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見送り
「ランスロット様〜〜〜〜!!!!!」 空港のロビーに胡桃の涙交じりの叫び声がこだました。 胡桃たちはキャメロット杯が行われるイギリスに行く、ランスロットとガウェインを見送りに来たのだ。 ガウェインは久しぶりの祖父との再開に涙を流しながら喜び、霧亜とはお互いの頬にキスをして別れを告げた。 胡桃はそれを羨望の眼差しで見つめていた。 私もランスロット様と…… 私はランスロット様が好き。 私もお姉ちゃんみたいにラブラブになりたいけど、今は私の片思い。 告白しようとは何度も思ったけど返事が怖い。 ランスロット様はいつも他人と線を引いて接するけど、私はその線の内側にいるという確信はある。 でも、それは私だけじゃない。 お義兄様にお姉ちゃん、ランスロット様のお姉様も当然いる。 私が特別な存在という訳じゃない。 胡桃もランスロットに抱きしめて欲しかった。 ”いってらっしゃい”のキスをしたかった。 そうこうしているうちに搭乗時刻となり、選抜メンバーは飛行機に乗り込んだ。 胡桃はランスロットの姿を目に焼き付けようと凝視した。 その時、不意にランスロットが振り向き、胡桃と目が合った。 そして側にいたアリアに二言三言、言葉を交わしたかと思うと、胡桃のもとへと駆け寄ってきた。 「どうしたんですかランスロット様?何か忘れ物でも?」 「うん。」 ランスロットはかがんで、胡桃の右頬にキスをした。 触れるだけの優しいキス。 「”行って来ます”のキスがまだだった。」 それだけ言ってランスロットは立ち上がり、皆のもとへと戻っていった。 右頬にはまだ残っている。 柔らかい唇の感触。 顔が熱い。 胡桃はゆでだこのように、耳の先から足の先まで真っ赤になった。 頭はショート寸前だ。 そんな胡桃の眼にランスロットが微笑みながらこちらに手を振っている姿が写った。 慌てて胡桃もちぎれんばかりに手を振り返した。 やがてランスロットの姿は見えなくなり、選抜メンバーを乗せた飛行機はイギリスへと飛びだっていった。 空には白く長い飛行機雲が描かれている。ランスロットたちを乗せた飛行機だ。 「どうか無事にランスロット様をイギリスに連れていってね。」 胡桃は飛行機が見えなくなっても、どこまでも続く青い空を見つめ続けた。 <終わり>
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