※強烈に長くなってしまったので、そのつもりでどうぞ※
ここのコラムの第3回でアンデシュ一押し!と書いてから、はや4ヵ月近くが経過しました。なんだか今読みなおすとどかんとW杯ではまったままの妙にテンションの高いコラムで気恥ずかしいところです。とりあえず今でもアンデシュを見ていきたいというのは変わらないんですが、かといってそれだけでは決してなくなっているのが今の自分だったりします。ということで、あれから数ヵ月、スウェーデン代表とつきあっているうちに、見て行きたいという選手が他にもぱらぱら出てきたので、そんな中で今回はトビアス・リンデロート選手(MF)について語ろうと思います。まあ、今回は語るというか、ここ2ヶ月ぐらいのFootball日記のトビアス絡みの部分をまとめたような内容かもしれません。エバで出れなくて「気になる〜」と言い続けて一月ぐらい真剣に見てたら、めっちゃ好きになってしまった模様(苦笑)。以下、トビアスといつまでも言ってるのもなんなので、愛称のトビーで書いていこうと思います。どうでもいいんですが、彼の姓の「リンデロート」って、初めて聞いたときに「綺麗な響きの名前だなあ」とか思っていたり。スウェーデンではこの姓も一般的なのでしょうかね。
そんなトビーは若干23歳のスウェーデン代表のいわゆる「ボランチ」といわれるであろう役割の選手です。典型的な守備的ミッドフィルダーなので、普通に初めてスウェーデン代表、もしくはエバートンの試合を見た時に、彼に目が行く人って多分そんなには多くないと思います。実際ボランチといわれてる選手でも、かなりオフェンシブな選手が昨今は多い気がするのですが、トビーは本当にディフェンシブ、なにせ本人自身が「代表でもクラブでもディフェンシブに行こうと思っているし、それが好き」と話してるぐらいだったりします。けれど、そんな「ボランチ」という役割を実に忠実にこなしてる彼に一回でも目を向けてみると、非常に献身的(←よくこう言われてる)で魅力的な選手なんじゃないかと私は思っています。
とにかく彼を評する人が一様に誉めるのが「位置取り」、中盤に時折こぼれてくるボールをさりげなく拾って、フィールドを瞬時に見渡して適切な相手を判断、正確なパスを通す技術はかなりのものではないかと。なんでも代表の中でW杯でのパスが一番正確だったのは彼だったとか。CKとかFKとか、最近の代表ではアンデシュがメインでまかされてるような華やかさのあるパスではないけれど、堅実に攻撃陣に繋いでいくパス、そんなパスが本当に綺麗にはまっていって好機を作り上げていく様子を見てるのは、かなり気持ちよくもあります。W杯で言えばイングランド戦の後半、ナイジェリア戦などがまさにそんな感じで、その試合の解説&実況の方が「いいところにいるんですよ」と、しきりに彼を誉めていたのが印象的でもあります。解説の方々も普段のトビーを詳しく事前に知っていたとも思えないので(苦笑)、先入観全くなしでの評価なので嬉しいところです。
そんなフィールドの中の彼をじっと追いかけていると、実に多くの指示だしをしていることに気がつきます。オフサイドでは手をあげ、フリーの選手がいれば指をさし(テレビで声まではさすがに聞こえないけど叫んでもいると思う)、ファウルがあればアピールをし、本当にジェスチャーがめまぐるしい。代表でもクラブでも、今は比較的年上&大柄な選手ばかりに囲まれてプレイをしてると思うんですが、そんな中でも堂々と渡り合っていってるそんな姿は「頑張ってる!」という気にさせてくれます。サッカー選手は天才型と努力型があるような気がなんとなくするのですが(もちろん努力は全ての人がしてるという前提で)、トビーはどちらかといえば天才型じゃないかなと思ったりします。天才というか、天性のカンみたいなものが非常に優れているような。代表デビューは若干20歳の1999年9月なんですが(実はアンデシュのデビュー戦と同じ試合だったりする)、U21での経験が全くないままいきなりフル代表デビューというのは凄いような。
彼のお父さんも元W杯の出場選手、トビーはつまりいわゆる2世選手です。お父さんの指導するクラブでとにかくがんがん鍛えられたのが、今の彼をつくっているとも言えます。このお父さん、指導者としての誉れも高くて、同じクラブ(IF Elfsborg)で指導を受けてたアンデシュが、スウェーデンの中で尊敬できる指導者にこの方の名前をあげてるのをどこかで見たことがあったりします。そういう状況だったので、最初はマスコミや一部サポーターからは「親の七光り」という色眼鏡で見られてしまうことも多かったらしいのですが、そのうち彼自身のプレイをちゃんとマスコミもファンも認めるようになって、そんな言葉は誰も言わなくなったとか。そんな実績をひっさげてスウェーデン、ノルウェーのクラブを経てプレミアに移籍したのが2002年1月末、行き先は代表の同僚のニクラスのいるエバートン。移籍当時のニクラスのインタビューやトビー本人のインタビューはめっちゃやる気で希望にあふれてるんですが、ほぼその直後にチームの低迷により彼らをとってくれたスミス監督が解任されたことが、トビーをして「最大の悲劇」とまで言わせるような現状を生み出してしまうというのは運命のあやという感じが。。
後任のモイズ監督はめっちゃ有能だし、実際エバートンはそこから起死回生して降格のピンチを免れたわけですが(今期も成績いいですしね)、トビーの出番はなかなか巡ってこない日々が半年以上続いたと思います。これは昨シーズンだけではなくて、今シーズンにも言えることで。トビーがそんな中でしきりに口にしていたのが「代表に影響が・・・」というような意味合いの言葉。本当に彼は「代表」である自分というのを大事にしてるというのが、いろんな発言から伝わってきます。なのでW杯前でも後でも「使ってほしい!」という思いが痛いぐらいに伝わってくるインタビュー記事が非常に見ていて胸に痛かったり。しかし、そんな風に「クラブで使ってくれないと代表にいられなくなる」的なニュアンスの発言が表に出てしまうと、面白くないのが現地のサポーター(それはそうですよね)。「お前はクラブより代表がそんなに大事なのか」というような声もあがっていて、にっちもさっちもいかないままに時間だけがどんどん流れていった今シーズン序盤。まして今期からエバートンに入った同じポジションのリ・ティエがばんばん先発で使われてるのを見たら、そりゃあ落ちこみ&憤慨もしますよね。トビー自身、代表ではきっちり結果をずうっと出してきているので、リ・ティエには決して負けてないという自負は多分あるのだと思いますし。8月下旬の「使ってくれないなら移籍させてくれ」騒動、トビー自身は「そんなことは言っていない!」と否定してるのですが、私はそれを聞いたときに「やっぱり」と思ってしまったことです。
そんなこんなで迎えた10/20のアーセナル戦が1つの転機になるような気が私はします。ベンチには入っているものの出番はあるのかなあと思っていた後半56分ぐらいにトビーが交代の準備をしてるのを見た時、正直私は「こんな状況で交代かい!」とかなり複雑な思いでした。この日のリ・ティエは本当によく走り回っていて、私が素人目に見ても動きいいなあと思うぐらい、交代が告げられた時に解説者さんまで「もうちょっと見ていたかったですね」言わしめるぐらいの出来だったので。そんなリ・ティエへのサポーターからの大きな拍手の響く中で、ピッチに出ていくトビーを私は祈るような気持ちで見つめてしまいました、どんな気持ちでピッチに入ったんだろうとか、今でもぼんやり思います。でも、そんな他人や周囲ののことはどうでもよくて、素直に「試合に出れて嬉しい」というのが一番だったかもしれませんね。
そんなトビーはピッチに入るとまずは周りを見渡してました、交代で入った選手ってみんなこんなにきょろきょろするものなのかな?と思ってしまうぐらいかなり長い時間。それは「位置取り」をきっちりするということ以外の何物でもない行動なんでしょうね、彼にとっては多分当たり前というか、スウェーデンでずっとたたき込まれてきたことなんだろうなと。以後、私は試合の展開もさることながら、とにかく画面にトビーがいるときは彼を目で追っていきました。すると、今までの心配をふっとばして余りあるぐらいの働きをする彼がそこにはいました、正直途中で「これだけ出来る子が、よく今まで我慢してたよね」と涙でそうになるぐらい凄いよかったと思います。なんか彼が一生懸命、代表をせおってプレーしているようにも見えました。彼がこの日ピッチにいたのは37分程度だと思いますが、魔法にかかったような37分でした。この試合そのものが神懸かり的な終わり方をしたというのも手伝っているとも思いつつ(ルーニー君はほんと、凄い)。
あけて10/27のウエストハム戦。MFのグラベセンが欠場してるからか、リ・ティエとトビーが初めて先発で一緒に使われてるのを見ました。つくづく見比べるとタイプの違う2人だなあと思うことしきり。リ・ティエのが動きが派手なので、解説も彼の名前をがんがん連呼していて、画面見ないで解説だけを聞いていたら「トビー、いるのか?大丈夫か?」とか思うぐらいだったかもしれません(苦笑)。この日のトビーはいつものトビーで、淡々とパス回しをしていたんですが、ボールをキープしてることが少ないので(もらったらすぐに誰かに回してしまう)、解説の人が名前を呼ぶ機会が全然ないのが見てたらわかりました。前節のアーセナル戦の方がよかったかな?とかは思いつつも、これからもこうやってトビーは淡々と仕事をこなしていくんだろうなと思いました。もう大丈夫、何かあるとしたら、クラブの方針とか周りの選手との兼ね合いが彼のプレイスタイルにあっているかどうかという部分かなあと思いました。グラベセンが戻ってきた時にどっちがあう?ということになるのかもしれませんが。ちなみに代表ではアンデシュが中盤を組む場合「トビーとやるのが一番あう」といってるそうなので、実力もともかく、選手同士の相性ってやっぱり重要なんだとは思っています。
そんなトビーを紹介してる英語の記事が<ここ>にあります。私が100%読解できてるかというとかなり怪しいのですが、実にいい紹介文だなあと思っています(というか、他のエバの選手のは短めなのに、なんで彼の分だけこんなに長いのだ)。それにしても本当に大きな壁だったと思うけど、たった1人でよく頑張ったねと心から思います。これからもきっと沢山いろんなことがあるんだと思いますが、もう大丈夫でしょう。誰がいったか知らないけど、トビーは将来(2006?)の代表キャプテン候補生といわれています。おとなしそうなんだけどな?と最初聞いたときに思ったんですが、なるほど今ならわかるような。名鑑系の写真だとめっちゃ不機嫌&無愛想に見えてしまうことが多いんですが(なんでああなるんだか)、笑顔だと年相応のかわいい男の子なんですよね。とりあえず2006年のみならず、順当なら2010年も狙える若さが素晴らしい、まだまだずうっと見ていられる!このままスウェーデン代表のみならず、世界を代表するボランチになってください。・・・なんて、今はまず、アンデシュと力をあわせて2004年EURO予選を切りぬけることでしょうか(苦笑)。
さて、今度は同じく「気になる〜」と言っているニクラス(こちらもそろそろ愛称でニックと書くようにします)の方についても語りそうな予感。こちらはまだまだ大変そうなんですが、なんとかのりきってほしいというところ。トビーとニックは本当に仲良しなので、2004年にニックの契約が切れるまでは二人でエバで頑張っていて欲しいなあというのが、今の私のささやかな願いです。というか、とりあえずエバの試合で二人がピッチ(できればグディソンパーク)に同時にいる状態で中継を見る、というのが今一番の希望かも。そしていつかは生で見たいところ(かなうか!?)。
|