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アルベルト・シュタードラー(Albert Stadler) この地方の生まれで、神学校以来のシューベルトの親友。詩人でもある。
【基本資料】
ピアノ五重奏曲「ます」に関する問題
まず出発点となる確実な資料があまりにも少ないのである。
1.この曲の自筆楽譜は残されていない
2.作曲に関する本人の記述が何もない
3.初演に関しても直接の資料がない
4.楽譜はシューベルトの死の翌年1829年に出版されている
次に、補助的資料には次のようなものがある
1.第4楽章の原曲である歌曲は1820年に文芸誌の付録として初出版された
2.シュタードラーが1858年に書いた手紙に当時の回想がある
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【問題点】
しかし問題が存在する。
1.歌曲を使って…と依頼されたからには歌曲を知っている必要があるが、歌曲が出版されたのは1820年である。
2.手本にと示されたフンメルの五重奏曲(まったく同じ編成)が書かれたのは1820年ごろで、出版されたのは1822年であった。
3.さらに、言及のある七重奏曲は1816年に出版されているが編成がピアノ、管楽器、弦楽器となっており編成がまったく異なり、言及の意味がわからない。
このことから対象は1823年か1825年に絞られるのだが、シュタードラーは1823年にシューベルトに会った記憶がなく、1825年には彼はリンツに移っていた(ただしごく短期間シューベルトに会いに出かけたらしい)。
こしたことから、老齢のシュタードラーの回想は記憶が曖昧になったのではないかという説が出てきた。
ヨハン・ミヒャエル・フォーグル(Johann Michael Vogl) シューベルトの歌曲を広めた功労者
ジルヴェスター・パウムガルトナー(Sylvester Paumgartner) シュタイアー在住の鉱山経営者。アマチュアのチェロ奏者であり、自宅でしばしば音楽会を開いた。
【解決】
ところがどうやらこの問題を一気に解決するような資料がひょんなところから発見された。場所はリンツ近郊のブルックナーゆかりのザンクト・フローリアン修道院。ここの書庫から一対の「ます」の手書きのパート譜が発見されたのだ。
これがどうやらシュタードラーが書き起こしてパウムガルトナーに送られたパート譜そのものであるらしいのだ。しかもこのパート譜と(後の)出版楽譜には微妙な違いがあり、おそらくこれが当初の形で、出版に際してシューベルトが手を加えた形跡が伺えるのである。
加えて、手本にと示されたフンメルの五重奏曲とは七重奏曲からのピアノ五重奏用編曲版であった可能性が強くなった。出版は七重奏曲とおそらく同時であり、「ます」の特殊な編成も合致している。楽章構成も「ます」の変奏楽章が加えられた以外は類似している。このことで、シュタードラーが「フンメルの五重奏曲、正確には七重奏曲」と書いた意味もはっきりして来たのだ。
となると問題は歌曲「ます」の誕生のみ。シューベルトが歌曲に着手したのは1817年で、以降1821年までに5つの稿が書かれたことが判明している。もっとも有名なのは1820年の第4稿でこれが後に出版されたのだ。つまり1819年の時点ですでに第3稿(1818年)まで完成していたのである。また変奏曲のもとになったのも第3稿であったと考えられるフシがある。
加えて、シューベルトの仲間たちはシューベルトのために詩を探して提供し、歌曲を筆写して仲間内に広める役割を果たしていた(シュタードラーもその一員で、彼が筆写した楽譜のみで伝えられる作品も少なくない)。一方シューベルトはそこで歌われるたびに、新しく手を加えていたのである。
ここからは推察の域に入るのだが、シュタードラーは「歌曲に魅せられていた」と書いているだけで、出版楽譜のことを語っている訳ではない。つまり、1819年にその場で聞いたと理解することも可能である(滞在は数日に及ぶ)。比較的新作に当たるので、シューベルトは(フォーグルといっしょでもあり)楽譜を持って行ったことも充分に考えられるのである。しかし、すでにシューベルトの友人たちを通じてそのコピーを所有していたこと考える方が妥当かもしれない。ウィーンの友人たちの間では手書きの楽譜のコピーがすでに幾つか出まわって歌われていたのだから、それを入手していた可能性も高いのである。
つまり歌曲との関連をこう考えれば、問題はすべて氷解し、シュタードラーの記憶はすべて正しかったことになるのである。
こうした紆余曲折の末に、1819年にパウムガルトナーのために書かれたことがほぼ確実となり、そのために以上の調査の過程は解説書にも載らなくなったのである。
残念ながら、シューベルトの自筆楽譜がどこかからひょっこり出現でもしない限りこの疑問に終止符が打たれることはないのだろう。
【「ます」という魚について】
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シューバルト(Christian Friedrich Daniel Schubart) ドイツの詩人、作家、作曲家(1739-91)。「ます」の詩の作者であり、自身でも同じ詩に作曲している。シューバルトのサイト。ここにはシューバルト自身の「ます」の譜面もあり、音も聞ける!。
