+ 天の邪鬼 +





蒸し暑い、寝苦しい夜だった。
喉が乾いたのでベッドから起き上がり、キッチンで水を飲んでから寝室に戻る。
すぐに寝直す気にもなれず、ベッドに腰を掛けて煙草に火を点けた。

「少尉…?」

隣で寝ていた金色の髪が、もそりと動く。

「悪いな…起こしちまったか?」

眠たそうに目を擦るエドワードの頭を撫で、不満気に尖らせた唇にキスを
落とす。
緩慢な動作でエドワードは俺のシャツを掴み、胸に顔を埋めて来た。

「何甘えてんだよ」

子供のように頬を胸板に擦りつけて。

「違う、もん」

腕の中でエドワードが小さくかぶりを振った。

「何が違うんだ?」

少し乱れた三つ編みを軽くぴん、と引っ張ると、エドワードは顔を上げ、
悪戯っぽく笑った。

「…少尉が、俺に甘えて欲しそうだったから」

ちゅ、と音がして、首筋に微かに濡れた唇の感触が広がる。

「だから……遊んだげる」

肩口に顔を埋めたエドワードが、くす、と笑うのが解った。

「…何して遊ぶ?」

唇の横にある耳朶をちろりと舐めながら、答えが解りきっている問い掛けをする。

「ナニして…遊ぶ」

くすぐったい、と言いた気に首を竦め、腕を伸ばして俺の体をベッドに誘う。

「…さっきも遊んだだろ?」

誘いを断るつもりは毛頭無い。
エドワードの体に唇を落としながら、ベッドに彼の細い体を縫い止めた。
心地良さそうに金色の瞳を細め、俺の背中に腕を絡めて、耳元で甘く囁く。


――…だって、少尉が遊んで欲しそうだったんだもん――








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