作手村林道ツアー

作手村林道ツアー

昼飯を食べに原付のエンジンをかけ、またがった瞬間、 一本の電話が私の太ももにぶるぶると刺激を与えた。 (ただバイブにしていただけだが・・・)
「林道行かない?」
そー、T氏からのお誘いである。 前回T氏の実家近くで一回山道を走ったのだが、
「楽しいからおいでよ」
とは裏腹に、痛いし汚れるわの経験をしたことがある。 その時はオンロード用のブーツしかなかったので、それを履いていったのだが、 帰ったときには黒色だったそのブーツが、うん・・・、いや土まみれになったのである。 帰ってからいくら水で洗っても汚れがとれず、
「前日が雨の日は林道、山道 行くべからず」
という教訓を得たのである。
ところが昨日は一日中雨が降っていた。 それでもT氏は私をしつこく誘うので、
「じゃー、行きましょかー」
と、OKしてしまったのである。後の悲劇を予想だにせず・・・。

オフロードバイクは原付が復活した今となっては、そーそー乗る機会が無い。
(原付がレストア中はこのバイクで通勤していたが)
あまり乗ることが無いため、整備もろくすっぽしていない。
この日も何にも点検せずに出ていってしまった。

T氏は浜松に住んでいるので、私の住んでいるところとちょうど中間ぐらいの 作手村に行くことにし、とある交差点で待ち合わせをした。 私の方が早く着きすぎてしまい、かなり待っていた。 やがてT氏がやってきて、出発となった。 私はエンジンをかけようとキックペダルに足をかけた。 1発2発、エンジンがかからない。 20発目ぐらいで、やっとかかった。 いつもは1発でほぼ間違い無くかかるのだが、ちょっとおかしいが、 まーいいやエンジンかかったから。

作手村に数々の林道があり、その1つに行くことになった。(ちなみに私は林道初体験である)
入っていくと、舗装路がずっと続き、枝のように脇に入っていく砂利道がいくつか通り過ぎた。 ずっと舗装路が続いたため4つ目か5つ目の枝分かれの道に入っていくことにした。 (T氏は舗装路が面白くないらしい・・・)
そこは結構アップダウンの激しい(主に上り)ところだったため、 私のバイクは悲鳴を上げ、水温系のレッドゾーンに飛び込むこと数回。 道も、行き先がちょっと不安になったため、引き返す事にした。
それからまた、主道を行くことになった。 少し走ると、ダートコースになり、途端にその先輩はペースを上げた。 水を得た魚みたいにぐいぐいとペースを上げていく。 私も負けじとペースを上げるが、いかんせんマシンに差がありすぎるため (まー、腕の差もあるが・・・)、ついていくのがやっとであった。 その砂利道はそれから延々と続いた。
そのうち、コーナーへの突っ込みがオーバースピードになり、 何回かこけそうになった。しかもフロントから。 私はてっきりタイヤが寿命なのかな?と思った。

どれぐらい走ったかはわからないが、やがてまた舗装路になり、 休憩となったが、そこで思わぬ事態その1が発生した。 フロントタイヤがへにゃへにゃなのである。 どーやら、パンクしたらしい。 ずっと前からもうフロントタイヤは寿命を迎えていたのだが、 見て見ぬふりをしていたのだ。はー。
むーーー、どーりでフロントからずりずり滑るわけだ。納得。 なんてしている場合ではない。こんなとこにバイク屋はおろか、 ガソリンスタンドすらも無い。
まー、走れないことは無いので(今まで気づかずに走ってたんだし)、 とりあえず、T氏が持っていた空気入れで、空気を入れ、帰ることにした。
そのとき思わぬ事態その2が発生した。 ふとした拍子に、シートのサイドパネルから配線がはみ出していたので、 それを中に押し込もうとしたとき、サイドパネルがぽろった落ちた。 (このバイクはほんっとにぼろいのでなにもかもがゆるゆるである) その瞬間、エンジンオイルとクーラントが すっからかんであるのに気づいた。
はっは〜ん、エンジンのかかりが悪かったのと、水温がレッドゾーンに飛び込むのは、 そのためだったのか。納得。 なんてしている場合ではますますなくなった。 あまり回転を上げなければ、冷却の方はなんとか大丈夫だが、 エンジンオイルがないと、最悪焼き付いてしまう。 こーなったら、なるべく回転を上げずに最寄のガソリンスタンドまで、 何とか持ちこたえねばならぬ。
地図ではこのまま行けば国道に出られることになっており、 そこまで行けばガソリンスタンドの1つや2つはあるだろうとゆー、 希望的観測の元、われわれは出発した。

細心の注意を払いながらバイクを運転し、国道まで無事たどり着いた。
しかし究極の選択である。 T字路になっており、右と左どちらに行けばよいかわからない。 その時私の全精力を傾けてガソリンスタンドの方角を推理した。
「なんとなく左に曲がればありそうな気がする・・・」
私は自分の予言をひたすら信じた。 しかしなかなかガソリンスタンドらしきものは見えてこない。
バイクもなんか変な匂いと変な音がしているような気がしてきた。
やばい。ほんっとにやばい。このまま私はここでのたれ死ぬのだろうか。 (まー、タクシー使えばいいんだけどさ。でもそんときはマジでそんなぐらい焦ってた)
「頼む、ガソリンスタンド出てきてくれ、お願い。」
(なんかまるで、下痢の時のトイレを探すみたいな心境だなー)
自分の予言を信じた俺が馬鹿だったのか、いっこうに見えてこない。
「あーだめか」
それでも信じた。そー、信じるものは救われるのである。 その時、前を走っていたT氏が左ウィンカーを出した。
「やった、ガソスタだ」
私は天にも上る気持ちだった。 給油機の前にバイクを止め、一言
「すいませーん」
し〜〜〜〜ん
はうー!
そー、ガソスタは休みであった。
うなだれる俺。途方にくれる俺。こんな辺境の地で(作手の人たちごめんなさい) 私はのたれ死ぬのか・・・。
そんなことを想像しながら、あたりを見まわした。
どーやら、開店してすぐみたい(まだ準備だけかもしれないぐらい)で、 きれいなスタンドだった。
奥の方に倉庫がある。私は淡い期待を覚えつつ、その重厚な鉄の扉を引いてみた。
がらがらがら・・・
開いてるやん!!
中には、オイル缶がいっぱい置いてある。 でもさすがに2スト用のエンジンオイルは置いてないだろうと、 あきらめかけたその瞬間、 「す○き2スト用エンジンオイル」4L缶がまだふたも開けられてない状態で、 どーんとのさばっていた。
その時の私は私で無かった。(正確にはその時の私こそホントの私かもしれなかったがそれはさておき)
すかさずそれをもって自分のバイクまで走っていき、ふたを開け、オイルを補充した。
補充し終えたあと、
「あーーー、俺ってなんて悪者なんだー」
と自分のした行為に罪悪感を感じた。
バイクのエンジンオイルはもちろん4Lも入らないので、 ふたを閉めてもとの倉庫に戻しておいた。500円玉を添えて・・・

なんとかバイクも走れるので、私たちはそのガソリンスタンドでお別れをした。 (帰る方向は全く逆方向だったので)
「今度行くときはきちんと整備しなくちゃね。」
と少し反省して、家路につきました。
でも、帰ってすぐに整備はしなかったね。
さすが俺。また今度しよーっと。


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