カーエアコンを科学するぺえじ

カーエアコンを科学する

今の時期、昼間に日のあたるところに車を置いていると、車内はサウナ状態になります。 その温度はまさしくサウナに匹敵するものであり(70℃程度)、 うかつにハンドルにも触れません。 そこでクーラーの活躍となるのですが・・・。


クーラーの原理

さて、カークーラー、いやクーラーってどうやって動いているのでしょうか?
注射されるときにアルコールを腕に塗られると思います。 (私は入院しているときに毎日点滴していたからよーく覚えています) 塗ったとたん塗ったところが、スーっと冷たくなると思います (お酒では駄目ですから・・・、一応)。
これは、アルコールが気化(液体から気体になること)するときに熱を奪うという現象が起こるからである (もちろん水でも同じ現象は起こるが気化する度合いが違う)。 これを利用して、冷媒(主にフロンガス)と呼ばれる蒸発しやすい液体を気化させ、 大気中の空気を冷やす仕組みになっている。
しかし、当たり前だが気化させた冷媒はそのまま大気に放出してしまったら、 クーラーを使っている限り冷媒は無限に気化させなければならないので、 気化させた冷媒は液体に戻してやらないといけません。
カークーラーの構成

主にカークーラーは、
・冷媒
・エバポレータ(蒸発器)
・コンプレッサ(加圧器)
・コンデンサ(凝縮器)
・レシーバ(貯蔵器)
・エキスパンションバルブ(膨張弁)
といった構成となっており、これを図にすると右のようになります。


それぞれについて細かく説明すると・・・

●冷媒
気化させないといけないので、当然蒸発しやすい性質を持つ液体を使用します。 蒸発しやすいとは簡単に言うと沸点の低い物質を指します。(まー、分子間力がどーとか 色々関わってきますが、そこらへんは化学の本を読んでくださいな) しかし、液体に戻す作業も考えなければならないので、ただ蒸発しやすいだけでは駄目ですよね。 そこで、常圧下では沸点(液体から気体に変わる温度のこと、水だと100℃)が−30℃で、 密閉容器内で加圧すると液体となる性質を持つフロンガスが 現在使用されています。
フロンガスは、化学的に安定で、耐熱性に優れ、引火性、腐食性、毒性がないなど、 冷媒としてはうってつけの物質です。
えっ!フロンガス!?
と思った読者は偉い!が、まだ甘い!!(笑)
フロンガスはオゾン層(O_3)を破壊 することが証明されました。 そのため南極ではオゾンホールと言う紫外線浴びまくりの領域ができちゃったりしました。 しかしそれは「フロンR12」というフロンガスのことで、 フロンR12は構成分子に塩素(CL_2)を含むためにオゾン層を破壊してしまいます。
そこで、代替物質として同じフロンガスの仲間である「R134a」を使用することになりました。 R134aは塩素分子を含まないのでオゾン層を破壊する心配がありません。 しかしR12とは性質が若干異なる (鉱物湯と共存できないことやパッキン、ホースといったシーリング材を溶かすなど)ため、 そのままガスを交換することはできません。 また、今ではもちろんR12は完全に使用禁止となっておりますので、 R12を冷媒として用いているクーラー(私の車も)はガスが漏れてもガスの補充はできません。 つまり、ずっとクーラーが使えないとゆーことです。 (まーでも、解体屋さんに行けば昔の車がごろごろ転がってるでしょうから、 そっからとってこればいいんですがね)

●エバポレータ(蒸発器)
文字通り、冷媒のフロンガスが蒸発するところで、ラジエタのような構造をしている。 ラジエタは、空気が通過する時にパイプの中の流体の熱を奪って冷却するものだが、 ここでは逆に、パイプの中を通っている冷媒が通過する空気の熱を奪い、 空気が冷風となって車内へととりこまれる。

●コンプレッサ(加圧器)
空気を冷やすために蒸発したフロンガスは液体に戻さなければならない。 そのため、コンプレッサにより圧縮して液化しやすいようにする。
このコンプレッサはエンジンから動力を得ているので、 エンジンをかけないとエアコンは作動しない。 そして、コンプレッサが回るとタイヤを回そうとするエンジンの出力は減るので、 パワーダウンとなる。(およそ10馬力ぐらい) そのため、停止→発進の時はエアコン非作動時に比べ、かなり遅く感じるであろうし実際遅い。 じゃー、どうすればタクシーに負けない加速が得られるか?
答えは簡単。エアコンを切ればいい。(笑) まー付けたり切ったりするのはめんどくさいので、 ここに オートスイッチの作り方が載っている。 参考までに・・・。

●コンデンサ(凝縮器)
コンプレッサで圧縮された冷媒は高温高圧(約80℃、15kg/cm^2)のガスになっている。 コンデンサはラジエタと同じような放熱フィンを持っており、 外気により冷却が行われ、冷媒ガスを液体に戻す。 通常コンデンサはラジエタの前側に重なるように置かれており、 コンデンサを通過して暖められた空気がラジエタを通過する。 後述するがここがポイントである。

●レシーバ(貯蔵器)
コンデンサで液化した冷媒を一時的にためておく場所である。 それ以外にも色々役目があり、完全に液化しなかった冷媒ガスと、 液化した冷媒を分離したり、乾燥剤に通すことによって冷媒中の水分を除去したり、 異物除去のためのフィルターも備わっている。
また、サイトグラスと呼ばれる透明なのぞき窓があり、 冷媒ガスの残量が確認できる。 (エンジンかけてクーラーつけないと駄目ですが・・・)

●エキスパンションバルブ(膨張弁)
空気を冷却するには冷媒を蒸発させなければなりません。 よってここで冷媒が蒸発しやすいように霧状にして噴出します。 (蛇足ですが、ガソリンも燃焼しやすいように霧状にして燃焼室に 送りこまれます。まー、エンジンのお話はそのうちする予定ですが・・・) また、噴出量を調節することにより、冷房能力を調節したりもする。 通常はエバポレータユニットに結合されている。


クーラーの効き

さー、ではみなさんが一番気になるところであろう、 「クーラーが効かない」あるいは、「クーラーが効きにくい」 というのは何が原因かを少し考えてみましょう。

ここまできちんと読んでいれば大体わかると思いますが、 クーラーのメインは「冷媒の気化と液化」です。 つまり、配管漏れで冷媒がなくなったりしたら絶対クーラーは効きませんし、 きちんと冷媒が気化できない状態になれば、クーラーの効きも低下します。
さーでは、きちんと冷媒が気化できないとはどうゆうことでしょうか?
上でも説明しましたが、気化した冷媒は液体にしないと全く役に立ちません。 液化するのに大切なことはコンデンサでの冷却です。 よって、コンデンサで冷媒をきちんと冷却できればいいのですが、 渋滞などで走行風が当たらない場合は、冷媒が液化しにくいので、 クーラーの効きは低下します。
またクーラーがあまり効かないのは、 エンジンルームの設計自体が悪い場合もあります。 この場合はもう仕方がありません。と言ったらこのコーナーを作った意味がありませんね。(笑) その場合は ここを見てください。


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