーンが多用される)をマスクとしてしまた。そのため例えばブルーバックなら、出演者は通常青系の衣装を使えず(合成画が抜けてしまうから)クロマキーの難点とされてきました。

 同展示ではクロマキーの代わりに赤外線照明とそれを効率的に反射する幕を使い、アナウンサーの背景にリアルタイム背景合成を行っていました。クロマキー合成では出演者の衣装のエッジ(とくに色白な女性の肌にも映り込むことがある)や目のキャッチライトに、その合成のための背景色(青や緑)が映り混んでしまうことがあり、合成結果の不自然さの原因にもなっていました。

 これらを解消できる同合成技術は、目新しい画期的技術ではないにしろなかなか、味のあるものとして私の目に映りました。



 55GHz 帯デジタル FPU

 既に各局の生中継などで活躍している 7GHz 帯の小型デジタル FPU を高度化したものです。とくに広帯域化と MIMO による伝送の高速化により約 1 フレームといった低遅延を実現しているのが特徴です。
 現行品では遅延が数倍(100ms 台。数値をメモしわすれました<ぼかすか)ありとくにスタジオとのかけ合い時などにおいて、ワイプ(P in P、いわゆる子画面)側とのリップシンクがとれず気持ちのわるい違和感が出てしまいます。
 またかけ合いが終わりワイプアウトするときも、この数フレームの遅延によって画面にジャンプカット(※)のようなショック(遅延分のコマが飛ぶため)が
おき、見ていてもとてもほめられた物ではありませんでした。

  ※ジャンプカット:コマが飛んだように見えるので通常編集では用いない手法。いわゆる禁じ手(ボカスカ)。

 今回の展示ではそれらの違和感のもととなる”遅延“を低減したもので約 30ms を実現しているとのこと。デモにおいても素早い動きやカメラのパンをしてもらい、低遅延を実感することが出来ました。
 55GHz 帯ですからアンテナは小さくて送信側が 2 つ一組の(2x2 MIMO だから送信機は 2 台ある)半円状のレドーム部に 1つずつ内蔵されています(写真上)。受信側は本当に小さな電磁ホーンで小指の先ほどといった感じです(写真右下)。

 またすっかり忘れていた同装置の受信部と諸元パネルを掲載します。



・受信部



 アイコノスコープカメラ(アイコ将軍?!)

 右の写真は標準初期白黒テレビ放送用(1939 年)の、アイコノスコープという撮像管を使ったテレビカメラです。カメラ自体は以前にもご紹介した気がしますが、今回はなかうなか説明しづらい”撮像管“であるアイコノスコープ管が展示されていましたので改めてご紹介します。

 そのいかつい有様からなのか”アイコ将軍“と当時あだ名があったとか、ないかとか!?。現在も I.I. を使った超高感度カメラや日立のスーパーハープと言った”カラー“で超高感度動画撮影が出来る撮像管も活躍していますが、とくに光電変換幕と電子銃及び光の入射方向などの関係が全く異なります。

 現行の撮像管はこれらの位置関係が直線的ですが、アイコノスコープ管というのは下の写真の通り電子銃(カソード)が下方に向いてついており、光電変換幕(ターゲット/アノード)に対して光の入射方向(撮影方向くらいの角度)と電子ビームの照射方向が同一面になるのが特徴です。

 現行撮像管では光電変換幕の表から光を入射させ、その背面を電子ビームで走査するのでこれらの関係が、一直線上になるわけですがアイコノスコープ管は写真のような特徴的な構造のため、カメラ自体もいびつな形に手前下部がでっぱってしまうのです。

 しかしながら2眼レンズといい、その特徴的なでっぱりといい実に頼もしい雰囲気のカメラではないでしょうか。





 本当に更新が遅くて申し訳ありませんでした。m(_ _)m。