■■

このエッセーは、編集長(おんぶずまんじゅしゃげ)がつれづれなるままに書いたものです。
もし、不快な感情を抱かれた方は、すぐにこのページを閉じてください。

♪∴∵¨..........................................
ひとくちに、プロのピアニストになりたいと言いましても、それには数々の条件があります。
まず、テレビタレントと同じように、どこかの音楽事務所、あるいはレコード会社に所属しなくてはなりません。宣伝員やスケジュールを管理するマネージャーも当然必要になってきます。
しかし、自宅が相当の資産家の場合は、音楽事務所を自宅に置き、例えリサイタルで入場者が少なく赤字経営でも自己資金で開催はできるでしょう。

♪∴∵¨..........................................
運良く、どこかの音楽事務所に所属できたとしても、会社の運営上、当然のようにいくつかのリサイタル開催を義務付けられます。そして、その時演奏する曲目の大半は事務所から指定されるのです。
観客動員のために、どうしても知名度の高い曲目がプログラムの中心になります。
押しも押されぬような世界的に有名なピアニストになれば、自分の好きなプログラミングが許されるようになりますが、「かけ出し」の場合は、当教室の「きららコンサート」のような「自分の好きな曲」だけでコンサートを開くなんて「トンデモナイ」ことで、曲目への好き嫌いなどは言えません。
音楽事務所から指定された曲目が、レッスンなどで以前に弾いたことがある曲ですと、まず一安心でしょうが、中には初めての曲目もあるでしょうから、「いついつまでに仕上げること」と期限が付きますと、初見能力が相当優秀でないと、とてもこのようなノルマを消化できません。
そして、コンサート1回の合計演奏時間が普通1時間半、アンコールも入れると2時間近くの曲を全て暗譜で演奏できないといけません。いわゆる、記憶力が優秀でないとダメなのです。
暗譜ができない、あるいは間に合わないからと、出演をキャンセルしたり、または本番でミスタッチ(音を間違うこと)が多かった場合は、もう二度と!次の仕事が来なくなるのです。

♪∴∵¨..........................................
また、いわゆるピアニストになるための条件の一つとして「コンサートツアー」とか「地方公演」というような「演奏旅行」をしなくてはなりません。1枚でも多くのCD、それに名前を売るための宣伝も兼ねて。
そして、次第にその人の名前が売れ、その活動がこの業界に広く認められるようになりますと、運が良ければ、外国からもお招きの声がかかり、「海外公演」というチャンスが訪れるかも知れません。
ところが、「飛行機に弱い」、「風邪をひきやすい」、「水当りしやすい」というようでは、外国で演奏旅行をすることなどは絶対にできないでしょう。
前述のように一度でも出演をキャンセルしたら、もう明日は無いのです。
つまり何と言ってもこの業界、健康と体力が第一なのです。 
♪∴∵¨........................... 上にもどる

♪∴∵¨..........................................
ところで、最近の音楽業界のますますの傾向として、ピアニストはルックスが良いことも「売れる」ことの条件の一つとしてあげられます。ポスターに載せる顔写真が美形ですと、それだけで「行ってみようか」ということになるかも知れません。
CDのジャケットにしても、店頭に並んでいるたくさんのCD、いろいろな演奏者が同じ曲目を弾いていたりして選ぶのに迷うことがあるでしょう。
となると、どうせ選ぶなら「美形のピアニストが演奏しているものを..」、ということが有りうるからです。
リサイタルで、きれいな衣装で身を飾り、いくらきれいな音で弾いても、聴衆は長時間、同じ人をじっと我慢?して見ることにもなるわけですから、やはり顔や姿もどうせなら美しいほうが....

♪∴∵¨..........................................
ですから、最近の特に若いピアニストは「見られる」ことを強く意識、熱心に研究しているようです。
ヘアスタイルを変えたり、スタイリストを付け、舞台衣装に流行を取り入れたりと、他のピアニストと違ったパフォーマンスをしようと懸命です。
手を激しく上げる、足を踏みならす、額の汗を演奏中に「袖」で拭くとか...
また、拍手が消えないうちにすぐ弾き始めたり、曲間を切れ目なく演奏したり、組曲の順序を変えたり、楽譜に自分の考え(解釈)を加えて演奏したりと...
しかし、そういうことなどには一切目もくれず、「良いピアニストは、顔じゃなく実力だよ。」とおっしゃる方は相当の「クラシックつう」と言えるでしょう。 
♪∴∵¨............................... 上にもどる

♪∴∵¨..........................................
まだよく知られていないピアニストの経歴を知るために、コンサートのチラシやCDのジャケットの解説文などを読むわけですが、そこには「◯◯音楽大学を主席で卒業した」とか、「◯◯コンクールで◯位だった」とか、まあ実にいろいろ書いてあるものです。
そこにどれだけいろいろ書くことがあるかで、そのピアニストの値打ちみたいなものが推し量られる傾向があります。
たった2・3日外国の音楽大学で講議を「聴講」しただけで、「留学」したことになったり、たった1回、しかも数時間「公開レッスン」を受けただけで、「◯◯先生に師事した」とか....解説文を読んでいる人には、どうせ分らないだろうと、かなりオーバーに書くのも、もう半ば常識の世界だと言っても良いでしょう。
.....ということは、たった1行のそういう経歴が欲しくて外国に出かけたり、レッスンを受けたりすることもある、ということを念頭に置いて、そういうプロフィールを読むのも良いと思います。

♪∴∵¨..........................................
高名な先生、それにピアニストにたった1回でもレッスンを受けるには、今付いている先生からの紹介状が必要でしょう。紹介者にも当然お礼金、レッスンを受けるだけで何十万、何百万円はザラの世界です。
また、「◯◯管弦楽団と◯◯というピアノ協奏曲を演奏し、好評を得た。」などという一行がプロフィールに有るのと無いのとでは大分重みが違いますが、誰でもそういうチャンスをつかめるわけではなく、この世界もご多分にもれず、「コネ」が関係している場合が多いのです。自分の通った音楽大学の教授の口添えや管弦楽団の理事、それに指揮者などの人脈はどうしても不可欠です。 
♪∴∵¨......................... 上にもどる

♪∴∵¨..........................................
もちろん、無名のピアニストが、何もせず待っていてもチケットが売れるわけは無く、観客をたくさん動員するのには、親戚や友人知人、それに大学の後輩などに働きかけたりして、それらを数多くさばかなくてはなりません。売れなければ、もちろん自己負担をすることにもなるでしょう。ましてや、外国に出かけて行って地元の有名オーケストラとの共演となったら、それこそ気が遠くなるようなものすごいお金が動くことになるでしょう。ですから、チャンスだけでなく、「財力があること」はどうしても必要なのです。

♪∴∵¨..........................................
ところで、無名のピアニストを「世に知らしめる」のに最も近道なのが、世界的な規模で行われるコンクールに挑戦し「賞を取る」ことですが、これでいくら優秀な成績を納めても、広い音楽界では、もちろんすぐには一流扱いなどはされません。コンクールと名の付くものは大小合わせて世界中にはたくさんありますし、入賞者はそれこそ「掃いて捨てる」くらいいるわけです。

♪∴∵¨..........................................
たとえ、コンクールで賞を取ったとしても、大切なのは、「受賞後の音楽活動」なのです。
よく、「大学を出たけれど..」という言葉がありますが、その名声にあぐらをかいて、その後の努力を怠ったりしますと、この世界に限らず、世間から次第に見向きもされなくなり、いつの間にか忘れ去られてしまうのです。
「すごい!すごい!」とマスコミからチヤホヤされ、あちこち引っ張り回され、そのため、ピアノの練習時間が無くなってしまい、腕が落ちたり、また自分は有名人とばかり、「お天狗」になってしまい、新しいレパートリーを勉強しなかったりすると、いつの間にか普通の人、あるいは「あの人は今どこで何を?」となってしまうケースは世界中、数え切れないくらいにあるのです。

♪∴∵¨..........................................
その反対に、華々しいコンクール歴などはさほど無くても、今や押しも押されぬ大ピアニストになっている例も数多くあります。マイペースで地道な活動を続け、また他のピアニストがあまり取り上げないような作曲家の作品に意欲的に取り組み、それをレパートリーとして、「あの作曲家の作品なら唯一、◯◯がCDを出している。」という具合に、「特徴ある存在」としてファンの数を増やしている人も目立ってきています。
私どもはこういうピアニスト、そして演奏家に大変興味を持っています。
「今こそ個性の時代」、我が教室の生徒諸君も全員「アマチュアのリトルピアニスト」です。
私どもに言われた通りにしかできないのではなく、自らいろいろ見聞きして研究し、個性豊かな演奏ができるようになって欲しいと思っています。

♪∴∵¨.......................................... 上にもどる

■■