- RESEARCH 9-
考証 9

 この物語《クライム・オブ・デイスキャナー》は言わずと知れた、
原作《アーマード・コア》をベースとした非公式アフターストーリーです。

 これらの設定は二次創作作品ARMORED-CORE『CRIME OF DAY SCANNER 』におけるものであります。
作品描写の為に多少、オリジナルのAC設定とは一部は逸脱したものである事をご理解くださいませ。
逆に可能な限りACのゲーム内の表現にも合わせる方向で努力しており、実際の物とは違う機器名称の変更や事象の曲解も行っております。
これらの設定が現用兵器や機器、他のロボット作品にも当てはまらないフィクションでもあります。
本考証解説は特に機構などの説明において専門用語のみの記載を避け、可能な限りで『分かりやすく』を主眼としています。
それ故に長い説明や、かなり強引な例えなども行っている事もお分かり頂きたく存じます。
尚、「アーマード・コア マスターオブアリーナ公式ガイドブック」より後年発行の書籍の設定は参考程度に留め、前発行物との相違や矛盾点がある為 に統合が困難で、完全な遵守の方向性には無い事も、どうかご理解賜りたく存じます。
一応、意識はしていますがARMORED-CORE2とは直結する様にも、この作品をリリースした時期等の理由により残念ながら設定はしておりません。
また個人の好みも多分に含んではおりますが、これら設定のコンセプトは「AC世界の解像度を上げる」「この世界観を楽しむ」といった方向で誠意製作 しております。
世界、機構の設定等、オリジナルであるACを損なう目的の物では決してありません。
世界設定などは一部、都市設定募集の企画投稿にお寄せ下さった読者様方の設定も、当作品なりに解釈して使用させて頂いています。
それらの全てをご留意願って長い前置きとなりましたが、本作品をこれからもお楽しみ下されば何よりも幸いと存じます。



《タブレット・コミューン》

 連立都市の一シティ。市民人口は約二十五万人。
 常任理事企業と呼ばれる数社と、数十社の暫定理事企業により共同管理されている共和制度都市。
 都市内の企業間抗争は世界でも有数の激しさを見せる。
 理事選定は株価により決定され、数少ない企業平等を実践している都市とも言える。
 リガ・シティやグレイ・ゾーンに比較するとレイヴンは少なく企業と長期契約を結んだ者が滞在している場合が殆どである。
 混沌とした力関係の為に、準市民と市民の垣根が他の地区よりも低い。
 私設のガードの縄張り争いが激しく衝突がままあり社会問題になっている。


《チンク・エンシェント》

 タブレット・コミューン巨大企業で、常任理事企業の一つ。
 元々はチップなどの精密機械を製作していた弱小企業であったが、ナノ・マシン分野に事業拡張した事により飛躍的に業績を上げ現在に到る。
 手段を選ばぬ業績向上手段はリガ・インペリアル以上の非情さを有し、テロへの援助も行うと云う。
 長期契約を結んだレイヴンは十名以上とされ、その実力も生え抜きと伝えられている。
 私設ガードも充分に訓練が行き届いており、連立都市1、2を争う精鋭戦闘集団である。


《ゾウラ・ステーション》

 連立都市と、他都市の勢力境界線端に位置する辺境の最終補給所であり、ここより約十キロ先に両都市間共通の勢力圏外地帯を臨む。
 気候は苛烈の一言で夏にあたる半年間は極めて降水量も少なく気温は体温を越える日が続く。
 反対に冬にあたる半年間は零下を割る日が続き、一面が雪に閉ざされる異常気象地でもある。
 日中、日没の気温差も激しいが、唯一の救いとして大破壊による汚染度は極めて低く、人間が生活可能な環境にある点で品種改良した作物も 若干であるが採取出来る。ここを警備するガードはおらず守備は長期契約された少数のレイヴンによって為されている。
 また反対側に位置するムウン・ステーションには他都市のレイヴンが同じ様に常時赴任している。


《メンテナンス・リグ》

 A・Cに対抗すべく開発された《リグ》の新しい形でありライバルであるA・Cとの《共存》を目指して開発された移動兵器。
 A・C用のジェネレイターを、そのままスケール・アップした強力な物を数機搭載しており、このジェネレイターによって浮遊用のファン及び 移動機構の無限機動を駆動させている。
 装甲は極めて薄く作られており戦闘には向かないがA・Cと同様の機構での多重装甲を有しており一応、最低限の防御力は与えられている。
 《戦闘リグ》と比較して武装などの装備は殆ど無い代わりに通常、後部スペースにA・Cの搭載部分と乗組員の私室を有する。
 装甲の修復や簡単な修理ならばリグ内での作業が可能でストックしてあれば武装の変換も短時間で確実に行える利点も持つ。
 個人所有しているレイヴンは極めて希であり、余程裕福な者しか維持が不可能である。
 主に単独で任務をこなすレイヴン達にとって本機は垂涎の的であり、これを所持したいと願う者が多い。
 巨大な物になるとA・Cを二機以上搭載するタイプの物もあると言う。
 これらは企業が製作したAC関連兵器であり、ネスト側の技術提供はされていない。


《デザートマンタ》

 元々はA・C用にラインナップのあった移動型の爆雷であるが、搭載数の限界や作動の確実性、複雑な機構によるコスト増大により廃止された 幻の武装。
 エイに酷似した本体中央に浮上用のファンを有し、後部のロケット・モーターにより前進する。
 下部には接地用のスキッドが三本取り付けられており地表を滑る様に滑空して目標へと向かう。
 今回作中登場の型は、これの進化した姿でサイズがA・Cクラスになっており搭載炸薬の飛躍的な増大とロックオン逆探知システムを有し非常 に手強い存在と化している。
※この兵器はオフィシャル設定集の準備項にイラストが存在し当ページの完全オリジナルでは無い事を追記致します。


《ランダース》

 故あって汚染された地上に暮らす人々の名称。
 彼らは常に暮らし良い地帯を求め流離続けている。
 主義主張は様々だが一応に皆、地下都市での生活及び生活者を忌み嫌う傾向にある。
 統一貨幣である《コーム》は彼らには全く意味を持たず物々交換が流通規則なのも特徴で、数十人から数百人単位での部族的集団で行動する 事が多い。
 本作登場のゾウラ・ステーションは汚染度が低く、物流も盛んな事から彼らのバザールがあり、定住して商いをする者達も数多く存在する。
 だが、殆どのランダースは未開の土地や人里離れた地に住んでおり、こういったケースは非常に希であり、レイヴンですら彼らと接点を持つ 事自体が珍しいと言える。
 彼らには過酷な生活環境からくる共存共栄の精神が強くあり、非常に人間味は豊かな者が多い。
 地下都市に住む者を忌み嫌う彼らは《アンダーズ》と呼んで自分達と差別化している閉鎖的な面も合わせ持っている。



◎レーザー兵器について

○レーザーとは

 この考察を解り良い物とする為、まずはレーザーとは何かを綴ろうと思います。
 既にご承知の方は読み飛ばして頂いても結構ですが、レーザーを簡単に説明致しますと《光の束》と言う事になります。
 僕達が普段目で見ている光というのは色々な種類の光線が混ざって拡散・反射しあってエネルギーとして非常に弱い物になっています。
 これを束ねて強いエネルギーにして的にぶつけようと言うのがレーザーな訳です。
 最も簡単に例を挙げれば《虫眼鏡で太陽の光を束ねて黒い紙を焼く》アレと言う事になります。
 レーザーは最終的に熱エネルギーで相手を焼き切る武器と考えて頂ければ、ほぼ正解だと思います。


○発射のしくみ

 では次は機械的に一体どの様にしてレーザーを放つかを考察してみたいと思います。
 まずレーザー《熱を持った光の束》を作るのには様々な方法がありますが、ここでは最も簡単な固体《主にルビー》を使ったレーザーの作 り方を大まかに説明致します。
 ルビーにランプ《キセノンランプ》の光を当てるとルビーの中に含まれた《クロム》と言う成分から比較的束ねられた電磁波《光は電磁波の 一種です》が生まれます。これを前後に挟んだ特殊な鏡によって光を何度も往復させ、さらに光を束ねて行きます。
 そして先程の反射鏡の特殊なトコロ《片側の鏡だけは一定の束になった光だけを通過させる》によって目出度くレーザーは発射されると言う ワケです。
 つまりは光の束を収束させて一点に集中させた熱線兵器なのだと言う事をご理解下されば大きな間違いでは無いでしょう。


○ACにおけるレーザー兵器

 ようやく本題に入るのですが、前述のルビーなどによるレーザーは最早時代遅れも甚だしく兵器として使用に耐えうるレベルの破壊力を 得る事は難しく、ACの一部装備《照準用の光軸、エース・ポイント》等にしか使用はされていないでしょう。
 本作品のACは《自由電子レーザー》を用いています。
 この原理は長く専門用語を多用する事になるので簡単には記載しませんが電磁石によって加速した電子ビームにレーザーを入射して(ビームとレ ーザーは根本的に異なるエネルギーの束です)出力を大きくして、凄まじく強力な永久磁石(これの開発がレーザーを小型化出来た大きな化学の進 歩です)で束ねて発射する極めて高い収束率と破壊力を得られる機構です。
 なお化学レーザーという化学反応による電源を極端に必要としないレーザーもありますが、この技術は失われACには装備されてはいません。
 対AC用レーザーは、ACが装備するには《過ぎた持ち物》でありレーザー兵器が本来するべき連続照射は出来ません。
 現在はACの装甲を焼き切って内部にダメージを与える事が可能なギリギリの時間しか照射は不可能となっています。
 原因としては二つ《電力の不足》と《照準の難しさ》が挙げられ、前者を実現させるにはAC世界のテクノロジーでは《ムラクモの最終兵器》 などの巨大な施設が必要となり、後者も大気中の極めて不安定な屈折や反射の要素の中でロストテクノロジーを用いてもなおACがそれらを 計算して敵への命中を実現出来るのはFCSの《サイト》の中だけであると言う事になります。
 ただし、一部の経験や訓練を積んで、なおかつ優れた性能の強化人間はサイトの外でも自力でレーザーなどのエネルギー弾の誘導計算を行い、 更には武装のリロード・タイムを変化させる能力をフルに使って、ある程度の連続照射ならば可能にしてしまいます。
 ゲーム的に言えば5〜10発分のダメージを一瞬で敵機に与える…とお考え下されば近いかと思います。
 ただし武装の耐久力を無視した攻撃方法になりますので、最悪の場合、武器の損失、暴発や自機へのダメージにも繋がります。
 ちなみにMТが使用する《ラインビーム》もレーザーの一種で、こちらはかなりの低出力の上に連発式ですが、これらは主にミサイル防御用の物 や対装甲車両用の物を対ACに転用しているものとしています。発電と収束の限界の関係から断続的に光の束を射出しますが、一箇所に浴び続ける 事や複数の機から照射を行われるとACの装甲をもってしても脅威と成り得ます。
 ACを始めとする、この時代の戦闘器機が何故この様な半端な使用方法までしてレーザーを使っているかの理由としては《弾薬資源の枯渇へのセーブ》 と《強力レーザー小型化技術閉鎖によるネストの勢力調整の容易化》が考えられます。
 更にレーザー兵器等のエネルギー兵器の使用が優遇され、企業、ネスト共に、ある程度の面倒を見てくれる為に弾薬費が極めて安価なのです。
 ちなみに一部のレイヴンはE兵器購入の際に、色々なパーツショップを探して購入します。中には半年間の保守管理、保障制度などをサービス しているショップがあったり一年間、消耗品無料などのショップもありますので、連立都市でE兵器を購入される際にはナーヴによるショップ の検索をお奨めいたします。


○個別考察

 オフィシャルで《レーザー》とはっきり表記のあるのはレーザー・ブレードを除いて右手武器のWG−XFwPPk・WG−1−KARASA WA・WG−XW11の三種類です。
 バック・ウェポンではWC−01QL・WC−IR24・WX−C/4の同じく三種。
 そして特殊腕のAW−XC5500の合計で七種類と言う事になります。
 これらを大きく二つに分けると《爆裂する物》と《爆裂しない物》になります。
 まず着弾後に爆裂しない物、右手武器の三種については今までに述べた極めて特殊な用法で使用されておると言う事で説明は省略いたします。
 問題は《爆裂する》方のカテゴリーに入るバック・ウェポンと特殊腕の四種類の兵器です。
 この爆裂は当作品ではプラズマであると考えております。プラズマについては以降の《プラズマ兵器について》でご説明致しますが極めて温度 の高いレーザーが空間を走る時に周囲の物質(主に空気)がプラズマになっていて、それが爆裂しているかに見えると言う解釈です。
 現在、我々の世界でも、この急激な加熱の衝撃によるミサイル破壊技術は研究されています。
 上記の四種のレーザー兵器は総じて《キャノン》に分類される兵器群であり、それだけ照射の方式が通常とは異なり、このプラズマ爆裂や照射 による熱的破壊と同時に発生した強烈な電磁波をぶつけてACのエレクトロニクス関係を損壊させる事が主な目的であるとも考えております。
 これにより多少の壁などを貫通したり爆炎でもACにダメージが及ぶ事になると本作品では解釈しています。
 もちろん場合によっては障害物をレーザーは貫通してしまう力も有しています。
 爆風の表現もまた、ACの装甲へとヒットした際に、装甲に内封された物質が急激に蒸発やプラズマ化する現象となっています。
 また装甲内部の充填材が爆裂して光を屈折させる事で威力を減衰する効果が一部ACの装甲には備わっています。
 レーザーは強力な物であれば目標物内部に含まれる僅かな水分を急激に膨張させて凄まじい爆発を引き起こすのです。
 更に、まれにですが装甲を貫通して燃料に引火して爆発を起こすケースがある事も追記致します。
 本来は光の速さと同じ速度である筈のレーザーをACが避けられる点については、前述の通りサイトを外れるとACは全く照射をコントロー ル出来ませんので、周辺や機体保持の為、取りあえずレーザーを直進させる機能が働く事を先ず記します。
 更にゲーム中に《見える》光るラインはFCSが照射事前に察知した同軸レーザーによる軌跡であり、攻撃力を持ったレーザーを敵が照射させる事前情報であると考えています。
 つまり、レーザー兵器の本当の照射時期はラインが命中したと全く同時であると言う事です。
 更に高出力レーザーは空気をイオン化させて光る為に軌跡が見える事があります。
 ただし弱点として大雨や、大量の粉塵などでACの持つレーザー兵器は減衰してしまい、更にはFCSの目標への誘導が不可能にもなってしまう 事があります。射程も一定の破壊力を得る事が出来るのはプラズマ兵器以外のE兵器に比べて短い部類に入ってしまいます。
 更に水中では全てのE兵器は撃つ事が出来ません。(アリーナなどで四脚など姿勢が低くなるACが海のステージで特殊腕から発射が出来ない様に) 特殊なガラスの様な《チャフ》と呼ばれるレーザーの威力を減衰させる妨害兵器も連立都市では見られます。
 総論としてA・Cは現代で考えられているレーザー兵器の運用とは異なる特殊な使用をしていると言う事でありポジションとしては『充分には兵 器として扱えないけれど、現状は半端な使い方をしていても強力であり充分に通用する』といった感じになります。
 当然ながらブレードにも、このレーザーは使用されており、この世界では最強の破壊力を持つ兵器カテゴリーであります。
 尚、本作品のヴィクセン・タイプであるオー・ド・シェルは通常のプラズマキャノンとは違い『拡散レーザー』という武器を装備していますが、 この武器は上記のレーザーキャノンの発展型でありレーザーによる熱的なピンポイント破壊ではなく、敵ACとの空間にある物質をプラズマ化す る事により衝撃波でACへとダメージを与える兵器でレーザー・グレネードとも言える装備です。
 この様に本作品のACが持つレーザー兵器は様々に特化した進化を続けている事を追記して今回の考察を終わろうと思います。


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