+ 横顔 +





「ん・・・」
オレは目を開けると、数度しばたたかせる。
「今何時・・・」
半分ぼんやりとしたまま、ベッドサイドの腕時計を手探りで探す。
掴んだ腕時計はこの部屋の主の物。
でもこの部屋の主は職業・軍人なので腕時計も時間だけは正確だ。
黒のシンプルな腕時計は、普段はポケットにしまわれている割にはあちこち傷だらけで、
それでも大切に使われているそれにオレは小さく微笑を零した。
「・・・まだ5時か・・・」
呟いて、オレは隣人を起こさないよう気を付けながらそっと身体を起こす。
・・・ちょっとだけ、身体の節が痛んだ。
「・・・だる・・・」
頬にかかる髪を乱雑にかき上げると、オレは隣で眠るヒトの寝顔に視線を落とす。
「・・・なんでコレでカノジョできないかなー・・・」
オレは小声でそう言って、苦笑した。
隣で静かに眠っている恋人の顔は、普段の飄々とした笑顔が無いだけで随分と違って
見える。

通った鼻筋。
薄い唇。
逞しい、肩。

「カッコイイのにな、って思うのは、やっぱオレが少尉にホレてるから?」
その薄い唇に何だか無性にキスしたくなって、オレはゆっくりと顔を近付ける。

・・・・・・。

・・・・・・ふいっ。

もう少しで触れる所だった唇は、不意に少尉の顔が背けられた事で頬に不時着する。
「・・・・・・少尉・・・起きてんだろ」
拗ねた顔でそう問うと、少尉の楽しげな押し殺した笑い声が聞こえた。
「・・・んだよ、性格悪ぃ・・・」
唇を尖らせると、いきなり身体ごとその広い胸に抱き寄せられて。
「・・・何すんだよッ」
「大将」
まだ笑ったままの少尉が、耳元でオレに囁く。
「俺も、大将のコト、可愛いと思ってマスよ?」
「・・・は?」
「・・・俺も、大将に惚れてるからさ」
「・・・・・・」
さっきの呟きを聞かれていた恥ずかしさに、かあっと顔が火照る。
「・・・・・・バっカじゃねーの!?」
オレは照れ隠しに少尉の首筋に顔を埋めると、お返しにくつくつと笑っている少尉の耳に
噛みついてやった。


―――そんな、何気ない幸せな朝。








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