まずは「ハーモニー」とは "Harmony"という英単語は一般的には「調和」と訳しますが、合唱におけるハーモニーは物理的には一種の共鳴ということができます。2人の出す音に共鳴が起こると、単に音が2人分出ている以上の響きの充実が得られます。 それではどういう時に共鳴が起こるかというと、同じ周波数の音が空間的に近接して存在すればOKです。最も簡単な例としては、合唱ならば同じパートの人は同じ高さの音を同じ母音で発声しますから、パートの中では(音の高さや質がよほどバラ付かない限り)共鳴が起きています。しかし同じパートの中でハモる、という言い方はあまりしませんね。 それでは更に、異なるパート−つまり異なる音の間での共鳴とはどのようなものでしょうか。「音の種類」で説明したように、人の声も基本周波数とその整数倍音という成分からできていますが、その倍音同士の共鳴がハーモニーと言うことができます。例えばバスが基本周波数faの音を出していて、テノールがその5度上の基本周波数fbの音を出していたとすると、fb = 1.5 × faとなり(つまりfaの3倍音のオクターヴ下の高さ、「音の種類」の倍音列表参照)、右図の赤点線で関連付けた倍音同士−3 × N × faと2 × N × fb (Nは正の整数)が共鳴します。もしfbがfaの3度上だとしたら、fb = 1.25 × faとなり、共鳴する倍音は5 × N × faと4 × N × fbとなります。 |