中国占術の基礎知識(陰陽説と五行説)と漢方の話 

 

中国占術では干支暦で用いられる時間単位を基準としています。

この暦で、時間単位を表す記号として用いられているのが十干十二支で、次の通りです。

 

[十干] 甲(きのえ・コウ)       乙(きのと・オツ)   

     丙(ひのえ・ヘイ)       丁(ひのと・テイ)   

     戊(つちのえ・ボ)       己(つちのと・キ)   

     庚(かのえ・コウ)       辛(かのと・シン)   

     壬(みずのえ・ジン)      癸(みずのと・キ)   

[十二支]子(ね)            丑(うし)       

     寅(とら)           卯(う)        

     辰(たつ)           巳(み)        

     午(うま)           未(ひつじ)      

     申(さる)           酉(とり)       

     戌(いぬ)           亥(い)        

 

 十干は、もともと日を数える数詞として使われ、古代中国では十日を一単位として(一旬)、

月を上旬・中旬・下旬としました。一方、十二支は一年を(月の満ち欠けの単位を一ヶ月とし)

十二に区分した場合の順序を表す数詞であり、草木の生長を示すものだといわれています。

 干支暦では、十干と十二支を陰陽の同じものどうし組み合わせた六十種類の記号を使って年・

月・日・時のそれぞれの時間を表します。

 年は、二十四節気の立春を境に、一年毎に六十干支の順番に繰り返されます。

 月の単位は、立春から太陽の黄経を30度ずつに区切った約三十日間をひと月としています。

 日は一日毎に、時は二時間毎に、六十干支が順番に繰り返されています。日と時間の単位は、

現在の23時を起点として始まります。

 

 中国占術の中核をなす思想に陰陽説と五行説があります。

 陰陽説はこの世の全てを陰と陽の2つに分類して生成変化を考えようとするものです。

 世の中の事象を、明暗、天地、男女、表裏のように二種の形に分類する、いわゆる二元論の思想

です。干支も同様に陰陽に区別され、その配当は次の通りとなります。

 

  陽  甲・丙・戊・庚・壬・子・寅・辰・午・申・戌

  陰  乙・丁・己・辛・癸・丑・卯・巳・未・酉・亥

 

 十干十二支を“えと”と読んだりしますが、この呼び名は十干の兄弟(えと)に由来します。

つまり、陽干を兄とし。陰干を弟とします。甲が木の兄(きのえ)であり、乙が木の弟(きのと)と

いう具合です。

この陰陽の関係は対立ではなく、相手が存在してはじめて自分も存在する関係です。そして、自然界

の関係でも、人間の体でも、あまり陽に過ぎてもいけないし、陰に過ぎてもいけません。

 

 一方、五行説は、木・火・土・金・水の五つの構成要素の盛衰によって万物の変転を説明しようと

するものです。つまり、万物はこの五行からなりたっていて、それが消長・循環を繰り返すことで全

ての現象がでてくると考えたものです。

 五行の万物への配当を一部あげると、次の表のようになります。

 

 五行

 五星

 五方

 五時

 五色

 五情

 五臓

 五常

 

 歳星

 

 

 

 

 肝臓

 

 

 

 

 

 

 

 心臓

 

 

 鎮星

 中央

 土用

 

 

 脾臓

 

 

 太白

 西

 

 

 

 肺臓

 

 

 辰星

 

 

 

 

 腎臓

 

 

 干支の五行への配当は次の通りとなります。

 

  木  甲・乙・寅・卯

  火  丙・丁・巳・午

  土  戊・己・丑・辰・未・戌

  金  庚・辛・申・酉

  水  壬・癸・亥・子

 

 五行説には、相生・相尅・比和という重要な原則があります。

 ◎相生

  木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じます。生じられ

た五行の力は強まり、生じる側の五行の力は弱まります。

 ◎相尅

  木は土を尅し、土は水を尅し、水は火を尅し、火は金を尅し、金は木を尅します。尅された

五行の力は弱まり、尅する側の五行も自分自身の力を消耗します。

 ◎比和

  例えば、木と木のように同じ五行の関係です。比和の関係の五行は互いに助けます。

 

   五行相生図             五行相尅図

              

 

 

漢方の分野でも、薬(食品)をこの五行に分類し診断治療に応用してきたのです。

 

「肝」:木

   病邪に抵抗する機能を発揮する臓器で、機能低下すると、イライラしたり、疲れる、

   だるくなる。目や筋肉の異常(目のふちがピクピクする。足がつる)が起こります。

   木行の示す五味は「酸」で、こういった症状には、酢の物や柑橘系の食物が効果的

「心」:火

   生命活動を主宰する最も重要な臓器です。血液循環や中枢神経の機能活動の管理を

していると考えられています。

また、発汗とも密接な関係があるようです。

機能低下すると、汗をよくかく。うなされる。脈が多いなどの症状がでます。

五味は「苦」で、ゴーヤが良いようです。

「脾」:土

   消化器系統の機能を持ちます。機能低下すると、水分代謝異常(むくみなど)や、

寝ている間によだれが出たりする人はこの傾向にあるようです。

五味は「甘」でですが、砂糖などはよろしくなく、蜂蜜や穀物(ヒエ粟など)がよ

ろしいようです・

「肺」:金

   呼吸を司る器官で、また体液調整機能もあります。機能低下すると、風を引いたり

アレルギー疾患、肌が乾燥したりします。

五味は「辛」で葱・生姜がよいようです。

「腎」:水

   生殖と成長発育に関する機能を有し、機能低下すると老化現象。歯や頭髪・聴覚・大小便の異常

が現れます。

   五味でいうと「鹹(しおからい)」ですが、塩辛のようなものではなく、魚介類を指します。

 

以上