一通り片付けが済んで、ソファーでタバコをふかしているとバスルームから声が 聞こえてきた。 「しょ〜い〜、タオル忘れた〜」 灰皿にタバコを押し付け火を消すと、不適な笑みを浮かべて立ち上がる。 「おー、今持ってく。」 ハボックはバスタオルを肩にかけて、エドの待つドアの前に立った。 「ホレ、持って来たぞ。」 ドアがほんの少し開き、義肢だけがソロリと出てきた。 ハボックは届きそうで届かない距離にタオルを差し出す。 エドが懸命に手を伸ばしてタオルを掴んだ瞬間、タオルがグイッと引かれた。 「のぁっ!!」 不意打ちを喰らったエドは、そのままハボックの胸に飛び込んだ。 ずぶ濡れの少年をタオルで素早く包み込むと、グリグリと頭を拭いてやる。 「あ〜もう!なんだよぉ〜!」 頭を抑えられ身動きが取れないエドは、勢いで抱きついたまま文句を言う。 「拭いてやってんだよー。」 手を止めて開放してやる。 髪の毛からシャンプーの香りがほんのりと漂う。 タオルごとギュッと抱きしめると、ハボックは一つお願いをした。 「着替え、ソファーに置いといたから、寝ないで待っててくれるか?」 …最近、この囁きにも弱くなっている自分に、少し戸惑う。 ゆっくりと顔を上げ、吸い込まれそうな青い瞳を見つめる。 「…ベッドで待ってる…。」 背伸びをして耳元にそう告げると、小走りでソファーに向かった。 ――残された言葉の意味を、どう捉えたらよいのか考えながら、熱くなっていく身体を 狭いバスルームへと押し込んだ。 「たいしょ〜!起きてっかぁ?」 ドアの隙間から顔を出して呼ぶ。 大きな黒のTシャツに身を包んだ小犬がもそっと現れた。 「‥‥なに‥‥」 大きな欠伸をしながらドア前に来たエドに、ハボックは苦笑いを浮かべている。 「…そのタオル、貸してくれっか?」 相当眠いらしく、なかなか動いてくれない。 仕方なくドアの影から出ると、首にかかっているタオルをそっと取る。 頭を拭いていると、眼下に金髪が映り、体温が伝わってきた。 腰に回された腕は、睡魔に負けそうな身体を必死に支えていた。 「お待たせしました…。寝よっか…」 胸に押し付けられた頭が、ふるふると左右に振れた。 どこまでも意地っ張りな愛しい恋人を抱き上げ、頬にキスをする。 「…寝て…ない…からな‥‥。」 エドの唇がハボックの頬に吸い付いた。 しかしそれはすぐに離され、替わりに静かな寝息が聞こえてきた。 「おやすみ…エドワード…。」 ――― 時刻は午後10時をまわったところ ――― ------------------------------ 紅鎧成斗さまよりいただきましたv 大型犬と仔犬のような2人が可愛いです〜v わざわざ小豆祭のために素敵な作品を書いて下さり、 ありがとうございました! |