クメジマノコギリとオキナワヒラタ(久米島産)の飼育日記

クメジマノコギリ(♂)
クメジマノコギリ(♂)

オキナワヒラタ(♂)久米島産
オキナワヒラタ(♂)久米島産

クメジマノコギリ

本土産や沖縄本島産に比べ、大あごの湾曲は弱く、上翅の赤味はより深く、漆のような風合いを持つ。体長も比較的小さく、♂の最大は65mmといわれている。樹液に付く。

オキナワヒラタ(久米島産)

沖縄本島産とひと括りにされているが、体長は相対的に小柄。オキナワヒラタの♂の最大は72mmとされるが、久米島産がそこまで届くかは疑問。大あごは、本土産と比べ、太く、やや湾曲している。果実トラップが有効。

採集

久米島はハブとヒメハブの生息地。ごく普通に林道を這っていたりする。つまり夜間の採集は、門外漢にとって生命の危機にさらされることを意味する。(実際、筆者はヒメハブと遭遇した)

「危険」ということで、捜索範囲(?)は林道沿いの広葉樹に限定。7月はじめということもあったが、本土と比べて、出ている樹液の量は少ないように思えた。

ポイントの木において、ノコは樹液に、ヒラタは昼間設置しておいたバナナトラップにと、不思議と分かれていたのが印象的だった。

持参した懐中電灯が、比較的光量が強かったせいか、それに目掛けてノコ(♀)が数匹飛んできたことも、あわせて付記しておく。

久米島での初めての採集であったが、一晩でそれぞれ5〜6匹ずつと、まずまずの成果だった。

飼育

自宅に持ち帰り、飼育に挑戦した。最適な気温、湿度等わからないことだらけであったが、福岡の夏に十分耐え、湿り気も普通種並みに与えていれば、何ら問題が生じなかった。本格的な秋が到来した今も、暖房など必要なく元気に暮らしている。

気になった点を挙げると、極端な夜行性で、非常に臆病であるということ、めったに顔を見せないということだ。その愛想のなさはまるでオオクワのようだ。本土産のノコのようなのん気さ(?)は彼らにはない。本土産のヒラタも臆病さにかけては相当なものだが、久米島産はそれをはるかに凌ぐ。

クメジマノコとオキナワヒラタの明確な差異は、繁殖力に現れた。共に5〜6匹ずつで飼育していたが、残した幼虫の数はクメジマノコの方が圧倒的に多かった。数にして、30対8。1年目のデータなので、断言はできないが、現地での数に大きな差がないとすれば、クメジマノコの方が、環境の変化に対する適用能力があるということか?幼虫が食するものも現地とは異なるであろうし、第一、気温差は甚だしい。

有用バクテリア(母虫から受け継いだ共生菌。これらに木材を分解させ、幼虫は栄養分を吸収する)も本土のものと異なるのであろう。久米島2種のオガクズは、本土の2種と比べ、異常に黒ずむという傾向が見られたことも報告しておく。


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