■第5回 表情を追う■ | |
今回のW杯で、一番印象に残った表情といえば一般的には決勝戦の後のカーンの表情だと思います。ブラジルが優勝したあの場面で、なぜに負けたチームのカーンの映像をあれだけ長まわしで国際映像では流したのか?あれは現場でカメラ映像をスイッチするディレクターだか誰かだかの英断だったんだろうなあとは思います。いくつものカメラから流れてくる映像の中で、目にとまったんでしょうね。カーン自身もまさか自分があれだけ長まわしで流されてるとは思わなかったのでは(場内のオーロラビジョンでも国際映像は流していますが、あの状態で見てるわけもなし)。この決勝、私が唯一今回のワールドカップでフルに録画した試合なのですが、この最後の場面は何度見ても胸にきます。そしてそのまま表彰式もついつい見てしまい、カフーがカップをかかげる瞬間の晴れ晴れとした表情と乱れ飛ぶアルミホイル(おいおい)と折り鶴、流れる音楽にも感動してしまう私でした。 そういう敗者側の表情の方についつい目がいってしまいがちな映像が多くて、見てて「あああ」と思うことしばし。中でもやっぱり予選最終戦のバティは辛すぎる映像だなあと思います。そういう映像は何度も何度もハイライトで見るわけですが、同じ映像にもかかわらずいつでもしんみりしてしまいます(スウェーデンなんて言わずもがな(苦笑))。勝者側で目をひくのは同点・逆転・ゴールデンゴール・PKといったシュートの入る場面でのはしゃぎっぷりですね。あー本当に嬉しいんだなっていうのが見てるこっちにも伝わってきて良。アイルランドがあれだけ愛されるのも、そんな選手の表情と、それを見つめるサポーターの表情が実に素敵で(またこのチームは上手く映像になっていたと思う)大会の中の清涼剤な気分でした。ゴールデンゴールで物凄かったのはセネガル戦で勝ったトルコ、イルハンの笑顔120%に結構やられた人も多いのでは(彼の笑顔は無敵かもしれない)。そして歓喜の渦にはしゃぎまくって飛び込んでいったギュネス監督が私は大好きです。監督さんって怒っても喜んでもどこのチームもみんな結構オーバーアクションで見てて楽しかったです。 そんな中で私の心に一番残っている選手の表情はスペインーアイルランド戦のラウルの表情だったりします。彼はこの試合、スペインが勝っている状態で途中交代でベンチにさがっていたのですが、まさかの同点PKで試合そのものもPK戦になってしまったという。今の自分には何も出来ない、そんな感じで仲間の蹴るPKを祈るような表情でベンチで見つめる彼を瞬間カメラがとらえた映像は見てるこっちに彼の祈りが伝わってくるようでした。アイルランドはサポーターも含めて本当にいいチームだし(同点になった時のPKの映像2分割はすばらしいの一言)、PKに入るまでは(入ってからもか)アイルランドよりの視点で見ていたんですが、そんな彼の表情を見た瞬間、思わず「スペインに勝たせてあげたい」と思ってしまったのでした。 そんなPK戦の合間で落ちつきはらっていたGKのカシーリャスの笑顔も実によかったです(安心してゴールをまかせられる感じがしました)。そんなスペインはその次に逆に韓国にPK負けしてしまうのですが、試合の判定どうのこうのはとりあえず置いておいて、最後のPKが決まった瞬間のホンミョンボの笑顔はめちゃくちゃいい顔だーー!と思った次第。そして負けてピッチを後にするカシーリャスが、かるく韓国選手のはしゃぐピッチをふりかえる映像をどこかでみたんですが、それでも誇らしげだった彼の表情に4年後の活躍を期待させていただきました。 最後に日本がらみのお話。トルコに負けた後、私は代表といっしょに泣くという感じでは申し訳ないけどなかったのですが、トルシェ監督が試合後のインタビューで言葉を詰まらせてしまった瞬間はちょっときました。4年というのは過ぎてしまえばあっという間かもしれませんが、そんなのは外野の言うことであって、監督と選手にとっては長い長い時間ですよね。本当にお疲れ様でした、と頭をさげたくなった一瞬でした。 |