- RESEARCH 4 -
考証 4

 この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。

 これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為 に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作 しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。



《ジルコニア》

 名称すら無い、極秘密組織の下部に位置するテロリスト集団が造り上げた実験施設。
 《ゴンドラ》と呼ばれる半永久機動兵器と、宇宙放射線によるCPUの劣化と脆弱さを補う《カロン》と名付けられた高性能プラス生成が任務だった。
 クロームとムラクモの計画に共鳴する一部の技術者を抱き込んで完成を目指していたらしい。
 現在では、全てのデータが失われておると云うのが定説であるが、連立都市レイブンズ・ネストは、その内の《カロン》を極秘裏に発見する事に成功、血眼になって残る《ゴンドラ》の行方を捜している。
 同様に前世紀のゴンドラとは別の兵器を利用しての復元、再生を行う施設が多数存在したが、そのことごとくをアイザック方面のレイヴン ズ・ネストが健在だった時期に同組織により全てが壊滅させられている。


《ゴンドラ》

 極秘裏に開発されていた衛星兵器。
 ロストテクノロジーをそのパーツ内部の殆どに有し、半永久的に機能する攻撃衛星とされている。
 その攻撃方法は多様で発電衛星を物理的にジャックしてのマイクロウェーブ攻撃や、弾道ミサイルの無力化。ひいては大質量リニアガンによる地下複合都市の壊滅なども可能にする。
 ベースとなった兵器は大破壊以前の物で、開発の中途で打ち捨てられていた物を蘇らせたとする説が有力。ただし電子機器の損傷や管理するコンピュータの技術が完全ではなく、強化人間などを使用した手動操作を有する為に本来の機能である永久性は完成時でも損なわれることが予想される。
 しかしながら短期に敵の完全な殲滅は可能で、確実に世界を恐慌に導く事は可能である。
 その為に最初期の段階でも大質量リニアガンの装備と衛星を弾丸へ精製する装置は備えられていた。
 衛星となった後に、他の衛星をジャックして防護、攻撃機能を強化してゆく自己進化型の兵器でもある。
 初期形態は宇宙での廃熱を考慮して金色のボディコートがされており、そのフォルムは人魚を思わせる。
 現在はいずこかに開発中途の段階でロケットにより逃がされて行方が知れていない状態である。
 正式名称は既に失われており、冥府の河の渡し守《カロン》の渡し舟(ゴンドラ)から付けられたコードネームである。
 ジルコニアの上部組織はこの兵器により主要都市や敵対都市を殲滅し、世界を完全に手中に収める予定であった。
 尚、現在でもこの上部組織は存在し、全く確証はないがそれを連立都市ネストとする説も有力である。



○プラスについて

 強化人間を指す言葉で、現在は特にAC操縦に特化した進化をみせており、強化人間全般を指す言葉にもなっています。
 後に逆転しますが初期の強化人間の分野ではムラクモ・ミレニアムの技術が勝っており、ライバル社であるクロームに先駆けて完成を見た強 化人間の現時点が作中でも登場した《レベル6》で、現状のAC対応型強化の最高到達点です。
 これらの技術が飛躍的に進化したのも企業が発掘、再現したロストテクノロジーでクローム社出資のケミカルダインと、ムラクモの強化人間 研究施設がそのパイオニアであり、この分野の権威に著名な者としてはМ・オカムラ博士が居ました。
 これらの技術は全て企業が秘密裏に発掘や再現、果ては開発した物でネストの関わりは極めて希薄です。
 それ故にプラスはACが使用する電力や情報処理を最適化する事が可能で、その恩恵としてキャノン系の動きながらの発射、ブーストダッシュ の時間延長、レーザーブレードの光波攻撃を可能ともします。
 その他には武装のリロード・タイムの短縮やFCSの精度向上など、ACのあらゆる部位を意のままにする事も可能とします。
 作中では瞬時に脳内に描いたモーションをACの各関節へと指示を出し、即反応が出来る応用・汎用性の高さもあるとしています。同様の事を通常の人間が行う《マスター・スレイヴ》という機構もありますがAC戦闘モードでは一般的な操縦方法ではありません。
 視神経や触覚、聴覚といった感覚機能の強化は神経の光学繊維化技術を使用しており、特にACが感知する様々な情報を直接的に知る事を可能としています。基本的にはACのセンサー類にリンクする形を取りますので、知覚性能は大きくACに依存する筈ですがACに搭乗しな い時にも視覚や聴覚の向上はみられ、単体でも暗視や通常人では不可視・不可聴領域感知も行える。と本作品では設定しています。これらが知覚系直接伝達による操作方法です。
 他にも骨格や内臓の材質変化や構造の変化、血液の濃度を一定化したり痛覚などの神経伝達のカット や分泌液のコントロールまで行える者も多く存在します。
 多種多様な仕様のプラスは、同様に様々な方法で作成されますが、外科手術とマイクロ、ナノマシンでの組織変質など併用して行うのが一般的です。強度の強化人間の中には心肺機能を外部に置き、単体では生きられない著しく一般生活の妨げになるレベルの者も居ます。
 しかしながら連立都市ではプラス単体での戦闘力も考慮されたタイプや、運用に利便性があるタイプが主流であり見た目も殆ど一般人と変わ らない者が大多数です。ただ能力を使いこなすのには相当の修練が必要である上に資質と耐性が要求されます。
 そして個々の性能や特徴にもかなりバラつきがあります。
 ちなみにナノマシンとは十億分の一メートルという非常に小さな装置の事で、タンパク質が主な材料で原子を一個ずつ並べて物質を設計することが可能になる技術です。
 社会的には敬遠され人類を冒涜して戦闘の為に進化した種類の《敵》と見られる事もありますがレイヴンの世界では共に社会から虐げられている関係から一般人から見るよりも抵抗はやや少ない傾向にありますが、逆に極端に敵視や嫌悪される事もしばしばあります。
 それにより希望して強化人間となる者は限られており、基本的にプラスは冷遇される事が多いのが現状でもあります。
 ちなみに主人公ラスティは宇宙兵器用に作成された試作品となっており、宇宙空間に長期間耐えうる持久力と耐久性、安定性に重点を置いて製作されているのと実験的なコスト度外視の試作体の強みと言えるスペックを耐久、運用面で誇ります。
 しかし現在のプラス技術はラスティが作られた時よりも進化しており、反応速度や知覚性能は最新式の者には劣っています。
 ラスティを始めとする本作品のプラス達の多くは逃亡されたり、敵に利用されたりする事を防ぐ意味合いから定期的に特殊な薬品を投与しなくては性能を維持出来ない様に設定されています。
 その制約方法は様々で最悪は遺伝子レベルで改造された部位の組織崩壊を起こさせる者も居ますがラスティを含む本作品の一般的なプラスは 使い捨ての兵士である意味合いが薄い為に、このリミッターは各性能の低下のみに留まります。
 企業により改造された者でない場合は当然、この様なデメリットは存在しませんが少数しかこの様な者は連立都市には居ません。
 大きな問題は精神面で、人間を越えた耐久力等を備えた事による人命の軽視や通常人に対する蔑視などが芽生え、食事に関しても通常のカロリー 摂取方法などに疑問を持ち、効率の良い人工フードや栄養剤を口にしたがるなどの合理的な思想を持つ傾向が発生します。
 感情も薄れ、冷酷になる者や情緒が不安定になる者も居ます。
 これらプラスに類する精神的病状を《プラス・シック》略して《プラスチック》と俗称で呼びます。
 現在の技術では改造の際のナノマシンは自然に排出されたり、そうする事を促進する薬品や不要なナノマシンを駆逐するナノマシンを投与する 事で体内から無くなりますが、数種類は体内に留まり、体温などにより発電して拒否反応を抑えたり、全体の性能を維持したりして半永久的に機 能する方式が一般的には採られています。人体内部の不要な物質から必要に応じて自己の複製物を作るナノマシンタイプもあります。
 しかしながら酷使を続けるとナノマシン自体の性能が低下する為に定期的なメンテナンスも必要となります。
 その際には活性剤(中身は主にナノマシンをメンテする汎用メンテ型ナノマシン)と呼ばれる物を投与すれば本来の性能を取り戻します。
 これらの活性剤と呼ばれる物は一部の企業から内々にリリースされておりますが、プラスに使用されたナノマシンは千差万別であり効果の程は一 定ではなく捕獲したプラスが組織崩壊などを起こすタイプだと問題がある為に、それに対する一応の応急処置程度品とされています。
 プラスを根本的に直す事が出来るのは、設計した組織や博士のみという事になります。
 なお、プラスを通常の人間に戻す事は設計の段階でその考慮がなされていない限り可能性はゼロに近いものです。
 特にラスティは内臓や骨そのものも強化してはいますが、成長期であった為にナノマシンによりそのサイズを成長と共に強化し続けるといった 措置もなされています。これには大きく実験的な意味合いがあり、製作した組織であるジルコニアは胎児からプラスにして生まれながらのプラス を作成しようと考えていた事も追記致します。
 尚、余談にはなりますが、作中のデリンジャーは厳密に分類すると《強化人間》つまり、通常人を改造した物では無く、遺伝子操作によって誕生し た人間型の生物兵器であり開発したクロームは仮にこれを《シフト》と呼んで非公式に区別していました。


○コアについて

 ACをACたらしめる最重要パーツ。
 大きさは大体、小型の物で普通乗用車と同じ位のサイズでありコクピットは一人乗りと設定しています。
 この時代のコアの搭乗ハッチは機種にもよりますが基本的に前側あるいは、上部に位置します。

 以下は主にレイヴンが乗るタイプの物の説明になります。
 装甲材質は主にセラミックス系装甲との複合装甲の《ハイ・スペースド・アーマー》(サンドイッチ状に挟まれた装甲の内部に空洞があり敵弾の衝撃や貫通力を減衰させる効果を持つタイプでACは更に空間に合成樹脂などの軟質物も入れることが出来る)で対弾性と軽量化を高い次 元で両立させており内蔵機器のスペース確保をも成功させています。
 コクピットの他にコアには《ジェネレイター》、《FCS》、《ブースター》、《ミサイル迎撃用機関砲》、《オプショナルパーツ》が装備され ておりACの管理面、移動面、防御面に関する機能が集中しています。
 個々、一部の詳細は次回以降に記載するとして、ここでは大まかに本作中でのコアの機能を列記いたします。
 まず、この時代にコアに装備されている迎撃用機関砲は実弾方式です。 元々は対人用に接置された機関砲ですが、ACが基本的には航空機や戦闘ヘリからのミサイル兵器に弱い事から兼用されました。
 本来の目的である対人に使用する事も可能で、軽装甲車両やACのセンサー部や間接などにも若干の効果はあります。
 レイヴンは通常、この装備を敵ミサイルに備えてオートにしている事が多く、自分で操るケースになる事はごくまれです。
 現在では一部のコアは設計の段階からミサイル迎撃に適した製作となり、むしろ対人用途は二の次にまでなっています。
 口径が小さく搭載弾数も多いですが本作品ではゲームと違い、弾切れも起こりえます。
 ジェット推進用のエンジンであるブースターのセットと、武装など専用の原動機関連のジェネレーターのセットもコア内部と考えています。
 余談となりますが燃料電池は脚部に、各部位には充電器として小型の高性能バッテリーが配置もされています。
 主に武装や飛行に必要な電力はコンデンサから、機体の稼動は燃料電池から主に得られる仕組みです。
 ジェット・エンジンは戦闘モードの際は常に低回転していますし、水素タービン・エンジンも同様に作動します。
 当然ながらゲームの様に無限に動き続けるといった事は出来ませんし本作品のACはそういう永久兵器でもありません。
 フル稼働をさせた場合、むしろMТには稼動時間では負けてしまいます。ACは早期に戦闘を終結させる切り札的な存在であると同時に、 レイヴンの乗るAC同士の戦闘は可能な限りで互角になる様に調整が施されています。
 この時代、超高効率燃料電池の技術は主にネストのロストテクノロジーに依存しており、水素タービン・エンジンがMТなどの動力源の主流 となっています。MТを進化させているACが飛行しつつ、エネルギー兵器を使用するといった無理を実現する為の追加電源として水素タービン・ エンジンは搭載されており、ジェットエンジンもその為に装備されています。
 ジェットエンジンとブースターについては別項でまた綴りますが、水素タービンエンジンもまた高度に進化しており瞬発的な発電量がこの世 界の技術復興では、燃料電池技術をかなり上回っています。
 それによりACはエネルギー兵器の搭載を可能としつつ、飛行用の別系統の機体管理コンピュータや推進機器を作動させる事が出来ています。
 尚、水素燃焼の際に出る排水はジェットエンジンによる蒸発、緊急時には脚部より排出されてデッド・ウェイトになる事を防いでいますし、 ジェットエンジンもまた発電を行いますが、その発生電力はブースト時の超高圧コンプレッサーなどの消費に比べると微々たる物です。

 最後にスロットについて簡単に触れておきます。
 それぞれのオプショナルパーツは効果をもたらす各パーツに接続、または交換されます。例えばショックアブソーバーやオートバランサーなら ば脚部に装備され、場合によってはノーマルの部品と交換して装備されます。
 基本的に外品であるオプショナルパーツはACコアの運動管理や機体制御コンピュータに負担を強います。
 つまりそれが、コアに搭載されているコンピュータのハード、ソフト両面での拡張限界を意味しているのです。


○マシン・コントロールについて

 連立都市では、基本的にACのコクピットはツー・ペダル、ツースティックであります。
 ただ、これはあくまで操縦者の好みによって簡単にカスタマイズが可能です。
 コクピットは独立したブロックでありマシンに対して命令を下す端末に近い形であるのです。
 当作の連立都市ネストでは、機体に関して厳しい制限が設けられておりますが、唯一、このコクピットに関して寛容な措置がとられています。
 ACのコクピット・レイアウトは自由であり、各機が、その操縦者に最も使い易いと思われる方式を採用しています。
 連立都市に於ける操縦形式は一般的にスティックとペダルによる物が大半を占めておりますが、理由としてマスター・スレイブや脳波コントロールは 極めて扱いが難しくイージーミスや誤作動を引き起こし易いからでレイヴンが敬遠しがちであり、機体へのダイレクト方式のコントロールは強化人間 以外での使用は殆ど見受ける事はありません。
 では、以下にどの様な形式が一般的に使用されているかを考察致します。
 ACは大きく分けて《戦闘モード》と《通常モード》に分かれております。各モードでACに求められる機能は大きく異なります。
 まず、通常モードでは作業の精密性と細かな動きの再現性が重要となって来ます。
 この際には、武装や後述する障害物制御はカットされてしまいます。例外的にこのモードでは、主にマスタースレイブ等の操縦者の緻密な操縦が要求され、突き詰めていけば、オフィシャルの狭霧のコクピット イラストの様に仰々しい装備が必要になるのです。
 しかしながら、これを省略して予め機体のコンピュータに記憶させた行動を再現させ、その都度に細かな修正を手動で行うのが連立都市レイ ヴンの主流になっています。
 一方、戦闘モードでは確実性と瞬時の判断入力による容易性を求められます。
 ACはここで周りの障害物を感知して機体の激突を防ぐ様にする、障害物制御などのパイロットが不適当な命令を要求した際のセーフティ 等を作動させ、より単純な操縦法に従事出来る様にパイロットをサポートします。
 パイロットは通常、左のスティックで機体の制御を、右のスティックで火器に関する制御を行います。
 ペダルはブーストの順噴射・逆噴射をコントロールする訳です。マガジンのチェンジや簡単な爆破装置のセットなどは、通常モードでも触れ た記憶情報を再現する方法でACに作業をさせます。
 一部のゲートなどはACの戦略コンピューターが通信などによりオートで開けたりもします。
 戦闘モードでは、難しい動きは全てコンピューターに任せレイヴンは激しく変化する戦況の把握や敵を排除するのに専念する訳です。
 ACの戦闘モードに於ける操作方法はゲーム上のパッド操作とそう大差無い程に簡単です。
 これにより特別な訓練もしない準市民でも、才能とセンスによりレイヴンとしてACを操れるのです。
 特殊な強化人間はすべて、これらの機体に関するオート制御を極力、マニュアルで行ってACが消費する電力を抑える事が可能です。
 強力な者では原動機の管理やFCSの情報解析も直接リンクして自らが行います。
 その結果として機体制御に関する電力は極端に少なくなり、機体に余剰電力が生じる事にもなります。
 更に加えて強化人間は、通常の人間が脳波やマスタースレイヴ等で操作するACより瞬間的な情報伝達で行動が行える為、これは大変なAC操縦についての アドバンテージを得る事になります。
 尚、遠隔操作については、ごく短時間ならば本作品では可能です。
 しかしながらACは常にネストとリンクして監視されており、遠隔プログラムを仕込んだ場合、即座にそのACの動作プログラムを止めようと してしまいます。また動作プログラムはかなり複雑で解析も完璧には行えません。(使用されている言語からして不明です) 一定時間だけネストのリンクを妨害する事により可能とはなりますが、事前の大改造と機材がかさばる上に、短時間しか行えない為に、わざわざ行おうとす る者は、ごく稀です。
 また行っても普通の人間には機体の情報出力を遅らせる措置が施されており、操作が困難になるデメリットをも含んでいます。
 なお、ACプログラムに介しないAIを仕込んだロボットなどを載せる事は出来ますが、熟練レイヴンとでは戦闘能力が低く比較にすらなりません。
 ただ数少ないメリットとして低級な強化人間程度のマシン・コントロールが出来る事はありますが、これらの開発を行うよりも、訓練された強化人間を乗せる方が安価で、手早く強力にもなります。更に無人のMТを発展させた方が、明らかにこの時代は無人機の製作は容易です。


○FCSとミサイル迎撃機関砲について

 ご存じの方も多いと思いますがFCSとは《ファイア・コントロール・システム》の略であり、現用戦闘機等に搭載されているレーダーと連動し た火器管制装置であります。ACにも同様の装備がありますが、現行の方式とは若干の違いが見られます。
 従来型と大きく異なる点はレーダー未装備でもロック可能な点から推察して、敵機を索敵するレーダーとは連動していない点でしょう。
 つまりFCSは背中や頭部のレーダーとは別に、独立して敵機感知、追尾、行動予測を行っている事になります。
  本作品では主に敵形状認識をベースに排気熱源トレーサー、赤外線感知、金属探知、排気水素探知などによる複合情報処理方式を採用しています。
 壁の向こう側や、地面の下でもロックオンが可能な点から考えてみて、これはレーダーにも言える事ではありますがACは余程進んだ策敵性能 を狭い策敵範囲で特化して有していると言うことが出来るでしょう。
 場合によってはACは都市などに設置された別の策敵機器にアクセスして範囲よりも精度を高めてもいます。
 またFCSは主に画像探知がメインとなっていますが、その他のセンサーもまた個別にACを補足して未来行動予測を算出しています。
 それらの情報を統合可能なのがロック・サイトと範囲、距離なのですが、検知能力が優れたセンサーもある為に、レイヴンの見るロック・オン範囲の 外側にも僅かな範囲でロック・スペースが出来てしまう事もあります。
 ACにおけるFCSは、確実かつ瞬時の情報処理を重んじた結果がサイトの範囲とロック・スピードに現れています。
 在野の傭兵であるレイヴンが仕様するACは広域破壊や、ACによる無差別破壊を抑制する事と、それとは反する簡易な操縦方法と高い攻撃力をAC に両立させようとする複雑な意図があり、現在の兵器とACは違う方向での操りやすさを持っています。
 レイヴンに向けてリリースされるACは基本的に『使いこなせるなら最高の兵器になる』仕様になっています。
 FCSは敵機の行動を予測して射撃の際にオートで敵機に銃口を向けてくれる装置ですが、レイヴンは非常に高度な移動方法を心得ており、更にAC本 体もまた敵FCSを欺く動きや行動をレイヴンに指示します。
 これにより「単に横ダッシュしてて弾が外れてしまう」などといった事象が起こるのです。
 ゲーム中では省略されていますがACは敵FCSへの妨害や偽装情報を敵FCSに対して戦闘モードで移動する際には常に行っています。
 レイヴンはこれらを瞬時に判断してACを操らなくてはなりません。また同時に敵の攻撃が当たらない様にする回避技術も心得なくてはならないのです。
 FCSはこの時代、極めてアテにはなりません。
 それでもメインに目視照準に近い画像処理方式を行うのには様々な理由がありますが、最も大きいのはやはりネストの意思による物です。
 これ以外の方式の感知能力やFCSは主に地下都市で機能を大幅にジャミングなどで減じられる事もあります。
 またそういった技術をネストはかなり放出しておりACをこの時代の最強兵器に据える様に兵器バランスを上手く操作しています。
 ミサイル迎撃機関砲にはコアによる性能差違が見られる事からミサイルに搭載されたアクティブ・ホーミングを感知する軽量化を図った逆探知センサー 等と、主に画像による感知装置が装備されています。
 これは機関砲とも連動しており、迎撃確率は当然ながら機関砲の精度も加えて影響してきます。
 総論として主に地下都市での運用を前提に生まれたACは、閉鎖空間と云う限られた範囲情報を確実に素早く操縦者に伝えるべく製作されているもの な上に、様々な製作意図も内封しており、その結果が画像による認識探知をメインとした総合策敵機能を有している事にもなります。


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