- RESEARCH 5-
考証 5

 この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。

 これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為 に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作 しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。



※マリア追記※
 作中ではリアリティの為、あえて必要以上には触れなかったのですが、それではかなり難解なので彼女の生い立ちについて解説します。
 かつて、アイザック・シティに《伝説のレイヴン》と、そして《ハスラー・ワン》の二名と並んで称される程の凄腕レイヴンが居ました。
 しかし彼は、当時隆盛を極めるクロームに対して行われた企業連合体の宇宙ステーション落としを阻止すべく雇われたミッションの途中、 親友と呼べるレイヴンを見殺しにしてしまいます。
 その男の名は《エディ・クロサワ》、
 彼の実子が作中の《テッド・クロサワ主幹》であります。
 更に彼の機体の残骸の残りを元に制作されたのが、マリアの《アンクレット》=《レスヴァーク》です。
 余談になりますが、二話のラスティとデリンジャーが初めて対するシーンではこの事の複線が張ってあります。忘れられた方はご確認の程を。
 そして彼はクロサワを養子として迎え、既に生まれていたマリアと兄妹として育てますが、彼は一大プロジェクトを阻止した代償として新 企業連合体に命を狙われる結果となり、信頼に足る仲間のレイヴンに二人を預けて失踪しました。
  以後二人の兄妹は、とある場所で成長し、互いに愛し合う仲になりますが、マリアが身ごもった事を機に、次第にクロサワの心には偉大なレ イヴンであった父に対する対抗意識が芽生え、彼を越えるべく暴走を始めます。結局、二人の愛の結晶はこの世の光を見る事無く他界してし まいクロサワも完全に狂気に犯されてしまいました。
 マリアはクロサワが過ちに気付き、元に戻る事を願って耐え続けますが、結局彼を殺す事も出来ず、さりとて裏切る事も出来ない弱い自分の 心を閉ざしてしまいまい。そして、ひたすらに彼と自分の解放者を待ち続ける事となるのです。
 なお、問題の右目は改造手術の際の失敗により失明し、この事が彼女をレベル6相当の性能と実力を持ちながらレベル5に止めた理由です。
 ただ、その瞳は彼女本来のアイ・カラーであるライト・グリーンで、マリアにとっては『本当の自分』の象徴と感じられ、常に偽りの人生を 歩む彼女は誰にも見られてはならない部分だったのです。
 このコラムは、かなり異例の解説となりましたが、4、5話は特殊なシチュエーションで描いており、限られたスペースでは収めきれず多々のご質問等を頂きましたので、これは作者の説明不足と感じ、恥を忍んで追記とさせて頂きました。
 皆さま、僕の作品をここまで深く読んで下さって本当にありがとうございます。
 外伝の方で一部を表していますので、そちらもどうかお楽しみ下さればこの上なく幸いです。


○ ブースターについて

 ACに装備されているブースターは当然、その瞬発力、加速力から小型ながら強力な物が搭載されています。
 ジェット・エンジンは軽く説明しますと、タービンと呼ばれる小さな多数の羽車の回転力で、エンジン本体へと送り込まれた空気を圧縮して そこに燃料を噴きつけて燃焼させる事で噴射する排気ガスが推力に変わるエンジンです。
 ACの物は更に、この時代の他の兵器も使用しているターボジェットを搭載しています。
 ターボジェットも簡単に説明しますと、排気ガス(推進する力)は機体を後方へと押しやると同時にタービンを回します。
 このタービンが同じ軸で連結された圧縮機も回転させて、空気をエンジンへと圧縮して送る機構です。
 至極簡単に原理を言えば、扇風機が二台連結していて片方の回転力する力を、もう一台の電源のない扇風機に伝えてやる方式で羽を動かしてやり、この機構で電源のない扇風機を作動させてエンジンにより多くの空気を送ってやるシステムとなります。
 「排気ガスの噴流を吸気する力に利用してエンジンを効率よく動かす機構」と理解して頂ければ、ほぼ正解かと存じます。
 ただしターボは排気ガスでタービンを回すのですが一定のエンジン回転域に達しないと(排気ガスの出る量と力が足りないと)吸気する力を充 分には発揮する事が出来ません。航空機は常に高速で飛行していますので問題になる事は少ないのですが、ACは静止している状態からでも 即、ダッシュしなければならない事と、それほど高速に飛行する訳でない事からターボジェットエンジンの吸気側に超小型・高性能コンプ レッサーを装備して大量の空気を送らなければならなくなっています。航空機も始動の際には電源車から電力を供給して貰ったりします。
 ACはターボジェットエンジンを飛行している航空機に近い形で吸気させ、無理やりに即座に推力を得ようとしている訳です。
 このコンプレッサー(空気圧縮噴射器機)を作動させる為には膨大な電力を消費します。
 更に飛行は空力学上、空を飛ぶのに全く適さない形状のACの全身の姿勢制御と相まって猛烈に電気を食います。
 それらによりACは飛行やブーストダッシュ時は電力を大幅に消費している訳です。
 なお、ブースターとはエンジン、コンプレッサーとノズルを含むセットで、主にコンプレッサーの電力消費が消費EGや効率に関わってきます。更にACはアフターバーナーと呼ばれる機構も有しております。ただこれは俗称であり通常の航空機の同名の機構とは違います。
 ACのブースターの排気口は四つある物が多く見られますが、それらは緊急加速用のロケットモーターです。 このロケットは、液体を使用した推進剤を燃焼させる事によって瞬時に推力を得るシステムです。
 推進剤の関係から回数の制限こそあるものの、ロケットモーターは瞬間的にジェットエンジンと併用して加速する事が可能です。
 これを通称でレイヴン達はアフターバーナーと呼んでいます。
 液体ロケットは戦闘中可能な限りで長く使える様に、最適なタイミングで発火、停止をオートで行います。 ジェット、ロケット共に燃料は科学的に精製された取り扱いに優れ、更に毒性の低い物で水素をベースにした物であるのが一般的ですが、これ らは一部企業の独占販売により、その成分は詳しく一般には不明で容易に加工や混合したりは出来ません。 当然ながら、これらに引火すればACは爆発を起こしてしまいます。
 なお、このコンプレッサーの噴流だけでも基数と出力が充分で軽量であれば、実はACはごく短時間なら飛ぶ事も可能です。
 近い機構にホバータンクや四脚というカテゴリーの脚部もありますが、効率面でブースターを使用するよりも遥かに悪い為にACはジェットエンジ ンを止む無く搭載して飛行しているのが現状です。
 なおノズルが一つしかない様に見える機種もありますが、本作品ではそれにも内部で二つのノズ ルが存在している設定です。
 コアによりブースターが一つの物と二つの物がありエンジンも単発と双発が存在します。
 しかし、どちらもネスト側の驚異的な調整により全く同じ推力が得られています。 ブースターは単発、双発どちら用の物も購入の際にはセットで付いているのが普通です。
 パーツ・ブローカーなど下取り業者が存在しますが、大方のレイヴンは将来的にミッションに合わせたコアの変更等を余儀なくされる現状 に直面する為、売却はしないのが通例です。またバラ売りは連立都市ネストでは禁止事項となっています。
 ブースターの取り付け部であるマウントはかなり自由に動き、全体的に現用の機器ではベクタードノズルに近い構造です。
 ベクタードノズルは推力(ブーストの力)の方向を変えてやれるノズルの事です。
 ACの場合、進んだマテリアル技術がある為にブースト機構 自体をある程度稼動させる事でも推力の偏向を行っています。
 説明が長くなりましたが、総論としてACのジェットエンジンは常時、可能な限り燃費を稼ぐ低回点作動をしており、スロットルを開いた瞬間 に搭載された高圧コンプレッサーが作動する事で急激なダッシュ力を得ている訳です。
 ただ、ブレード使用の際だけは高圧コンプレッサーは最低限しか作動しません。
 ACは更に推進剤や冷却剤、燃料などを補給しなければ戦闘モードを維持出来ずに停まってしまいます。
 一撃で破壊される事もあれば、マシントラブルを起こしたりもします。
 特に本作品のACは決して無限に動き、強い火力で敵をなぎ倒し、軽々と空を舞う兵器では決してありません。
 重く、全体的に見ると不出来でありながらも、この時代においてのみ最強となりえる兵器なのです。


○パーツの種類について

 隠しパーツ以外の全てのパーツは離れた街でも流通している事からレイヴンズ・ネスト公認を受けた各都市でのライセンス生産と本作品 では考えています。故に性能に影響の無い若干の内部、外部の形状差異やマイナー・チェンジ・バージョンも存在する事になっています。
 ゲーム上や、その他でプレイヤーが使用出来なかった希少兵器なども生産、流通しています。
 個人でのACに性能面に関わるチューニングは行っているでしょうが、これらはかなり制約されており実際問題としてネスト認可のパーツを 使用しての調整チューニングを行っても殆ど性能向上は無い事としています。
 また本作品にはオリジナルと外見など著しく違うパーツも登場していますが、これらも上記と同じく連立都市や他都市企業で製作されたマ イナー・チェンジ版や細かい仕様が異なる同一性能の製品であるとお考え下さい。
 ゲームタイトルにより性能が若干変わっているパーツもありますが、それらもこのマイナー・チェンジ・バージョンに含まれており、より性 能の高いとレイヴン間で評判の物は取引の際に値段も高くなっています。
 またパーツの下取りは半値以下になってしまうのが連立都市では普通です。この中古品で駆け出しのレイヴンなどはパーツを充実させる事も 出来ますし、パーツバイヤーやショップ、整備業者は多種、多様なサービスを行っておりレイヴンは店を選ぶ事も出来ます。
 隠しフィーチャーの《ハンド・ウェポン、テクスチャー変え》も生産工場の違いによるマイナー・バージョンの武器に含まれると設定して おります。元より生産の段階で色が違うという設定です。
 レイヴンが使用する武装はネストと企業側の利潤追求が表面化しており、出来うる限り全てのパーツを互角にして戦闘が膠着状態になり易い様にする意図が多分に含まれています。
  尚、これを破った事が発覚した場合、賞金は帳消しになる上に規則を破ったと云う事でネストの暗殺集団から命を狙われる事になりますの で余程特別な理由がない限り武装やパーツが極端にチューンされたACというのを連立都市では見かける事はありません。
 ただし、若干の仕様の変更などについてはレイヴンズ・ネストへの申告で可能になる場合があるとも設定しています。
 それにはレイヴン個人のネストへの貢献度や、献金など申請が通る条件が不確定で明確でもありません。
 違法改造が発覚した場合の処置も最悪は処刑から、罰金の後に認可、却下、警告のみと一様でもありません。
 ただ、非公式傭兵であるレイヴンの特権を奪われる事は地下複合都市では死を意味します。
 例外も少数は居ますが、基本的にレイヴンはネストの規定のみには遵守する姿勢で傭兵生活をおくっています。
 ごくまれに自作のパーツを製作し、それが認可されて流通してしまった程のレイヴンなども居ますが連立都市では、その様なある種の天才 ともいえる者は今のところは居ません。整備に関しては前述致しましたが、この世界では、その職工や企業単位で分かる箇所は当然、補修や整備 を行います。
 特にレイヴンがコアを新規に購入、入手して使用する際には、その製作ロットナンバーを登録する必要があり、このナンバーにより敵、味方共に 識別が容易に出来る様にもなっています。何よりならず者であるレイヴンに対して非公式にせよ認可して武装させる訳ですから、都市側、ネスト 共にレイヴン向けのACには可能な限りでのセーフティー設定を行っています。
    


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