夜の学校
“ここは、十番中学校。十番中学校には、昔から、たくさんの怪談や、七不思議が伝わっていた。ここは、力の集う場所だったのだ・・・”
「ねぇねぇ、しってる? 十番中学って、いぃぃっぱい、お化けが出るらしいわよぉ!」
元気そうに言うのは、太陽もなかの友達、木下奈々である。
「奈々ぁ、そんなこと、元気に明るく言わないでよぉ・・・(TT)」
泣き言を言っているのは、この話の主人公、太陽もなかである。
「ん〜、しらねぇなぁ、T.A女学院のなら、姉貴に聞いたことあるけどよ」
そういうのは、月野進悟。かの有名な(?)月野うさぎの弟だ。
「あ、俺知ってるぜ。夜中になると、青色の炎が廊下にちらつくんだろ!?」
で、こっちは飯田剛史。この四人は、何かというと良く集まるのだ。
「そぅそぅ、それでね、夕方、まだ、生徒が残っているときも、怪奇現象、起こるらしいわよvvv」
・・・・・・もなかではないが、そんな話、うきうきと言わないで欲しいものだ・・・・・・。
「・・・奈々、まだいうのぉ・・・・・・。」
「もちろんv先輩に聞いたんだけど、学校に忘れ物して、取りに帰ったら、机の上に、なんか、知らない女の子が座ってて、それで、どうしたのって聞くと、あなた、忘れ物した?って聞かれるの。うんって答えちゃうと、この子だけじゃ寂しいみたいだから、魂、置いて行ってね、って言われて、その子の目を見ちゃうと、一週間危篤状態。振り向かないで走りさると大丈夫らしいの・・・。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
「と、いうことで、今日の夜、学校に来るため、忘れ物してね!!」
にっこりとしながら言う奈々。
「あ、ごめん、俺、今日用事が・・。」
「俺は、馬鹿うさぎに宿題を教えに・・・。」
「あたしは、家族が夜逃げの準備を・・・。」
奈々は、三人の制服のすそを、がしっとつかみ、にっこりと笑っていった。
「にがさないからねvv」
三人に、逃げ道はなかった・・・。
―☆―
「・・・ここ、火川神社じゃん。」
お堂(?)を見上げて言う剛史。
「そう!一応、念のため、お札を買っとこう!と。」
隣りで奈々が言う。
「ここのお札とかお守りって、すっごく効き目があるんだって。でも、恋愛のほうは、効かないらしいけど・・・。」
なにしろ、マーズが作ったのですからねぇ(^^;)
「あ、雄一郎さん! こんにちは!」
お堂の横のほうで、一生懸命掃除している雄一郎さんに手を振るもなか。
「だれだよ、あの人。」
進悟がもなかを突っつく。
「あの人、熊田雄一郎っていって、ここに住み込んで働いている人なの。」
「あらっ、もなかじゃない。それに進悟君も。」
横の売店(?)の中から、ひょっこりと黒髪の女性が出てきた。
「レイさん! こんにちは!」
「あ、姉貴がいつもお世話になっています。」
「もなか、だれ?あの女の人。月野君も知ってるの?」
奈々が疑わしそうな目を向ける。
「ここのお巫女さんで、姉貴の友達。すっげー美人だろ!?」
「おぉ・・・。」
剛史がうっとりと見つめている。
「月野ぉ、おまえのお姉さんの友達って、美人ばっかりだなぁ・・・。」
反面、奈々は心配していた。あの( 、進悟の姉の友達だからだ。もなかは多分、あの人たちと付き合っているから、変になっている・・・そう思っていたのだ。)
「・・・な、奈々ぁ、おーい、どうしたの?」
もなかが心配そうに、奈々を覗いている。
「ごめんごめん!! ちょっと、ぼーっとしてただけ!!」
もなかを心配させちゃいけない、自分は明るくしとかないと!奈々は、そう決心した。
―☆―
「やっぱり、いくんだ・・・」
へたへたと座り込むもなか。
「もう六時だぜ・・・。帰ろうぜぇ。」
「なにをおっしゃる月野君! 校門の前まで来たんだから、やっぱ、行くっきゃないでしょ!」
奈々は行く気満々である。
「俺、ホントに用事あったのに・・・(T T)」
剛史は涙を流している(笑)
「さぁ! 夜の学校へ!れっつらごー!!」
―☆―
ぎぎぎぎぎぃぃぃ・・・・・・。
学校はとっくに終わったのに、扉の鍵さえ閉まっていない。廊下には、青白い電灯がちかちかとまたたいている。
「なぁんだ。夜に青白い炎がちらつくって、このことだったんだぁ。つまんないの。」
「それでもこわいよ〜」
もなかは、しっかりと奈々にしがみついている。
「は、は、は、そうだよな、お化けなんているはずねぇよな・・・。」
そういいながら、語尾は震えている。
「月野もそう思うよな・・・。」
こっちもしっかりとくっついている。
「さぁ! みんなで、忘れ物を取りに行こう!!」
『ヒィ〜〜!!』
やたら元気な声と、情けない声が廊下に響いた。
教室の前まで行くのに、みんなくっついているのでかなり時間がかかったが、何とかつくことができた。
「だ、だれがあけるのぉ〜」
がくがく震えながら言うもなか。
「もちろん、わ・た・く・しが開けま〜す!!」
『そうしてくださいぃ〜!』
がらがらがら!!
やたら元気な音を立てて、戸は開いた。
「お、おい。誰かに聞かれたらどうすんだよぉ。」
奈々のスカートを引っ張る剛史。性質はこういうところにも現れる。
「だれもいないって!!」
どうでもいいが、ニコニコ笑いながらいうのはやめてほしい。
「しっつれいしっまぁ〜す♪」
「語尾に音符つけて、楽しそうに言うなよ・・・。」
進悟のスルドいツッコミが、廊下に響く。
「奈々って、こんなに心霊好きだったっけ・・・?」
真剣に考えるもなかだった。
四人が教室に入ると、急に戸が、がたん!という音を立てて閉まった。
「な、な、なんだよ、だれがこんなおふざけしたのかよ・・・。」
「飯田、おまえじゃないのか?」
「ねぇ、帰ろうよ・・・(T T)」
〔アナタタチ、ワスレモノシタ・・・?〕
「ちょっと変な事言わないでよ、もなかぁ!」
「え? あたしじゃないわよぉ!」
〔ネェネェ、ワスレモノシタヨネ・・・〕
「俺らでもないぜ!!」
『じゃぁ・・・。』
そっと振り向くとそこには、おかっぱの小さな女の子がうつむきながら座っていた。
〔ワスレモノ、シチャッタンダ・・・〕
クックックと笑いながら、ゆっくりと顔を上げていく。
〔ジャア、タマシイ、オイテッテネ〕
女の子が顔を上げたとたん、もなかと進悟は全速力で逃げ出した。
―☆―
「ハァ、ハァ、ハァ・・・。もう、大丈夫だよね。」
「た、たぶんな。」
二人が、非常事態だと気づくまでに、約2,3分かかったのだった。
「どうしよう!! おい、太陽! どうしたらいい!?」
「あたしがそんなの、すぐわかるとでも思ってんの!!」
「思ってねぇけど、二人しかいないんだから、しょうがねえだろ!!」
「わかってるわよ!!!」
普段のもなかなら、すぐ、警察へ通報しただろう。けれど、自分がセーラー戦士だったことにすぐ気がついたのだ。
「月野君!あんたは、交番にこのことを言ってきて!! あたしはここで、奈々と飯田君を探してくる!!」
「・・・お前、大丈夫なのか。」
いつになく神妙に聞く進悟。
「うん! 大丈夫!だから行ってきて!」
そのとき、進悟には、もなかが姉とかぶって見えた。
「わかった! でも、無茶だけはするなよ!!」
「わかってるって!!」
―☆―
進悟が行ってしまったのを見ると、もなかは変身の呪文( を唱え、セーラーサンへと変身し、教室へと走った。)
がらららららら・・・・・・。
もなかが戸を開けて中に入ると、まだ女の子がいた。しかし、二人の姿はなかった。
〔アナタト、アトモウヒトリ、ニゲチャッタンダ・・・。〕
また、ゆっくりと、顔を上げていく。
「奈々と飯田君はどうしたの!? 返してよ!!」
〔ヤダ。アソビアイテガイナクナルモノ。ヒトリポッチハ、イヤダモノ。〕
女の子は、イヤイヤという風に、顔を横に振る。
〔ダカラ、アナタモココニイテ。オネガイ。〕
もなかは少し、この子がかわいそうになった。
「どうして、そんなこと言うの?」
〔ワタシハ、ミンナニワスレサラレタ、スベテノモノ。ズットヒトリポッチデ、サビシカッタ。タマニ、ニンゲンヲツカマエテモ、スグ、ニゲテイッチャウンダモノ。デモ、アナタナラ、ズットイテクレル。ダッテ、アナタハ、フツウノニンゲント、スコシチガウ。イテクレルヨネ?〕
女の子は、顔を上げることも忘れて、悲しそうに話した。
「・・・もし、いやだって、いったら?」
探るように問いかけてみる。
〔イヤ、イヤ、イヤァ!!〕
そう言って叫ぶと、女の子の周りに、異次元の空間が現れた。
〔アナタモ、ココニイナキャダメ!〕
急に、体の感覚がおかしくなった。宇宙空間にほっぽり出されたような、無重力空間の中に入ったような、そんな感じだった。
「ちょ、ちょっとぉ!! なによこれぇ!!」
襟やスカートがびらびらと浮いていく。
〔ワタシノオシロニ、トジコメテアゲル!!!〕
女の子は、キッと顔を上げ、もなかをにらんだ。
もなかは、自分の中から、何かが抜けていくような感覚を感じた。
(だめ、ここで連れ去られちゃ、みんなに会えなくなる!奈々たちを助けられなくなる!! ・・・だめ、だめ!!)
もなかは力を振り絞り、意識が飛んでいくのを防いだ。
そのとたん、なんだか力がわいてきた。奈々たちを助けることも、この子を助けることもできるような気がしてきた。
「・・・あなたを、かわいそうだと思う。でも、奈々を、飯田君を、あんな目にしたのは、許せない!! 日輪の名の下に、成敗よ!!!」
無重力空間の中で、ふわふわと漂いながらなので、あまり格好はついていないが、なかなか決まっている。
〔ウルサイ!! オマエナド、ワタシノシモベニシテヤル!!!〕
完璧に怒ったその子は、大きな衝撃波を作り、放った。
〔コレデモクラエ!!!〕
しかし、無重力でふわふわ浮いているもなかに、当たるはずがない。
「ああは言ったけど、どーすりゃいいのぉ!!!」
ひょいひょいとかわしながら、嘆くもなか。
「あれって、お化けだよねぇ・・・! もしかして・・・!」
〔ナニヲブツブツ!! クソウ!!!〕
びゅんびゅんと衝撃波を飛ばしてくる。
「サンシャイン・リフレッシュ!!」
びかっ!!
〔フン、ソンナモノ、ワタシニキクハズガナイ!!!〕
「うそぉ〜!! 絶対イケると思ったのにぃ!」
〔ソウダ・・・。イイコトヲオモイツイタ・・・。コイツラヲイタブレバ、アナタハコッチニクルカナァ? ・・・クスクス〕
そう言うと女の子のとなりに、奈々と剛史が出てきた。二人とも、意識はないようだ。
「やめてぇ!!」
もなかの叫びも、その子には届いていない。
〔サァ、マズ、オンナノコノホウカラシヨウカナァ?〕
奈々の周りに、急に炎が立った。
「あああああ!!!」
奈々が熱さを感じて叫ぶ。
〔アンシンシテネ。ホンモノジャナクッテ、ネツダケガクル、スグレモノノホノオダカラ。クスクス〕
なんて性格が悪いやつだ・・・。
〔ツギハ、オトコノコ。アナタハ、コオリヅケニシヨット。エイッ!〕
叫ぶ暇もなく、氷付けにされる。
「・・・・・・やめて。」
〔エ? ドウシタノ? コッチニキテクレル? ソレトモ、マダスルノ?〕
「やめてって、いってるでしょ!!!」
もなかの周りから、さながら、太陽のように光が発せられる。
〔キャ、キャァ!!〕
あまりのすごさに、ひるむ女の子。
「おまえのその悪い心を、太陽の熱で溶かしてあげる!! サン・メルト・ラーヴァ!!!」
もなかの合わさった手から、光り輝く溶岩のようなものが出てくる。
〔キャアアアアア!!!!〕
女の子の周りから、黒い霧が出、そして消えた。
〔・・・アリガトウ、ワタシヲジョウカシテクレテ。ホントウニ、アリガト・・・。〕
女の子も、ゆっくりと消えていった。
もなかは変身が解けて、倒れた。
―☆―
「ほんっと、なんだったんだろうねぇ!」
「そうだよな!! 学校の中に入ったところまでは覚えてるんだけど、そこから覚えていないなんてな!月野もそうだったのか?」
「ん、まぁな・・・。」
そういいながら、ちらちらともなかのほうを見る進吾。
「ま、まあまあ。終わったんだし、いいじゃない!!」
もなかは努めて明るい声を出す。
「ま、そうよね!!」
奈々がうなずく。
おわり!!
☆あとがき☆
みなさん、こんな駄作を読んで下さって、本当に感謝しております。(*^▽^*)/
ほんとうは、操ちゃんも出るはずでしたが、少々無理が出てきたのでやめました。
ちょっと無理のある終わりですが、許してください。
では、また、お目にかかれる日まで!!
BY ちー