3.サンゴ礁の成り立ち

 図1は,典型的なサンゴ礁である裾礁をあらわしたものです。このサンゴ礁,どのようにできてきたのでしょうか?Aの位置からBの位置に広がってきたのでしょうか,それとも,Bの位置からAの位置に向かって広がってきたのでしょうか?そんなことは考えたことはない?ごもっともです。それでは,今考えて見て下さい。当然,成長して,AからBに広がって来ただろうとたいていの人は考えますよね。でも,ちょっと考えて見て下さい。図2のような環礁はどうやってできたのでしょうか?珊瑚礁が,島に接する明るいところからできるとしたら,こんな深いところからできはじめるというのは不思議ですね。真ん中の一番浅いところからできていればまだわかるのに‥。それから,もっと基本的なこととして,Bの下の方は,ほとんど光が届かないため,褐虫藻も光合成できないはずです。どうして,こんな深いところにサンゴ礁ができたのでしょうか?

図1 裾礁

図2 環礁

 このような,サンゴ礁の成因論について,初めて考えた人物は,なんと進化論で有名なダーウィンです。彼は,環礁は,もとは裾礁だったものが,中にあった島が何らかの理由で沈降したためにできたのだろう,というように,裾礁をもとに様々な形のサンゴ礁の成因を考えました。現在では,ダーウィンの考え方は,半分正しく,半分間違い,というよりも,重要な点を見逃していたと考えられています。

 重要な点とは,氷河期と比べ,現在では,海水面がかなり上昇しているということです。最近,二酸化炭素などの温室効果により,海水面が上昇したり,異常気象が起こるのではないか,ということが環境問題として注目されていますが,人間の活動がなくても,実は同じことが少しずつ起こっていたのです。つまり,氷河期頃には,サンゴ礁は図3のようになっていたと考えられます。ここから,水面が上昇して行ったら,どうでしょうか。光合成を行うためには,水面近くでないと困ります。沈んでしまわないように,海水面の上昇を追いかけるように,上へ,そして島の方に向かって成長して行ったのです。この成長が,島の高さを越えてしまったのが環礁なのでしょう。

図3 氷河期以降の海水面の上昇と珊瑚礁の発達

 つまり,サンゴ礁は,B(正確にはB')の位置から,Aの位置に向かって成長して行ったのです。

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