- RESEARCH 10-
考証 10
この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。
これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME
OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為
に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作
しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。
《ネオ・ストラグル》
アヴァロン・バレーを本拠地とする非合法活動を行う地下テロ・ネットワーク組織。
旧組織の思想と理念を継承しており、ムラクモ・ミレニアム亡き後も都市管理政府と癒着して組織の存続に至っている。
主な構成メンバーはストラグル残党であるが、都市側ガードの一部なども加入しており、現在では装備・人員共に充実した状態にある。
旧ムラクモ製のM・T、A・Cをメイン装備で使用しているが、本編ではマス・コミニュケーションによる報道が予測された為に組織が若干数所
有する偽装したスパイトフルの捕獲機などを使用していた。
《ハイ・ドリーム》
アンバークラウンで大流行した新種の麻薬。
成分はバイオ・テクノロジーにより品種改良を重ねられた小動物の脳から採取される特殊なアドレナリンで、ある種の無害な薬品と混ぜ合わせる事により強烈な幻覚作用を引き起こす物に変化する。
これらは各個別々では何ら効果を発揮しない為、現在は地下入都市管理局は水際での押収が出来ない状態にある。
化合物質や精製方法によってはプラスなどにも効果を示す上に副作用のデータが皆無な為、非常に危険な代物と言える。
《A・Cチョコレート》
アイザック・シティでのみ発売されていた玩具入の菓子で、A・Cパーツを再現した軟質樹脂の模型が入っている。
主に若年層に大変人気があったが、この付属していた模型に対する各パーツメーカー側の著作権問題が浮上し生産中止となってしまった。
模型製品自体は決して良い出来栄えとは言い難かったが、現在では入手が困難な為、相当のプレミアのつく高価な物となっている。
因みに発売元はワンダラーズ・フロム・フーズ社。
《無反動スライド斬り》
軽量二脚A・Cにのみが可能な斬撃法の一種。
小ジャンプした後の着地の際に自重をコントロールして慣性を利用しての急加速と、ブレード作動時の標的追尾能力をフル活用した特殊かつ
高度なテクニック。
至近で着地する瞬間の荷重移動を利用した隙の少ない素早い攻撃は、受ける側にとって瞬時判断を強要され回避は困難を極める。
A・Cの脚部間接、特に足首部分に極めて柔軟な対応力が要求される為、軽量以外の他の脚種ではこの動作再現は不可能。
これとほぼ同じ原理で行われる操縦法に無反動スライド・ダッシュと呼ばれる移動・回避手段も存在する。
○プラズマについて
最初に前回のレーザー同様、極めて簡単にプラズマとは何であるかを説明致します。
まず、我々の身近にある水を例に出しますと0度以下で水は凍り《固体》となります。
1度から99度付近では水は《液体》、百度を越えてくると水は沸騰して水蒸気《気体》になります。
ではこの水蒸気を更に加熱して一万度位にまで熱すると、水を構成している酸素と水素の《分子》は離れてしまい、更にそれら二つを構成して
いる分子の中の《原子》が、そのまた更に小さな《電子》と《イオン》と呼ばれる物にまでバラバラになります。
物を細かくしていけば大きい順に《分子》→《原子》→《電子》《イオン》となっているのですが、物をドンドン加熱して、この最小の電子・
イオンになった状態、固体・液体・気体に続く第四番目の状態が《プラズマ》なのです。
身近な物で《蛍光ランプ》はこのプラズマで点灯しています。
数万度の温度を持つプラズマではありますが、そのプラズマになっている量、すなわち《濃度》によっては他の温度が低い気体と混ざって急激
に冷めてしまい蛍光ランプは、このお陰で燃える事も無く手で触っても最悪は火傷する程度の温度で留まって光っている訳です。
本題としてプラズマをACが兵器として使用するにはACの装甲を突破する威力を確保しなければなりません。
プラズマは熱線として使用するよりも、むしろバラバラになった電子などの動いているエネルギーを使った運動エネルギーを使う用法が実は適し
ていますが、ここでは諸々の面から考えて、まずは強力な熱量をぶつける熱線兵器と捉えて考察を進めて行きたいと思います。
ACの電力により強烈な放電で、電子などを先程の蛍光ランプとは比較にならない位の温度まで加熱してやります。
一般にこの状態を《アーク放電》と呼び、蛍光ランプなどの低温度の《グロー放電》と言って区別します。
これを行う際に強烈に放電する電極の一方《陽極》にノズルと言う小さな穴を開けておくとプラズマは自然と流れてノズルから外へと噴出して行き
ます。(この辺りがレーザーに少し似てますがレーザーとプラズマが全然物である事は、ここまで読まれればお分かりだと存じます)
流れ出たプラズマが超高温で鉄などの金属を焼き斬ります。
これが《プラズマ・トーチ》と呼ばれるモノでACではヴィクセンも接近武器として使っています。
プラズマ・トーチは他のガスも足しての様々な用途で利用が可能ですが、吐き出したプラズマが周囲の冷えた外気で蛍光ランプと同じ理由により急激
に冷めてしまうので兵器として使用する場合、リーチは短い物になります。
ここで更にプラズマは混入するガスの種類により発光は多色に渡る事も追記致します。
通常はアルゴンを作動ガスとして用いますが分子量が小さい水素やヘリウムガスを混合して効率を上げます。
大体これで1万度以上のプラズマジェットが吹き出しますのでACの装甲を焼き斬るには充分過ぎる温度と言えます。
レーザーと比べ威力は劣るものの、消費する電力が低く抑えられるメリットがあります。
では、次にこのアーク放電で作ったプラズマを今度はACに射出させる手段について考えます。
プラズマを射撃兵器として使用するには、磁力線や電場に吸い付くというプラズマの特性を利用し、プラズマの熱を保持しながら外へと放出してやるの
が敵機が回避可能な点と、描写の容易性とリアルの折衷と判断いたしまして以下の説明に入りたいと存じます。
この方法でプラズマを敵へと放つにはプラズマ最大の難関である《外気と混じって冷却してしまう》事を出来る限りカバーしてやらねばなりません。
この対応策としては前述の磁力や電場を利用してプラズマを出来る限り束ねて冷え難くしてやる必要があります。
その上で、更に敵まで出来るだけ速く、熱が外気により奪われてしまう前に敵へと到達させなければならない訳です。
前述の通りプラズマは分子がバラバラになった原子よりも凄く細かな電子とイオンの集まりです。
これら二つは自分の中に一定の電気を帯びていて、これを電場や磁場で望む方向への射出や、冷え難い形を作り出す事が出来るのです。
ただ、この方法で射撃兵器からプラズマを放ったとしても、大気中の不純物や他の気体に邪魔されて射程距離はそれ程長くならない様に思われます。
目標と銃口の間にある空間が長い程、更に高速で走らせる程にプラズマは空気などの抵抗を受け、冷却してしまうのです。
本作のAC達は、出来うる限り強力な圧縮を行ったプラズマを電磁場でプラズマの熱弾を撃ち出す物と捉えております。
的に命中させる事を第一として空間の抵抗を考慮した上で、かなり低速《実体弾丸より少し速い程度》の速度を採用していると解釈致しました。
ごくごく簡単に言えば超高熱の塊を電磁誘導で射出する熱弾兵器とお考え下さい。
現在でもプラズマトーチなどは実用されており、強烈な熱に耐えられる素材に関しては特に重大な問題となりませんが、ACの持つ武装にはこれらよりも遥
かに耐久性のあるマテリアルをネスト、企業共に作り出す技術を有しています。
これらによりプラズマ兵器はレーザーとは根本から異なる(瞬間的に何とか避けられる)光学兵器となるので、描写の面からも大変に都合が良くなります。
ACがレーザーと同じく何故、この様な特殊なプラズマの使い方をしているかについては、前回と同じく弾丸に使用される資源のセーブに加え、ACの世界
におけるレーザーの脆弱さにあります。ACにとってレーザーは連続照射出来ない半端な物の為、これに変る代替的な用法で使われているのが《プラズマ兵器》
であるのです。
しかしながらプラズマもまたACが使用するにはプラズマの密度収束、加速に要する電力やスペースの確保が困難な為に、これもまたレーザー同様、特殊な
使い方をせざるを得ない状況でACに装備され使われているというのが現状です。
プラズマには熱弾を強引に発射する用法の他に《ビーム》として使用する方法もあるのですが、これらは別に《エネルギ〜》と呼ばれるカテゴリーに属すると判
断し、ここでは詳しく触れてはおりません。
ちなみにビームとは無理やりに直線型にした雷のイメージが、かなり近いと存じます。
これだけ長い文を読んで頂いて何とか説明が出来たのがプラズマ・キャノンの《WC-XC8000》カッター状にプラズマを形成して撃つ両肩兵器《WX-ED2》右手武器
の《WG-XC4》特殊腕の《AW-XC65》短距離に射出するエネルギー爆雷の《WM-X15-EX》の五種類です。
いずれも最終的にはプラズマの持つ熱と、同時に射出される電磁波がACなどにダメージを与える物と防御機構簡略化の為に解釈しております。