|
繋いだ手
「38度…やっぱり風邪ね。今日は安静にしていなさい。」 今朝から少し風邪気味だったのが夕方ごろになって急に悪化した。無理して放課後の練習に出ようとしたら、アリアに止められ部屋で休むように言われてしまった。 仕方なく部屋に戻って大人しくベットに入り眠りについた。目が覚めたのは夜の9時を少し過ぎた頃だった。 トントン 誰かが遠慮がちに戸をたたいた。 「誰?」 「…王煉だ。入ってもいいだろうか?」 「どうぞ。」 「様子を見てくる様に先生に頼まれた。気分はどうだ。」 「だいぶ楽になったわ。まだ熱があるみたいだけど。」 「そうか。なら何か欲しいものとか、して欲しい事はないか。」 「あら、優しいのね。じゃあ・・」 そこでプラタリッサは言葉を濁した。 「どうした?」 「・・やっぱり辞めておくわ。」 「遠慮しなくていい。私の出来る範囲なら何でもしてやるぞ。」 「……………………………………………………………本っ当に何でもしてくれる?」 「ああ。」 そこでようやくプラタリッサは意を決し口を開いた。 「その…傍にいてくれないかしら?一人じゃ…寂しいの。」 何でもしてやるとは言ったものの、王煉もこれには驚いた。あのプライドの高いプラタリッサがこんな事を言い出すなんて、思ってもいなかったからだ。しかし、誰だって病気のときは心細いもの。自分も風邪を引いたとき母親が傍にいるだけで安心した事を思い出し部屋にあった椅子をベットの傍に置きそこに腰掛けた。 「他には無いか。」 「…子供みたいなお願いなんだけど。」 まだ子供だろう、と言いかけたが王煉は口には出さなかった。 「何だ?」 「私が眠るまででいいの。……手を…握っててくれない?」 布団の間からおずおずと右手が出てきた。プラタリッサは熱のためか羞恥心からか、顔を真っ赤に染めていた。王煉は普段のプラタリッサからは到底想像できない姿に思わず吹き出しそうになった。 そして自分より一回り小さい白く美しい手を両手でしっかりと握ってやった。 「眠るまでといわず朝までこうしててやる。安心して眠れ。」 右手から伝わってくる王煉の体温が心地よくて、プラタリッサは何かに誘われるように眠りについた。 次の日、プラタリッサは目を覚ますと、昨日のことが嘘みたいに体が軽かった。そして右手は今もなお王煉と繋がれていた。 「一晩中握っていてくれたのね。」 王煉はまだ眠っている。普段からは想像できない程あどけない笑顔。こうしていると年相応に見えるのに。 「有り難う、王煉。」 ベットから身を乗り出し、王煉のこめかみにそっとキスをした。熱は下がったはずなのに顔が熱くなる。これは風邪の所為かしら、それとも…貴方の所為? <終わり>
* コメント * |