_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 第一幕 四章 一話 我等が進む先はミナレイン _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ レード、ラ=クルス連合に対抗するためにミナレインとも連盟を組もうとしたグラジア、ミランドル連盟は ケイン、ファシー、ミーク、フェンリースを交渉人として派遣した。 だが、出発してから小一時間、ラ=クルスの小艦隊が現れてしまった。 ミランドル製の輸送艦の一室に艦長と交渉人の四人が向かい合っている。 いわゆる作戦会議である。 「艦長、相手の数は?」 「数自体は大したことはない。母艦とその取り巻きが少々ってくらいだ。  だが、問題なのは相手の母艦だ。あれは相当な物だ」 「確かにちょっと見た限りでも超巨大艦とわかる。こっちの輸送艦なんかじゃどうしようもないか……」 「じゃあ、逃げるしかないって事?」 ファシーの問いにうなずく艦長とケイン。 「でも、逃げるのを黙って見てるとは思わないけど…」 「逃げる時は特に無防備だからな。……それで、一つ提案があるんだが」 ケインが真っ直ぐみんなを見る。 「提案?」 「!」 艦長はすぐに気がついたようだ。ケインが何を言おうとしているのかが。 「俺が出る」 「無茶だ!」 思っていた通りの答えに、思っていることを言葉に出す艦長。 「この船の足だったら、五分くらいあったら十分逃げ切れるだろう」 「あの母艦がちょっとやそっとで足止めできるようなものじゃないことは君が一番わかるだろう!  それにどうやってあそこまで行くって言うんだ!」」 「そうだよ。いくらケインが馬鹿だって言っても、それじゃあただのキチガイの何者でもないよ!」 「ヲイ……」 わからない事はないが、妙な誤解を受けそうな言葉を言うミーク。 多分悪気はないであろうが…… 「手ならあるさ。出る前にクレイに飛行ユニットを取りつけてもらっていた。  それならなんとか辿り着けるはずだ」 「そ、それなら辿り着けるくらいはできるだろうが……」 ウェポンに飛行能力がないわけではない。ホバリング程度ならどのウェポンにも標準装備なされている。 だが、高度を上げる、海の上を移動するようなものはそれ専用のウェポン、もしくは機器を使わなければならない。 今回は急な事だったのと、元々海戦は船を使っていたため必要なかったのである。 「だがあんたは大切な交渉人の一人だ」 「迷ってる場合じゃないはずだろう。こうしている間にも、いつ攻撃がくるかわからないんだぞ」 『艦長、敵艦から魚雷確認!数は…十を越えてます!』 ケインの言葉のすぐあとに、ブリッジからの艦内アナウンスで、敵攻撃の報せが入ってくる。 艦長は側においてあったマイクを素早く手に取る。 「ビット射出後ミラーに全速!残りは打ち落とせ!」 簡単な説明をすると、マイクのスイッチを切る。 艦長はため息をつく。そして、ケインを正面から見る。 「本来なら俺達が何とかしないといけないんだろうが、俺達じゃやっぱりダメらしい。  断腸の思いだ。やってくれるか……?」 先ほどから断わっていたが、それしか方法がないことはわかっていた。 ケイン達は、交渉人でもあり、クレイの客人でもあったため、どうしてもあんな事をさせる事ができなかった。 「あたりまえだ。元々は俺が言い出した事でもあるからな」 「じゃあ私も一緒に行きたい!」 ファシーが手を上げて言う。 「それは無理な相談だ。足止めのために人数を裂くわけにはいかないからな」 「じゃあ俺達ならよかろう」 ガチャリと扉を開けて五人ほど入ってきた。 服装はその辺りにいるような兵士が着ている物と同じだが、如何せん顔つきが違っていた。 もちろんよい意味で顔つきが違うのである事を忘れないで欲しい。 「あんたのサポートを俺達がするってのがいいんじゃないか?」 「すみません艦長。立ち聞きするのは悪いと思ったですけど、思わずグラスでちょいと…」 グラスを持っていたこと自体、立ち聞きするつもりだったと思うのだが。 泣く子も黙るミランドル精鋭部隊である。 ちなみに全ての兵士が気が抜けているのではない。 ただミランドルにおいては、彼らの方が変わっているというのではあるが。 「お前達………。よし!狙いはあの巨大母艦のみ。あれに到達するまではこっちがそちらをサポートする。  十分近づいた時点でこっちは離脱。後はそっち次第だ!」 ケインと精鋭部隊はビシッと敬礼をした。 運搬船のウェポン射出口に、ルシェイフとミランドル凡庸ウェポン『ライプニッツ』が並んでいた。 そして、その場にルシェイフを見上げるケインもいた。 「よく乗る気になったわね」 後ろからやってきたフェンリースが声をかける。 そして横に並ぶと、同じようにルシェイフを見上げる。 「まだ吹っ切れたわけじゃない。このウェポンが恐ろしく感じるのは変わらない。  だが今は俺一人のことを考えている場合じゃないだけさ。  背に腹は変えられないと言うのかな」 「……でも、自分を犠牲にする事もないと思うわ。いやなら別に誰も文句は言わないでしょうし」 二人とも向かい合うことなく話す。 「誰もいわなくても、俺が自分に言うだろうな……。それに俺は元とはいえ軍人の一人だ。  闘いに見を投じるのは当然の事だ。俺はこういう中でしか生きられないようだ」 「おい、ケイン・セイガード」 後ろから精鋭部隊の隊長であるファーガが声をかけてくる。 「あれからな降伏の話が来た。まあこっちの答えは決まっているがな。  半刻ほど待つと言っていたがこっちはそんなに悠長な事をしている場合じゃない。  このままずるずるとしていると、ミナレインにも被害が出るかもしれない。  ……いくぞ、出撃だ」 うなずくケイン。 「リース、あの二人の事は頼んだぞ。お前だけが頼りだ」 フェンリースの方を向いて話すケイン。 「…実は逃げる事ができてホッとしてるでしょ。ケインってなにか誤魔化す時、視線が宙を浮いてるから」 少しドキッとしたケインだった。 ……正解。さっきケインの思った事に間違いはなかったが、 いつのまにか(ファシー、ミーク組>敵と戦う)という被害の方程式ができていた事も間違いではない。 フェンリースの肩を軽く叩くとそのままルシェイフのほうに歩いていった…… よく言えば信頼、悪く言えばただの押し付けであった。 「敵の状況は?あれから何かあったか?」 ブリッジに入ってきた艦長がオペレータの一人に聞く。 「今のところ何の変化もありません。不気味なくらいです」 艦長はマイクを手に取る。 「ファーガ、フェイル、シガナート、ラック、セイル、そしてケイン。準備はいいか?」 『問題ない。いつでもいける』 ケインの声を筆頭に次々と返事が返ってくる。 「よし、じゃあ射出口を開く。一気に目標に向かえ。見た感じだと、連続使用は五分が限界ってとこだ」 ……そして射出口が開き始める。 「コーデリア様、相手船から射出口を開くような音が感じられます」 慌てた様子もなく、静かな口調で状況を告げるオペレーター。 声はブリッジの中央でスクリーンを見ているコーデリアに向けられていた。 「やはりそうきましたか。仕方がありません。相手をせざるをえないでしょう」 コーデリアは深くため息をつくと、髪をかきあげる。 「私達の目標はあの向かってくるウェポンに絞ります。船はその後に追います」 「しかしコーデリア様、相手の船はミランドル製です。追いつく事はできないと思われますが」 コーデリアの後ろに、それ相当の姿をした兵士が疑問を投げかける。 こちらはラ=クルスの精鋭部隊と言ったところだろうか。 「構いません。どうせあちらの向かうところは決まっているのですから……」 ルシェイフの視覚センサーから射出口が開いた事による光りがケインの目の前のディスプレイに映し出される。 どくん、どくん、どくん…… ケインの鼓動が早くなる。 (おちつけ、ケイン・セイガード。お前の働き次第でファシー達が楽になるんだ……) 一度深く息を吸い、それを吐く。そしてケインは力強くスティックを握る。 「……ルシェイフ、リフトオン!!」 ケインの乗るルシェイフは勢いよく射出口を跡にした。 ブリッジの巨大なスクリーンにケイン達が出ていくのが映し出されている。 輸送艦の艦員は、敵攻撃に備えている。 「………………」 だが、一向にそういう気配はなかった。 「わな…か?」 敵艦隊のスクリーンにはルシェイフを筆頭に六体のウェポンが映し出されていた。 「コーデリア様、敵ウェポン六体の出撃を確認」 「……わかりました。それでは私達も出ましょう。くれぐれも油断のしないように。  なにか意思を持って行動するものは、そう容易には倒れてくれません。  あと、くれぐれも私達が相手している間、その他の兵器の使用を禁止します。  同じ武人として、正々堂々と戦いたいですから」 そういうと、後ろに控えていた兵士五人を引き連れて、ブリッジから出ていった。 ケイン達は程よい場所まで、難なく移動する事ができていた。 「艦長、そろそろ我等が離脱しなければ」 「……そうか。頼んだぞ、みんな………。  迷わず全速反転!彼等が食いとめている間に十分離れるんだ!」 船内はあわただしくなっていった。 客室にいるファシー達はその動きに気がつく。 「だいじょうぶかな、ケイン達…」 心配そうに二人に視線を送るミーク。 「大丈夫でしょ、ケインなら」 その視線に気づいたのかそうでないのか、目を伏せたまま答えるフェンリース。 付き合いの長いフェンリースだからこそ言えるセリフである。 「そういえばケインのフェンリースさんはどのくらいケインと居るんですか?」 どう言うわけか、敬語を使うファシー。 「ファシーって年いくつ?」 「え?18ですけど……」 「それじゃあ同い年ね。だったら敬語なんて使わなくてもいいわ。それからリースでいいわ」 同い年とわからなかったにもかかわらず、ファシーの敬語に素で返すフェンリースも凄いが。 「そうね、私がグラジアに来たのが11の時で七年前。そこからケインに会ったのが四年前かしら。  ある仕事で一緒になってからの付き合いだと思うわ」 「あれ?リースはグラジアの生まれじゃないの?」 「…………」 黙るフェンリース。 「あ、ごめん……」 「気にしてるわ。………うそ、気にしてないわ」 気にしてないといわれてもどうしても気にしてしまう。 さすがに聞くわけにもいかない。黙ると言う事は、言いたいくないのと同意であるのだから。 ちょっと気まずい雰囲気があたりを包む、が…。 「く〜〜〜」 「ん?」 ファシーは自分の隣を見る。するとそこにはいつのまにか寝息を立てているミークが居た。 「ホンの一分前にはケインの心配してたのに、心地よい寝息を立てるなんて……」 さすがのファシーも驚きを隠せないと言うか、気が抜けてしまった。 この後、どうも話が進展しなくなったため、ミークを見習って?寝ることにした。 『艦長達はミナレインに向けて出発したみたいだ。後は俺達だな』 ファーガからの無線が入る。 「俺は気にするな。それよりそっちはケガするなよ」 『おいおい、誰に言ってんだ?言葉も年上には丁寧に言うもんだぜ』 苦笑気味に言うファーガ。 「それに値するような奴だったらな」 『減らず口を…。まあその調子なら大丈夫だろう。だが、何が起こっても責任は取れないからな』 そんなやり取りをしているケインの目に、ある意味予想していた物が入った。 『厄介な物が来たぜ』 敵母艦の甲板の上に、六体のウェポンが立っていた。 特にその中の一体は完全に毛色の違う物だった。 『こっちと同じような編成だな。こりゃ一対一かな?』 「俺達の仕事は足止めだ。止める必要はない。  がそれなりのダメージを与えてなければ足止めにもならないな」 (まずいな。他のウェポンは性能を見ればこっちのとあまり変わらないだろう。  だが、あの緑のウェポンは一筋縄ではいかないようだ) ケインを先頭に、敵母艦の甲板に降り立つミランドルチーム。 正面を向き合うラ=クルスチームとミランドルチーム。 ラ=クルスチームの一人が一歩前に出てくる。 あの毛色の違うウェポンだ。 「ようこそ…と言うのは少し語弊があるようですね。  私はコーデリアと言います。崇高なるロキ様の命により、あなた達を排除致します。  大人しくしてくれれば身の安全を保障しますが、抵抗なさるのであれば容赦いたしません」 あくまでも丁寧な言葉を言うコーデリア。 (ロキ?レードの参謀か?やはりラ=クルスと連合を組んでいたか。  しかし、ロキ……。どこか他のところで聞いた事があるような……) 「とは言っても、いまさらこちらに下るような事はしないでしょう。  あなた達の取るべき道はただ一つ。私達を退却させる事だけです!」