
同じ顔をして、同じ姿をして…俺を追っているという…。
お前は何者だ。
「俺を追っているのかペシュメルガ」
同盟と帝国との戦いが終わり、ペシュメルガは旧帝国のサジャの村の旅館にいた。
「お前は」
突然、彼の目の前にたちはだかったのは、彼と同じ姿をした金髪の黒騎士。
しかも、彼は人間ではない。
「ユーバー」
ドアが開いた形跡はない。
この男は瞬間移動能力を持っているからそれを使ったのだろう。
「ふん、最近、どこも戦の匂いがしなくて、退屈している」
「ユーバー」
ユーバーは端正な顔に怪しい笑みをうかべた。
「………同じ顔をして、同じ姿をして、ペシュメルガ。お前は何故、俺を追う?」
「………」
ことん、と二本の角のついた兜をベッドに置いて、ユーバーは腰までとどく長い金髪をかきあげた。
ペシュメルガは窓ガラスに映った自分の姿を見る。
確かに、同じ姿、同じ顔をしている。
外見で彼と異なるのは髪の色だけだった。
ペシュメルガの髪の色は闇の色、黒髪をしていた。
「血にまみれた、人間のふりをした魔物……お前を消すためだ」
「ふむ………」
ペシュメルガのキングクリムゾンが、目の前のユーバーを両断した。
飛び散る血。
人間だったら即死のはずである。
「くっくっく」
背後から声がしてふりむくと、ユーバーが腕を組んで立っていた。
「甘いな」
先刻までユーバーのいたところには小さなモンスターが血まみれになって死んでいた。
「身代わりを使ったのか」
ペシュメルガが叫ぶと、ユーバーはゆっくり近づいてきた。
「消せるはずはない。お前が俺を……」
ペシュメルガを抱きしめ唇を重ねる。
「なん…な…やめ……」
「人間が争い続ける限り、俺はその戦場に現れ、屍の山を築く。それが俺の宿命。それを追うのがお前の宿命。しかし、俺を殺すことなぞ、永遠にできない」
「そんなことはない…いつか俺はお前を……」
「いつかと言いながら、もう何百年たった?ペシュメルガ?お前はその自分の甘さと青さにいつ気がつく?」
腕から逃れ、唇をぬぐったペシュメルガにユーバーは得意げにいった。
「もっと…その剣の腕を鍛えてから俺の元に来い」
そして、その姿は消えた。
その瞬間、なにかが爆発したような音がして、サジャの村が炎に包まれた。
「…また火を放ったのか、また一つ村をつぶそうとしているのか、ユーバー」
赤い炎が生き物のように辺りを這いまわり、すべてを焼き尽くして行く。
泣き叫ぶ子供、逃げ遅れたらしい人間の悲痛な悲鳴。
宿を逃げ出したペシュメルガの目の前に広がる地獄絵図。
「人間が争い続ける限り、俺はその戦場に現れ、屍の山を築く。それが俺の宿命」
ユーバーの言葉を思いだして、ペシュメルガは震えた。
「こんな…こんな世界が好きなのか?こんなことをするのが、お前の宿命なのか?そんなことを………許してはいけない」
同じ姿を持ちながらも、瞬間移動能力を持たない自分はまたあの男を追わなくてはならない。
「いつかお前に追いつく…それまで待っていろ…ユーバー」
歩きだす。
ペシュメルガはユーバーを追ってまた旅に出る。