(この物語はフィクションです)
  
 ヴィンセントのシュートはゴールの真中に吸いこまれていった。
 セフィロスは身構えるとパンチングで返した。
 ぼこっ!
 はじき返されたボールはヴィンセントの顔に命中した。
 体重の軽い彼の体が2メートルほど飛ばされた。
「ばかやろーーーーーー!オウンゴールになるところだったぞ!!!」
 転倒したヴィンセントにチームメイトが近寄る。
「大丈夫か…」
「すまない……大丈夫…だ……」
 ボールはバレット・アサモアが拾い、神羅ゴール側へドリブルしていった。
「ゴールはあっちだ!ヴィンセント!お前、一点でも入れられなかったらパスポート燃やすからなっ!」
「キャ……キャプテンを怒らせてしまった………」
「…………大丈夫、ヴィンセント、無理しないでヨ、おいらがヘディングで一点入れるからさ」
 ヴィンセントの体を起こすのを手伝ったのは、ナナキ・クローゼという名のコスモキャニオン・ポーランド出身の選手だった。
「いや…私も一点入れないと…パスポートを燃やされてしまうだろう…」
「セフィロス・カーンキャプテンはそんな酷いことはいくらなんでも…しないよ、きっと」
 ヴィンセントは起きあがり、ナナキと一緒にボールを追った。
「ナナキは今回が初めての国際試合だったな」
「うん、そうだよ…」
「私は彼と長いこと国際試合に出ているから知っているんだが…彼は有言実行の男なんだ、勝つといえば勝つし、燃やすと言ったら燃やす」
「…ひえええ」
 ナナキ・クローゼは耳を下げた。
 ボールはバレットとツォン・ミョンボの競り合いになっていた。
「どうにかして一点入れなくては……」
 選手達の背後で応援の声に混じりながらも、セフィロスの声が聞こえてくる。
「走れええ!!走れええ!!ばか!!奪え!!こらあ」
「どうでもいいけどさあ…キャプテンさ」
 ザックスがこぼれだまを拾った。
「あいつ…声でかいよ」
「…はははは…」 
 クラウドは笑った。
「ほーら、ナナキ」
 ザックスはすでに敵チームのゴール近辺まで来ていたナナキにボールをあげた。
「よし、行くよ!おいらを見ていてね〜ヴィンセント」
 ヘディング!ボールは左隅に吸いこまれていったが、キーパーによって止められた。
「ちえ」
 シドがキーパーの蹴ったボールをカットし、ドリブルしていく。
「ほれ、ヴィンセント、一点入れてやれ」
 ヴィンセントにパスする。
「一点入れなくては…一点」
「ゴールはあっちだ、ヴィンセント」
 チームメイトが全員ヴィンセントに向かって敵ゴールの方角を差した。
「小学生のサッカーかよ」
 セフィロスはつぶやいた。
 敵ゴールの近くまであがってきたヴィンセントはシュートをした。
 ボールはきわどいところでキーパーの手からすべり、ゴールした。
「やった!これでパスポートが返してもらえる」
 スタジアム中に悲鳴があがった。

 ピーーーーーーーーー
  
 審判が笛を吹いた。
「オフサイド」
「オフサイドかよ!!!」
 レノ・ジョン・ファンは助かったというような顔をした。
 へなへなへな…とヴィンセントは座り込む。
「元気だしてよ、ヴィンセント…」
「ナナキ…………」
 ボールはツォンにパスされ、セフィロスのいるゴールへ向かっていった。
「パスポート再発行って…領事館…でよかったんだっけ…それから、証明写真って…この国のどこに行けばやってくれるかな……」
「ヴィ…ヴィンセント………まだ前半戦でそんなこと言っちゃだめだよ!!!」
「神羅民国の言葉とかわからないけど…英語が話せれば再発行してもらえるよな…」
「領事館はドイツ人が働いているんだってば…ヴィンセント…そんなこと…言ったら駄目だって」
 どよどよと落ちこむヴィンセント、一方、ツォンはドリブルをしながら、どんどんセフィロスに近づいていった。
「来るぞ♪来るぞ♪来るぞ♪」
 セフィロスは嬉しそうにかまえる。
「きたーーーーーっ!」
 バレットに阻まれたツォンはレノにパスをする。
 レノの低く近い位置からのシュート。
 セフィロスは飛び出し、上から覆い被さるようにしてボールを両手で止めた。
「あっっ!!!!」
 チームメイトが皆叫んだ。
 レノのスパイクがセフィロスの頭に命中したのである。
「わああああああ」
 笛が鳴った。
 緑色の芝にうつぶせで倒れたセフィロスの額からどくどくと血が流れてきた。
「あああああ、救護班!!」
 リーブ・フェラー監督が手をあげる。
「カーン!セフィロス・カーンキャプテン!!」
 試合は一時中断、救護班がかけつける。
 救護班がセフィロスを囲い込んだ瞬間、
「あーーーーー驚いた!!」
 セフィロスは何事もなかったように起きあがる。
「おい、試合前半の残り時間は何分だ!!」
 血液が青いユニフォームの胸のあたりまでしみこんでいた。
「あと…………3分です」
 救護の人間が言いながら、セフィロスの頭にガーゼをあてようとした。
「いらねえ、どうせ、もうすぐハーフタイムだ、試合続行だっ!!」
 救護班を強引にさがらせた。
「つーか、キャプテン、頭と顔、赤くて怖いんですが」
「これくらいたいした怪我じゃない!お前達、前半に必ず一点入れろよー!!!!」
 流血したまま試合は続行、セフィロスはゴールポストの前で叫ぶ。
「ばっちり見てるからなーーーーっ!」
  
ハーフタイム

 おそらくドイツ人選手達にとって人生で一番長いと感じた3分間。誰もが一点入れようとして入れられなかった。
 救護班によって手当てされ、頭に白い包帯をまかれ、ネットで固定されたセフィロスがベンチでくつろいでいた。
「お前ら、それでもドイツの選手か?格下の国相手にまだ一点も入れてないじゃないか!!特にヴィンセント」
「は……!」
 セフィロスはヴィンセントを睨みつけた。
「オウンゴール未遂の罪は重いぞ…」
 セフィロスはポケットから地図をプリントした紙切れを取りだし、ヴィンセントに投げつけた。
「これは……」
「神羅民国のこのスタジアム近郊の地図だ。赤丸がついているのが領事館の印だからなーーー」
「うううううううううううう」
 泣きだしそうになっているヴィンセントをナナキ・クローゼが慰める。
「泣いちゃだめだよう、ヴィンセント、さっきのオフサイドは惜しかったよ」
「そうだよ、泣いてはだめだ」
 疲れきったようにクラウドも言う。
「まだ泣くなあ!後半45分+ロスタイムがある」 
 セフィロスは叫んだ。
「昨夜、俺は神羅民国の今回の試合のビデオを全部見て研究してみたが…。やつら、後半戦40分越えたあたりから強くなるぞ、覚悟してかかれ」
 セフィロスは選手達が彼の説教にうわのそらでヴィンセントの周りに集まり、なにやらごそごそしているのを見つけた。
 彼が覗きこむと、選手達はメモ紙に領事館の地図を書き写していた。
「お前ら!おい…領事館の地図を書き写しているんじゃないっっっ!!まったくぐず共なんだから…」

後半…

 メンバー入れ替えなしにゲームは始まる。
 「一点…」
 ソルジャー・ドイツチームはつぶやきながらボールを蹴る。
「絶対入れろよ!!」
 背後には白いネットをかぶったセフィロスが叫んでいる。
 前半のラスト、スパイクで額に怪我をしてかなり出血したはずなのに、彼は元気だ。
「セフィロスは元気だよね〜」
「疲れを知らない男だからな〜ジェノバ入りだから」
 ザックスがイリーナ・チョンスからボールを奪う、そのまま敵ゴールへあがっていく。
 激しいブーイングがあがった。
「さて、俺もそろそろきちんと仕事をしようか」
 そのままドリブル、クラウドもあがってきた。
「よし」
 クラウドにパス、そのままクラウドがゴールにシュートした。

後半5分

「ゴーーーーーーーーーーール」
 スタジアムの歓声が悲鳴にかわった瞬間だった。
「えらい!えらいぞクラウド!」
 スタジアムの得点ボードに0−1の数字とクラウドの嬉しそうな顔の映像が浮かび上がる。
「やった!やった!」
 とりあえず、一点を入れた、だが、これからはこれを死守していかなくてはならない。
 でなくても後半戦に異様な強さを見せる神羅民国だ。
「これで勝てたら、無事出国できる〜」
「わ…わたしはさらに一点入れないと…出国はできない…」
と、ヴィンセント。
「やるぞ〜やるぞ〜」
 ヴィンセントを除いたチームの中に笑顔が戻る。
「わ…私も…追加一点を入れよう…」
 ヴィンセントは自分で自分を励ました。

 後半35分
 
 一点をとって余裕が出てきたソルジャードイツチームに対して、アジア初の決勝戦進出がかかった神羅民国は猛烈に攻め込んできた。
「くそう、あの銀髪ゴリラ、守りが堅い」
 ツォン・ミョンボは汗をぬぐいながら言った。
「そうかな、と」
 レノ・ジョン・ファンはツォンに返す。
「素人目には前半と同じペースでやっているように見えるが、あの頭の怪我のせいで後半はやや動きが鈍くなっているように見える、と」
 レノは頭を指す。
「動物でも怪我しているところっていうのはかばって行動するもんだぞ、と」
「頭部すれすれあたりを狙ってシュートか……卑怯だな」
「卑怯でも勝てばいい…俺達はルーファウスFIFA副会長に勝てと命令されているんだからな、と」
 ルーファウスFIFA副会長は神羅民国の次期大統領とも噂される男だった。
「勝てば徴兵免除だからな…、あ、ツォン兄さんは関係ないか…」
「…悪かったな…歳で……」
「とりあえず、頭あたりを狙う。ボールが取れなかったら、たぶんあいつはパンチングで返すだろう。そこでこぼれたボールをもう一人が押しこむ、最強の作戦だ」
「背に腹はかえられないな」

(つづく)
   

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