注・ガンガン2004年11月号ネタバレSSです。 未読の方、アニメのみの方は御注意下さい。 ↓scroll どんなに背伸びをしても届かなかった。 「良いなあ、少尉はデカくてさ」 不満そうに唇を尖らせて少尉を見上げるオレの頭を、いつもぐしゃぐしゃと撫でてくれた。 そして、少尉は人懐こい笑顔をオレに見せて、こう言うんだ。 「大将もそのうちデカくなるって」 口に出した事は無かったけれど、少尉を見上げるの…オレはとても好きだった。 少尉を見上げると、柔らかな笑顔と一緒に太陽の光もオレに降り注ぐから。 ――だけど、もう。 + LIGHT THE LIGHT + 両足の感覚が無いんだ、と。 少尉はオレに苦笑いを浮かべながら言った。 病室のベッドで上半身を起こして、少尉がオレを見上げてる。 そんな事は、初めてで。 胸が締め付けられるように苦しい。 少尉の腕が伸びて、ゴツくて大きな掌がそっとオレの頬に触れる。 泣かないでくれ、と困ったような顔をして、知らずに零れていた涙を拭ってくれた。 …こんな時でも、アンタは優しい。 でも、その優しさが今のオレには堪らなく辛かった。 見上げる碧の瞳が、堪らなく哀しかった。 本当に辛いのは少尉だと解っていても。 「オレ…少尉を見上げるの…好きだった…」 傷付けるだけだと解っていながら、残酷な告白を相手に伝える。 「…本当に、好きだったんだよ…少尉……」 少尉は碧い瞳を伏せ、そうか、と静かに頷いた。 「……また、来るね」 オレは少尉の掌を取って、二度三度軽く縦に振る。 ――なぁ、エド。 少尉の唇が、微かに震えた。 ――お前って…そんなに背が高かったかな… 少尉は。 困ったような、泣きたいような、悔しいような。 そんな笑みを浮かべて、じっとオレを見上げていた。 病院を後にして、今にも雨が降り出しそうな空を見上げる。 見上げても、太陽の光は差し込んで来ない。 とても悲しくて、切ないけれど。 病室を出る時に、少尉がオレに言ってくれた。 ――俺さぁ、リハビリ頑張るからよ。いつまでもお前に見下ろされるの、悔しいからな。 だから、また立てるようになったら会いに来てくれよ。 それまでは、お前は自分の目的に向かって進んでくれ。 ……約束、な? とびきりの笑顔で、オレにそう言ってくれた。 今は太陽は雲に隠れて見えないけれど、いつかきっと、光は見える筈だから。 そう信じて、オレは歩く。 アンタの分まで、歩く。 -------------------- TAM様よりこのSSに素敵なイラストをいただきましたv こちらから美麗なイラストをご堪能下さいv →*** |