- RESEARCH 15-
考証 15

 この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。

 これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為 に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作 しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。



《はぐれプラス》

 強化人間の殆どは企業が出資して改造を行う為に、逃げられない様にする処置がなされる。
 単純に首に遠隔爆破装置である《首輪》をつけたり、体内の人工臓器や機器などの拒絶反応を抑制する特殊な薬剤を設計時に必要とするなど千差万別。
 だが稀に企業や組織を脱走したり、企業そのものがなくなったりして《はぐれて》しまうプラスも多々 存在している 彼らは新たな主を見つけるか、のたれ死ぬか、自由の身になるか様々であるが、一般の職業に就く事 は、強度に戦闘用に改造された人間を受け入れる土壌にめぐり合えることが無い限りほとんどないと言 える。
 多くの者はレイヴンやテロリストとなり短い人生を終える者が殆どである。


初期機体A・C
 新人レイヴンが最初に登場するA・C。
 愛称や俗称で「初期機体」「デフォルト」「プレーン」などと呼ばれるアッセンブルである。
 連立都市においてACを持たないレイヴンはこの機体でミッションをこなしACのリース代金と 機体代金を払い終えるまで武装の変更などは認可されない為、最も多くのレイヴンがこのアッセ ンブルをしている事になる。
 塗装の変更などはネストより認められており、多種多様なカラーリングをしたこの機体をあちこちの戦場で見る事も出来る。
 元々、初期機体とはクローム社とアイザック・レイヴンズ・ネストとの提携生産であったが、現在は各ACメーカーからも同じパーツが発売されている。
 マイナーチェンジはクローム社崩壊の後も延々と繰り返され、性能に大きな差異はないものの形 状が大きく違う機体すら各都市に存在する。
 劇中のグラスホッパーは連立都市クフィル社の生産で初期機体型のマーク14のバージョン3にカテゴリーされるライセンス生産ACで各所の造りが荒い為に新人レイヴン間での評価は低い部類に入り、本機はクフィル社の売れ残りの型遅れ在庫処分品である。
 現行生産型のマーク15・バージョン2と比較して整備の容易さと敵機のデータベースの中身において劣ってはいるが全体のポテンシャルや戦闘性能は全く変わらない。
 ちなみに初期機体は既に半世紀近く生産されているが戦闘能力は現行型とほとんど変わらない。 これはACの根幹構造などの重要部位がネストなどの配給による旧時代のロストテクノロジーの 産物である事を示している。


《バッカニア》

 かつて世界を席巻したクローム社の兵器研究所が開発した無人AC。
 これまでの無人機とは違い、人間のレイヴンと同じ様に自ら意思や判断で任務を遂行する目的で創られ たが完成の域には至らず計画が延期になったマシン。
 正式コードネームは《CHAOS-カオス》。その他に《メンシェン・イェーガー》といった非公式のコー ドネームも与えられている。
 バッカニアは同系機のハンターとほぼ同性能で、武装や使用が近接戦闘を意識した装備になっていた。
 しかしながら近接戦闘は射撃と異なり、更にすばやい能動的自律プログラムを必要とする為に数機が試 作されただけに留まる。
 機体には腕部や脚部にクローム社のACであるヴェノムなどとの共通パーツが多く見られる。


A・C・レース》

 A・Cを使用した競争競技であり、大は各都市を巡業する物から、小はレイヴン同士の草レースまで多種多様である。
 同様に脚部を限定したりジェネレーターやブースターを主催側が指定する物もある。
 敵機破壊に重きをおいて楽しむデス・レースとは異なり純粋にゴールを目指すレギュレーションやルールが殆どである。
 稀に高速で逃亡する標的を追って破壊する目的のレースなども開催されるが、その際もA・Cに着弾すると反則となる物が多い。
 ややもすると殺し合いになるイメージのアリーナには、抵抗のある一部のクリーンなイメージで売る企業の格好の宣伝場で、A・Cや会場 は華やかに飾られる場合が多く、また企業との繋がりや、長期契約を望むレイヴンにとっては格好のスポンサー探しの場にもなっている。
 戦闘という迫力のあるアリーナに比べて民間の人気は格段に落ちるが、賭けの対象となっている為に固定ファンがかなりいる。
 連立都市では、武装をほぼ使用しない関係から、比較的ネストの監視や査察も緩く主催側とネストの繋がりは薄い。
 賞金はアリーナのそれとは比べるべくもない程に低いが、死亡の危険が殆どなく、更にレイヴン特有の陰惨なイメージも薄い為に好んで出 場するレイヴンも一部にはおり、定期的にレースが中立地帯のみならず各都市で開かれている。
 民間の目からしてミッションがレイヴンの陰とするなら、レースやアリーナは陽の部分と言え、どちらもレイヴンが名を企業に売り込む面 や資金調達面で重要な役割を担っている。


《デス・レース》

 連立都市で年に一回行われる一大イベント。
 通常のACレースはアリーナと比べて人気は低いが、このデス・レースに限っては熱狂的な支持を各都市の 市民から得ている、ルール無用の実弾を使用するレースである。
 企業が出資して行い、観客にトップチームを予想する賭けを催す。故に企業お抱えのレイヴンが主な参 加者となる。第四回大会からタクティカルな2機1チーム制が採られる様になった。
 因みに今回は第十二回目にあたる。この大会でワイルド・カードは三連覇をしており、ネストと中立ブロッ クのアリーナから特別オプションを贈られ、殿堂入りの名目で入り出場不可となった。
 他にも数々のスター・レイヴンやアイドル・レイヴンを世に輩出している。
 元々は比較的地味なレースではあったが、企業の宣伝を兼ねるという利益と直結する為に宣伝や広報が 盛んに行われて大規模化した経緯を持つ。
 余談ではあるが表彰式にACが表彰台にあがり、企業の代表が会場でのコメントなども行う。
 レイヴンが死亡、あるいは重体のケースが多いからである。
 陰惨さを華やかさで隠す配慮が随所に行き届いているのも人気の理由と言える。


《テックボット》

 作業用の小型ロボット。
 人間の背丈よりも大きい物もあり、小さな物では卓上の物もある。
 主流は成人男性よりも若干小さいサイズの物が主に連立都市では販売され、稼動している。
 危険な場所での作業や警備、都市の清掃などに用いられている。
 高価なパーツを一部に有している為にスラム街や治安の悪いブロックでは盗難や破壊される事がまま起こり、社会 問題となっている。ある意味でACの世界で最もロボットらしいロボットと言える。
 基本的に心理的嫌悪感の起こり難い、可愛らしい形状の物が多く作成され、各社から企画が統一されたシリ ーズがリリースされている。


火炎放射器と火炎砲弾について

 ACの装甲は熱と衝撃、そして銃弾に対して強い材質が使用されていますが、火炎は装甲以外の内部へと入って ダメージを与えます。
 ACには高度な耐熱材質や、冷却システムはあるものの、廃熱用のスリットや吸気用のインテークから、高い熱 を持つ炎でAC内部の電子機器や稼動システムに主にダメージを加えていきます。
 ACはエンジンに水素タービンなどを使用しているので、吸気インテークから超高熱の空気を吸い込む事が場合 によって大きな損害を被る事もあります。
 装甲への熱弾攻撃や敵弾による一部に対して一瞬の過熱ではなく、継続する熱攻撃は冷却やエンジン吸気に外気を 必要とするACの構造上、好ましい状態では決してありません。
 加熱による爆発などは滅多に起こしませんが、脅威となるのは事実です。
 元々、火炎放射器《WG-FG99》は火炎放射器は対人、対生物に対して非常に有効な為にリリースさ れた物で対ACへの考慮は全くされていない兵器でありました。レイヴンからの情報を元にACにも効果がある事を知 った一部の企業が既に一部の徹甲焼夷弾を元に粘着性の強い高熱を発する液体を開発し《WG-FGI−00》はグレネ ードランチャーと殆ど同じ発射機構で火炎弾として射出する改良を施しました。
 その効果の程は他の兵器とは比べるべくも無い脆弱さではあったものの、一部のMТや小型の無人機と組み合わせる事によりACの弱点付近に数を頼りに継続して熱放射を浴びせる攻撃はレイヴンなら誰しもが嫌がる攻撃方法としてむしろMТなどの対AC用装備として効果を挙げています。
 逆に耐熱に脆弱な対MТ戦闘などには絶大な効果を見込めます。 更に大型の生物兵器などには極めて有効であり、精密な照準もさほど必要でない事からバイオセンサーを装 備しない頭部を愛用するレイヴンなどには重宝されました。
 しかしながらWG-FG99は生産された数が極めて少なく、非常に貴重な兵器である為に一部のレイヴン は戦闘への仕様を躊躇ってしまう傾向にあるとも言われています。


○浮遊型機雷について

 ACの世界では珍しい装備で、射出された機雷は、その場で漂う様にして接触爆発するまで一定の時間待機する兵器です。
 射出口から発射された機雷は即座にバルーンの様に膨れ上がって内臓ジャイロとファンにより、空気よりも軽い気体で満た されたボディで位置や状態を維持します。
 レイヴンの乗るACが装備可能なのは《WRR-10》のみで接触信管による爆発式。ただし敵味方の識別などが不可能な点 が一般に使用されている点と異なります。
 この世界、機雷や地雷は大幅に制限されており、これらの兵器は基本的にその攻撃の性質上《忌むべき兵器》との認識が広く 民衆にはあります。
 ガードや使用する物には、殆ど視認出来ない状態で浮遊して、敵味方を識別した上で近接信管により作動する物や浮遊ファン のバッテリーが切れた後は外装のバルーンを廃棄して地雷へと機能シフトする物や、デコイとしてミサイルやFCSを誤認さ せる物など様々なタイプもありますが、殆ど生産して仕掛けられたりする事はありません。
 しかしながらテロリスト達はその様な地雷や、感知が極めて困難なタイプの物を常用しています。
 レイヴンに使用が許可された物は主にACの行動を一定時間抑制する目的のタイプの物でしかありません。
 触接機雷と呼ばれるタイプの物で、アンテナや触角があり触れる事で起爆します。
 破壊力こそロケット砲弾の直撃に近いものがありますが、かなり機能が抑えられており使用後の落下の際にも信管を作動させる 器機は自壊して地面へと落ち、改修や撤去を容易にしています。
 これらのセーフティ機能は使用するレイヴン各位のモラルがまちまちな為に、凶悪な兵器である機雷や地雷を地下都市にバラ撒か れる事を懸念しての事です。
 機構としては手榴弾と同じく、細かな金属片を爆破により撒き散らす物でACの弱点である薄い装甲箇所に高い確率でヒットして 破砕する他に、近距離での接触の為に直接的な衝撃ダメージもACに与えます。
 卓越した操縦技術を持つレイヴンや、知略を駆使する者が好んで使用しており、上手く使用すればACを始めとしてバワードスーツ や小型MТなどの肉薄を防ぐバリケードの様に防御的な使用もACに可能とさせます。
 接触式爆発である為とバルーンが膨れる事から、至近距離での大型低速ロケットの様に使用する事も可能です。


○爆雷について

 元々は航空機の装備する対潜水艦用の武装でした。現代では命中率が悪い為に殆ど使われない兵器です。
 しかしながらACの世界ではヘリなどの航空機搭載が主に見られます。
 ACに対し、この時代のミサイルや航空機に搭載される口径での機関砲が、あまり有効でない事から使われ出した模様です。
 一応、戦車の薄い上面装甲を破壊するのには向いていますし、対ACの場合も頭部などの弱点を突く事になります。
 かなり小型ではありますが、構造が単純である為に炸薬が大量に内封されておりACの弱点に当たれば高い破壊力をもたら します。基本的にACの装備する物も衝撃によって装甲の外部と内部を破砕するタイプの物です。
 接近戦の得意なレイヴンはブレードとの併用をする武装として主に使用する傾向にあります。
 特殊腕などで接近戦に難を残す場合や、地雷や機雷などの処理にも連立都市では使用されるケースも時折見られます。
 FCSを介さない兵器である為に、電子戦に劣勢である戦場でも効果をもたらします。
 更に、一瞬ではありますが照明弾の様に閃光する様になっていますのでカメラやレイヴンへの錯視効果も期待できます。
 何より、頭上からの攻撃は相手の士気を大きく削ぐという面があり、直接の撃破よりもACの行動を牽制・制限する目的で使 用されるケースが多くみられます。



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