_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 第一幕 一章 一話 ファーストミッション _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 『…………………  ここは…どこ…………?  なぜ……ここにいるの……?  だれか……  わたしを…………  ここ……から……………  だ……し……て…………………』 何百年も前から世界では争いが起こっていた。 自国の拡大を目的として他国に侵略、制圧を繰り返す。 人と人との争い。 ある国は滅ぼされ、またある国は拡大していった。 いつしか、大地に残る国として存在するものは少なくなり、 長い時を経て平穏を取り戻そうとしていた。 だが数年前、発掘屋がある遺跡からたまたま発見した物があった。 人々はそれをウェポンと呼び、神の遺産としてそれを奉った。 ところが人をかたどったそれは、いつしか遺産として崇められる物でなくなった。 人の進化のレベルは神の想像を遥かに凌駕していたのだ。 人々はウェポンの仕様を見抜き、 戦いの道具として使用するようになる。 静かになり始めた大地は、再び争いの場となった。 ズ、ズズ… 石の扉を引き開ける音がする。 開ける時の振動によって天井からホコリが落ちてくる。 「ったくよ、こんな何度も来た所にホントにあるのか?」 一つ目の重い石の扉を開け、体格のいい男が愚痴をこぼす。 パン、パン、と手についたホコリを払い落としながら。 「そう言うな、ロバンス。国からの命令だ。しない訳にはいかないだろう」 後ろの男がなだめるようにして言う。 だが、その顔にはやる気は感じられない。 それはさらに後ろの者も同じである。 彼らは発掘屋であった。 『発掘屋』…すでに争いのための道具として使用されるようになった ウェポンを発掘するために調査を命じられた軍人である。 他の軍人とは違い、発掘のみを行うためそのように呼ばれている。 その発掘屋の一つが今回やってきたのがここ、砂漠に位置するラグーンである。 ラグーンはその昔、神々が何かの儀式を行った場所であると言われている。 知名度はそれなりに高いのだが、何も出てこなかったので 再び発掘を命じられたというわけなのだ。 「一体何回来たのかわかりゃしねぇな。ケインの旦那」 旦那と呼ばれた男は多分発掘屋のリーダーであろう。 色黒で、動きやすい青色のジャケットを着ていて、 少しツバの広い帽子が印象的だ。 しかし全く軍人らしからぬ格好をしている。 それでも腰に銃とナイフがあるが… もともと着る服には制限がない発掘屋だが、 他の男は皆軍人っぽい格好をしている。 しかし、その中には一風変わった格好をしているものもいた。 砂漠であるというのに黒のコートを身にまとい、 腰まで伸びる長い黒髪を背中の辺りでくくりつけ、 縁なし眼鏡をつけて、一番後ろでボケっと前を見ている。 「フェンリース、お前のカンからしてここはどう思う?」 壁に背をつけ、腕を組んだ男が口を開く。 フェンリースと呼ばれた女性は声の主に目だけを向ける。 明らかに面倒くさいようだ。 「ここにはなさそう。…そう言ったら帰るつもりなの?」 そういってまた視線を前に向ける。 「ちぇ、相変わらず冷たい奴だ、ククッ」 そういった小さい出来事を何回もしているうちに全ての扉が開く。 何故何度も発掘したのに扉が閉まっているか不思議に思うだろう。 ウェポンを争いの道具にした人間なのだが、 まだ遺跡を保ちたいという心が存在していた。 そのため発掘屋には開けた扉は必ず閉めるように言われている。 遺跡を壊すのは第一級犯罪である。 砂漠と言えども遺跡は地下にある。 ひんやりとした感触が彼らを包みこむ。 暗い一本道を進んでいくが、今までとは何も変わるものはない。 足音だけが空しいBGMとなっている。 何分かそういった状況が続いていたが、ある大きな部屋にたどり着いた。 当然ここも前に来た事があるが… その部屋はいくつもの道に続いていた。 「今日はどこにする?」 ケインが振り向かずそのまま聞く。 だが答えは返ってこない。 それもそのはず、すでに全ての道に入ったのだから。 長い沈黙が続く。 「今まで気がつかなかったわ」 沈黙を破ったのはなにかを思いついた一言だった。 ケインを除く者皆がフェンリースに注目する。 フェンリースは入ってきた入り口の側にいた。 「この遺跡、なにかと道の数が多いと思ったら、そういうことだったのね」 誰も何を言ってるのかわかってないらしい。 「どう言う事だ?」 先程扉を開けていた男、ロバンスが聞いてみる。 「ここを見たらわかるわ」 そういって入り口の壁、フェンリースの腰辺りを指差す。 例によってケイン以外が指差すところを見に行く。 そしてその場所をじっくり見る。 「何もないぞ」 「あなた達の目は節穴?…ここに血の跡がついてる」 男達はじっくり壁を見つめる。 「あ、ああ、確かに血の跡に見えない事もない。だが、ホントに血か?」 うっすらと赤い跡があるのがなんとか確認できる。 これだけでは血と判断する事はかなり難しいだろう。 「まあ、いいわ。たとえばこれが血であったとするわ。 じゃあ、なんでこんなところに血がついているかわかる?」 「ケガしてたんだろう」 ふぅ、と小さくため息をする。 視線を男達に向ける。 「あなた達どのくらい発掘屋してるの?それでも発掘屋と名乗れるの?」 「だが、血があるって事はケガをしたって事だろう」 「だから私が言いたいのはそう言う事じゃなくて…」 「ただケガをしただけでなぜ壁に血がつくのか…そういいたいんだろう」 後ろから歩み寄ってケインが声をかける。 「ケガをしたと言ったな。じゃあどこをケガをしたんだ?」 明らかに男達に言っている。 さすがにそこまで言われて男達も気がつく。 「この場所は座った時、普通の人の後頭部に位置するわ。 じゃあ、何故頭にケガをした人がここに腰をかけるの?二通りの考えが出来るわ」 「外から逃げてきたか…」 「奥から逃げ帰ってきたか…」 「正解」 フェンリースはやっとわかったかと言わんばかりに頷く。 「でも実際は一つしか考えられないわ。もちろん後者の方よ」 「ここの扉はロバンスの力でもなかなか開けられなかった。 逃げてきた奴がそんな力あるんならすでに逃げ帰ってるさ」 ケインとフェンリースが説明する。 表の扉は全て開けるのに十数分かかった。 出る事の出来ないケガをしていたと思われる男が、この場所に腰をかけたのは当然の事だろう。 「とりあえずこんな端にいないで、中央に行きましょう」 皆部屋の真ん中に集まり、床のゴミを少し払って座りこむ。 「だけどさ、どこでそんなケガおうんだい?この遺跡にそんなものはなかったし、 モンスターもいなかったぞ」 「だからそういうことだって言ったのよ。ここは迷宮よ。間違いないわ」 迷宮、本来なら迷って出る事の出来なくなるように作られたものをそういう。 表向きには… だが、迷宮とは中から外に出したくない時に作るのが裏の作りである。 「ここの場合は少し違うわ。ブレイクラビリンスという迷宮の一つ」 「ブレイクラビリンス?」 「簡単に説明すると、本来一続きのトンネルがあったとするわ。 本来そのトンネルは一つだった。 だけど何かの理由でトンネルの真ん中が崩れてしまった。 そのため先に進む事も、戻る事も出来ないようになってしまい、 結果として二つになってしまう。 そういうわけで本来は一つなのに何らかの要素の所為で進めなくなってしまい、 見た目には行き止まりに見える、自然現象で作られるの迷宮」 「という事は…」 「そう、先に何かある」 ケインが立つ。 視線が注目する。 「各自持ち物を選び、それぞれの道を詳しく探索。長いがじっくり探すように。 少しでもおかしな点があれば直ちにここに戻って報告。 何があっても一人で先に進むな。ここに残るのはリース、お前でいいな」 「わかったわ」 「がってん承知!」 準備を整え、フェンリースを除く者は皆通路の中に入っていった… 数多くある通路の一つにケインは入っていった。 通路と言ってもその先にさらに分かれ道が存在する。 「少し前進といったところか。前以前に注意が必要だな」 手にした光で前を照らしながら、足音のみがこだまする。 分かれ道を行っては何も発見できず引き返し、また他の通路を行く。 それを幾度か繰り返すうちに行くべき通路がなくなる。 ケインは他の通路に進むために、大きな部屋に戻った。 大きな部屋ではフェンリースが、持ってきた「世界七不思議(湖編)」を見ていた。 そういった物に一旦集中すると声をかけても返事はしない。 読み終わるまで彼女は自分の世界に浸るのである。 ケインは声をかけることなく別の通路に入っていった。 この通路も先程の通路と同じでいくつもの分かれ道がある。 右の通路に入っていく。 同じ作り、同じ遺跡であるが、なぜかこの通路に何かを感じるものがあった。 前を照らしながら進む。 だが、何もなく通路の壁に突き当たった。 壁の隅から隅まで調べたが、何も発見する事が出来なかった。 「………」 ふう…と小さくため息をつきながら、引き返す。 しかし、引き返そうとして降り返るとそこに人影があった。 ズキン!ケインの頭に頭痛が走る。 「誰だ!」 そういう前に一歩下がって腰に装備していたナイフを取り出し、構える。 こういった場合に殺傷力のある銃を取らなかったのは、この場所が遺跡であったからだ。 「いつからそこにいた…」 頭痛を我慢しながらケインは口を開く。 自分が来た通路の後ろにいたのだ。 別の通路に潜んでいたのか? それとも入り口から入ってきたのか? しかし、足音もしなかった。 気配も感じさせなかった。 顔は見えない。それでも長い髪という事はわかった。 多分女であろう。 その女は動かなかった。 と思うといきなりその女は壁の方に向かう。 ケインは微動だにしなかった。迂闊に近寄れなかった。 そんな雰囲気を出していたのだ、その女は… 壁まで歩いた女は壁のある部分を指差し、ケインの方をむいた。 それでもケインは動かない。 女の方も壁に指を指したまま動かなかった。 そのままの状態が十数秒続いた。 そしてケインは構えを解いた。 その女から殺意どころか、人としての気配も感じなかったからだ。 なおも壁に指差している女。 「そこに…何かあるのか?」 ケインの言葉が聞こえていないのか、なんの反応も見せない。 ただ、黙って壁を指差しているだけだ。 「早く…」 長い沈黙の跡にその女は口を開いた。 ケインの頭痛は少しずつひどくなる。 「見つけて……」 「?」 なんの事を言っているのかケインにはわからなかった。 それ以上に頭痛がひどくなっていった。 「ぐ…あ…」 頭痛に耐え兼ね、とうとう頭を押さえながら床に膝をつく。 「いつまでも…見つけてくれるまで…私は…」 「『サ…フィ…』」 その言葉を言うと、ケインは意識を失った。 ……………ワ……………………………… …………ワ………イ…………………… ………ワ………イ………ス………… 「……ワイス?」 だれだ?俺の名前を呼ぶのは… …だめだ、頭がはっきりしない。 「いい加減目を覚ましなさいよ!」 「うるさいな…少しは静かに寝させてくれよ」 そういってワイスと呼ばれた男は上半身を起こす。 まだ眠気が残っているのだろうか、目は開けてない。 それに寝癖がひどかったりもする。 「もうお昼を過ぎてんの!早くご飯食べてよ。子供達に示しがつかないでしょ」 「あと五分くらいしたら起こしてくれ…」 そういってまた上半身をたおす。 「あ、こら!寝るな!」 聞こえないかのように眠りにつく… ……こら…ワイス…………………… ………ワイス………… ……ワ……イ…………