第一回 「出会い」と「セクハラ」編

ここは東京、丸の内。総合商社「株式会社宝条」の次期社長候補であり、重役でもあるセフィロスは 専用の執務室にいた。
「株式会社宝条」の自社ビル、12階のフロアはすべてセフィロス専用の執務室となっており、広々とした 部屋には毛足の長いペルシャ絨毯がしかれ、来客用に本革のソファセットと大理石のテーブルが置か れていた。
彼が仕事をする机はセイロン産の最高級の黒檀、そしてその上にはうす紫色をした最新型 のノート型パソコンが置かれていた。
朝、9時に出社したセフィロスはいつもの日課として、女子社員が入れたコーヒーを飲みながら、朝日 新聞、読売新聞、毎日新聞を読み、日経新聞で株価と貨幣のレートを確認後、スポ日の風俗情報とエ ッチ小説の続きを読み、パソコンでE−mailを確認、彼付きの男性秘書ザックスに今日のアポの入り 具合を聞き、暇があるとわかるとおもむろに観葉植物の鉢植えの裏に隠してあったアイアンを取り出し、 ゴルフのスウィングを始めた。 しばらく体を動かしていると、先程飲んだコーヒーの影響のあって軽い尿意を感じた。
彼はためらうことなく、ほぼ彼一人が独占しているといっていい12階フロアの男子トイレに向かった。
セフィロスがトイレに入ろうとすると、どこからか男のすすり泣きのような声が聞こえてきた。
「何だ」
その声は奥にある大便用のトイレから聞こえてきているようだった。
「?」
扉が開いていたので覗きこむと、一般職の女子社員の制服を着た女がかがんで泣いていた
「これまた………失礼……ん?」
まぬけな対応をしたセフィロスがもう一度その女を見た。
「何だお前は……」
白いブラウスに水色のベスト、そして同色のタイトスカートといった、典型的な女子社員の制服 を着ていたのは、意外にも男だったのである。
「なんでそんな格好をさせられている」
男は立ちあがった。華奢な体つきをしているが、身長が高い。しかし、女性仕様の制服を無理矢 理着せられているため、水色のタイトスカートはまるでミニスカートのようになってしまっていた。
「あ、またこんなところで泣いてる」
背後から声が聞こえて振り向くと、ザックスがいた。
「役員フロアのトイレは一般社員は使ってはいけないことになっているんだよ、ヴィンセント君」
「ザックス、この男を知っているのか?」
ザックスはヴィンセントと呼ばれた女装した男子社員にハンカチを手渡しながら言った。
「今年入った新入社員だ。「株式会社宝条」が始まって以来、初の男性一般職の社員なんだ」
セフィロスは目を丸めた。この商社は他の会社同様、女性社員は総合職に就くものと一般職に就 くものと分けられているが、男性は分けられていなかったはずである。第一、この会社では大卒以上の 者しか採用されていないはずである。
「代々木にあるコンピューター関係の専門学校を今年卒業してばかりの子なんだ」
「………しかし……」
「……社長が気に入って、書類選考段階で採用を決めちまったんだよ」
ザックスは天井を見上げる。 ここから上のフロアはセフィロスの父であり、会社社長である宝条の社長室があった。
「あの………エロオヤジ……」  

ヴィンセントを帰した後、セフィロスは社長室にいた。
「すぐに見つけると思っていたよ。顔は似ていないのに、お前と私の好みはよく似ているからな」
父親であり、社長でもある宝条は暇そうにメモ用紙にいたずら書きをしながら言った。
「履歴書を見た時、ビビビッ……ときたんだ。どうだ、なかなか美人だろ?」
死語になりかかっているかつての流行語をつぶやく。
「それで何故、女子社員の制服を着ているのだ?」
宝条は書き終わったメモ用紙で紙飛行機を作ると、セフィロスに向かって飛ばした。
「生活にうるおいが欲しかったんだよ」
紙飛行機はセフィロスの肩を横切り、ゆるやかに低下した。
「それはプライベートで求めてくれ、こんなところで求めるものではあるまい」
セフィロスは宝条の机の上に音をたてて両手をおいた。
「社内規則第22条………」
宝条は社員手帳を引き出しからとりだした。
「一般職社員は総合職社員と区別するために、規定の制服を着用しなければならない」
「………」
「ま………そういうことだ……この会社には男性用の一般職の制服はない 」
セフィロスはにじり寄り宝条の襟をつかんだ。
「本当は制服のいらない秘書課に配属させようと思っていたが、役員に反対されてな。 泣く泣くだよ、庶務に配属させた」
にやりと宝条が笑った。
「その顔は………もう気に入ったようだな、あの男を。確かに、お前は私の息子だ。嗜虐心をくすぐる ものに反応するのが早い。そして、強引に手に入れ、気が済むまで弄ぶ。別にいいのだぞ、あの男を 好きにしても」
「馬鹿馬鹿しい……不純な……こんな朝から交わされる会話ではない………」
セフィロスは踵を返して社長室を辞した。  

給湯室でヴィンセントは女子社員に取り囲まれていた。
「ちょっと、ヴィンセント、あなたが昨日漂白していった湯飲み、まったく茶渋がとれていないじゃない」
ベテランの女子社員ティファがヴィンセントに言った。
「仕事途中でふらりとどこかいっちゃうし、ちゃんと仕事やってよねー」
ヴィンセントは慣れない手つきで湯飲みをのろのろと洗い始めた。
「ティファ、ねえ、聞いた、ヴィンセント、役員フロアの男子トイレで泣いてたって、セフィロス専務の秘 書のザックスさんに送られて帰ってきたって」
ユフィがささやくように言った。
「新人のくせに生意気よー!女子社員の憧れの的、ザックス秘書やセフィロス専務に慰めてもらうな んて………」
「そうよ、そうよ」
「女装した男子社員のくせにー」
二人に罵声をあびせられて、ヴィンセントは赤い瞳を潤ませた。  

給湯室が見える廊下の柱の影、セフィロスとザックスは二人してその光景を傍観していた。
「……嗜虐心をくすぐる男と社長が言っていたが、本当にそうみたいだな。早速女子社員にいじめら れている」
「うーん、あの制服着てると、そのまま女子社員に見えるんだけれど、一応は男なんだよな」
給湯室で湯飲みの割れる音がした。
「しかもなんだかトロくさそうな子だ」
黄色い罵声が新入社員に浴びせられているようだった。
「私だったら、一日で辞めている。こんなセクハラ会社」
「不景気だからね。辞めようにも辞められないのさ。それに一応、一流商社に就職したわけだからね。 一般職採用を黙っていさえすれば、ここの社員というのは、結構おいしいステータスとなる」
「ヴィンセント、湯飲み洗い全部やっておいてねっ!」
ティファとユフィはヴィンセントに乱暴に言い残すと、自分達のブースへ戻っていった。
くすんと鼻をすすると、ヴィンセントは湯飲みの茶渋をとるため、クレンザーをスポンジにつけた。
「制服……似合うな……社長に押し倒されるのは時間の問題かもしれない」
ザックスは続ける。
「腰のあたり、男には見えないくらい細いもんな」
セフィロスはため息をついた。そのままあの父親のおもちゃにしてしまうには惜しい男だった。
「ザックス……」
「なんですか?専務」
「茶を一杯、私のところへ運ぶよう彼に言っておいてくれないか」
「………」

ヴィンセントは茶をセフィロスのもとに持ってきた。 初めて入るセフィロスの執務室を珍しげに見回している。
「茶の給仕も仕事のうちに入っているというのに、今まで、顔を合わせたことがなかったな、ヴィンセン ト」
「はい……セフィロス専務は女子社員の憧れですから、この役目だけは奪いあいになるんです」
「………」
よく茶を持ってきてくれるのはティファだ。こんなところで露骨に女子社員の力関係が明らかになっ ている。
茶を飲むセフィロスに頭を下げるとヴィンセントは部屋を辞そうとした。 しかし、毛足の長い絨毯で足をすべらせてもんどりをうって倒れた。
「…………」
セフィロスの目の前には大股開きのまま、彼に足を見せて仰向けに倒れているヴィンセントの姿が あった。
(どうしたらこんなに派手に倒れることができるんだ?)
セフィロスは席を立ち、ヴィンセントに近づいた。
「おい」
「すみません」
ヴィンセントはとっさに立ち上がろうとした。 が、セフィロスに両足首をつかまれて立てなくなった。
「専務……」
「君は一般職社員のくせに、まだ、ちゃんと、社員になりきれていないな」
「あ………いや………」
セフィロスの手が、ヴィンセントの制服のスカートの中に伸びる。 何かをつかむとぐっと引き下げた。
「やめてください…!!セフィロス専務」
セフィロスの手には人肌に暖められた男性用のトランクスが握られていた。
「こんなものを履いているなんて、変だ……今度からはシルクのレース付きのパンティを履いてきたまえ」
セフィロスの目は笑っていた。
「専務……」
「しかも、生足のまま靴をはいている。いけないな、しっかりストッキングを履いてくるように。……パンス トでは駄目だ。ちゃんとガーターストッキングを履いてくるよう」
セフィロスは念を押すように言った。
「そんな………」
「買いに行くのが恥ずかったら外商の者を今、呼ぼう。どこの店がいいかな?」
ヴィンセントは片足をセフィロスに捕まれたまま、ふるえていた。抵抗する様子はない。
どうやら自分が 今どのような境遇に置かれているかを熟知しているらしい。
ザックスの言っていた言葉は正しいのかもしれない。今のこの男はこの会社に置いてもらえるためだ ったら何をされてもかまわないという状態なのだ。 普段だったら「セクハラ」として裁判沙汰になりそうなこの恥ずかしい行為をこうして、耐えようとしてい る。
セフィロスは思った。 この男を支配したいと。 心の奥までこの男を自分の支配下に置きたいと。
「下着……今日…会社の帰りに買います。……ですから……返してください…」
「何を?」
「し……た………ぎ……」
「聞こえないな……何を言っているのかな」
長い睫毛が揺れ、紅をつけているわけでもないのに、紅い唇がひくひくと動いた。
「私の下着」
セフィロスは自分の手にまだ握っていたトランクスを見た。
「これか……別になくてもかまわないだろう」
「ダメです…これがないと………階段の上り下りができないんです……」
「?」
ヴィンセントはおずおずとセフィロスに言った。
「私が男とわかっていても、階段で、スカートの中身をのぞきこもうとする社員の方がいるんです…… …ですから………」
では……なおさら早くこの男を自分の下僕にしてしまわなければならない………。
「返して欲しければ………」
セフィロスはヴィンセントの目の前に下着をちらつかせた。
「私のすることに……素直に従うといい」

セフィロスはこんな時に限って、何故か幼い頃、母親が枕元で語ってくれた物語を思い出した。 「天女と羽衣」の物語だ。 天界に帰る羽衣を取り上げられた天女はその男と結婚する。 子供の頃にはさほど面白い物語とは思わなかったが、今大人になって考えてみると、ずいぶん いかがわしい物語だ。 男は天女の裸体を覗いた上に、着衣を奪い、彼女に結婚という形をとりながら、セックスを強要 する。 欲望むき出しのその男の行動が今となっては理解できるような気がする。
「専務………」
セフィロスは肘掛け付きの椅子に座り、ヴィンセントを自分の膝の上に座らせた。 スカートの生地をめくりあげ、大きく細い脚を開かせた。そして露出したそこを指で弄び始めると、 ヴィンセントは熱い息を吐き出しながら、彼の名を呼んだ。
「セフィ…ロ……ス…専務……」
空いている方の手の人差し指で、熱を帯びながらも、頑なに侵入者を拒んでいる後部の秘所を 指でかきまぜるようにして動かした。
「あ……は………ん………いや………あああ」
黒い髪をかきみだし、ヴィンセントは声をあげ続けた。 しばらくして、前を弄んでいた指に生暖かいどろっとしたゲル状の液体の感触を感じたセフィロスは、 ヴィンセントの目前にそれをさらした。
「早いな……ほら……見ろ……お前のだ」
「見せないで……ください……は…恥ずかしい」
セフィロスは片腕でヴィンセントの腰を支えると、どっと黒檀のデスクの上にうつ伏させた。 デスクの上に置いてあった書類や新聞は散乱し、床に落ちた。白い臀部をさらしたままのヴィンセントが 後ろを振り向くとセフィロスは冷たく言った。
「デスクにしっかり掴っていろ……」
「………」
ヴィンセントはデスクにつかまった、その瞬間、背後からセフィロスが体重をかけてきた。と同時に 自分の秘所に摩擦を伴った痛みが走った。
「ひ………あああああああああ」
その痛みはセフィロスが体を動かす度に大きくなっていく。
「痛い……痛」
「泣き叫ぶな、それも、そのうち快感となる………」
セフィロスは体をより激しく動かした、やがて、彼も頂点を迎える時がきた。
「ああ」
ヴィンセントの臀部から内股に、セフィロスの精が流れていった。 デスクの上に放心状態で横たわっているヴィンセントにセフィロスは冷たく言った。
「これから私が飲むものすべてお前が運んでくるように………」
ヴィンセントは小さく肯いた。

(TO BE CONTINUED)  
次回「丸の内おやぢセフィロス物語」
第二回『銀座高級クラブ接待編』 セフィロス、接待先の高級クラブで「マイウェイ」を熱唱か?