ニンジンの行方  By雲野十夜
   



(舞台はダイスビル内。御子柴と会う前あたりです)


十夜「なあ園宗寺、霧生。このゲーム、デバイスレインって結構個人宅とか出てたよな。俺ん家。カスミん家。空木さんのアパート。壬生さん(真端さん)家。そして田園調布のあんたの家だ。それでちょっと質問があるんだが」
園宗寺「何だ?答えられんこともあるぞ」
十夜「大した質問じゃないんだが。あんたはダイスの激務。霧生はそのサポートだろ?で思ったんだ。あんたん家、家政婦さん雇っているようにも見えなかったから───」
霧生「前置きが長い奴め。さっさと言え」

十夜「あんたん家、誰がメシ作ってるんだ?」

二人「・・・・・・・・」

十夜「な、何かまずいこと聞いたか?ダイスの機密に触れるような・・?」
瞳「雲野ぉー。霧生君がやってるに決まってるでしょ。激務の後でも、身を粉にして料理してんのよ。・・・・『身を粉にする』・・『身を粉』・・『自分をスパイス』・・『私を食べて』!?エッチよ霧生君!!」
霧生「本物の馬鹿腐女子かお前は!?第一俺は戦士だ。家事など一切できん」
瞳「じゃあいったい誰がぁ?エグゼクの私生活、雲野じゃなくても気になるよぉ」

??(これから彼のセリフは例のHボイスでお読みください)「いるじゃないかぁ一人。あらゆる学問に精通してる男がさぁ。当然料理にも、だよ」

十夜「J.B.!お前が園宗寺家の住み込み料理担当だったのか!・・・・あ、でも、・・たしかにゲーム内にそういう複線が」
瞳「え?どっかにそんなのあったっけ?」
十夜「俺一回、備前先生の家を探しに行ったことあるんだよ。でも空き地しかなかったんだ。素行が悪い俺と誠志郎と仲が良いせいで、査定でごっそり給料引かれ、ダンボールハウスを余儀なくされてると思って、いつか匿名で送金しようとまで思ってたんだ。でも、ああ、そうだったのかぁ」
J.B.「真実には達したようだけど、非常に失礼な経過を踏んでくれたねぇ十夜。いつかおしおき、かな。クスッ」
十夜「ビクッ!!(後でオーパースの配列変えてドロウジネス使えるようにしないと、食われる!)」
園宗寺「これで疑問は解消できたか?」
瞳「じゃああたしからもう一つ。このエッチな洗脳魔の料理って、うまいの?」

二人「・・・・・・」

瞳「ま、またあたしたちダイスの機密に触れた予感が。消される前にダイス潰そう雲野!」
J.B.「ゲーム内で潰れるのは日本支部だけどね。まぁ味は実際味わって評価してもらおうか。じゃあ対決は後回しにして、食堂に行こう」
誠志郎「おっ、やりぃ!丁度腹減ってたんだ。佐伯さんもいいよな?」
佐伯「アタシはそれで構わん。殺された彼の分まで、食ってやる」

 調理中

J.B.「おっ待たせー。どうぞ召し上がれ」
佐伯「待て。簡単に毒見を済ませる。─────いいぞ」
瞳「さ、佐伯さん。すき焼きや酢豚の肉だけ食べてる。本当に毒見?」

全員「それでは、いっただっきまーす」

誠志郎「理子ちゃん寝相だけでなく、箸の使い方も悪いなぁ」
理子「・・・・が、外国生活が長かったから仕方ないでしょ。それに私寝相はいいんですからね!」
雲野「─────うまいな。だとしたら、あの二人何を秘密にしたかったんだ?なぁ霧生、何が問題なんだ?」
霧生「雲野。それ以上言うとここで決着をつけるぞ」
十夜「どうせ後から決着にこだわるくせに。じゃあ園宗寺、何隠してるんだ?」
園宗寺「わかった、話そう。忍。いずれはわかることだ」
霧生「え、園宗寺さんがそう言われるのであれば」

園宗寺「この男の料理は確かにうまい。が、必ず私達の嫌いなものを、知っててあえて入れて作るんだ」
霧生「具体的には、この酢豚とすき焼きを見ろ!佐伯に肉は食われたとはいえ、他の具より圧倒的に多いニンジンの割合を!」

全員「・・・・・・」

J.B.「好き嫌いはいけないよねぇ。特に俺の作ろうとしてる嘘のない世界ではね。壬生さぁん。エンジェル・アイ。戦場で好き嫌いを選ぶ権利があると思うかい?」
壬生&佐伯「霧生、園宗寺。お前たちが悪い。これだから戦場を知らん奴は困る」
園宗寺「貴様等っ!」
J.B.「それにニンジンは栄養豊富なんだよぅ。ビタミンだよ、カロチンだよ。日々の激務でお疲れの二人の健康を考えて献立作りに勤しんでるのに、こいつら食べてくれないんだよ。どう思う、十夜、誠志郎?」
十夜「それは・・・・確かに」
誠志郎「食べ物を粗末にする奴は許せんなぁ」
霧生「だから言いたくなかったんだ!好き嫌いは理屈じゃないだろ!」
J.B.「園宗寺はともかく、君がニンジン嫌いなのは俺にも理解できないなぁ」
霧生「?何を言っている?」
J.B.「だってエグゼクのペットといえばウサギが相場だろう?そのウサギがニンジン嫌いなんだよ。おかしいと思わないかい、ペット君?」
霧生「貴様!誰がペットでウサギだ!?」
瞳「霧生君・・ペット・・ウサギ・・・・バニー服!?」
霧生「そこ!また腐女子モードに入るな!」
壬生「しかし、霧生がペットというのは根拠あることと俺は思う」
霧生「貴様まで何をいいだす!?」
壬生「(ニヤリ)お前のオーギュメント、パ『ペット』クロウだろう?」

全員「・・・・・・・・・」

壬生「(あれ?ここは笑い所だろう?それともレベルが高過ぎて分からなかったか?)」
誠志郎「寒みぃ、寒みぃよ今のオヤジギャグ!しかも本人が自信持ってるところが余計に。J.B.お前のその暖かそうな毛皮貸して」
J.B「い・や・だ・ね。俺だって寒いんだ。さて、歴戦の傭兵も二人の非を認めてるんだ。ここは懺悔として、今日この場で二人にニンジンを食べてもらおうじゃないか」
ビショップ「私でよければ、懺悔見届けの神父を務めます」
二人「くっ・・・!」

十夜「盛り上がってるところ悪いんだけどさ、そのニンジン、園宗寺や霧生より食わせたい奴がいるんだ。丁度通りがかりでもあるし、行こうぜ」
霧生「助かった!さすが俺のライバルだ」

   移動中

御子柴「園宗寺!?お前たち!?どうしてここに?それになんだその大量のニンジンは!?」
十夜「あんたの顔見るたびに思うんだよ。あんた、ウツロやディゾナントより顔色っていうか肌の色悪いんだよ。地黒とかそういう次元の問題じゃない。ゾンビだよ」
御子柴「い、いきなり不愉快な連中だ!」
ジョーカー「だからぁ、体に良いこのニンジンを食べてぇ、そして人間の肌に転生しなさいよぉ」
御子柴「断る!不愉快なオカマめが」
ジョーカー「あんだとコラァ!」
園宗寺「無駄だジョーカー。例の『コギト エルゴ スム』のパスコードで解ける機密事項に載っていた。御子柴、お前もニンジン嫌いだな」
御子柴「グッ!」
ビショップ「人の命を持て遊び、私利私欲を貪り、あまつさえ好き嫌いとは!私は未熟な神父です。ですから御子柴さんに怒りを覚えずにはいられませんよ!どうやら御子柴サン、あなたから懺悔が必要なようですね」
園宗寺「さあ、食え。(食ってくれ。私達の分を。)」

J.B.「ウツロ、やっちゃていいよ」
ウツロ「ヘヒャッ。グサッ」
御子柴「グハアッ!」
J.B.「おやおや、ゾンビが死んじゃったよ。それより園宗寺、責任逃れはよくないねぇ」
園宗寺「クッ!我が理想ここまでか・・・」
霧生「J.B.!俺が園宗寺さんの分まで食う。それでいいだろう?」
園宗寺「忍!?」
霧生「俺は園宗寺さんのために生き、園宗寺さんのために死ぬ。その誓いを今、果たします」
瞳「ウサギがご主人様のニンジンを横取り・・。躾の悪いウサギは、後にご主人様の調教を受ける・・」
霧生「だからそこ!人の名台詞の場面で、SC空間より妙な空間作るな!」

 そして時は流れ、十夜と霧生の一騎打ちに。

十夜「・・・・・・原因の多くは俺にあるんだが、今回のお前、今まで戦った中で一番弱いぞ。いやドロウジネスかけてタコ殴りしてる俺も悪いんだが」
霧生「ウップ!い、言うな。思い出させるな。こみ上げてきそうだ・・・」



                                      E.N.D.





   

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2004/05/02 作成 越後屋善兵衛 zetigoya@dream.com