a silent letter



門のこちら側に来て2年。
オレは元の世界に戻る方法を探して、あての無い旅を続けていた。
ある街で立ち寄った図書館の窓際に座って、ペンを片手に空を見る。

・・・書きかけの手紙。
何度届きもしない手紙を書いただろう。

アルに。
ウィンリィとばっちゃんに。
大佐や、中尉たちに。


・・・それから、もう一通、宛名の無い封筒に包まれた、ソレ。


―――少尉。
元気でやってる?
あ、もしかしたらもう少尉じゃなかったり?
・・・また、ケガとかしてない?


それから。


・・・オレの事、ちゃんと待っててくれてる?


書きながら思うのは、優しい青の瞳と煙草の匂い。
同じ匂いの煙草を吸ってる人とすれ違うと、もしかしたら、って思ってしまう。

こっちに来てから、少尉のあったかい体温とか、オレを呼ぶ声とか、そんなコトばっかり
思い出してるよ。


・・・会いたい。

・・・・・・会いたいよ、少尉。


オレは黙って窓越しに空を見上げる。
綺麗な、青い空。

きっとこの空は少尉の上に続いてるよな?

・・・絶対、また会えるよな?

オレは手紙を封筒にしまう。


―――決して、出される事の無い手紙。


なあ、少尉。
いつか帰ったら、この手紙渡すからさ。
馬鹿だな、って笑ってよ。
こんな、ガキみたいな事、って。
ちょっとだけなら、子供扱いしてくれていいからさ。


なぁ、少尉。オレ、必ずまた会いにいくから。


だから。



―――その時は、ぎゅって抱き締めて。