- RESEARCH -
考証

 この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。

 これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為 に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作 しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。



○ A・Cについて
 まずはACの身長ですが、ゲーム画面や設定画で見る限りではかなり曖昧な点があると思われます。
 しかしながら、本作品ではイラスト&ノベル展開の関係上、一部の設定画にある《人間、車両とA・Cの対比》から割出した身長である 《この時代の二脚タイプACは10メートル前後である》設定を採用する事になりました。
 ACの内部スペースの関係や、劇中でトレーラーや航空機に登載する関係からも、描写し易く、またこれ位が最も適当かとも思われます。
○ パーツについて
 隠しパーツ以外の、全てのパーツは離れた街でも流通している事から、レイブンズ・ネスト公認を受けた各都市でのライセンス生産と考えています。
 故に性能に影響の無い、若干の内部、外部の形状差異や、マイナー・チェンジ・バージョンが存在する事になっています。
 個人での性能面に関わるチューニングは行っているでしょうが、かなり制約されており、実際問題としてネスト認可のパーツでは殆ど性能向上は無い事としています。
 特に武装関係は厳重で、余程の事が無い限り塗色すら変更が許されません。
 隠しフィーチャーの《ハンド・ウェポン、テクスチャー変え》は、生産工場の違いによるマイナー・バージョンの武器に含まれると設定しております。
 これには、ネストと企業側の利潤追求が表面化しており、出来うる限り全てのパーツを互角とし、戦闘が膠着状態になり易い様にする意図が含まれています。 これを破った事が発覚した場合、賞金は帳消しになる上に規則を破ったと云う事で、ネストの暗殺集団から命を狙われる事になります。

○ 武器の表現について
 設定はパーツの項で触れましたが、この世界において武器の能力は多少の脚色と演出の為に、その武器の特色となる性能を少しだけ上げている事をご了承下さい。
 例えば、スナイパー・ライフルはゲーム内の表現よりも射程を延ばし、より遠くの目的を狙撃出来ますし、グレネ ードは高い確率で一撃必殺の強力な爆炎を吐き出します。
 前後するのですが、同じく上記と同じ関係上、軽量ACは、より速度を増して装甲が薄くなっていますし、重ACは全くその逆となっており ますので、その点を心に留めてどうか本作品をお楽しみ下さいませ。
 一部、厳密に設定には口径が記されている武装もありますが、現在の炸薬、銃弾とは、我々の世界とは異なる物が使用されています。
 また、前述しましたがこの時代、ネストからのマテリアル供給で、ややACの装甲の方は砲弾より勝った世界設定でもあります。 通称や本来の用法とは少し違った運用も描かれていますが、これはACの世界での演出、更には本作品の脚色である事も追記いたします。


テトラ連立都市
 この物語の主な舞台となる地下複合都市群。
  《リガ・インペリアル》を筆頭とする最有力企業が仕切る《リガ・シティ》と、企業連合が共同運営する《タブレット・コミューン 》と封 建社会を形成する《バラマス・キングダム》そして中間に位置する表向きだけの盟約により不介入が守られた貴重な鉱物資源と石油が産出 される共有中立の資源採掘場である中立ブロック《グレイ・ゾーン》の四つの都市により成り立つ連立都市。
 各都市の市民平均人口は約10万人、名前の通りテトラ・ポッド状に配置された都市間は76の環状線とトンネルによって結ばれている。
 僻地にあり他の都市よりも発展がやや遅れており個人の生活制限も比較的他の都市よりも少ない。極端な人口集中なども見られず主要都市と 比べてやや閑散としている。しかしながら企業間、都市間の衝突や軋轢は激しく治安は全体的には悪い傾向にある。

レイヴン
 ACを所持する個人の傭兵を基本的に指すが、小は個人レベルから、大は企業出資でのチームも存在している。
 連立都市では例外無く、仲介組織である《連立都市レイヴンズ・ネスト》に登録しており、企業お抱えのチームであっても一端はネストを 通した形で無いとレイヴンを動かす事は出来無くなっている。
 各都市を守る警察機構《準市民ガード》と軍隊機構《市民ガード》以外にACを扱う事を許された唯一の職種でありコンピュータ・ネッ トワーク《ナーヴ》を使用して掲示された自由に仕事を選択する事が可能である。
 連立都市には変動はあるものの、約500名前後のレイヴンがおり任務達成に日夜凌ぎを削っており、その中でもミッション達成率上位10 名のレイヴンは《ベスト・ランカー》呼ばれ、それ以下の50位までを《ランカー・レイヴン》と呼び重要かつ高収入な依頼を優先して請 け負う事が出来るシステムとなっている。
 連立都市においてレイヴンは退屈な日常を彩るスターであり、憧れの対象であると同時に信用ならざる危険な強盗でもあるが故に都市に多 額の献金をして市民権を得ない限り準市民扱いとして生活圏を区別されてしまう。更に公式には存在しない職業と規定されている為に企業 間裁判や法廷での証言力もない。
 連立都市のレイヴン間の考えでは都市が合同で主催するA・C同士の戦闘を賭けの対象とする《アリーナ》に主に出場するレイヴンは実戦で は無く《見せ物》である事から、特別に蔑称として《アリーナ・レイヴン》と呼ばれ、通常のレイヴンから蔑まれており確執がある。
 しかしながら最上位クラスのレイヴンにもアリーナに参加する者がいる上、彼らの重要な資金源でもある為に参加する事には抵抗や敬遠は 見られ無いのが現状でもある。余談ではあるが権力者を対象とした主にネストが主催するルール無用のデスマッチ《A・Cバトル》と云う 実弾を使用した非公式試合も存在する。

連立都市レイヴンズ・ネスト
 連立都市には未だ存在し続けている。アイザック・シティの《伝説のレイヴン》が壊滅させた同名の組織とは別系統であり連立都市内のみの管理、自治を行っている。
 狭い管理範囲故に、影響力、統制力はアイザックの物の比では無く、全世界でも有数の厳密なネストである事がレイヴン間で広く知られて いる。
 下部組織に掟を破った者などを、見せしめに抹殺する暗殺組織《スレイヴ・クロウ》を持ち、この集団に命を狙われる事を連立都市 レイヴンは最も警戒し恐れている。
※この物語は初代シリーズACゲームの時代より、少し後の世界がメインの舞台になっています。

アイザック・ネスト
 連立都市のネストとは違い、アイザックを掌握していたレイヴンズ・ネスト(便宜上、本作品ではアイザック・ネストと定義)は後年、管理し きれなかった《イレギュラー》と呼ばれるレイヴンにより壊滅させられます。
 その経緯、真意は不明ですが、その後もアイザックではACと同じくレイヴンは必要とされ戦場から居なくなる事もありませんでした。
 ちなみに本作品登場する『伝説のレイヴン』ですが、これは過去を合わせて複数います。
 代表的なのがアイザック・シティのナインボール、ウェンズディ機関を壊滅に追いやったアンバークラウンのレイヴンです。
 しかし《イレギュラー》とまで呼ばれるのは、レイヴン史上たったの二人です。 その内の一人が、ウェンズディ機関を滅ぼしたレイヴンとは同一人物とも、また別人とも噂されるネストを壊滅させ、二大企業をも瓦解させ、後に 戦争の原因とまでになった最強最凶のレイヴン…つまり初代ACシリーズをクリアされたイレギュラーである『貴方』がその一人です。

アーマード・コア
 汎用型戦闘マシン。略して普通はACと呼ばれている。
 コアと呼ばれる胸部に様々な頭部、脚部や腕部と武装アタッチメントを取り付けられる機械化傭兵であるレイヴンの武装。
 他に企業私設部隊専用のACなどもおり、その形態は千差万別だがコアを持つ事だけは全て共通。
 この時代では一応の最強汎用兵器となる。ネストへの登録で個人の販売、所有が非公式に認められている。

スレイヴ・クロウ
 レイヴンズ・ネスト子飼いの暗殺集団。
 不確定な情報では大体が3機で1チームを組み、20名前後の構成員で成り立っているらしく全員が例外なく強化人間らしい。
 隊長格の数名は強度の肉体改造をその身に施しており戦闘力はベスト・ランカーと互角かそれ以上とされるが定かでは無い。
 レイヴン達は何よりも彼らに命を狙われる事を嫌っておりネストの掟は厳守していて、実際、過去にベスト・ランカーが彼らに始末された事もあり、連立都市内の全レイヴンを震え上がらせた実績も有する。またACを使用しない暗殺専門チームも居るという。
 組織自体の秘密が厳守されている為、詳細は不明。



ARMORED-CORE CRIME OF DAY SCANNERでのACの成り立ち
 最終戦争というべき大破壊と呼ばれる未曾有の災厄の後、人類は活動や生活環境を地下複合都市へと移しました。
 テトラ連立都市は奇跡的にも、元から地下に都市が一部形成されていた旧世界の都市がベースとなっています。
 しかし、大破壊により殆どの先進技術は失われ、当時戦場を跋扈していた人型の超兵器(ACゲーム内に登場したナインボール・セラフやマーマン といったマシンの原型)や大量殺戮兵器などの、特にある意味で人類の最進技術である兵器作製技術は数世紀は後退し、見る影もない状態になりました。
 再び大規模な戦争による今後の被害拡大を危惧した当時の指導者層が、特に兵器技術を意図的に封印、抹消したりもしました。
 そんな中で連立都市復興には多大な労力を必要とされ、人的資源を含むあらゆる資源の枯渇は深刻化します。
 当然ながら技術は必要と共に進化します。当時の需要は復興作業の効率化、そして少ない資源の最大利用でした。
 そこで誕生したのが、前時代兵器の一部を参考にして作られた高い汎用性を誇る人型の作業機械です。 それは前時代の戦闘マシンの様に強力な物ではありませんでしたが、本体と周辺機器の共通化や互換性を持ち、この時代の需要を充分に満たす 物でした。それらはMТ(マッスル・トレーサー)と呼ばれ多くは人の形をして、人間と同じく五本の指を持っていました。この初期のMТ は機材を持ち替える事により一台で数々の作業をこなし、人と同じ様に精密な作業も高いレベルでクリアしていきます。
 また都市設計はこの大型作業機器であるMТを効率よく運用する様に構築もされて行ったのです。
 当時、治安の不安定な都市は当然ながら武装し、他の都市や反統治側へ対抗する意味で自衛もしていました。
 大規模な戦争レベルの戦闘はもはやなく、一部地域の資源の取り合いによる衝突レベルでの戦闘が多くもありました。
 この時代、地上である外界は環境が悪化し、統治していた企業には興味のない場所であるが故に、その戦場は主に地下複合都市でした。
 地下都市は入り組んだ閉鎖空間であり、戦闘機などによる上空の制圧や、少ない資源を取り合う意味から大規模な破壊兵器は、さほど必要と はされず《高機動でかつ多用途に使える兵器》が最も有効とされたのです。
 それにより、おのずと前時代と比べて戦場や紛争のスタイルは激変しました。
 当初の紛争は戦闘車両や戦闘ヘリとパワードスーツが戦闘で主に用いられ、これらを主力とする都市が多くみられました。
 しかしながら、それらに随伴する陸戦を行う《歩兵》が決定的に不足し、地下都市や閉鎖空間を制圧するのに一人あたりの火力の増強と、決定的な決戦兵器を 望む方向へと流れます。やがて無人ロボットなどが戦場に現れ、ごく自然な流れで高い汎用性を持つMТも武装化していったのです。
 しだいにMТは作業をメインとするタイプの物ではなく、戦闘をメインとするタイプへと分化していきます。
 本体を主核としてアタッチメントで様々な戦闘を行うMТは急速に戦場を席巻し、その高い汎用性と利便性を発揮しました。
 戦闘、制圧、防護、作業と一台でマルチにこなす性能は、主に資源や拠点の取り合い、または防護に対しては特に有効に機能したのです。
 これらが戦闘用MТ《CMТ》コアード・マッスル・トレーサーです。 やがて戦闘は激化して行きCMТは特に戦闘に関しての増強をなされます。
 今までの歩兵の一人単位の火力の増強としての機能に加え、戦闘ヘリや戦闘車両にも成り得るまでの力を要求され出しました。
 それはひとえに軍人を含む資源の枯渇によるものと、戦闘から回収作業などの更なる早期終結を望む環境からです。
 そんな中で、一般人が知る事はありませんが、後に《レイヴンズ・ネスト》と呼ばれる組織が過去の失われた技術である前時代の人型兵器に関する 《ロスト・テクノロジー》を最低限だけ企業間に与えた事により、当時の最も世界に影響力のあった統治都市は劇的なCMТの改良と進化に成功します。
 高い火力と機動力、そしてCMТの汎用性を持つマシン。それがAC《アーマード・コア》と呼ばれる兵器です。
 更に技術を提供した同組織の目的は人類の再生と管理にありました。それ故に紛争などで当時は資源が削られて行く事を懸念したらしいというのが有力な 説です。そしてその兵器を管理する事は紛争の早期決着と組織間のパワーバランスの管理を容易とする目的を多分に含んでいたとも言われています。
 尚、ACの登場によりCMТという言葉は使われなくなり、戦闘用の物もMТと単に呼ばれる様になりました。
 それ程にACは他の戦闘兵器とは一線をひく性能であったと言う事です。
 製作、誕生の意図は定かでないにせよACはその当時の技術レベルより抜きん出た性能により、たった一機で小規模な紛争なら勝敗を決す る決戦兵器となるまでに至りました。戦車の火力と戦闘ヘリに近い機動力は、地下都市での運用に最適かつ、あらゆる兵器に対抗可能な最 も高効率の兵器だったのです。特にネストから供給されたAC専用の装甲材やマテリアルは極めて優れていました。
 そうしてACを使用する企業は爆発的に増え、この時代の最強兵器の座を一時は不動の物とします。
 元々、世間一般では表向きパーツは全て企業がリリースしていてネストの関与など知る由もなく、自分達が整備不可能な部位は『一部企業が掘 り出しでもした前時代の先進技術である』『企業秘密が多い機械』と認識していた為に、一般には使用に際し何の疑問も感じる事はなかったのです。実際に企業単位で前時代の兵器や技術を発見、それを独占してフィードバックする事も兵器産業には、ままありました。 そうしてACは作られて改良を続けつつ、前時代の人型破壊兵器と違った進化をとげて行く事に後年なっていきます。

ARMORED-CORE CRIME OF DAY SCANNERでのレイヴンのなりたち
 ACは誕生の当初、あらゆる兵器を凌駕していましたが、やがてMТや戦闘兵器も対抗して進化していきます。
 一部のMТは汎用性を捨て、対ACに対して特化した進化を遂げました。
 それによりACは一部のMТや戦闘器機などに局地的な戦闘では圧倒的なまでの優位性は失います。
 何より当初のACはロストテクノロジーの再現産物である為に、整備面に問題があり、重大な故障などの際にはネストへとパーツの補給を嘆願し なければならないという運用面での大きな問題を抱えていたのです。
 更にテクノロジーを供給する組織は利害関係から供給を渋ったり、全く行わ ないなどといった理不尽なケースもままありました。
 後に、やや人口が増えて人的資源の問題は緩和され、一部の企業は、自力でACに対抗するMТを作り出すまでに技術復興を果たします。
 そうして不安定なACによる戦力よりも安定して運用出来るMТを企業は主戦力にする様になったのです。
 しかしながらACの戦闘能力は依然として極めて高く、乗りこなす事さえ出来ればACは最高の戦力と成り得ました。
 企業もそれは熟知しており、ACに一騎当千の能力を求め、エリート部隊や特別部隊に乗り込ませる事が普通となります。
 こうした中でAC技術を提供した組織は、以前より行っていた傭兵の斡旋事業を拡大し、更にはACにある程度、操縦適正のある者へACを貸し出 し、成績優秀の者に場合によっては安価なACを与える。といった行動を開始します。
 これには多分に紛争の管理、営利目的の追求、そして終結までコントロールする意図があった様ですが、殆どの人間はその事を知る由もなく、 一般的には『ACによる新しい傭兵斡旋組織が出来た』としか認識されてはいません。
 傭兵は当時も存在しては居ましたが、高度な管理社会の枠外の中で、社会に認められない最低にして最悪な生業でもありました。
 彼らは少なからず報酬や、扱いを保障してくれる組織を快く受け入れ、傭兵の殆どがこの破格の条件に飛びつく形でACに乗り始めます。
 そうしてAC傭兵までも管理する組織を《レイヴンズ・ネスト》と、ACを使用した傭兵は特別な名称《レイヴン》と呼ぶ様になりました。
 ただし公式な職業ではなくあくまでも都市を統治する企業は存在を黙認という、あやふやな存在でもあります。
 必然的にレイヴンは特に企業が公に出来ない戦闘行動に従事する事となりました。それもまたネストの意図する処であったと云う事が言えます。
 レイヴンはやがてACの不安定な管理面を補う存在で企業から重宝され、合法、非合法を問わず報酬による有事にのみ防衛費を捻出すれば よいといった軍事費用削減の大きなメリットもあり、企業には無くてはならない戦力へまで定着していったのです。
 更にACの操縦自体はそれほど難解でもない為に、専門の教育を受けない管理社会を嫌う者が試験にさえ通ればレイヴンとなるまでに浸透 します。
 整備面でも一部の制御機能や機構、装甲の細かい材質は分からなくとも、使用効果はある程度分かっていましたから『疑わしきは交換してしまう』 といった方法でレイヴンや修理する業者や企業も簡単に対応する事が出来ました。
 企業が嫌った大量消費の方向ではありますが、レイヴンの個人単位の運用ではこの方法で問題なく、腕の良い修理業者になれば機械的な部分 は修理、調整が可能であった事とレイヴン達は比較的多額の報酬を得ていた為に、さしたる抵抗なくACを運用しました。
 この時代ACに限らず他の器機も企業独占の技術が溢れていた時代背景もあります。
 こうして企業は最低限のACを保有する傾向となり、更にはレイヴンズ・ネストもそういった方向で企業にはレイヴン達が用いる者よりもや や高度なACパーツやマテリアル、時には製作技術そのものを提供する様になりました。
 こうしてACに対して企業には性能に、レイヴンには戦闘技術にその存在価値を見出される様になります。
 それ故に特定の企業のみしか扱えないACやパーツも戦場で見られる様になったのです。 またそうしたパーツを企業は解析して、一部はネストに認可して貰うかたちでレイヴン向けの商品として安定して流通もさせる様にもなったのです。
 現在は主にそういったネストに認可されて生産されたパーツをレイヴン達は購入して使用しています。


ロスト・テクノロジーとイレギュラーについて
 オーバー・テクノロジー(現時点の文明レベルとはかけ離れた技術)とは違い『失われた技術』という意味です。
 かつて人類が手にしていた技術なのですが、時と共に廃れて忘れられる場合や、意図的に封印された技術を指します。
 我々の時代でも特定の刀剣製作技術や、一部の楽器の製作技術がなどがこれにあたります。 まれに研究により解明され復元される事があります。
 本作品ACの場合、当初は殆どの部分がそうでしたが、現在は巨大企業には解明されてほぼ製作も可能なレベルです。 ただし連立都市では、供給元がネストである物は許可が無い限り製品として量産、流通させる事が出来ません。
 現在の版権などに近い物とお考え下されば近いと思います。
 大抵は巨大企業がこの許可を得て、更に子会社にライセンスを発行しACの武装などは製作されています。 表向きは企業統治社会で、この事項は企業間協定で守られてもいるので遵守する傾向にありますが何事にも例外は存在します。
 ちなみに、この時代は企業単位での統治は仮の姿で、実はネストの世界規模での独裁統治というのが本当の姿です。
 AC関連技術に限らず連立ネストは常にナーヴに流れる情報を監視、管理して『統治に都合の悪い』技術が再現されたり、発見されるのを防いでいます。ネストの統治は公然の秘密で一般人やレイヴンは知る事は普通ありませんが、巨大企業のトップクラスになると認知します。
 連立都市はその中でもかなり特殊なネストで、アイザック方面のものとは何らかの理由で反目しつつも、殆ど同じ思想で統治しています。
 ロストテクノロジーと共にネストに警戒されるのが《イレギュラー》と呼ばれる存在で、レイヴンのみならず技師や思想家などにもイレギュラーは存 在しましたが、これらを極秘裏に闇へと葬る事でネストは連綿と人類を地下から望む方向へと導いてきました。 アイザックのネストの前例もあり、この失われた技術の発見とイレギュラーには連立ネストは特に警戒しています。


BACK