彼は、走っていた。
「生きるためなんだ、生きるためなんだよ!」
そう言って彼は走りつづける。手で胸を押さえていた。その手のは、赤く染まっていた。
「そう・・・生きるためだったんだよ!仕方なかったんだよ!!」
荒い息づかいで彼は叫ぶ。
生きも絶え絶えに、ねぐらにしているアパートに転がり込むと。彼はひとりごちた。
「俺は悪くない、俺は悪くない・・・・」
シャツがどんどん紅くなっていく。それに気づいてないのか、彼の独り言は続く。
「そうさ、俺は生きるためにやったんだ。なのに!あのガキ、俺を・・・!」
すると、彼はもう一人の誰かを感じた。
「ソウダ、オマエハ悪クハナイ奴ガ悪イノダ、ダカラ裁キヲウケタ!!」
「へへ・へ・・・そうだよな、奴が悪いのさ。へへへ・・」
「サア、次ハダレダ?クックックック・・・」
彼の中の黒い物がどんどん膨らんで行ゆく・・・・
彼は立ちあがった、次の獲物を探すために・・・
「クックックック・・・サア、次ハ誰ダ?」
もう彼はどこにも居ない。
赤い液体が止めど無くその男だった者の胸から吹き出ていた。
彼、いや、この者はどこへ行くのだろう・・・・・