活動の趣旨・目的

●はじめに
 我々は、21世紀に向けてどの様な地域づくりを目指して行くべきなのだろうか。
 これまでの都市計画、都市整備は発展する都市をイメージした、新都市開発が主流であったように思う。
 線引き制度で劣悪なスプロールを防止しつつ、区画整理などの面整備を誘導し、公共施設の整った新市街地に住宅や工場を建設する。用途地域制度で、市街地内の土地利用を純化させ、機能的な都市を造る。
 この発想の前提には、常に都市が発展して行くこと、各地域の都市機能が十分機能し、かつ時代の流れに対して変化しないことなどが条件であったと思う。
 しかし、21世紀の地域づくりは、少なくとも大部分の都市で全体としては人口も減少する縮小過程の中で、都市機能も変化して行くという認識に立って再構成することが求められている。
 住宅政策という面でも、以前は住宅難解消のための住宅をどう供給するかという視点がおおきな要素であったが、これからは、変貌しつつある居住地をどうマネージメントしていくか、といった総合的な課題に対して様々な対策をNPOなども含めた様々な主体の連携によって対策していくようなイメージが考えられる。
●中心市街地の居住支援
 現在多くの中小地方都市で中心市街地の人口減少を要因とする活力の低下が問題となっており、住宅政策上も重要な課題となっている。
 人口減少の結果、購買人口の減少により商業活動が維持できなくなる、空地や空家の増加により伝統的な都市景観が維持できなくなる、高齢化の進展と若中年層の減少によりこれまでの伝統行事が困難になり、日常の地域コミュニティが弱体化するなど様々な問題が生じることが予測される。 一方、こうした中心市街地では、伝統的な都市居住の文化があり、また、交通利便性、公共施設の立地、商業機能など、特に高齢者にとってやさしい良好な居住を実現する条件を兼ね備えている。
そこで、本研究では、中小都市の中心市街地の活性化に向けては特にその居住の確保と支援に焦点をあて、より良好な居住条件を確保し、地域での人口を呼び戻したり、あるいは減少をくい止めるためにどの様な施策があり得るかを追求する。
 今回の研究では、中心市街地を居住の場として再生することが大きな目標であり、そのために現在居住している人たちに対する居住支援はどの様な方策があり得るのか、また住宅ストックを活用する上での問題点や方策、さらに中心市街地での様々な施策との連携方策などを検討することが研究の目的である。
●実践的研究スタイルの創造
 今回の研究は、「実践的研究」ということを表明している。実践的的研究については本研究会は2つの点で整理している。
 第1の視点は、この研究活動が具体的な街づくり活動に反映されることを追求することである。 研究に携わる構成メンバーについてできるだけ市町村、県など担当する職員をメンバーに加えることによって、研究成果が生かされたり、この研究会で個々の構成員が高まることで新たな展開が期待できること、研究成果を市町村に返すことなどである。
 第2点目は、施策実験という視点である。
 これは、研究組織とまちづくり主体を結びつける新たな方法論の構築であり、創意的な取組を模索することとしている。
今回の研究活動は、これまでの学術的な研究から、少し飛び出た「実践的研究」と言うことをキーワードに新たな研究スタイルの模索も一つの目的としており、まだ未熟な段階ではあるが、大きな発展要素であるとの認識で進めている。