+ twinkle,twinkle +





twinkle twinkle little star,

きらきら光る、夜空の、星よ。






「少尉、何してんの」
夜中にふと目を覚ませば、隣に寝てるはずの少尉は窓に寄りかかって外を眺めていて。
「ん、ちょっと空見てた」
「空?」
オレが問い返すと、少尉は煙草に灯を点けて小さく微笑う。
「お前も見てみろよ。・・・すっげぇキレイな星空だから」
オレはシーツから身を起こすと、少尉と肩を並べるようにして空を見上げる。

・・・満天の、星空。

「な、エド。星って何か、凄くねぇ?」
「そっかぁ?星なんて、大気中の塵が燃えてるだけだろ?」
オレがそう答えると、少尉は軽くオレの額を指で弾く。
「痛ッ」
「何でそうお前は夢が無いかなぁ、ガキの癖に」
「ガキだからとかじゃなくて、錬金術師なんてみんなそんなモンなんだよッ」
額を押さえながらそう噛み付くと、少尉はオレの肩をやんわりと抱き寄せて。
「あの星は、確かにお前が言うみたいに実際にはただ、大気中の塵が燃えてるだけ
 なんだろうけどさ。でも・・・たったそれだけの小さな灯火なのに、幾万光年の距離を
 越えて俺達の所までちゃんと届くってちょっと凄くねぇ?」
オレは答えに困って、黙ったまま少尉の肩に額を付ける。
「それに、あの光は俺とお前がどれだけ離れた場所にいたとしても、同じようにそこに
 あって・・・繋がってる」
「・・・うん」
「俺達の歩く道は別々だけど、そんな俺達でも同じモノを見て、同じ気持ちを共有できて」
「・・・・・・うん」

少尉の声は、夜に染み入るように静かで。
星明かりに、煙草の煙が蒼白く溶けて。

「・・・twinkle twinkle little star・・・」

耳元で、少尉が小さく口ずさむ。
昔母さんが空を見上げながら謡っていた、題名も知らない星の歌。
少尉の声は囁くような低めのテノールで、母さんとは全然違うけど母さんと同じくらい
心地良い。


オレは黙ったまま少尉の口ずさむ星の歌を聞いていた。


・・・ずっと、こんな時間が続けばいいと。

そう、思った。






「twinkle twinkle little star・・・」
窓辺に寄り掛かりながら、オレは小さな声で口ずさむ。
優しい声でトゥインクルスターを歌ってくれたあの人は、今は遙か遠い空の向こう。


なぁ、少尉。
いつかアンタが言ってたみたいに、そっちの部屋の窓からもこの星空が見えてる?


「twinkle twinkle・・・」
何度も何度も、繰り返し歌を口ずさみながらオレは窓の外に広がる星空を眺める。

紅い星。
蒼い星。
金の星。
銀の星。

今アンタはどの星を眺めてる?


・・・今アンタは、何してる?


「twinkle twinkle little star・・・」

歌声は、冷たい夜に吸い込まれ。

隣にアンタはいないけれど。

それでも、この星がアンタの上にも輝いているのなら。






twinkle twinkle little star

きらきら輝く、夜空の、星よ。






また会えるその日まで、どうかこの優しい光があの人にも降り注ぎますように。