- RESEARCH 6-
考証 6
この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。
これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME
OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為
に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作
しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。
《地下複合都市・テトラ連立都市の生活》
リガ・シティとタブレット・コミューンは地上に備え付けられた集光装置と光ファイバーにより人工の『空』を持ち、更にリガ・シティは
地下水が豊富に湧き出ていて真水ながら『海』と『河』を有している。
この水資源はリガ・インペリアルの所有であり、他の都市へと流れ込む事はなくポンプによる時間単位での販売を他の都市にしており、大
きな財源となっている。他の都市でも地下水は汲み上げられるがリガ・シティ程の量はなく、人々は飲料水は基本的に販売している物を買う。
更に『日照権』も金で買う事を前提としており、日当たりの良い地区の地価は非常に高くなっている。
『雨』を都市は週に一度降らせる事にしており、これにより街路樹を育てたり、空気中の粉塵を抑えたり湿度を地下にもたらす。
気温や湿度は基本的に都市の環境施設がコントロールして市民の要望により四季に近い温度や湿度を作り出す為に『雪』も降る。
これは、いずれ地上に住む事になるかも知れない人類が、気候の変化に僅かでも対応出来る様にとの配慮と、老人達がかつての地上の生活を
懐かしむ為とも言われているが定かでなく、都市が成立する際には既に決まっていた事柄であった。
市民ブロックと準市民ブロックは高い塀やドーム状のアクリルによって仕切られており、治安と環境の良さは天地の違いがある。
とりわけ準市民地区の環境コントロール施設はずさんなことで知られプログラム通りに気候が調節されない事がザラにある。
市民は殆ど学業を終えると、学部と偏差値で企業へと振り分けられる。
ある程度の職業選択の自由はあるものの、学校が企業出資の為に、殆どがリガ・シティの場合、子会社へ強制的に就業させてしまう。
本社であるリガ・インペリアルに入れる者は一握りの超エリートでしかない。唯一の例外としてガードがある物の、基本的にエリートガード養成の連立都市大学防衛部を出た者が就業している。
居住も配属されるブロックで会社の最寄に土地を貸される方式で税金として徴収され、土地を買い上げる事は、ほぼ皆無である。
市民は厳密な管理を受けるが、生活や福祉充実してが安定している為に、疑問や不満を抱える者は非常に少ない。
一応、シティには市長がおり、市民の要望を企業へと伝える役割を果たしている。
タブレット・コミューンはリガ・シティよりも狭く、土地の有効活用を行うべく一部のブロックでは地上側からビルが逆に建っており、この連立都市では異彩を放っている。
都市で主に乗られる車は電気自動車であるが、特別超課税を支払ったガソリンや水素エンジンを使用した乗用車もまれに見られる。
基本的に都市エネルギーは電気でまかなわれており、発電は衛星による太陽光発電をマイクロウェーブ受信する形で行われる。
他にも地熱や火力発電、水力発電と核以外の方法で凡そ思いつく限りの発電をフル稼働で行っている。
食に関しては養殖ブロックを持ち、農作物や家畜の生産を行っている。
人工に作られた塩水の池もあり、そこでは海洋生物の養殖も行われている。
ただ、安価な食品の中にはバイオ・テクノロジーで生成された物もあり、その内容は詳しくは市民に極秘にされている。
中立ブロックであるグレイ・ゾーンは採掘権利を他の都市に与える事と、ACによる見世物試合であるアリーナによって莫大な収益を上げており
リガ・シティと、ほぼ同じ裕福な地区であるが、ここに住む住人は一万人以下であり居住するスペースとして認められてはいない。
採掘権利を仕切るのは『主宰』と呼ばれる謎の人物で、連立都市ネストの幹部の一人とされている。
それに対してアリーナは管理協会があり、厳密な中立を保って運営されている。
グレイ・ゾーンは人工の空も海も持たず、上方に巨大な照明が設置されており閉鎖感を漂わせている。
都市の中央には巨大なアリーナ施設がありモノレール以外で、そこへと至る道路も東西に2つの高速道路があるのみとなっている。
更にバラマス・キングダムにおいては、一般には誰も立ち入る事が出来ない封鎖された土地で、ほぼ自給自足により成り立っているという。
中世さながらの封建制度を有し、時折、レイヴンの中で『騎士』を自称する者が居るが噂の範疇ではこの都市から何らかの使命を帯びて外界へと送ら
れた者という噂もある。真偽の程はともかくとして『皇帝』と呼ばれる独裁者がおり、それに仕える者達で構成されているらしい事は事実である。
何らかの実験的な都市であるという事も囁かれているが、交流が極端にない為に一般人はおろかレイヴンすら概要を知る事はない。
地上には更に空港と、衛星を打ち上げる施設があるが連立都市が他の惑星などへの探索や開拓を行った記録は一切無い。
貨幣であるコームだが本作品では1コーム(※厳密には1連立コーム。連立都市はアイザックとは反目している)は約100円程度の感覚で劇中では使用
されている。連立都市においてはACコアなど高級外国車程度の価値でしかなく、ミサイルも破格に安いが一般人が購入する事は不可能であり、これは
あくまでレイヴンズ・ネストに登録されたレイヴン向けの価格である。
生活、整備、人件費はゲームでは引かれないが連立都市レイヴンは一般的に常にコームを派手に消費していつ終わるとも知れない人生を謳歌している。
また連立都市にはAC売買に携わるバイヤーやショップの他に、エンブレムをデザインする職人やカラーリングを施す職人も居る。
高名な者になるとレイヴン顔負けの高収入を得て暮らしており、更に一流の整備士になるとランカー並の生活を営んでいる。
《大破壊》
カタストロフとも呼ばれる世界規模の大戦争による災厄を指す。
核を上回る大規模破壊兵器と、様々な先進技術がぶつかり合い地上の殆どの都市を壊滅させた。
連立都市は当時、かなり小規模な地下シェルター都市であり、そこで生き延びた人々が独自に自治を始めて都市にまで発展させた経緯がある。
この際に何らかの組織が世界規模で先進技術の独占や消去が活発に行い、特に兵器関連に至っては何世紀かの技術の後退すら見せる。
後年、ある説によれば大破壊を勃発、拡大させて、こうなる事を計画した組織があったというが資料も消失しており定かではない。
特に大破壊以前のテクノロジーは『失われた技術』と呼ばれている。意図的に隠蔽や消去されたせいか、当時の先進技術が軍事利用目的が主だったのかは
定かでもないが、発見される技術は兵器関連の物が大多数を占める。
《市民権》
準市民が市民となる為には特例を行わなくてはならない。
一般には100万コームを都市へ献金すれば市民の権利を得られる。
ごく稀にだが、都市に大きな貢献を果たした準市民は権利を得る事がある。
市民もまた、その上のランクである名誉市民に憧れるものの、そうなれる者はほぼ皆無である。
なおレイヴンが献金以外の特例により市民となるケースは過去に数例あるのみで、全く不可能と言ってよいレベルの話である。
市民権利は逆に企業に大損害を与えた場合、剥奪される事もある。
準市民にも課税の義務があり、一応の福祉などの見返りを受ける事は可能なものの、その権利は最低限でしかない。
故に彼らは常に企業に対し不満を抱いている。
管理が厳しくない代わりに市民よりも自由である為に、ごくごく少数ではあるものの市民権利を捨てる者も居るという。
そして、その殆どが、この世界で生きるも死ぬも最も自由な生業であるレイヴンとなっているという。
○APについて
レイヴンが乗り込むACにはAP(アーマー・ポイント)と呼ばれる数値が与えられています。
これは端的に分かりやすくACの耐久値を示しており、主に内部器機の状態を指します。
この値がゼロになった場合、ACは戦闘モードを停止し武装や戦闘に関する電力供給の優先度を下げます。
しかる後に、即座に戦場からの撤退モードへと切り替わるのです。
つまりAPがゼロの場合でも撃破、死亡した訳では決してありません。
どれだけAPがあろうとコクピットのレイヴンが衝撃により死亡したりするケースも、もちろん有り得ます。
APは専門の操縦教育を受けずにレイヴンがACを操縦出来るネスト側の措置でもあります。
これらはFCSやレーダーの表示方法にもよく現れています。
因みにゲームの様に本作品ではマシンガン何発で特定の機体が沈むといった厳密な設定は一切行っておりません。
ただコアはかなり堅牢に製作されており、実際の兵器でも翼に高射砲を突き刺したまま帰還した戦闘機や、戦車の例では二百発以上の対戦車
銃弾を浴び二十発以上の戦車砲を食らった上に地雷三個を踏んでも走っていた物もありますので、こういったケースもACでは有り得ます。
逆にコクピット内部に達する直撃弾では一撃でAC、レイヴン共に撃破されもします。
APは機体の信頼性を端的に現すゲージでしかありません。
競技であるアリーナは、この最も分かりやすいAP利用して、この数値を奪い合う事で試合の勝敗を決定します。
○E兵器の発射の制限などについて
ACが持つE兵器には発射の制限が設けられています。
これらはネストの意図によるものでレイヴンが乗り込むACにのみ制限が課せられています。
機種により様々ですが、透過フィルター、電気系統、冷却機構の一部が使い捨てになってしまっています。
デイスキャナーの世界では主に冷却材が消費される事でリミッター化を図られた物が多く、追加弾装備であるМ118−ТDには冷却材が入って
いる事が多いです。フィルター制限の武装にはフィルター摩滅を防ぐ薬剤が、また電気系統の場合はブレーカーやヒューズに似た装置が入ってい
ます。なお、実体弾に関してもマガジンや弾体が入っておりネストが定める重量ポイントは同じですが実際の重量はそれぞれ違います。
ちなみに使い切った武装を連立都市のレイヴンは余程の事情がない限り、出費がかさむ為に捨てたりもしません。
○レイヴンになるには
必要な物は一切ありません。強いて言うならば極端に死ぬ事を恐れず、人を殺す事も辞さない覚悟が要るくらいです。
連立都市では既に他でACを所持していた場合、各都市のレイヴン管理局に出向く事でまずコアのロットナンバー登録を行います。
この際に他都市から来た者であれば、連立での許可がおりていないパーツがあった場合、違法とされ換装されてしまいます。
その後、試験と呼ばれる実際に実弾でのACを使用した戦闘を行います。
当然ながら管理局へ持ち込んだACで試験には臨む事になります。
この試験に出るターゲットは、まちまちですが無人MТや無人の戦闘マシンです。場合によっては実戦に送り出したりもします。
これによりレイヴンの質と人口をコントロールして居ます。
目標を撃破して生き残る事が出来れば試験は終了となり、レイヴンとして認められます。
自前のACを持ち込んで試験に落ちてなおかつ生存した場合、そのACは一時差し押さえられますが売却は可能です。
ACを持たない者で操作知識もない者は、先ずシュミレーターにより数時間ほどでACの操作方法を学びます。
シュミレーターでもまず試験は行われてレイヴンの資質を試されます。
この試験で合格した者は次にACを持つ者と同じく実機を使用しての試験を受ける事になります。
簡単に見えますが、当然ながら試験で命を落とす事も有り得ますし、懇切丁寧な措置や救助も行われはしません。
ここでレイヴンは使い捨ての傭兵である事を先ず肝に銘じなければならないのです。
他には出資してくれるスポンサーや、先輩や師レイヴンを探したりしてレイヴンなる者も若干ですが居ます。
ガードからレイヴンとなったり、非合法でACやMТに登場した経験者はやはり有利です。
晴れて試験に合格した者はレイヴンとなりますが、ミッションを受けて遂行する為の装備が必要となります。
すなわちナーヴ、専用のIDカード、ガレージ、ACです。
これらはネストに申請する事により与えられるカード以外はレンタルが可能です。
ナーヴは持たない者はほとんどいませんし、ガレージも斡旋してくれます。問題はACです。
ネストは極めて成績の優秀な者にはネストはACを無償で与えます。
ただ、その様なレイヴンはごく稀ですし一般的にはACを買う事の出来ない者はレンタルACを利用します。
ネストは試験に使用した機体を払い下げる事もありますし、中古でパーツを扱うショップも連立都市には多くあります。
ただしレンタルのみはネストでしか行えません。明日をも知れぬレイヴンに高いACを貸す者は居ないからです。
またネストによりACのレンタル業務は禁止されています。
借りたACの金額は報酬より自動で差し引かれます。だいたいが報酬の三割〜五割が普通です。
またネストはAC貸与に関しては寛容で、レンタルした機体の額と利息分をレイヴンが払えばACの所有権は譲渡されます。
その後であればレイヴンはパーツを売る事も可能になる訳です。
いわゆる『初期機体』の新規購入額は連立都市では約20万コームです。
レンタル機体の価値は大抵が程度が悪く質にもよりますが約半額で、この額を半年〜二年で新人レイヴンは返済しています。
たまにですがレンタルを嫌う者はACに乗る前にMТを使用して金を稼ぐ者もいます。
また試験に落ちた者は約三ヶ月は再試験が受けられない為にこうしたMТ傭兵となる者もまれに居ます。
これら傭兵の支援もネストは行っていますが、全く管理はせずナーヴ上に求人などを載せるのみです。
これ以外は何のサービスもなく、ネストは暗黙にレイヴンになる事を推奨しています。
当然、MТなどのレンタルも行いません。
ACさえ操れれば簡単にレイヴンにはなれますが、連立都市ではデメリットも多く存在します。
市民権利を有していない場合(レイヴンのIDカードしか持たない場合)は信用取引などは不可になり、ネストから以外に保険
などに加入したりローンを組んだりも全く出来なくなります。
黒いカードを出した時点で、小売業などでは嫌悪されて受け付けて貰えないケースもありますし、あらゆる公共施設に立ち入
る事も難しくなります。住居も借りる事が困難ですし、一部企業は取引する為のアクセスすらしてくれません。
企業法廷での立証権利もありませんので、証人にもなれません。選挙や政治活動も不可となります。
『レイヴンという職種、及び従事する人間はないものとする』が都市運営側の公的な見解です。
何よりもまともな市民としては見られません。人殺しを生業とするからです。
それでもレイヴンを志す者が居なくなる事はありません。
連立都市では三日に約一名の割合でレイヴンが誕生しています。
しかしながら連立都市全体で約五百名という数字に大きな変動はありません。
これは多くのレイヴンが日夜、凌ぎを削って戦っている結果の数字です。