イワカワシジミ

 イワカワシジミの主な生息地は,林道沿い,沢沿い,集落周辺など,明るい場所に面したクチナシの木の周辺である。クチナシの木そのものは,むしろ薄暗い林縁などに多く,細い林道を山奥まで入って行くと,道に沿ってずっとクチナシがある,というような場所も多い。しかし,このような場所では,クチナシそのものにあまり実がついておらず,たまについていても,イワカワシジミの幼虫を見つけることはほとんど不可能である。集落のある場所からあまり離れず,林縁を歩けば成果が挙がるだろう。場所としては,西仲間,知名瀬,和光園や浦上周辺など,どこも同じようなものである。特に場所や地形を選んで生息しているというよりも,クチナシの木に対する執着性が強く,畑の縁の孤立したクチナシの実という実に幼虫が入っているのを見たこともある。

 イワカワシジミというと,どうしても幼虫採集という意識が強いだろう。だからといって,高枝バサミを持参してバチバチ実を取って調べるようなやり方は(若気の至りと言おうか,以前やったことがあるので大きなことはいえないが)あまり利口とはいえない。これも雌を採集して産卵させるのがもっとも容易である。あまり長くないつなぎざおで,クチナシの木の周辺を叩いて回れば時期さえ合えば雌を2〜3頭採集するのは容易である。

 家に着いたら,大きなケースの底にクチナシの実を敷き詰め,少し離れた位置から照明をあてる。これで毎日少しずつ産卵して行く。気に入った実には複数産卵するので,産卵したらすぐに別の場所に移す。共食いの習性が激しいので,釣り道具屋に売っている小物ケースなどで一つ一つ隔離して育てるのがよい。俗に,都内で売られている角張った実のクチナシは食べないということになっているようだが,私がやってみた限りでは同じように食べた。食べるものと食べないものがあるのかも知れない。

 どんな実を使うにしても,卵から飼育する場合にはどうしても実がしなびたり,腐ったりするので,途中で新しい実に移動させなくてはならない。この時がかなり気難しく,多少孔を空けてやったりしてもなかなか入って行ってくれない。都内などで飼育する場合,実の調達が可能な秋がよいだろう。園芸用品店で,「実つきクチナシ」が売られていることがある。これを利用すれば,採卵や飼育がもっと容易になるだろう。

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