「黒い衝撃 〜混乱〜」

 男は、次の獲物を探して街を徘徊していた・・・・だが、それは自分意志ではなかった。
 彼の意識は残っているようで、その男はある女のアパートに入った。

「だれ?なんの用?」

 その女は、この男が行き付けだった飲み屋のホステスだった。

「あんた、いったいなにしたのよ!この辺のヤクザがアナタを血眼で捜しているわよ!」
「・・・・・・・・・・」男は黙っている。
「・・・・・まさか、あの子を・・・なんてバカな事を!あの子はこの辺のボスのお気に入りの子だったのよ!次のボスはあの子だっていうじゃない!まさか、そんなこと・・・」

 そう、この男はまだ若かったチンピラを刺したのだ。
 そのチンピラは、この男を兄貴と言って慕っていた、だが、

「あいつは、俺を・・・・俺を生贄にしようとした。」
「・・・・??」女はいぶかしげに彼を見た。

「あのガキ、売り物のヤクをちょろまかしやがったんだ。それがばれて、みんな俺のせいにしようとしたんだ!」
「そんな、だったらそう言えばいいじゃない。」
「そんなことをしても、あのオヤジがあのガキと同じ事をするだろうさ。結局、うまく丸め込むためには誰かの死体、そう、生贄が必要なんだ!!」
「だから殺したの?」
「そうさ、俺が生きるために、あいつらはケジメをつけないと気がすまないやつらなんだ。」

 今度は女が黙る番だった。

「ダカラ殺してやった。俺が生き残るために・・・オレハ悪クナイ!!」
「何言ってるのよ!!相手は子供よ!」
「ウルサイ!貴様も・・・貴様も死にたいか!!」

 すると男は、刃渡りが30センチもあるナイフを取り出した。

「ひっ!!」

女が後ずさる。だが、男は、すぐに壁際に追い詰めた。

「お願い、許して・・・・」もう、女は、歯の根もつかないくらい怯えていた。

(クックック・・・ソウダ、ソノ表情ダ)

 彼の中の黒い生き物が狂喜に震えた。
 男はナイフを振り上げた。そして、女の服を切り裂いた。

「きゃあ!!なにを!?」
「ウルサイ!ダマレ!」

男は女を押さえつけ、無理やり犯した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

事の後、突然男は苦しみはじめた。

「あああ!!俺は、俺は、なんてことを!」彼は狼狽し始めた。
「どうしたの!ねえ、いったいどうしたのよ!」女のほうは先ほどまでの彼の行動と
今の状況がまったくつかめない。

彼の中の黒い獣が囁きかける。

(オマエハ、オマエノオモイドウリニ行動シタノダ)

「そんな、じゃあ、俺は・・・」

(今ノガオマエノ本性サ!)

「違う!!違うぅ!!」

(オマエハ悪クナイ。コレカラモ、思ッタトウリニ行動スレバイイ。気ニ入ラナイ奴ハ殺セバイイ。ソレガオマエノ、本性ナノダカラ)

「俺は、オレは、俺?オレ?俺は一体??」
「ねえ!どうしたのよ!ねえったら!」
「うああああああ!!」男は半狂乱になっていた。

 そして、右手を横殴りに振った。その手には先ほどのナイフが握られていた
 女のほうは、何が起こったのか解からなかったようだ。
 しかし、次の瞬間。ひゅうーという筒から空気の抜けるような音にも似た声を発した後、女の首に、赤い線が真一文字に引かれ、そして、真っ赤な血が噴き出した。
 その女は、がくりと崩れ落ち、しばらくの間痙攣していたが、そのうちに動かなくなってしまった。
 彼の胸からも血が流れていた。下手に動いたせいで傷口が開いたようだ。

「・・・・俺の血はまだ、赤いな。一応は・・・・・」

 流れ出る血液は、彼がまだニンゲンである事を証明するように止めど無く流れるのであった。
 そして彼は、また再び何処かへと去っていった。
 
 彼と黒い生き物の凶行はまだ続く・・・・・・


黒い衝撃第二弾です。
これから彼はどうなるのか、彼の中に巣くう黒いモノとはなんなのか、
これからの展開が気になります。

平和な日常を生きる私達の中にも、
「衝撃」は存在している……
そんな気分になります……


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