「少尉、好き」 ソファに座って雑誌を読んでいると、風呂から上がってきたエドワードが真横から俺に 抱きついてそう言った。 エドワードは濡れた髪もそのままに、俺のシャツ一枚を羽織っただけの姿で肩口に 額を摺り寄せる。 「こら、邪魔すんな」 読みかけの雑誌を傍らに置いてそう言っても、エドワードはお構い無し。 「この触り心地とか、体温とか、みんな、好きー」 いつも他の人間の前で見せている勝気で小生意気な表情は何処へやら。 エドワードは蕩けるような笑顔を浮かべて俺の膝に乗っかってきた。 そして俺の顔を下から見上げて言う。 「・・・少尉、好き」 だから構ってよ、と囁いて、エドワードは拙く俺の唇を啄ばんだ。 普段甘えた顔を見せない反動なのか、俺と二人きりの時のエドワードは酷く 甘えたがりだ。 猫みたいに身体を寄せて、確かめるように、『好き』、と何度も繰り返す。 他の誰にも見せないその様は俺の独占欲を満足させたし、何よりも、『好き』、と囁く時の エドワードの表情が幸せそうだったから、俺はエドワードのしたいようにさせていた。 「少尉、す・・・」 「・・好き」 何度も繰り返すエドワードの言葉尻を捉えて、揶揄うように呼吸を合わせて俺も 同じ言葉を囁く。 と、何故かエドワードは大きく目を開いたまま真っ赤になってフリーズしてしまった。 「エド?」 名前を呼ぶと、エドワードは赤い頬を隠すように俺の肩口に顔を埋める。 「おーい、どうしたー?」 理由が分からずその背中を撫でるだけの俺に、小さな声でエドワードが呟いた。 「・・・だっていきなり少尉が好き、とか、言うから・・・」 何だ。 自分で『好き』って言うのは平気なくせに、言われるのは駄目なのか? ・・・まぁ確かに俺はあんまりそういう事を言わないタチだけど。 俺はエドワードの初々しい反応が面白くて、態とその耳元で囁いてやった。 「エド、・・・・・・好きだぜ?」 エドワードの俺に抱きつく力が更に強くなる。 危うく窒息しそうになって、俺は慌ててエドワードを引き剥がした。 腕の中で、エドワードは熟れた林檎みたいな赤い顔をして困ったように視線を 彷徨わせている。 「分かった分かった、もう言わねぇから。な?」 苦笑を零しながらそう言って鼻先にちょん、と唇を落とす。 が、エドワードはまだ顰め面をしたまま。 「機嫌直せって。な、エド?」 「・・・・・・のも、ヤダ」 「・・・・・・?」 エドワードの言葉がよく聞き取れなくて、俺は視線で問い返す。 エドワードはまるで睨むように俺を見上げると、小さな声でこう言った。 「好きって言われないのもヤだから、・・・オレが慣れるまでもっと好きって言え」 ・・・・・・完敗。 やっぱりエドワードには勝てない。 無意識にこんな可愛い事を言ってくれるんだから。 「・・・エドワード、・・・好き」 精一杯の愛情を込めて、そう囁く。 「・・・オレも、好き」 返ってきた言葉が愛しくて、オレはその主ごと柔らかく抱きしめた。 -------------------------------------------------- Thanks 10,000hit!! from yuiko-k |