住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第27回部会 「安城市の中心市街地について」    [2003.10.10]

参加者:10名

1 安城市の中心市街地について
1 都市概況
  • 「日本デンマーク」と呼ばれるほど農業先進都市として発展。
  • 昭和35年ごろから、急速に都市化が進行。
  • 人口16万人。人口増加率高い。
2 中心市街地の現状
  • 活性化基本計画区域:160ha
  • 人口:14,000人。やや増加。S55に14,000人あった人口がH7では13,000人に減少したが、近年ではマンション立地に伴い増加。ただし、密集市街地の部分では人口は減少し、高齢化率も高い。
  • 安城地区(S25〜35)、安城駅前地区(S45〜62)で区画整理を実施。安城市では市街化区域の全域を区画整理によって基盤整備をするということを打ち出しており、周辺でも区画整理進む。安城駅前は既成市街地型であるが、それ以外は郊外型の区画整理。
  • 安城駅南明治地区(25.2ha)においてH3より地元協議を行い、H15.4に区画整理の都市計画決定。そのうちの16haについては密集事業との合併施行を予定。
  • 区画整理等の補助金が有利に使えないかということから基本計画を策定した。
3 中心市街地活性化の事業
(1)市街地の整備改善のための事業
  • 安城南明治土地区画整理事業
      多大な事業費(300億円、市の財政規模500億円/年)と高齢化が課題
  • 市道御幸本赤松線電線共同溝整備事業
  • 第一西尾街道踏切拡幅整備事業
  • その他
    • フラワーロード整備事業
    • 交流拠点整備事業
        更正病院跡地12000u。市が購入予定。
    • 公共施設整備事業
        中央精機の跡地、住民の交流拠点となる施設を計画
(2)商業等の活性化のための事業
  • バリアフリー整備地区歩道設置事業
  • チャレンジショップ事業
  • その他
    • イベント事業
    • スタンプ事業
(3)タウンマネージメント機関
  • H12年度に商業タウンマネージメント構想策定委員会等を設置。行政や商業者だけでなく、市民団体等も委員として議論に参加。
  • これを受けてH13.7にタウンマネージメント機関として「まちづくりAnjo」を設立。
  • まちづくりAnjoにおいて中小小売商業高度化事業構想について検討。H15.5に中小小売商業高度化事業構想の認定を受け、安城商工会議所が認定構想推進事業者となった。
4 課題
(1)更正病院跡地における交流拠点整備について
  • 中心市街地活性化基本計画において「医療・福祉・教育に根ざした施設」との位置づけがしてあるが、その具体的な施設内容や整備時期については未定。H15・16年度において策定される第7次総合計画の検討に合わせて、具体案を検討。
  • 安城市においては、公共施設が充実しており、何をつくるかが大きな課題。当面は暫定広場として、イベント等での活用を図る。
(2)ユニー駅前店の退店について
  • H15.10末をもってユニー駅前店が退店・解体することとしており、跡地の利用方向が未定。
(3)性風俗店の進出について
  • ここ数年市内空き店舗への性風俗店の出店が多く、夜間の路上駐車や治安等の問題が生じている。
(4)土地利用の整合について
  • 高層マンション等の建設に際し、周辺住民(主に低層住宅)から日照等懸念の声が生じることが多い。
  • 駅北の中央精機の跡地にはトヨタ自動車による26階建、377世帯のマンション建設計画あり。
5 その他
  • デンパークの入場者が当初120万人/年あったものが、採算ラインの55万人をきる状況。自助努力によるリニューアルが必要な状況となっている。


2.質疑応答・意見交換
Q:安城市全体の中でJR安城駅周辺はどうのように位置づけられるのか。
A:安城市には4つの核(JR安城駅、新安城、三河安城、桜井)がある。乗降客数ではJR安城駅が一番多く2万人。JR安城駅が都市拠点、三河安城が広域拠点、他2が地域拠点という位置づけ。

Q:地区の歴史的形成過程は。
A:安城でもっとも古いのは元安城(JR安城駅より北東 )で安祥城があった。JR安城駅周辺は田んぼであったところで、明治24年の駅の開設とともに発展。碧海郡の役所が知立から移転。駅に人が集まるからできたまちであり、歴史はない。
斜めの道は刈谷につながる古い道。密集市街地は田んぼが宅地化されて自然に形成された。

Q:マンションの立地状況は。賃貸需要は高いのか。
A:駅南に22Fの賃貸住宅がペット可、デザイナーズマンションとして宣伝中。多くのマンションが立地している。トヨタ関係の需要があるのでは。

Q:商業地域が広すぎるのではないか。
A:安城市全体に商業地域は大きい。当初からの設定。区画整理の実施にあたり、6mで計画しているが、商業地域であれば8mで設計すべきという話しがある。
 土地所有者は大地主か小地主に2分される。小地主でも苦労して手に入れた土地という意識あり。商業地域の見なおしは難しい。
●:区画整理では前面道路の幅員で減歩率が変わってくる。密集市街地では敷地が小さく、4mでないと対応できないのでは。
●:高層マンションの立地によって住環境が悪くなる。現状が住宅地ということであれば、用途を見なおしたり、高さ規制を行うべきでは。

Q:風俗店が増えた理由は何か。
A:病院が移転し、条例の規制から外れた。名古屋と比べると家賃が安いので、三河の人々を対象に立地。家主は誰でもいいからテナントとして入ってくれればよいという考え。家賃は1万円/坪で下げない。風俗店以外は家賃が高すぎて立地できない。
●:愛知県は条例がゆるい。他の県では風俗店が立地できるところを限定しているが、愛知県では立地できないところを定めている。市では県の条例をこえるものを作れないという問題がある。
●:風俗店が増えることは住環境として問題。高さの問題とあわせて用途の見なおしをしていくべきではないか。

Q:区画整理の目的は何か。駅前広場などの公共施設整備は必要ないが…。
A:防災上の観点からの密集市街地の解消。地元から区画整理が要望されている。
区画整理後に密集市街地をつくってしまってはいけない。また、減価補償金用地を買収する必要があり、地区外の市有地を斡旋。160u程度の土地を考えているが、地区内よりも地区外の土地が高い状況にある。また、更地で買収する必要があるが、なかなか進まない。

Q:従前居住者対策としてのコミュニティ住宅は考えているか。
A:土地所有者にアンケートをとったが、小さな敷地の持地持家の人でも土地を売ってくれる人はほとんどいなかった。AACの人でも借家人は何とかしてほしいが、土地は自分で使いたいという考え。

Q:病院跡地を区画整理を推進するために利用しないと事業はうまく進まないのでは。
A:地元、議会から「病院の集客にみあう施設を」という要望あり。
申し出換地の方法を用いて、商業者を集め、パティオなどを作れたらと思うが、病院の跡地は商業者が好まない。(墓の跡地は商売が繁盛するらしい)

Q:駅北は将来的には基盤整備を行うのか。
A:区画整理は先が見えている事業。十分な検討が必要。
東西都市計画道路(15m)が区画整理を実施するからということで未整備で12mのままであったが、道路単独で整備する必要あり。しかし、現在の道路構造令だと22mの幅員が必要となり、その整備が課題。



  
12月20日(土)、雪が残る安城駅前の中心市街地を歩きました。