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電話越しの君の声
「東堂院、貴方に電話ですよ。」 イギリスにあるキャメロット学園本校にやって来て初めての夜。 明日に備えて少し早めに寝ようとしたらアリアがやって来た。 東堂院は二階建てベットの上からアリアを見下ろす形で顔を出した。 「・・・誰からっすか?」 「黒峰からよ。」 「くっ黒峰?!」 予想外の名前に思わず驚きの声をあげ、ベットから飛び起きた。 急いでベットを降りようとしたが、慌てすぎてはしごを踏み外し大きな音を立てて派手に尻餅を搗いてしまった。 「まあ、大丈夫ですか?」 「・・・っ電話はどこに?」 アリアの心配をよそに東堂院はまくしたてた。 「・・・今朝集まった食堂の隣の事務室に・・・・」 アリアが言い終わるのも待たず、東堂院は部屋を飛び出した。 モノの数分も立たずに事務室に到着した東堂院は置いてあった電話の受話器に飛びついた。 「もしもし!!!」 「・・元気そうね。東堂院。」 黒峰の声だ。 まだ別れてから一日も立っていないのに、東堂院は黒峰の声がとても懐かしく感じた。 「当たり前だろ。どうしたんだよ。急に電話なんか・・・」 「前回の参加者は貴方だけでしょう?今頃、心細くなってるんじゃないかと思って。」 「ばっ馬鹿野郎〜!そんな訳ねえだろ!」 否定はするが黒峰の声を聞いて安堵したのは事実だった。 東堂院はそれを悟られない様にわざと大きな声を出して誤魔化した。 「冗談よ。・・・それより、明日はたしか合同練習・・・よね?」 「ああ。」 「・・・頑張ってね。」 「おう。」 「・・・・・・・・・・」 「・・・黒峰?」 「・・・・・・・・・・」 「・・・どうした?」 「・・・ううん。・・何でも無い。・・・じゃあ、・・・お休み。」 「おい、ちょっと待てよ!何だよそれ!!」 電話を切ろうとする黒峰を慌てて止めた。 「・・ごめんなさい。」 「何で謝るんだよ。」 「・・貴方の声を聞いたら・・・急に行きたくなっちゃったの・・イギリスに。本当なら・・私もそこに・・・いる筈だったのに・・・」 黒峰は途切れ途切れに答えた。 自らの意志でキャメロット杯への切符を譲ったものの、黒峰だってイギリスに行きたかったのだ。 何としても去年の屈辱を晴らすために。 その為に辛い練習にも耐えてきたのだ。 「後悔してるのか。あいつと勝負した事。」 「・・・いいえ、してないわ。」 「だったら大人しくそこで待ってろよ。・・・俺がお前のぶんまで頑張るから。」 「・・東堂院・・・」 「お前の変わりに優勝してあいつらをあっと言わせてやる。約束だ。」 わずかな沈黙の後に電話の向こうの人物はクスリと小さく笑った。 「・・・・・何笑ってんだよ・・・」 「ごめんなさい。・・・つい・・・ふふっ。」 「何だよ。人がせっかく・・・」 「だって、貴方を励ますために電話をかけたのに、こっちが励まされるなんて思ってなかったんだもの。」 「バ〜カ、お前に心配されるほど俺はやわじゃねーよ。・・・で、ちったー元気でたか?」 「ええ、・・・有難う、東堂院。」 「じゃ、そろそろ切るな。」 「うん。それじゃ・・・おやすみなさい。・・約束、きっと守ってよ。」 「分かってるよ。・・・お休み。」 東堂院は少し照れながら、名残惜しそうに受話器を置いた。 約束か。 しかし大変な約束をしてしまった。 優勝する気は勿論あるが口で言うほど簡単な事じゃない。 優勝どころか一勝する事すら難しい事を、去年の大会の惨敗で良く分かっている。 でも、今年の俺は去年と違う。 「俺の為にも、黒峰の為にも頑張らないとな。」 東堂院は今はもう繋がっていない電話を、少し照れながらじっと見つめた。 一方その頃 リーベル:「知らなかったなあ。あの二人つきあってたんだ。」 祐美子:「しかも、超〜ラブラブじゃん!」 王煉:「・・・黒峰と聞いた瞬間、あんなに慌てたのはこういう事だったのか。」 ガウェイン:「俺も霧亜姉ちゃんに電話して〜な。」 ランスロ?プラタリッサ:「いつまで電話を見つめているつもりかしら。・・・馬鹿みたい。」 事務室の扉の前で他のメンバー全員に電話を盗み聞きされた事や、現在好き勝手な事を言われているなど東堂院は知る由も無かった。 <終わり>
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