出せない手紙



お前が姿を消して、二年が経つ。
俺は今も相変わらずマスタング准将の元で忙しく働いている。

なあ、エド。
お前は今、元気か?
あれから少しはデカくなったのか?

街で三つ編みしてる子や、赤いコートを着てる子を見かけるたびに、もしかしたら
お前なんじゃないかと思って、足を止めてしまう。
見知らぬ街に行った時は、必ず街の人にお前の写真を見せて尋ねてしまう。
なんのかんのと理由をつけてリゼンブールに顔を出してはアルの様子も見に行くけど、
やっぱりお前が居ないと淋しそうにしてるぜ?
あんま弟悲しませんじゃねーよ。
お前兄ちゃんだろ。

こうやって、出す宛ての無い手紙を書いてるけど、本当、手紙って俺のガラじゃねーな。
何を書いて良いのか判らねーんだ。

エド。
少しだけ弱音吐かせてくれな。
やっぱりお前が居ないと、寂しい。
すげぇ、寂しい。
お前の居場所が判ったら、すぐに会いに……

「あーっもう!!ダメだダメだ!なんだこの文才の無さ!!」
途中までペンを走らせた便箋をぐしゃぐしゃと握り潰す。
煙草に火を点け、ゆっくり肺に煙を送り込んで吐き出した。
「こんな手紙、小学校のガキでも書かねっつの!
 なーにが『弱音吐かせてくれな』だ!アホか俺は!」
便箋をくず箱に放り入れ、立ち上がって窓を開ける。
天空を仰げば、今にも弾けそうなほどに膨らんだ月。
「……お月さん、大将がどこに居るのか知りませんかね?」
冗談とも本気ともつかない呟きを残して、窓を閉めた。



机の抽き出しには、出せない手紙が入ってる。
たった一言『会いたい』と書いた、お前宛ての出せない手紙が。