_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 第一幕 四章 二話 ケイン搭乗ルシェイフ、初戦闘 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 「……………」 例によって部屋の明かりをともさずに、クライクが立派な椅子に座っている。 クライクなだけに、部屋をくらぃく(暗く)してるとか♪ ………まあ、全く話しに関係ないので無視しよう。 その顔は真剣その物であった。 「いつ頃だったか、奴を恐れるようになってここに来たのは。  ……ああ、あの時だ。あいつが、あいつが……ん?」 クライクの独り言はそこでストップした。 部屋のドアをノックする音がしたからだ。 「入れ……」 「失礼します」 一人の兵士がドアを開いてやってくる。 クライクの前にくると一度礼をする。 「なんだ」 「はい、それがファラウ様の知り合いという方がクライク様にお会いしたいとの事で……」 「なんだと?…………わかった、会おう。そいつをここに連れてきてくれ」 兵士はもう一度礼をすると、部屋を出ていった。 「ロキの知り合いだと?」 クライク自体、ロキの事を全て知っているわけではなかった。 むしろロキの方が、クライクの事をよく知っていた。 この地位に上げたのもロキだった。 そしてドアを叩く音がする。 「………入れ」 ケイン達は戦闘態勢に入る。 悔しい事にコーデリアが言った事に間違いはない。 足止めといっても中途半端だとやってないのと同じである。 敵を退却、これが実のところ使命なのである。 『ケイン、どうする?』 ファーガが、直結無線で話しかけてくる。 直結無線…どこの誰が考えたか知らないが、指定した所に一対一で会話できる物である。 簡単に言うと、電話である。違うのは盗聴が一切できない事にある。 極小無線とも言われる。ただ、文字通り範囲がめちゃくちゃ小さい事である。 兵士の間では、上司に不満がある場合、陰口を叩くには持ってこいなので、陰口無線とも言われているらしい。 多分作ったのはこういった奴かもしれない。 「どうするもこうするも、あいつらを何とかしないと俺達のやることに意味はない。  丁度こっちと数が同じだ。サシで何とかするしかない。  ただ、あの女は俺がやる。正直言うとあんたらじゃ手におえないようだ」 俺にもな、と心の中でつぶやくケイン。 『……仕方がない。俺もそう思うからな』 「さて、小話は終わりましたか?」 大人しく待っていたコーデリアが動き出す。 「おかげさまでな。さて……はじめようか!」 ケインはエンジン全開でコーデリアのウェポンに向かっていく。 そして組み合うとその場から一瞬にして他の艦に飛び移る。 コーデリアは逆らうことなく、なすがままにしている。 飛び移ったと同時にケインはコーデリアから離れる。 「そんな事をなされなくても、言われればそうしましたのに」 あくまで余裕のコーデリア。余裕というよりは相手に合わせているのであるが。 「余裕をかましてると痛い目にあうかもしれないぜ」 間合いを狭めるケイン。 ケインのウェポン、ルシェイフは中、遠距離攻撃のできる物を搭載していない。 完全近距離用にできてある。 コーデリアのウェポンがどのような物かわからない以上、迂闊に近寄る事はできない。 まずは相手の出方を見る。というのが普通なのだろうが、今はそんな余裕はない。 多分そんな事はないだろうが、もしかしたらこのままの状態で艦が動き出す可能性がある。 ケインは、コーデリアがこの艦隊の指揮官だと踏んでいる。 その性格は一直線ストレート。 相手に勝つというより、どれだけいい闘いができるかという事に執着している。 言動から簡単に予想がつく。 「来ないなら私から行きますよ。私の機体、ルーカスで!」 突然間合いを詰めてくるルーカス。それを正面から向かい合うルシェイフ。 さらにスピードを上げながら突っ込むルーカス。 (まずい!) ケインとコーデリアの違い、それはウェポンの戦闘にある。 つい数日前に手に入れたケインに対して、コーデリアは数多くの戦いをしているだろう。 動かした事がないわけではない。ただウェポンで戦闘をしたことがないのである。 勝負がウェポンでなければよかったのだが、ほとんど動かした事のないケインには 自分のウェポンの装甲がどのくらいかすら把握できていない。 衝突する直前でなんとかかわすルシェイフ。 「逃げるんですか?」 「……」 完全に部が悪い。いまさらだがそう思うルシェイフ。 (しかたがない。このウェポンがどのくらい耐えられるか勝負だな) ルーカスに向かっていくルシェイフ。 ガシィィィン…… ウェポン同士のアームがぶつかり合う。 そのぶつかった時の振動が、中に乗っているケインにまで伝わってくる。 その振動に一瞬ひるんだルシェイフに、ルーカスの回し蹴りが炸裂する。 数メートルほど吹き飛ばされるルシェイフ。 「くっ、これがウェポンの力か……。とんでもないな」 すぐさま立ちあがるルシェイフ。 「あなたの力はその程度だったのですか、ケイン・セイガードさん?」 「俺を知ってるのか?」 「当たり前です。第一級犯罪者で懸賞金もかけられてるんですよ。  ですが、私はそんな物に興味はありません。  犯罪者であろうとなかろうと、あなたと全力でやりあいたいだけです。  もし、全力が出せないのであれば…彼らを先に始末しますよ……」 ルーカスはファーガ達の方に顔を向ける。彼女の言動に嘘はない。 見たところなかなか善戦をしているようだが、ルーカスが入るとそれが一気に崩れていくのは目に見えている。 数としては同じだが、総合では完全に劣っている。 コーデリア達にとってはケインもファーガ達も敵には変わりなく、どちらを先に片をつけようが関係ないわけだ。 「……気にするな。今まではウェポンの性能を確かめてただけだ。これからが本番だ!」 「そう来なくては面白くありません!」 ルシェイフとルーカスが同時にお互いに向かって走り出す。 やろうとしていることは同じだったらしく、ウェポンのショルダーが激突する。 そこからルーカスが右アームでボディに鋭く攻撃してくる。 ルシェイフは寸前の所でボディを回転させて避けたのだが、 その動きを読んでたかのように逆のアームでヘッドを攻撃する。 のぞけったところを後ろ回し蹴りをしてくるが、それをルシェイフはなんとかガードする。 ガードして、バランスの取れなくなったその隙に、懐に深く潜り込み、回し肘打ちをした後アッパーカットを出す。 ガードできるはずもなく、吹き飛ばされるルーカス。が、すぐさま起き上がる。 「はじめてのウェポン戦闘にしてはよく動けてますね。素質でしょうか?」 「……なぜ俺がはじめてだとわかる」 「敵の情報は全て取得してますからね。  あなたはまだまだ強くなれます。もちろん普通に過ごしてたらの話ですがね」 「………………………」 ルーカスは両アームを後ろにまわす。 そしてルーカスは両アームにソードの柄部分だけが握られていた。 その柄から突如としてブレードが出てくる。 いわゆるエーテル武器、という物だ。 「これが私の、ルーカスの本来のスタイルです。覚悟は…いいですか?」 戦線を離脱したミランドルの輸送船は、通常速度に戻っていた。 もうミナレイン領土に入っているため、そう簡単に他国が入ってくることはない。 むく…… 客室で寝ていたファシーがふと目を覚まし、体を起こす。 寝ぼけた目で周りを見まわす。ミークとフェンリースはまだ寝ているらしい。 落ち着きを取り戻した船に気がついたが、まだ着いたわけではないとわかったらしく、 二度寝に入ろうと、また横になる。 とはいう物の、起こされたわけではなく、勝手に目が覚めた場合二度寝するのはつらい。 とにかく眠たくなるまでいろいろ歩いてみようと、二人を起こさないように静かに部屋を出るファシー。 寝る前と打って変わって、船内は静かなもので、あわただしさが全く感じられない。 廊下を歩くファシーの足音だけが響く。 そして、ファシーは思いがけない事態に遭遇していたのに気がついた。 「どこをどう行ったら、どこに着くんだっけ?」 どこにも目印になるようなものはなく、同じ通路なので迷う確率は高かった。 このまま部屋に戻るかと思いきや、今度ははりきって歩き出した。 「別に迷ってものたれ死ぬわけじゃないし、迷うのを覚悟で行ってみよっと!」 ちなみに、こういった考えを持つものはホントに道に迷って右往左往するのだが……。 運がよかったのだろうか、すぐそこの曲がり角の奥から誰かの足音が聞こえてきた。 出てきたのは船長だった。 「あれ?そこにいるのはファシー嬢。どうしたんだ?」 「うん、寝てたけど目が覚めちゃって、また眠くなるまでぶらつこうと思って」 別に寝なくてもいいのでは?と一瞬思ったのだが、ファシーがそう言ってるんだから別にいいのだろう。 「ところで今どの辺りにいるの?」 「そうだなぁ、後もう少ししたら港に着くと思うが」 「ふ〜む……」 (これじゃあ寝てもすぐ起きないといけないかも。だったらいっそのこと起きておく事にしたほうが得ね) 一体何がどのように得なのかは謎である。 「なんなら案内してもいいぞ」 「自分一人だと迷ったら困るから、おねがいしようかな」 そう言うとファシーは艦長に着いていった。 ブリッジ、作戦室、寝室、客間、次々と回っていく。 エンジンルームに行くか、と艦長に言われたが全く興味ないので断わった。 フェンリースなら真っ先に向かうようなところである。 『……………………………』 「え?」 誰かの声が、ファシーの耳に届く。だが、周りを見渡してもだれもいない。 ミーク達が来たのかと思ったが、そうでもなかった。 「どうした?」 ファシーの異変に気がついた艦長が声をかける。 「う、ううん。なんでもない」 『………へ…。……ココヘ…』 「だれ?どこにいるの?」 慌てて見まわすがやはりどこにもそれらしい物はない。 「どうした!?」 「なんか聞こえない?」 艦長は耳を澄ませる。 「なにも聞こえないが」 『……ココヘ』 「!」 ファシーは驚いた。冷静になってみるとその声は直接頭の中に入ってくる様に思えたからだ。 今まで立ち止まっていたファシーだが、突然歩き出した。 「おい、嬢?どこに行くんだ、おい!」 艦長の声が届いてないかのように、無反応で進んでいく。 「そっちは!」 ……………ギアドックに向かっていた。 「さすがというべきでしょうか。まさか乗りたてのあなたがここまで私とできるとは思いませんでした」 ルーカスは手にした二本のソードを交差して構えている。 そしてルシェイフはその場にうずくまっている。 あちこちにソードの跡が残っていて、エネルギーが少しずずもれている。 「はぁはぁはぁ………」 コクピットの中のケインは満身創痍だった。実際攻撃を受けたわけではないが、体のあちこちに裂傷がある。 ウェポンの動作として、搭乗者とウェポンがエーテル的リンクをしている。 その繋がりが大きければ大きいほど強い力を発揮できるが、逆にウェポンが受けたもの自体が搭乗者にも受ける事になる。 エーテル力の強い者がウェポンを自由に力強く発揮できるのには、こういった事があるからだ。 簡単に言うと、ウェポン自体が搭乗者なのである。 (くそ、また俺はなにもできないままなのか。俺の力はこんな物だったというのか……) 「ですが、楽しかったですよ。もし、ロキ様に忠誠を誓うなら何とかしてあげますが、どうしますか?」 完全に手を止めているルーカス。だが、構えはきちんと取っている。 (ここで俺がやられてしまったらミナレインはどうなる。あのまま向かったあいつ等は……) ルーカスの声はケインに届いてなかった。 (どうすれば…………) 《そりゃ簡単だ》 ドクン! ケインの頭の中に直接声が届く。 《俺に任せておけばいいんだよ》 ドクンドクンドクン! ケインの鼓動が早くなる。 (…………………!) 「そうですか、ならしかたはありませんね。申し訳ありません。あなたはこのまま海に沈んでもらいます」 ルーカスは手にしていたソードをしまうと、全速力でルシェイフに向かっていった。 そして、大きな音をたてながら、ルシェイフは海に沈んでいった……… 「…あれ?」 気がつくと、ファシーはドッグの真ん中に立っていた。 「嬢、待てって!」 後ろから艦長の声が聞こえたファシーは、後ろを振り向いた。 「あれ?なんで私こんなところにいるの?」 「そりゃこっちが聞きたいぞ。急に歩き出したと思ったら真っ直ぐここに向かってるんだからな」 「どうもさっき声を聞いた辺りから記憶がないんだけど…………」 別に寝ぼけていたわけではなさそうだった。本当にあった怖い話のようだ。 そして、ファシーと艦長の目にある物が映った。 ヴァルキリエが光っていた。 正確にはヴァルキリエのブレスト部分だが。 ファシーと艦長がゆっくり近づいていく。するとますます光が強くなっていった。 そしてファシーがヴァルキリエの足元にきた瞬間…… 光りが数倍強くなった。まぶしくて目が開けてられないくらいだった。 と思いきや、一瞬でその光りは消える。 あわてて辺りを見まわす艦長。何が起こったんだ、といわんばかりの行動である。 それに引き替えファシーの目はいってんに集中していた。 いつの間にかファシーの手の中にあった淡く光る何かに…… ルシェイフの落ちていったところから気泡がブクブクと上がってくる。 ルシェイフがたえず沈んでいくのを物語るように。 そしてそのうちその気泡も出てこなくなる。 「おしい人をなくしてしまいました。ですがこれも命令ですのでお許し下さい……」 沈んだ場所で黙祷をささげるルーカス。 「それでは、残りの残党を始末し……」 ドォォォォン!! 突然母艦を取り巻いている他の船の一隻が大爆発を起こす。 ホントに予想外の事だったらしく、敵味方関係なしにその方角を見る。 「一体どうしたのです!」 コーデリアは爆破した船の近くの船に連絡を取る。 『わかりません!おそらく何かが被弾したと思われます!』 「被弾?どこからかわかりますか?」 『いえ、それらしい物はレーダーに…えっ?なんだこれは……』 ドォォォォォン!! また同じように大爆発が起こる。 『コ、コーデリア様、海中にとんでもないエーテル力を感じます。おそらくエーテルの塊がぶつかったのでは』 母艦のブリッジからの緊急連絡がコーデリアに届く。 「とんでもないエーテル力?エーテル群でしょうか」 エーテル群…物質界とエーテル界は実は隣り合わせになっている。 普通は物質界がエーテル界に入ることはできないのだが、エーテル界は物質界に存在できる。 ミークが使った炎も、ルーカスのソードもエーテルが物質化した物である。 本来は自由に型を成す事のないエーテルだが、時々ある一部分で物質界とエーテル界を隔てている壁が破損し、 大量に塊となって溢れ出す事がある。それがエーテル群である。 そう言ったものの、コーデリアは違うと思っている。 エーテル群なら壁が破損した場合にはそれ相応の歪みが感じられるはずなのである。 もちろん母艦にはその歪みを確認できる装置も搭載してある。 だが、今の今まで少しも歪みの情報が入ってこなかったという事は、何か別の要因があるはずであった。 『海中から何かが出てきます!』 海流が暴れ、渦潮ができる。その真ん中からとてつもない物が姿を現す。 そしてそれはコーデリアの見た事もない、威圧感のある真っ赤なウェポンだった………… 「全て、殺す……」