+ place +





突然止んだ相槌。
肩に掛かる重み。

・・・ありゃ。
寝ちまったんか?

起こさないよう気をつけながら、ちらりと下に目線を投げる。
琥珀色の瞳は白い瞼に覆われていた。
ぷっくりとした唇が規則正しい寝息を刻む。

あーあ、無防備な顔しちゃって。
襲っちまうぞ?


・・・・・・なんてな。


ちょっと・・・いや、かなり本気だけど。


子供の唇が寝息を刻む度に、ふわりと甘いニオイが漂う。
さっき一緒に食事した時子供が食べていたケーキの、甘いバニラの香り。


・・・思わずその美味そうな唇を啄んでみたくなるけれど。
お前の旅が無事終わるまで、この気持ちは伝えないと決めたから。


「・・・だから、今はこれだけで我慢してやるよ」


お前が寄りかかって安らかに眠れる、その場所になれただけで。


・・・・・・それだけで。




寝息はまだ続いている。


俺も少し眠ろう。
この気持ちを伝えられないならば、せめてお前と同じ夢が見れればいい。




―――そう、願いながら。