なぜペアをつくるのか(3)

 他にも色々な説があるようですが,サンゴをかじっているチョウチョウウオを見ながら,こんなことを考えて見ました。

 かりに一夫一婦でなかったら,当然あぶれる雄が出て来て,なわばり争いは格段に激しくなりますね。その場合,どうやって争うのだろうか。やはり,あの口を使うしかなさそうです。堅いサンゴをかじり取ることのできる,強力な口を使ってなわばり争いをするのは,あまりにも危険すぎる気がします。複数の雌を含む広大ななわばりを主張する雄は,それだけ争いで傷つく危険も大きい。したがって,そういう戦略は取れないのではないか,と思うのです。あまり好きな言い方ではありませんが,核の抑止力に例えられるでしょうか。

 この問題の答えは,もしかしたら永遠に出ないかも知れません。あなたはどう思われますか?チョウチョウウオに出会ったら,是非しばらく観察してみてください。答えを出すのは,あなたかもしれません。

ツノダシZanclus cornutus (チョウチョウウオに似た印象だが,ツノダシ科という別のグループに属する)

 最後に,誤解のないように付け加えておきますと,チョウチョウウオのすべてがペア形成による一夫一婦型の配偶様式をとり,なわばり形成をすると確認されているわけではありません。はっきりと確認されているものは,次のような種です(『魚類の繁殖戦略』2巻 P71-海遊舎1997より抜粋)。つまり,たとえ2匹で仲良く泳いでいるからといって,その二匹が繁殖をしているかどうかはわからない,繁殖の相手は別かもしれないし,というようなことから,具体的にはあまりよくわかっていないのが実状なようです。また,単独になったり,集団をつくる種もあるし,なわばりを形成しない種もかなりあります。今回写真で登場した種は,すべてなわばり形成が確認されていない種です。

サンゴ食の種

ハナグロチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオ,ミスジチョウチョウウオ,コガネチョウチョウウオなど

雑食の種

シテンチョウチョウウオ,フウライチョウチョウウオ,フォーアイバタフライフイッシュ,レッドバックバタフライフイッシュなど

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